20 / 228
『初任務は王都護送!? 天才令嬢と絶対バレてはいけない“秘密の積荷”』
第18話『護送されるお嬢様、爆誕──その正体は天才魔術士』
しおりを挟む
貴族用馬車の中は、静まり返っていた。
天蓋付きのクッションシートに腰かけ、背筋を伸ばした少女は、窓の外に目もくれず、膝の上の書物に目を通していた。
「“空間座標転位陣式の第六法則は、実際の次元歪曲をともなわずに――”」
声に出して読むのは、完全に習慣のようだった。
無意識のうちに魔力の制御を行うその佇まいは、まさに“王都の魔導学院主席”の名に相応しい気品があった。
だが──
「なあ、王都の“癒しエリア”って、やっぱ貴族向けと庶民向けで違うのか?」
「……うるさい」
「リリアはどっちが好き?」
「質問の意味がわかんないけど、とりあえずあんたは黙ってて」
「アリシアは……」
「お前、本気で叩くわよ?」
馬車の外、隣を歩くリリアとアリシアが即座に警戒を発し、流星は苦笑いしながら引き下がった。
その様子に、馬車の中の少女──ミレーユ=エトワールは、ようやく本から顔を上げ、ため息をついた。
「ほんっと、うるさいわね……」
扉がカラン、と開く。
馬車の天窓から顔を出したミレーユは、流星に鋭い視線を向ける。
「ちょっと。いい加減静かにしてくれない?」
「いや、別に俺の話で馬車が揺れてるわけじゃ……」
「あなたみたいな凡人、空気を震わせることすら価値がないわよ」
「お、おう……」
あまりの一刀両断に、流星が小さくなった。
横で見ていたリリアが思わず吹き出し、アリシアも肩をすくめる。
「……あれはあれで、完璧すぎて怖いわね」
◆ ◆ ◆
その日の夕方、旅籠の離れでキャンプを張ることになった一行。
焚き火を囲む中、アリシアが静かに話し出した。
「実は……今回の護送任務、かなりデリケートなのよ」
「ほう。まさか護送対象が王族絡みとか──」
「正解」
「えぇっ!?」
リリアが焚き火に薪をくべながら説明を加える。
「ミレーユは、“エトワール公爵家”の嫡女で、母方が王家直系。
つまり、王位継承権を持つ“血族”でもあるの」
「ま、マジでか……!?」
思わず流星は焚き火の火箸を落とした。
「じゃあ……なんでそんなのを俺らが……って、ギルドも知ってて任せたのかよ!?」
「裏に動いてる勢力を牽制する意味もあるのよ。
正規の騎士団だと、あまりに目立つから。
“外部冒険者による護送”は、その裏をかく手段として有効なの」
アリシアはまっすぐ焚き火を見つめながら呟いた。
「……それに。
“暗殺者”が既に王都周辺に潜伏してるって情報も入ってる。
今回の旅は、文字通り“命がけ”なのよ」
流星は、しばし黙って火を見つめた。
その焔の中に、何かを見たように。
「──なるほどな」
「怖くなった?」
「いや。むしろ燃えてきた」
「また、そうやって……」
アリシアが眉をひそめる。
「正直、護送とか命がけとか、昔の俺だったら絶対に逃げてたかもしれないけどな。
……でも今は、仲間もいるし。あと、王都の風俗街にも行きたいし」
「台無しだわ、最後の一言が」
アリシアがすぐにツッコんだが、リリアはクスリと笑って言った。
「でも……そんなあんたでも、護りたいって思ってくれるなら、少しは信用できる気がする」
そのとき、馬車の中から魔力の気配がふっと漏れた。
ミレーユは静かに天窓を閉め、焚き火の気配に耳を傾けていた。
(バカみたい。でも……)
──彼の言葉は、ほんの少しだけ、胸に残った。
天蓋付きのクッションシートに腰かけ、背筋を伸ばした少女は、窓の外に目もくれず、膝の上の書物に目を通していた。
「“空間座標転位陣式の第六法則は、実際の次元歪曲をともなわずに――”」
声に出して読むのは、完全に習慣のようだった。
無意識のうちに魔力の制御を行うその佇まいは、まさに“王都の魔導学院主席”の名に相応しい気品があった。
だが──
「なあ、王都の“癒しエリア”って、やっぱ貴族向けと庶民向けで違うのか?」
「……うるさい」
「リリアはどっちが好き?」
「質問の意味がわかんないけど、とりあえずあんたは黙ってて」
「アリシアは……」
「お前、本気で叩くわよ?」
馬車の外、隣を歩くリリアとアリシアが即座に警戒を発し、流星は苦笑いしながら引き下がった。
その様子に、馬車の中の少女──ミレーユ=エトワールは、ようやく本から顔を上げ、ため息をついた。
「ほんっと、うるさいわね……」
扉がカラン、と開く。
馬車の天窓から顔を出したミレーユは、流星に鋭い視線を向ける。
「ちょっと。いい加減静かにしてくれない?」
「いや、別に俺の話で馬車が揺れてるわけじゃ……」
「あなたみたいな凡人、空気を震わせることすら価値がないわよ」
「お、おう……」
あまりの一刀両断に、流星が小さくなった。
横で見ていたリリアが思わず吹き出し、アリシアも肩をすくめる。
「……あれはあれで、完璧すぎて怖いわね」
◆ ◆ ◆
その日の夕方、旅籠の離れでキャンプを張ることになった一行。
焚き火を囲む中、アリシアが静かに話し出した。
「実は……今回の護送任務、かなりデリケートなのよ」
「ほう。まさか護送対象が王族絡みとか──」
「正解」
「えぇっ!?」
リリアが焚き火に薪をくべながら説明を加える。
「ミレーユは、“エトワール公爵家”の嫡女で、母方が王家直系。
つまり、王位継承権を持つ“血族”でもあるの」
「ま、マジでか……!?」
思わず流星は焚き火の火箸を落とした。
「じゃあ……なんでそんなのを俺らが……って、ギルドも知ってて任せたのかよ!?」
「裏に動いてる勢力を牽制する意味もあるのよ。
正規の騎士団だと、あまりに目立つから。
“外部冒険者による護送”は、その裏をかく手段として有効なの」
アリシアはまっすぐ焚き火を見つめながら呟いた。
「……それに。
“暗殺者”が既に王都周辺に潜伏してるって情報も入ってる。
今回の旅は、文字通り“命がけ”なのよ」
流星は、しばし黙って火を見つめた。
その焔の中に、何かを見たように。
「──なるほどな」
「怖くなった?」
「いや。むしろ燃えてきた」
「また、そうやって……」
アリシアが眉をひそめる。
「正直、護送とか命がけとか、昔の俺だったら絶対に逃げてたかもしれないけどな。
……でも今は、仲間もいるし。あと、王都の風俗街にも行きたいし」
「台無しだわ、最後の一言が」
アリシアがすぐにツッコんだが、リリアはクスリと笑って言った。
「でも……そんなあんたでも、護りたいって思ってくれるなら、少しは信用できる気がする」
そのとき、馬車の中から魔力の気配がふっと漏れた。
ミレーユは静かに天窓を閉め、焚き火の気配に耳を傾けていた。
(バカみたい。でも……)
──彼の言葉は、ほんの少しだけ、胸に残った。
44
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」
銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の
一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の
関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事
を裏でしていた。ある日のこと学校を
出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ
こりゃーと思っていると、女神(駄)が
現れ異世界に転移されていた。魔王を
倒してほしんですか?いえ違います。
失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな!
さっさと元の世界に帰せ‼
これは運悪く異世界に飛ばされた青年が
仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの
と商売をして暮らしているところで、
様々な事件に巻き込まれながらも、この
世界に来て手に入れたスキル『書道神級』
の力で無双し敵をバッタバッタと倒し
解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに
巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、
時には面白く敵を倒して(笑える)いつの
間にか世界を救う話です。
異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件
おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。
最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する!
しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる