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『言葉を持たぬ国と、性別未確定の誘惑』編
第109話『無言の国、言葉を得る』
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──その朝、風が変わった。
まだ夜露が残る王都の街路に、ひとつ、またひとつと小さな“声”が灯り始める。
それはまるで、長く封じられていた湖が、ゆっくりと氷を溶かすような──
「おは……よう……」
「ありがとう、で……す」
それは、たどたどしくも、確かに意味を持った“言葉”だった。
民たちが口にする音は、まだ不安定で、時に滑らかでない。
だがそこには、確かに“想いを伝えたい”という強い意思があった。
◆
「……すごい。こんなにも早く……!」
王都の広場でその光景を見つめていたアリシアは、思わず感嘆の声を漏らした。
言葉という概念が希薄だったこの地に、わずか数日で“発音”が芽吹き始めている。
「言葉って……教えるものじゃないんだね」
リリアがぽつりと呟く。
「伝えたいって気持ちがあれば、勝手に溢れてくるもんなんだ」
その言葉に、流星も深く頷いた。
「……誰だって、本当は伝えたいことがあるんだよな」
「それが“好き”でも、“痛い”でも、“ありがとう”でも」
「伝え方が違うだけで、心は同じなんだ」
◆
街の一角にある学舎跡地では、早くも「言葉を学ぶ教室」が開かれていた。
教師を務めるのは、各国から集まった学者や魔術師、さらには──アリシアとミレーユ。
「これは、“おはよう”」
「香りの『朝の陽射し』と同じ意味ですね」
「そう、それを“言葉”で伝える方法よ」
一人ひとりに丁寧に言葉を教えるヒロインたち。
かつては言葉に頼らなかった民たちが、今では積極的に“発音”に挑んでいた。
──その変化を、王都の高台から見下ろしていたのは、国の王族代表だった。
無言の王国における王女《ナリア》は、微笑を浮かべながらこう呟いた。
「人とは、変われるのですね……想いさえあれば」
その言葉に、傍らにいた護衛が頷く。
「我らがずっと恐れてきた“争いの種”が、今や“絆の花”になろうとしている」
◆
午後──
ヒロインたちは街角のカフェで一息ついていた。
「ねえ、ねえ、ねえ!」と浮かれた声を上げたのは、言うまでもなくヴァネッサだ。
「流星! あんたに“王族からのお礼”だってさ! なんか香りの封筒、渡されてたでしょ?」
「……あー、これか」
流星が取り出したのは、薄桃色の香り立つ封筒。
開封すると、そこには小さく刻まれた文字と共に、甘く熟れたような香りが漂ってきた。
《貴殿の尽力に感謝する──夢の言語風俗《シンフォニア館》へ招待致します》
「夢の……言語風俗?」
アリシアが眉をひそめる。
「その言葉、矛盾してるようで、恐ろしく危険な香りがするわね……」
リリア:「てか、“夢”ってついた風俗でろくな目にあってないからな!?」
ミレーユ:「でも、“言葉を持たぬ国”に“言葉が芽吹いた”記念だと考えれば、文化的意義も──」
流星:「文化的に全裸で混浴してたくせに、今さら言葉で誤魔化すのやめろぉ!!」
──だが、香りは確かに訴えていた。
それは、快楽のためだけではない。
心を通わせるために、言葉と香りが融合した“究極の癒し”がそこにあると。
「行くしかないよな……俺たちの旅は、“癒しの真理”を追い求める旅なんだから」
流星が、かつてないほど真剣な表情で言った。
するとリリアは、おもむろにその額をチョップした。
「その“真理”とやらを、もうちょっと煩悩から離した説明はできないのか!」
まだ夜露が残る王都の街路に、ひとつ、またひとつと小さな“声”が灯り始める。
それはまるで、長く封じられていた湖が、ゆっくりと氷を溶かすような──
「おは……よう……」
「ありがとう、で……す」
それは、たどたどしくも、確かに意味を持った“言葉”だった。
民たちが口にする音は、まだ不安定で、時に滑らかでない。
だがそこには、確かに“想いを伝えたい”という強い意思があった。
◆
「……すごい。こんなにも早く……!」
王都の広場でその光景を見つめていたアリシアは、思わず感嘆の声を漏らした。
言葉という概念が希薄だったこの地に、わずか数日で“発音”が芽吹き始めている。
「言葉って……教えるものじゃないんだね」
リリアがぽつりと呟く。
「伝えたいって気持ちがあれば、勝手に溢れてくるもんなんだ」
その言葉に、流星も深く頷いた。
「……誰だって、本当は伝えたいことがあるんだよな」
「それが“好き”でも、“痛い”でも、“ありがとう”でも」
「伝え方が違うだけで、心は同じなんだ」
◆
街の一角にある学舎跡地では、早くも「言葉を学ぶ教室」が開かれていた。
教師を務めるのは、各国から集まった学者や魔術師、さらには──アリシアとミレーユ。
「これは、“おはよう”」
「香りの『朝の陽射し』と同じ意味ですね」
「そう、それを“言葉”で伝える方法よ」
一人ひとりに丁寧に言葉を教えるヒロインたち。
かつては言葉に頼らなかった民たちが、今では積極的に“発音”に挑んでいた。
──その変化を、王都の高台から見下ろしていたのは、国の王族代表だった。
無言の王国における王女《ナリア》は、微笑を浮かべながらこう呟いた。
「人とは、変われるのですね……想いさえあれば」
その言葉に、傍らにいた護衛が頷く。
「我らがずっと恐れてきた“争いの種”が、今や“絆の花”になろうとしている」
◆
午後──
ヒロインたちは街角のカフェで一息ついていた。
「ねえ、ねえ、ねえ!」と浮かれた声を上げたのは、言うまでもなくヴァネッサだ。
「流星! あんたに“王族からのお礼”だってさ! なんか香りの封筒、渡されてたでしょ?」
「……あー、これか」
流星が取り出したのは、薄桃色の香り立つ封筒。
開封すると、そこには小さく刻まれた文字と共に、甘く熟れたような香りが漂ってきた。
《貴殿の尽力に感謝する──夢の言語風俗《シンフォニア館》へ招待致します》
「夢の……言語風俗?」
アリシアが眉をひそめる。
「その言葉、矛盾してるようで、恐ろしく危険な香りがするわね……」
リリア:「てか、“夢”ってついた風俗でろくな目にあってないからな!?」
ミレーユ:「でも、“言葉を持たぬ国”に“言葉が芽吹いた”記念だと考えれば、文化的意義も──」
流星:「文化的に全裸で混浴してたくせに、今さら言葉で誤魔化すのやめろぉ!!」
──だが、香りは確かに訴えていた。
それは、快楽のためだけではない。
心を通わせるために、言葉と香りが融合した“究極の癒し”がそこにあると。
「行くしかないよな……俺たちの旅は、“癒しの真理”を追い求める旅なんだから」
流星が、かつてないほど真剣な表情で言った。
するとリリアは、おもむろにその額をチョップした。
「その“真理”とやらを、もうちょっと煩悩から離した説明はできないのか!」
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