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鶯音を入る
第二十九夜
しおりを挟む「……でも、どういう事か、まだわからない。鈍くて、ゴメンね」
「…………あ! そっか。説明してませんでした。一人で勝手に納得して突っ走って、私の方こそごめんなさい。紅さんが鈍いって事はないです。私が不親切だっただけなんで、気にしないで下さいね!」
にっこりゆったり待ってくれている彼女を見つめながら、彼女と過ごすうちに徐々に得ていった気付きについての言語化を試みた。
「えっと、何て言うか…………。紅さんのピアスの穴のおかげで、『私にとっては、身体に開いている穴が寂しさの象徴みたいなもの』だって気付けたんです」
「そうなの?」
「はい。変でしょう?」
「ううん。『翠は優しいな』って思うだけ」
自分の事をそんな風に思えた事はないが、彼女がそう言ってくれるのなら、私だって生姜のチューブ一回分位の優しさは持っているのかもしれない。
「ありがとうございます」
「でも、『寂しさの象徴』だったら、ピアス着けるの、抵抗ない? 穴ないと、着けられないから、気にしちゃいそう」
真剣な眼差しに違わぬ冷静な分析だ。彼女は話の要旨を捉えている。
「……私が『浮気も平気でするし、割と簡単に誰とでも寝る尻軽ビッチ』だって話はしましたよね」
伝えたい事が正しく伝わっている事に安堵しつつ、あえて否定を挟まずに続きを急いで話を組み立てた。
「ん。聞いた」
「でも、私は多分、セックス自体が特別好きな訳でもなくて、『穴が埋まる安心感』が与えられる事で寂しさが紛れるから、その時々で一番早く寂しさを埋めてくれる相手を欲しがってただけなんだって事にも、紅さんと過ごして、色んな事話すうちに気付けたんです」
その作業は宛ら、大切に仕舞われていたせいで頁と頁が張り付いてしまっている思い出のアルバムを一頁、また一頁と、少しも傷付けないように慎重に慎重に開いていく時に似ていた。
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