異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
163 / 228
《楽園の夢と、風俗の彼方へ》 ――「癒し」が罪とされた楽園に、風俗勇者が踏み込む時

第147話『欲望の泉、再び流れる』

しおりを挟む
 ──深夜、空が黒曜のように澄んでいた。

 都市《ルメア・ヴァスティア》の中心部。
 その最奥に、天に向かってそびえる白柱があった。

 《感情制御柱》

 都市の心臓にして、根源。

 五本の柱が都市全体の情動波を制御し、住民の感情を最小限に抑え込む、いわば“都市の理性装置”。

 そのうちの一本が──

 ついに、崩れた。

 ガシャン、と何かが割れるような音が響いた直後、
 広場の中央に立っていた制御柱の一角が、ゆっくりと倒壊し始める。

「第三区感情律反応域、制御不能! 波動が急上昇しています!」

「感情値が……暴走!? 巫女たちの表情が……!」

 ──都市は震えた。

 *

 同時刻。
 神聖礼拝院・巫女区画。

 白衣の少女たちが、静かに口元を押さえていた。

「っ……どうして、涙が出るんですか……?」

「痛いわけでも、苦しいわけでもないのに……目から……」

 それは、何の刺激もない場所で起きた“集団感情回帰現象”だった。

 数十人の巫女たちが、同時に“理由のない涙”を流し始める。

「身体が、あたたかくなって……でも、止まらなくて……」

 その場に居合わせた医務官すら、涙をぬぐいながら混乱していた。

 *

 巫女団長――イリア=ルクレアは、
 この“異常事態”の報告を受けて、ただ一人でその原因の元へと向かった。

 目的地は、香祭器庫。

 そこには、忌むべき記録を解き放ち、“制御の均衡”を揺るがした人物がいた。

「……貴様か。常盤流星」

 彼女の声は冷たかった。
 だがその瞳の奥には、明確な“揺らぎ”があった。

「都市を歪ませ、巫女たちを混乱に陥れた張本人……
 それが貴様だと、私は報告を受けている」

「まあ、そうなるな」

 流星はあっさりと頷いた。

「でもよ、そもそも“誰のせい”かって話なら、
 “泣くことが異常”なこの都市の方が、おかしくねぇか?」

 イリアの眉が、わずかに動いた。

「……泣くことは、制御不能の兆候。
 感情は暴走を招く。だからこそ私たちは、清浄を保ってきた」

「感情ってのは、暴走の道具じゃねぇ」

 流星は、香の残る手帳を見せる。

「誰かを助けたい、抱きしめたい、そばにいてほしい――
 そう思えたからこそ、人は生きてこれた」

「それを“抑える”ことが、果たして清浄なのか?」

「……お前たちの癒しは、堕落じゃないのか?」

 イリアが返す。

「香で惑わせ、肌で依存させ、情で縛る。
 その先に何がある? 感情の氾濫か? 欲望の泥沼か?」

「違う」

 流星は、目を逸らさずに言い切った。

「その先には、“選ばれた想い”がある」

「誰かを好きだって思うのは、
 その人が“選びたかった気持ち”だからだ」

「俺は、ただ“選べる癒し”を返しに来ただけだよ」

 沈黙。

 香の残り香が、わずかに空気を揺らす。

「……私は、分からない」

 イリアが静かに言った。

「救いを求めることと、欲望に堕ちることの境界が。
 泣いて笑って、誰かを抱きしめることが、
 本当に“生きること”なのか」

「なら、一緒に泣いてみればいい」

 流星の声は優しかった。

「そしたら、“なぜ涙が出るのか”分かるかもしれない」

 イリアは黙ったまま、その場を去っていった。

 ──だが、その背中は、
 都市の中で初めて、“立ち止まった理性”に見えた。

 *

 その夜、都市の“感情制御柱”の破片に触れた巫女の一人が、日記にこう記した。

「私は、今日、名前を呼ばれて泣きました。
 なぜ涙が出るのかは、まだ分かりません。
 でも、誰かに手を握られて、それが嬉しかった。
 それだけで、胸があたたかくなりました」

 ──欲望は、罪ではなかった。

 それは、誰かと生きるための“泉”だった。

 その泉が、都市を再び満たし始めている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」

銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の 一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の 関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事 を裏でしていた。ある日のこと学校を 出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ こりゃーと思っていると、女神(駄)が 現れ異世界に転移されていた。魔王を 倒してほしんですか?いえ違います。 失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな! さっさと元の世界に帰せ‼ これは運悪く異世界に飛ばされた青年が 仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの と商売をして暮らしているところで、 様々な事件に巻き込まれながらも、この 世界に来て手に入れたスキル『書道神級』 の力で無双し敵をバッタバッタと倒し 解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに 巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、 時には面白く敵を倒して(笑える)いつの 間にか世界を救う話です。

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

処理中です...