161 / 226
鶯音を入る
第三十夜
しおりを挟む『この時には確かこんな事があった』、『次にあんな事があって、とても楽しかった』。
『今日のこの瞬間が、ずっとずっと続けば良いのに』。
そんな風に、一枚の写真を手掛かりに、閉ざしていた、或いは忘れ去られていた記憶の扉をそうっと開けて、当時の自分が大事にしていた宝物達との再会を果たす過程に、酷似していた。
「特別な事なんて、何もしてないよ?」
自己啓発セミナーのようなものを思い浮かべているのだろうか。
トレードマークである大きなピアスではなく、豊かな髪が揺れるさまに目を奪われる。
『髪の一筋さえも愛おしい』だなんて、流石に行き過ぎた誇張表現だと鼻で笑っていたが、私も晴れてそちら側へ仲間入りという訳か。
「そうかもしれません。デート先も何だかんだで近場が多かったですしね。私達の間には、少しも特別な出来事なんて起きてないのかも。……だけど、それが却って良かったというか……。出会いがスペシャル過ぎたんですよ、多分。全部高級食材で固めたメニューより、一つだけ高級食材を使って、それを最大限に活かす工夫をした方が美味しい、みたいな話です」
「『特別な人と過ごす日常が、一番贅沢で、特別』?」
私が何行もかけて説明したことを、彼女は簡潔にまとめてしまう。それも、伝えたい事はすべて残したままで。
「そういう事です。紅さんって要約の天才ですよね」
「じゃ、翠は比喩の天才」
笑い合ったあと、彼女の返しは別の意味でもナイスアシストだと気付いて、彼女と出会う以前では考えられなかったゆるゆるのだらしない笑顔のまま、再び口を開く。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる