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《楽園の夢と、風俗の彼方へ》 ――「癒し」が罪とされた楽園に、風俗勇者が踏み込む時
第145話『清浄法典と、抱擁の記録』
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「“肌の接触は神罰”、
“香は堕落の源”、
“感情は、神のみに許されし営為”……」
アリシアが静かに読み上げた。
《清浄法典・第七改訂版》――
それは《ルメア・ヴァスティア》の中枢に据えられた、戒律都市の基盤たる書。
「どこかの宗教国家よりヤバいじゃんコレ……」
リリアが眉をひそめる。
「完全に“感情の死”を理想化してるわね」
「触れること、香ること、名前を呼ぶこと……
それらがすべて、“誘惑”や“崩壊の前兆”と定義されてる」
ヴァネッサがページをめくると、焚書リストが現れる。
【削除指定記録】
・香施療・回想風俗技術書(天使施術記録群)
・快楽による祝福再生論(感覚詠唱派論文)
・“祝福の夜(通称:天界風俗詩篇)”
「全部、“癒し”と“風俗”に関連する記録だ」
流星が言う。
「つまり、この都市……もともと“快楽による癒し”が根づいてたんだな」
「それを、全部焼き捨てたのか」
「“理想の都市”を維持するために、“感情そのもの”を切り捨てて」
「……おかしいですよね」
小さな声がした。
誰もが振り返る。
そこには、白い衣の裾を握りしめたまま、震えるリヴィアがいた。
「私は、あなたたちと“手をつないだ”だけで、
この街の法において“異端者”として記録されました」
「でも……私は、あのとき――とても、あたたかかった」
「罰とか、神の怒りなんかじゃなかった」
彼女の声は、震えていた。
「なのに、それが“罪”だとしたら……この都市は、
“神様を、使って隠れているだけ”じゃないですか……!」
アリシアがそっと肩に触れる。
「リヴィア……」
「私は……知りたい。
この都市が、なにを恐れて癒しを葬ったのか」
「なら、案内してくれるか?」
流星が訊いた。
「その答えがある場所に」
リヴィアは、静かに頷いた。
「……地下、です。
この都市の下層……かつて《神の手》と呼ばれた場所に、
今は封印された“香と記録の祭器庫”が眠っています」
「じゃあ、行こう」
流星は軽く拳を握った。
「本当の“神罰”が何か、見せてもらうとするか」
*
《香祭器庫》――
そこは、かつて癒しの天使たちが施術に使っていた香炉・記録石・香布など、
香にまつわる儀礼器を保管していた“神殿下層”の封鎖領域だった。
「ここが……“忘れられた快楽の祈り”か」
扉は封印結界で封じられていたが、
リヴィアが自らの手で“祈りの封環”を解き、静かに扉を開けた。
──そこは、時間が止まった空間だった。
埃をかぶった香炉たち。
香の記録布。
古びた施術マニュアルと、微かに残る感情香の香り。
「……すごい。全部、“祈りを伝えるため”に作られたものだ」
ミレーユが震える手で香布を開くと、そこには筆記体の刺繍が残っていた。
「おかえりって言えた夜。
私は、初めて“誰かの世界”に存在できた気がした」
「誰かの“抱擁の記録”……」
アリシアが、涙をこらえるように言った。
そして、部屋の奥には一基の祭壇。
その上には、光を灯さぬ香炉――だが、ふたを開けた瞬間。
ふわり、と香が流れた。
記憶ではない。
映像でもない。
ただ、**“誰かに抱きしめられたあの日の香り”**が、そこに在った。
「……これが、“罪”だったのかよ」
流星が、涙をこらえるように呟く。
「誰かを抱きしめたい、って思う気持ちが、
なんでこんなにも深く、封じられなきゃならなかったんだよ……」
そのとき、リヴィアが一歩、祭壇に近づいた。
「私は……もう一度、信じたいです。
癒しは、“神の怒り”じゃない。
誰かと共に在りたいって思うことは、きっと……祝福なんです」
その言葉と共に、香が舞った。
それは都市に、わずかな“揺らぎ”をもたらす風だった。
“香は堕落の源”、
“感情は、神のみに許されし営為”……」
アリシアが静かに読み上げた。
《清浄法典・第七改訂版》――
それは《ルメア・ヴァスティア》の中枢に据えられた、戒律都市の基盤たる書。
「どこかの宗教国家よりヤバいじゃんコレ……」
リリアが眉をひそめる。
「完全に“感情の死”を理想化してるわね」
「触れること、香ること、名前を呼ぶこと……
それらがすべて、“誘惑”や“崩壊の前兆”と定義されてる」
ヴァネッサがページをめくると、焚書リストが現れる。
【削除指定記録】
・香施療・回想風俗技術書(天使施術記録群)
・快楽による祝福再生論(感覚詠唱派論文)
・“祝福の夜(通称:天界風俗詩篇)”
「全部、“癒し”と“風俗”に関連する記録だ」
流星が言う。
「つまり、この都市……もともと“快楽による癒し”が根づいてたんだな」
「それを、全部焼き捨てたのか」
「“理想の都市”を維持するために、“感情そのもの”を切り捨てて」
「……おかしいですよね」
小さな声がした。
誰もが振り返る。
そこには、白い衣の裾を握りしめたまま、震えるリヴィアがいた。
「私は、あなたたちと“手をつないだ”だけで、
この街の法において“異端者”として記録されました」
「でも……私は、あのとき――とても、あたたかかった」
「罰とか、神の怒りなんかじゃなかった」
彼女の声は、震えていた。
「なのに、それが“罪”だとしたら……この都市は、
“神様を、使って隠れているだけ”じゃないですか……!」
アリシアがそっと肩に触れる。
「リヴィア……」
「私は……知りたい。
この都市が、なにを恐れて癒しを葬ったのか」
「なら、案内してくれるか?」
流星が訊いた。
「その答えがある場所に」
リヴィアは、静かに頷いた。
「……地下、です。
この都市の下層……かつて《神の手》と呼ばれた場所に、
今は封印された“香と記録の祭器庫”が眠っています」
「じゃあ、行こう」
流星は軽く拳を握った。
「本当の“神罰”が何か、見せてもらうとするか」
*
《香祭器庫》――
そこは、かつて癒しの天使たちが施術に使っていた香炉・記録石・香布など、
香にまつわる儀礼器を保管していた“神殿下層”の封鎖領域だった。
「ここが……“忘れられた快楽の祈り”か」
扉は封印結界で封じられていたが、
リヴィアが自らの手で“祈りの封環”を解き、静かに扉を開けた。
──そこは、時間が止まった空間だった。
埃をかぶった香炉たち。
香の記録布。
古びた施術マニュアルと、微かに残る感情香の香り。
「……すごい。全部、“祈りを伝えるため”に作られたものだ」
ミレーユが震える手で香布を開くと、そこには筆記体の刺繍が残っていた。
「おかえりって言えた夜。
私は、初めて“誰かの世界”に存在できた気がした」
「誰かの“抱擁の記録”……」
アリシアが、涙をこらえるように言った。
そして、部屋の奥には一基の祭壇。
その上には、光を灯さぬ香炉――だが、ふたを開けた瞬間。
ふわり、と香が流れた。
記憶ではない。
映像でもない。
ただ、**“誰かに抱きしめられたあの日の香り”**が、そこに在った。
「……これが、“罪”だったのかよ」
流星が、涙をこらえるように呟く。
「誰かを抱きしめたい、って思う気持ちが、
なんでこんなにも深く、封じられなきゃならなかったんだよ……」
そのとき、リヴィアが一歩、祭壇に近づいた。
「私は……もう一度、信じたいです。
癒しは、“神の怒り”じゃない。
誰かと共に在りたいって思うことは、きっと……祝福なんです」
その言葉と共に、香が舞った。
それは都市に、わずかな“揺らぎ”をもたらす風だった。
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