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『言葉を持たぬ国と、性別未確定の誘惑』編
第104話『禁断の香、性別の境を曖昧にする』
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「……これ、なんだろうな?」
それは、王国の古塔の奥──《言葉を喰らう魔》を倒した部屋の隣にあった、ひとつの小瓶だった。
銀の細工が施された栓付きの香水瓶。形状は繊細で美しく、だが一目で“普通ではない”とわかる妖しさを纏っていた。
リリアが慎重に取り上げる。
「封印……じゃない。保存魔術? これは……香り?」
アリシアが目を細め、瓶の中の魔力を探ると、わずかに驚愕の表情を浮かべた。
「これは……成分的に“性差干渉系”……! 危険よ、絶対開けちゃ──」
──カチ。
「うわっ、ごめん!」
流星が、思わず手を滑らせた。
瓶の栓が開いた瞬間、部屋全体に甘く濃厚な香りが広がる。バニラと白檀、そこに淡くシトラスを乗せた香り。だがその奥には、どこか生々しい“フェロモン”のようなものがあった。
「っ……!?」
次の瞬間、流星の意識がぐらりと揺らぐ。
視界がぐにゃりと歪み、肌に柔らかい感覚。身体のバランスが変わり──胸元に、重量が。
「え?」
声が、自分のものとは思えないほど──高かった。
「お、おい……!? 俺、なんか、胸が……重いというか……」
リリアが目を見開き、アリシアは顔を真っ赤にした。
「……まさか、“性別反転香”!? 効果が、即効性すぎる……!」
流星は鏡を見た。そこには──
艶やかな黒髪が肩にかかり、くりっとした大きな瞳を持つ少女が立っていた。
見覚えのない美少女……だが、立ち姿や表情には、明らかに“流星らしさ”があった。
「おい、マジか……俺、女の子になってんじゃねぇか……!」
「…………ッ!」
リリアとミレーユは赤面して背を向けた。
アリシアは小声でブツブツと「この香り、性自認の脳波すら一時的に書き換える作用が……!」と、パニック気味に説明している。
だが──
「え、ええええ!? めっちゃアリじゃんコレ!!」
ヴァネッサがテンションを爆上げした。
「ちょっと流星、そっちの体でもう一回“添い寝訓練”してみよ? ていうかマジ可愛い、抱き心地確認してみ──」
「待て! やめろヴァネッサ!! これは事故だ! 一時的な事故なんだ!!」
「いやいや、性別が変わっても流星は流星だし、こういうのも新たな癒しの形というか……」
「おまえが一番“性別曖昧文化”に適応してるよッ!!」
騒動はしばらく続いた。
◆
結局、性別反転香の効果は“香りが体外に残っている限り”作用するものだった。
リリアの迅速な“魔力蒸散術”で香りを中和し、数時間後には流星は元の姿に戻った。
だがその間、彼の心には確かに“揺らぎ”があった。
「……不思議だった。男でも女でも、感情は同じで……でも、受け取り方はやっぱり変わる」
ベッドで横になりながら、流星はポツリとつぶやく。
「リリアたちが見てる“俺”って、やっぱ……男なんだよな」
その夜──
リリアは流星の隣で寝息を立てる彼を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「……それでもあたしは、アンタが“誰”でも、きっと好きになる気がするよ」
◆
翌朝。
村の香り司(文化省のような役割の長老)がこう語った。
「“性別”は姿であり、香りは心……本当に大事なのは、どちらでしょうな」
流星は、その言葉に答えられなかった。
だが確かに──
彼の胸には、言葉にできない“香りの記憶”が残っていた。
それは、王国の古塔の奥──《言葉を喰らう魔》を倒した部屋の隣にあった、ひとつの小瓶だった。
銀の細工が施された栓付きの香水瓶。形状は繊細で美しく、だが一目で“普通ではない”とわかる妖しさを纏っていた。
リリアが慎重に取り上げる。
「封印……じゃない。保存魔術? これは……香り?」
アリシアが目を細め、瓶の中の魔力を探ると、わずかに驚愕の表情を浮かべた。
「これは……成分的に“性差干渉系”……! 危険よ、絶対開けちゃ──」
──カチ。
「うわっ、ごめん!」
流星が、思わず手を滑らせた。
瓶の栓が開いた瞬間、部屋全体に甘く濃厚な香りが広がる。バニラと白檀、そこに淡くシトラスを乗せた香り。だがその奥には、どこか生々しい“フェロモン”のようなものがあった。
「っ……!?」
次の瞬間、流星の意識がぐらりと揺らぐ。
視界がぐにゃりと歪み、肌に柔らかい感覚。身体のバランスが変わり──胸元に、重量が。
「え?」
声が、自分のものとは思えないほど──高かった。
「お、おい……!? 俺、なんか、胸が……重いというか……」
リリアが目を見開き、アリシアは顔を真っ赤にした。
「……まさか、“性別反転香”!? 効果が、即効性すぎる……!」
流星は鏡を見た。そこには──
艶やかな黒髪が肩にかかり、くりっとした大きな瞳を持つ少女が立っていた。
見覚えのない美少女……だが、立ち姿や表情には、明らかに“流星らしさ”があった。
「おい、マジか……俺、女の子になってんじゃねぇか……!」
「…………ッ!」
リリアとミレーユは赤面して背を向けた。
アリシアは小声でブツブツと「この香り、性自認の脳波すら一時的に書き換える作用が……!」と、パニック気味に説明している。
だが──
「え、ええええ!? めっちゃアリじゃんコレ!!」
ヴァネッサがテンションを爆上げした。
「ちょっと流星、そっちの体でもう一回“添い寝訓練”してみよ? ていうかマジ可愛い、抱き心地確認してみ──」
「待て! やめろヴァネッサ!! これは事故だ! 一時的な事故なんだ!!」
「いやいや、性別が変わっても流星は流星だし、こういうのも新たな癒しの形というか……」
「おまえが一番“性別曖昧文化”に適応してるよッ!!」
騒動はしばらく続いた。
◆
結局、性別反転香の効果は“香りが体外に残っている限り”作用するものだった。
リリアの迅速な“魔力蒸散術”で香りを中和し、数時間後には流星は元の姿に戻った。
だがその間、彼の心には確かに“揺らぎ”があった。
「……不思議だった。男でも女でも、感情は同じで……でも、受け取り方はやっぱり変わる」
ベッドで横になりながら、流星はポツリとつぶやく。
「リリアたちが見てる“俺”って、やっぱ……男なんだよな」
その夜──
リリアは流星の隣で寝息を立てる彼を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「……それでもあたしは、アンタが“誰”でも、きっと好きになる気がするよ」
◆
翌朝。
村の香り司(文化省のような役割の長老)がこう語った。
「“性別”は姿であり、香りは心……本当に大事なのは、どちらでしょうな」
流星は、その言葉に答えられなかった。
だが確かに──
彼の胸には、言葉にできない“香りの記憶”が残っていた。
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