異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
189 / 228
《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?

第172話『覚えていても、届かない──夢の愛の不在』

しおりを挟む
 ──人は夢を見たまま、現実に帰れなくなることがある。

 それが幸福なら、なおさらだ。

 *

「……あなたに、現実で会った覚えはありません」

 その女性は、香庁の尋問室でそう答えた。

「けれど、私は“彼”の声を覚えています。
 優しくて、低くて、背中を撫でるときに必ず『だいじょうぶだよ』って囁いてくれた。
 あの声があったから、私は──生きていられるんです」

「彼って誰ですか?」

 アリシアの問いに、彼女は静かに笑う。

「わかりません。
 でも、彼はたしかに“私のことを好きだ”と言ってくれた」

「……現実では?」

「現実? そんなの、どうでもいいです。
 私には、夢で愛された記憶があるんですから。
 “そこ”でだけ、私は愛されていたんですから……」

 *

「完全に依存状態ですね」

 診断を終えた香庁医師が、重く言う。

「この方は施術を何度も繰り返すうちに、
 “夢で愛された記憶”を現実以上の幸福と認識してしまった。
 現実の対人関係をすべて遮断し、
 香と眠りだけを求めるようになっています」

「これ……もう“癒し”じゃないよね」

 ミレーユが呻くように言った。

「“愛された”って記憶だけで、現実に触れられなくなるなんて──
 癒すどころか、“孤立を固定化”してる」

「けれど、“施術者は何もしていない”。
 記録も、接触も、現実的な責任もゼロ」

 リリアが静かに補足する。

「つまりこの都市では、
 “現実に存在しない者に愛される”という構造そのものが、
 人の心を壊しうるシステムになってるの」

 *

 その日、都市中央にある“夢接触者相談所”には、
 依存症と診断された患者が続々と運び込まれていた。

「誰かに会いたいんです」
「でも、顔が思い出せない」
「声だけが、夜ごと耳に残るんです」
「現実に誰かを愛する必要がない。だって、夢の中には“あの人”がいるから」

 その表情には、恐怖はなかった。

 あるのは、微笑みと、諦念。

「癒されたから、私はもう大丈夫です」
「誰にも触れなくていい。もう、夢の中だけで、生きていけるから」

 *

「……これが“癒し”の果てかよ」

 流星は屋上の香台に腰を下ろし、重い声でつぶやいた。

「記録がない施術。
 記憶だけの快楽。
 愛されたという“温もりの感触”だけが、現実に残る」

「でも、それは──誰にも届かない」

 アリシアがそっと横に立つ。

「癒されたという記憶は、彼女たちにとって真実。
 けれど、“誰に”癒されたかが存在しない以上、
 その感謝も、想いも、どこにも返せない」

「……一方通行なんだな」

 流星は小さく笑った。

「“ありがとう”を言えない癒しなんて、
 いつか“誰かを憎む心”にすり替わる気がする」

「どうしてあの人はいなかったの?
 どうして名前を教えてくれなかったの?
 どうして私は、夢の中でしか愛されなかったの?──ってさ」

「……きっと、全部“愛された証”がなかったからだ」

 そのとき。

 背後から香風が舞い、白い衣をまとった少女が現れた。

「……ごめんなさい」

 それは、ソティアだった。

「……わたしの“癒し”が、誰かを壊してた」

「わたし、“愛してた”つもりだった。
 でも──“名前を名乗らないままの愛”が、
 こんなに誰かを孤独にするなんて、思ってなかった」

「ソティア……」

「……わたし、今からあなたにだけお願いする。
 どうか……
 “わたしの名前を残して”」

「誰かを愛した証を、
 夢じゃなくて、現実に、記録して」

「わたしは、もう“誰にも覚えられない癒し”じゃいたくない」

 流星は、すぐに答えた。

「わかった。
 あんたの名を、記す。
 “俺が愛されたのは、夢娼ソティアだ”って、
 世界に言ってやるよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」

銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の 一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の 関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事 を裏でしていた。ある日のこと学校を 出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ こりゃーと思っていると、女神(駄)が 現れ異世界に転移されていた。魔王を 倒してほしんですか?いえ違います。 失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな! さっさと元の世界に帰せ‼ これは運悪く異世界に飛ばされた青年が 仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの と商売をして暮らしているところで、 様々な事件に巻き込まれながらも、この 世界に来て手に入れたスキル『書道神級』 の力で無双し敵をバッタバッタと倒し 解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに 巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、 時には面白く敵を倒して(笑える)いつの 間にか世界を救う話です。

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

処理中です...