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《言葉のいらない森と、快楽を奏でる音精たち》
第179話『共鳴せよ、心のチューニング』
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──それは、ふれずに重なる儀式だった。
身体ではない。
視線でも、指先でも、言葉でもない。
呼吸と鼓動。
音と心。
ただそれだけで、ふたりはひとつになっていく。
*
「……儀式?」
流星が訊くと、ルセナはゆっくりと頷いた。
彼女の手元には、淡く輝く音晶花がひとつ。
それは“共鳴施術”の準備を意味していた。
アリシアが静かに補足する。
「“共鳴儀”……この森の音精族が“完全な癒し”のために行う唯一の儀式。
心拍、呼吸、脳波――
すべてを同調させ、“ふれずにふれ合う”準備を整えるものです」
「……言葉も、触覚も使わず、
“快楽の回路”だけを同じリズムに揃えるってことか」
ミレーユがため息混じりに言った。
「やっぱりここ、すごいぜ。理屈を超えてる」
「でも……そのぶん、危うい」
リリアが呟いた。
「心を預けすぎると、
現実の自我が一時的に薄くなることがある。
“同調”って、言葉ほど軽くないのよ」
*
森の静寂。
星々の音がきらめく香空間に、ふたりは対峙する。
流星とルセナ。
ルセナは目を閉じ、両手を胸の前に重ねる。
流星もそれに倣う。
音はない。
風もない。
だが──ふたりの間に、波が立ち始めた。
最初は呼吸。
流星が吸い、ルセナが吐く。
そして次は反対に。
次第に、そのリズムが重なる。
違和感が、どんどん消えていく。
次は鼓動。
ルセナの胸の中心に微かに輝く音晶が、
流星の心拍に合わせて微振動を放ち始める。
トクン……トクン……トクン……
(……俺の……心臓と……同じリズム……?)
そして、ついに。
ふたりの間に、“音圧”が立ち上がった。
音ではない。
圧力でもない。
ただ、感じる“振動”。
空間のどこにも力が加わっていないのに、
流星の肌が、じんわりと温かくなる。
そして──
「……ッ!」
背中から首へ、
そして両腕へ。
まるで誰かの手が、ゆっくりと、
でも確実に“内側”から撫でているような感覚。
(……これが……“ふれない快楽”……!?)
それは、ふれられていない。
にもかかわらず、ふれられたよりも鮮明に身体が震える。
「……くっ……は……」
一瞬、足がよろける。
意識が“深みに沈む”ような錯覚。
ルセナの音晶が、さらに共振する。
──そのリズムは、完全に流星と一致していた。
*
観測室。
「脳波が……一致してる! 100%共鳴!」
「夢娼のときですら93%が限界だったのに、
ここまでの“音同調”は例がないわ!」
アリシアが驚愕の声を上げる。
「心拍、呼吸、振動……
すべての身体情報が“ふれないまま”重なってる」
「もはやこれは……施術を超えてるわ」
ミレーユが呟く。
「“愛し合ってる”って表現しか思いつかねえ」
*
施術空間。
ルセナが流星の胸元へ、そっと手を伸ばしかける。
けれど、届かない。
触れようとはしない。
触れないままで、触れているから。
音の粒子が、流星の体温と同化する。
「……ソ……ティアのときとは、違う……」
「これは……共鳴だ」
「お前の鼓動が、俺の鼓動に……音の形で響いてくる」
「それが……たまらなく……気持ちいい……!」
呼吸が合い、
鼓動が合い、
振動が合うたびに、
心が“ほどけていく”。
ルセナの音晶が最後に発した共鳴は、
とてもとてもやさしい音だった。
──“あなたの音に、わたしが溶けた”。
そして、終わった。
共鳴儀は完了した。
*
ふたりはゆっくりと目を開いた。
言葉はなかった。
だが、流星は確信していた。
「お前と、ちゃんと“話せた”気がするよ」
ルセナの唇が微かにほころび、
頬の音晶が、音もなく揺れた。
──“わたしも”。
その音は、もう言葉より雄弁だった。
身体ではない。
視線でも、指先でも、言葉でもない。
呼吸と鼓動。
音と心。
ただそれだけで、ふたりはひとつになっていく。
*
「……儀式?」
流星が訊くと、ルセナはゆっくりと頷いた。
彼女の手元には、淡く輝く音晶花がひとつ。
それは“共鳴施術”の準備を意味していた。
アリシアが静かに補足する。
「“共鳴儀”……この森の音精族が“完全な癒し”のために行う唯一の儀式。
心拍、呼吸、脳波――
すべてを同調させ、“ふれずにふれ合う”準備を整えるものです」
「……言葉も、触覚も使わず、
“快楽の回路”だけを同じリズムに揃えるってことか」
ミレーユがため息混じりに言った。
「やっぱりここ、すごいぜ。理屈を超えてる」
「でも……そのぶん、危うい」
リリアが呟いた。
「心を預けすぎると、
現実の自我が一時的に薄くなることがある。
“同調”って、言葉ほど軽くないのよ」
*
森の静寂。
星々の音がきらめく香空間に、ふたりは対峙する。
流星とルセナ。
ルセナは目を閉じ、両手を胸の前に重ねる。
流星もそれに倣う。
音はない。
風もない。
だが──ふたりの間に、波が立ち始めた。
最初は呼吸。
流星が吸い、ルセナが吐く。
そして次は反対に。
次第に、そのリズムが重なる。
違和感が、どんどん消えていく。
次は鼓動。
ルセナの胸の中心に微かに輝く音晶が、
流星の心拍に合わせて微振動を放ち始める。
トクン……トクン……トクン……
(……俺の……心臓と……同じリズム……?)
そして、ついに。
ふたりの間に、“音圧”が立ち上がった。
音ではない。
圧力でもない。
ただ、感じる“振動”。
空間のどこにも力が加わっていないのに、
流星の肌が、じんわりと温かくなる。
そして──
「……ッ!」
背中から首へ、
そして両腕へ。
まるで誰かの手が、ゆっくりと、
でも確実に“内側”から撫でているような感覚。
(……これが……“ふれない快楽”……!?)
それは、ふれられていない。
にもかかわらず、ふれられたよりも鮮明に身体が震える。
「……くっ……は……」
一瞬、足がよろける。
意識が“深みに沈む”ような錯覚。
ルセナの音晶が、さらに共振する。
──そのリズムは、完全に流星と一致していた。
*
観測室。
「脳波が……一致してる! 100%共鳴!」
「夢娼のときですら93%が限界だったのに、
ここまでの“音同調”は例がないわ!」
アリシアが驚愕の声を上げる。
「心拍、呼吸、振動……
すべての身体情報が“ふれないまま”重なってる」
「もはやこれは……施術を超えてるわ」
ミレーユが呟く。
「“愛し合ってる”って表現しか思いつかねえ」
*
施術空間。
ルセナが流星の胸元へ、そっと手を伸ばしかける。
けれど、届かない。
触れようとはしない。
触れないままで、触れているから。
音の粒子が、流星の体温と同化する。
「……ソ……ティアのときとは、違う……」
「これは……共鳴だ」
「お前の鼓動が、俺の鼓動に……音の形で響いてくる」
「それが……たまらなく……気持ちいい……!」
呼吸が合い、
鼓動が合い、
振動が合うたびに、
心が“ほどけていく”。
ルセナの音晶が最後に発した共鳴は、
とてもとてもやさしい音だった。
──“あなたの音に、わたしが溶けた”。
そして、終わった。
共鳴儀は完了した。
*
ふたりはゆっくりと目を開いた。
言葉はなかった。
だが、流星は確信していた。
「お前と、ちゃんと“話せた”気がするよ」
ルセナの唇が微かにほころび、
頬の音晶が、音もなく揺れた。
──“わたしも”。
その音は、もう言葉より雄弁だった。
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