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鶯音を入る
第三十六夜
しおりを挟む「え?」
「付き合って満足する人、いるから。翠はそうじゃない……って、信じて良い?」
交際が開始する前はあれこれしてくれていた筈が、しばらくして色々な事が手抜きになるタイプの人間について言っているのだろうか。
「…………紅さん。まだ私の愛の重さ、軽く見てません? 多分、今まではそこまで好きになれる人に出会えてなかっただけで、元々すごく重い女だったんだと思います。……紅さんが私が会った事のない私に会わせてくれたんですよ」
彼女の瞳が興味深げに輝き出す。
「確かに私は紅さんみたいに尽くすタイプじゃないし、素直で可愛い女でもない。すごくわかりにくいかもしれないですね……。『好き』って、どうしたら伝わるんでしょう? ……どうしたら紅さんを不安にしないで済みますか? 私に出来る方法なんて、きっと…………」
過去の自分が取ってきたのと同じ方法を取る事自体に抵抗がある訳ではないが、対男性用のテクニックが女性相手に役立つとは考えにくい。
私の取り柄なんてその位しかないのに――――。
「安心して。伝わってる。多分、翠に甘えてもらえるのは、好かれたり、信頼されたりしてる証拠だと思うし。…………違った?」
余裕と確信に満ちた声が、不安を一掃していった。
「……いいえ、違いません。その通りです」
誰よりもテキーラの入ったグラスが似合う女性に微笑みかけて、首を横に振る。
私がこれほどまでに寄りかかれる相手は、貴女と貴女の家のソファの背凭れだけだ。
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