異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?

第175話『目を覚ましても、あなたを覚えている』

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 ──朝を迎えても、忘れたくない夢がある。

 その手に触れた記憶も、
 囁かれた名前も、
 香の奥にあった涙も――

「覚えていたい」と願った瞬間から、
 それは“ただの夢”ではなくなる。

 *

「――ソティア」

 夢の中、流星はただ、それだけを繰り返していた。

「ソティア」
「ソティア」
「ソティア……!」

 何度も。
 途切れることなく。
 ただひたすら、彼女の名前を呼び続ける。

 それは呪文でもなければ、召喚でもない。
 記憶の中に“彼女を迎え入れる”ための、たった一つの行為。

 ──これは、夢への“干渉”だった。

 *

 香庁・夢波観測室。

「流星の脳波、異常活動確認。
 記憶領域への干渉が始まってる!」

 リリアの声が弾む。

「やってる……彼、夢の中で“名前を繰り返してる”わ」

「でも……!」

 アリシアがスクリーンを睨む。

「これは、“夢側の構造”そのものに逆らってる。
 名前も顔も記録できない“癒し”に、
 “記憶を刻もう”としてるのよ……!」

「記憶反発が起これば、彼自身の意識が消える可能性も――」

 だが、そのとき。

 異変が起きた。

 ──都市の香灯の一部が、微かに“名前”を映し始めた。

 その名は、「ソティア」。

 夢娼館の香床に、
 目に見えるかすかな快楽文字が刻まれていく。

『あなたの名前を、わたしは知っている』
『夢で触れた手のぬくもりが、朝になっても残っている』
『あなたを忘れない。
 だって私は、“ソティア”に癒されたから』

 *

 夢の最深部。

 ソティアは、香の霧の中で膝を抱えていた。

「……どうして、まだ、わたしを呼び続けるの……?」

 その声は震えていた。
 嬉しさと、怖さと、混じり合った感情で溺れそうだった。

「だって、わたしを覚えてしまったら──
 あなたはもう、“この夢”に来なくなるんじゃないかって……」

 流星が、その手を取った。

「違う。
 “覚えてる”から、また来たくなるんだよ」

「お前に、もう一度会いたくて」
「“もう一度癒されたくて”じゃなくて、“お前に会いたくて”なんだ」

「夢の中の無名の誰かじゃなく、
 “ソティア”に、またふれてもらいたくて」

 その言葉に、ソティアの目から、涙が溢れた。

「……わたしは、もう“夢娼”じゃなくて、いいのかな……?」

「お前は、“記憶の乙女”になったんだよ」

「夢の中でしかふれられないと思ってたけど、
 こうして現実に、お前の名前が、俺の中に残ってる」

「それだけで、充分だろ?」

 ソティアは頷いた。

 その瞬間、彼女の身体が微かに輝く。

 霧のようだったその輪郭が、やがて光に包まれ、
 彼女自身が“名を持つ存在”として夢の中に定着していく。

 夢娼ソティア――
 その名が、都市の記録香層に、正式に刻まれた最初の“癒しの名前”となった。

 *

 朝。

 《レヴェリス》前、流星は目を覚ました。

 枕元には、香板が置かれていた。

 そこには、彼の字でこう記されていた。

『夢でふれたあなたの名を、俺は呼び続けた』
『目を覚ましても、あなたを覚えている』
『だから、もう一度、きっと会いに行く』
『ソティア──それが、あなたの名前』

 *

 その日以降、都市《ルメ=ノクターナ》では、
 夢娼館の施術希望書に“記録希望”の欄が追加された。

 名を呼び、名を残し、癒されることを“選べる”ようになったのだ。

 泡のように消える愛もあれば、
 香のように記される愛もある。

 “どちらか”ではなく、“どちらも”でいい。

 都市はそう変わった。

 そして、それがソティアの願いであり、
 流星が夢の中に残した、“現実への愛”だった。
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