異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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《風俗を巡る星の海──北の精霊郷と、封じられた記憶編》

第121話『氷雪の便り──北方より風俗緊急調査依頼!』

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 異世界に転生してからというもの、俺──常盤流星の人生は、戦と風俗のあいだを漂い続けている。

「風俗は逃避じゃない、魂の救済だ」

 その信念のもと、ゴブリンもオークも淫魔もぶっ飛ばし、稼いだ金で“癒しの館”に通い続けて早一年。だが、この世界における“癒し”の文化が、時に国家と宗教の禁忌に触れるということは、最近になってようやく理解できてきた。

 そんなある日──

「……セレイナからの急報です。風俗店が、“消された”と」

 ギルドの作戦室。ミレーユの手元にあるのは、寒冷地・北方精霊郷《セレイナ》の文書だった。

「消された……?」

「ええ。“神殿の怒りに触れ、存在そのものが霧散した”と。現地の風俗店、《癒し処・雪見亭》が、昨夜突如として跡形もなく消えたそうです」

「待って、あの店……前にヴァネッサと行こうとして、俺が風邪ひいてキャンセルしたところじゃ……」

「その“癒し処”が──神殿の怒りに触れた?」

 アリシアが眉をひそめ、椅子から身を乗り出す。彼女は“理性派”の魔術士、風俗文化に未だ完全には馴染めていないが、いまはこの騒ぎに科学者としての興味が勝っているらしい。

「セレイナは精霊信仰の色濃い自治領。とくに“肉体的快楽”に関しては古来より慎重な態度を取っていた。にも関わらず、癒しの館が建っていたのは……」

「つまり、見逃されてたのか。あるいは、何かと交換に“目を瞑って”もらってたってことか?」

 ミレーユは静かに頷く。

「私は……かつて、セレイナの香術研究院に留学していたの。あそこは、“香りによる記憶と感情の操作”を禁術とする独自の教義を持っていたわ。なのに──その香りを活用する風俗店が存在していた。それは矛盾であり、隠された歴史の始まりでもある」

「つまり?」

「つまり──私の過去にも、セレイナの禁忌は絡んでいるかもしれない、ということよ」

 *

 一行はすぐさま準備を整え、北の大陸へ向かう転移魔法陣に身を投じた。

 セレイナは“氷の精霊”が住むとされる北端の閉鎖地域。年の三分の二が雪と霧に包まれ、太陽を仰ぐ日は数えるほどしかない。

 吹雪に包まれた山間に浮かぶようにして建つ《星霜の都》。精霊術と香術、そして禁忌の儀式が交差するこの地は、風俗文化とは最も縁遠いとされていた──はずだった。

 だが、雪に埋もれた旧市街の一角で、確かにその痕跡はあった。

「……ここが《雪見亭》の跡地……」

 アリシアの魔力探査により、建物の基礎にあたる魔法陣の痕跡、香の結界の残滓、そして“記憶干渉香”の残留素子が検出された。

「完全に……“記録ごと”消されてる。これは……禁忌術だわ」

「つまり、セレイナ神殿側が、記録改竄系の香術を使って、“風俗店など最初から存在しなかった”ってことにしたわけか」

 リリアが眉をしかめる。

「そんなバカな話が……通ってた客たちは?」

「夢だったと思い込まされてるわね。香術による記憶の重層書き換え──やろうと思えば、人間の過去の一部を“雪”のように覆い隠すことができる。……けれど、それは取り返しのつかない罪よ」

 ミレーユの声には、微かな震えが混じっていた。

「もしかして……前に君が“香術研究院”を突然退学したのって……」

「ええ、あのとき。研究対象だった香が、“記憶を消す”ことではなく“記憶を呼び覚ます”香だったの。私は……研究を進めたくて、でも、周囲は許さなかった。“忘れることこそが癒しだ”と、皆が言った。……でも私は、違うと思った」

 流星は、彼女の横顔を見つめながら、静かに頷いた。

「忘れる癒しと、思い出す癒し。どっちも必要なんじゃないか?」

「……そうね。でも、セレイナは、未だに“忘れる”ことしか認めていない。快楽も、記憶も、香も──すべてを消すことが正義だと信じてる。ならば、私はもう一度──あの香に、向き合う覚悟を決めなければならないの」

 *

 夜。吹雪の止まぬ旧市街を抜け、一行は《雪精霊の祭壇》へと向かった。

 そこはかつて、精霊術と香術が交差する儀式の中心であり、“感覚の祈り”と呼ばれる神秘的な儀式が行われていた場所。いまでは神殿管理下にあり、外部の立ち入りは厳しく制限されている。

 ──だが、リリアの剣とアリシアの幻影魔術があれば、そんな障壁など紙くず同然。

「……ここよ。私が、最後に調香した香炉が、まだ残ってるかもしれない」

 ミレーユが手をかざすと、石造りの壇上からわずかに反応が返る。

 香炉の封印が解かれた瞬間、空気に溶けるように広がったのは──

 懐かしさと、胸がしめつけられるような寂しさが同時に漂う、ほのかな香り。

「……この香り……」

 リリアが息をのむ。

 アリシアが、目を伏せて小さくつぶやいた。

「“記憶を呼び戻す香”……これが……?」

 流星の脳裏にも、不意に浮かぶ映像があった。

 ──幼い少女が、雪の中で誰かを待っている姿。

 ──その手に握られた、半分だけ溶けたキャンディ。

 ──“約束したでしょ。癒しって、忘れないことだって──”

「これって……ミレーユの記憶……?」

「いいえ──これは、私が封じた“誰かの記憶”。たぶん、この街の誰かが……私に、救いを求めていたの。でも、私は……研究院に従って、それを封印してしまった」

 ミレーユは、香炉をそっと胸に抱きしめた。

「ごめんなさい。私は……もう一度、癒しって何かを考え直す」

 流星は静かに彼女の肩に手を置く。

「ミレーユ。忘れる癒しも、覚えている癒しも、どっちもあっていい。だけど──どっちかしか認めないやつに、俺は癒されねぇ」

「ふふ……やっぱり、あなたってバカ。でも、ありがとう」

 吹雪の中、香の香りがほんの少しだけ、雪を溶かしていくように感じられた。

 ──次なる真実へ、一行は、雪の都を踏み出す。
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