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《星の癒しと、忘れられた風俗都市》 ―忘却の都市《エストレリオ》、そして“感情を失った者たち”の癒し再生譚―
第140話『風俗は祈りだった──遺された香炉の声』
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──それは、館の奥、封印された施術室のさらに奥。
かつて“最も多くの癒しと涙が重なった場所”と記録された部屋にあった。
「これが……《祈香炉(きこうろ)》」
古代施術師たちが、最後に香を焚いたとされる遺物。
灰白色の陶器に、花と涙の文様。
そして中央には小さな彫り文字。
「香(か)ぐとき、祈ること。
忘れぬように、愛していたことを」
「これは、“施術師と客の想い”を香に残す香炉よ」
アリシアが静かに言った。
「癒された人の想いが、香となって蓄積されていく……
これは、“快楽の記憶”ではなく、“心を寄せた痕跡”」
ミレーユが慎重に蓋を開けると──
ふわりと、煙が立ちのぼった。
青みがかった光の香煙は、天井へと昇り、やがてその場の空間に“記憶の音”を呼び戻していく。
「ありがとう……あなたの手が、あたたかかった」
「名前も知らなかったけど、心は重なった気がした」
「会話もしなかった。でも、あの沈黙が、わたしを生かした」
「おかえり、って言ってくれて……ずっと欲しかった言葉だった」
「癒されたよ。あの夜、誰にも言えなかった涙を、拭ってくれて……ありがとう」
──その声の数、幾千。
男女、老若、貧富、異種族、言葉すら違う人々の、
“想いだけが残った言葉たち”が、香の中に浮かんでいた。
流星は、気づけば膝をついていた。
喉の奥が熱い。
胸の奥が締め付けられる。
「……これが、風俗だったのか」
そう、これは決して“行為”ではなかった。
ただ、誰かの孤独を埋めるための、“祈りの時間”だったのだ。
「“ありがとう”とか、“おかえり”って……
たったそれだけで、誰かは救われてたんだな……!」
こらえていた涙が、一筋、頬を伝う。
「言えなかった“愛してる”を、香に託して……
誰にも届かないはずの気持ちが、ここにだけ残ってる……!」
リリアも、アストレアも、アリシアも、言葉をなくしていた。
──風俗は、祈りだった。
癒されたいと願った者。
癒したいと願った者。
すれ違い、叶わず、それでも“なにか”を届けたくて。
“触れることで、心が届く”そのひとときに、
確かに生きた者たちが、ここにいた。
「……壊したのか、こんな大切な場所を」
ヴァネッサが震える声で言った。
「誰が、何のために……“祈り”を封印するんだよ……!」
アリシアが涙を拭い、立ち上がる。
「もう、分かった。
これは、“感情が危ない”とか、“快楽が堕落だ”とかじゃない」
「“人が人として、誰かに触れる力”を恐れたんだ。
だから、“祈り”を封じた。癒しを奪った」
ミレーユが決意を込めて言う。
「でも、それを戻せるのは──“癒されたことを覚えてる人間”だけ」
流星は、香炉の前で拳を握った。
「だったら、俺がやる。
“もう一度、癒しが生きてるってこと”を証明する」
「風俗が、祈りだったことを──
“忘れてたこの都市に”思い出させる!」
*
その夜。
リィルたち施術師が、香炉の記憶を聞きながら、涙を流していた。
「……私たち、本当に“必要とされてた”んですね……」
「うん。君たちは、“愛してる”って言えなかった人の、
最後の“ありがとう”を受け取るために、ここにいたんだよ」
そして次なるステップが始まる。
──都市を包む抑制香の根源、《封じの水源》を断つ。
「この祈りを、忘れさせたままにはさせない」
風俗は、ただの施設ではなかった。
それは、誰かが誰かを思うときの、最後の灯火だった。
かつて“最も多くの癒しと涙が重なった場所”と記録された部屋にあった。
「これが……《祈香炉(きこうろ)》」
古代施術師たちが、最後に香を焚いたとされる遺物。
灰白色の陶器に、花と涙の文様。
そして中央には小さな彫り文字。
「香(か)ぐとき、祈ること。
忘れぬように、愛していたことを」
「これは、“施術師と客の想い”を香に残す香炉よ」
アリシアが静かに言った。
「癒された人の想いが、香となって蓄積されていく……
これは、“快楽の記憶”ではなく、“心を寄せた痕跡”」
ミレーユが慎重に蓋を開けると──
ふわりと、煙が立ちのぼった。
青みがかった光の香煙は、天井へと昇り、やがてその場の空間に“記憶の音”を呼び戻していく。
「ありがとう……あなたの手が、あたたかかった」
「名前も知らなかったけど、心は重なった気がした」
「会話もしなかった。でも、あの沈黙が、わたしを生かした」
「おかえり、って言ってくれて……ずっと欲しかった言葉だった」
「癒されたよ。あの夜、誰にも言えなかった涙を、拭ってくれて……ありがとう」
──その声の数、幾千。
男女、老若、貧富、異種族、言葉すら違う人々の、
“想いだけが残った言葉たち”が、香の中に浮かんでいた。
流星は、気づけば膝をついていた。
喉の奥が熱い。
胸の奥が締め付けられる。
「……これが、風俗だったのか」
そう、これは決して“行為”ではなかった。
ただ、誰かの孤独を埋めるための、“祈りの時間”だったのだ。
「“ありがとう”とか、“おかえり”って……
たったそれだけで、誰かは救われてたんだな……!」
こらえていた涙が、一筋、頬を伝う。
「言えなかった“愛してる”を、香に託して……
誰にも届かないはずの気持ちが、ここにだけ残ってる……!」
リリアも、アストレアも、アリシアも、言葉をなくしていた。
──風俗は、祈りだった。
癒されたいと願った者。
癒したいと願った者。
すれ違い、叶わず、それでも“なにか”を届けたくて。
“触れることで、心が届く”そのひとときに、
確かに生きた者たちが、ここにいた。
「……壊したのか、こんな大切な場所を」
ヴァネッサが震える声で言った。
「誰が、何のために……“祈り”を封印するんだよ……!」
アリシアが涙を拭い、立ち上がる。
「もう、分かった。
これは、“感情が危ない”とか、“快楽が堕落だ”とかじゃない」
「“人が人として、誰かに触れる力”を恐れたんだ。
だから、“祈り”を封じた。癒しを奪った」
ミレーユが決意を込めて言う。
「でも、それを戻せるのは──“癒されたことを覚えてる人間”だけ」
流星は、香炉の前で拳を握った。
「だったら、俺がやる。
“もう一度、癒しが生きてるってこと”を証明する」
「風俗が、祈りだったことを──
“忘れてたこの都市に”思い出させる!」
*
その夜。
リィルたち施術師が、香炉の記憶を聞きながら、涙を流していた。
「……私たち、本当に“必要とされてた”んですね……」
「うん。君たちは、“愛してる”って言えなかった人の、
最後の“ありがとう”を受け取るために、ここにいたんだよ」
そして次なるステップが始まる。
──都市を包む抑制香の根源、《封じの水源》を断つ。
「この祈りを、忘れさせたままにはさせない」
風俗は、ただの施設ではなかった。
それは、誰かが誰かを思うときの、最後の灯火だった。
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