異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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《欲望の女王と、快楽の均衡戦線(バランス・オブ・デザイア)》

第133話『エイリーンの真意──“過去の癒し”』

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 夜の帳が下り、淫魔王国アストラシアの空には濃紺の星が散っていた。
 静寂が世界を包む中、王宮の中枢、黄金の回廊に足音が一つ、二つ──

「……来ましたのね」

 声の主は、女王エイリーン=アストラシア。

 肌に滑るような黒と紫のドレス、長くなびく白銀の髪。
 だが、その美貌の奥にある“何か”は、どこか揺れていた。

「話がある。って言われたからな」

 流星は、控えめに距離をとって立つ。

「俺を“快楽試練”にかける前に、わざわざこんな“落ち着きすぎた部屋”に呼ぶとか、なんかフラグくせぇんだけど」

「ふふ。煩悩の勇者様、予感は鋭いのですわね」

 エイリーンは小さく笑うと、ゆっくりと壁際の椅子に腰を下ろした。

「ここは、私が子供のころ、最初に“感情”というものを知った部屋ですの。
 ……家族の、笑顔も涙も知らずに育った私にとって、ここだけが“記憶の場所”」

「……感情を教えられなかったってことか」

「淫魔族の王族は、生まれながらにして“快楽で支配する存在”と教えられます。
 感情を持つことは、弱さ。愛することは、敗北。触れることは、利用」

「つまり……お前はずっと、“愛されたことがなかった”んだな」

 静かに、沈黙が落ちた。

「……誰も、私を“私として”抱いたことはありませんでした。
 王として、女として、器として。
 ……でも、あなたは違ったのですわ」

 流星は、かすかに目を細めた。

「前に、あんたと一緒に施術受けたとき……」

「あのとき、あなたは……私に“触れた”だけで、何も求めなかった。
 むしろ、“欲望のままに流れるな”と、私を突き放した」

 エイリーンの目が、揺れた。

「あなたが、“私の快楽”を否定したから──私は、崩れたのです」

「……」

「私は、支配されるべきではないと思っていた。
 快楽の在り方は、私が決めるものだと。
 でも……あなたは、“自分で選べ”と言った」

 その言葉が、今も胸に刺さっているのだ、と。

「だから私は、“私だけの癒し”を手に入れたかった。あなたの手で、“正解”を得たかった」

「……でも、癒しってのは、もらうもんじゃねぇよ」

 流星は、ため息をついて言った。

「自分で見つけて、誰かと分かち合って、“ああ……これが俺の道だ”って思えるもんだ」

「だから……私はあなたに試練を課したのですわ。
 あなたが“私を癒す”ために、必ず来ると信じて──
 でも今は……もう、分かりました」

 エイリーンはそっと、彼の手を取った。

 ──かつてと同じ、ぬくもり。

「……その手のひらに、“欲望”がないから、私は……怖かった」

「怖いって?」

「初めて、支配できなかったから。
 でも──それが、唯一“私として”触れられた瞬間だった」

 *

 回廊に、静かな風が吹く。

 外では、淫魔官たちが準備を整え、“第二夜”の快楽試練が始まろうとしていた。

 だがその前に──

 エイリーンは最後の問いを投げかけた。

「常盤流星。あなたが私に教えてくれた“選ぶ快楽”──
 それは、本当に……誰かを癒せるのですの?」

 流星は迷わず、うなずいた。

「お前がそれを信じるなら、もう“誰かの指標”になんか頼らなくていい」

「……ありがとう、流星様」

 微笑んだその表情は、女王ではなく──ひとりの、ひとを愛した女のものだった。

 *

 その直後、廊下を駆けてくる声が響いた。

「流星ーッ!! お前何してんだ!!」

 リリア、ヴァネッサ、アリシア、ミレーユ、アストレア──勢ぞろい。

「何よこの空気! まさかまた王族口説いてたの!?」

「いや誤解だ誤解だ!! 今回は逆に相談されてただけで──」

「“今回”って何よ、“また”って言ってるじゃないの!!」

「えええええええええ!?」

 ──ガチ説教タイム、再び勃発。

 エイリーンはその様子を、やや哀しげに、けれど確かに笑って見ていた。

「……ふふ。これが、選ばれた快楽。選び合う癒し、ですのね」

 かつて女王だった者が、ようやく“ひとりの女”として、微笑んだ瞬間だった。
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