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《言葉のいらない森と、快楽を奏でる音精たち》
第183話『名前のない旋律、あなたに響け』
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──旋律に、名前はなかった。
だが、その音を聴いた瞬間、
流星は「自分のためだけに奏でられた」と、確信した。
それは、“恋”の音だった。
ふれずに、触れられる。
語らずに、伝わる。
言葉では追いつけない感情が、音になって、ただ静かに彼の心に落ちた。
*
夜。
《共鳴の泉》――森で最も音が澄んでいる場所。
そこに、ルセナがいた。
空には星。
風は止み、
泉の水面はまるで空と地の境を忘れたように透明だった。
流星が姿を見せたとき、
ルセナは何も言わず、ただひとつの音晶を手にしていた。
その板は、どこか震えていた。
まだ完成しきっていない旋律の“はじまり”が、そこに宿っていた。
彼女は、手を差し出す。
そこに、言葉はなかった。
でも、伝わった。
──「聞いて」。
*
音が、流れはじめた。
風も、木々も、止まる。
ただ、ひとつの音だけが夜を震わせた。
それは、メロディとは呼べなかった。
むしろ、記憶だった。
・流星に初めて会った日の、鼓動のズレ。
・目が合ったときの、息が止まる感覚。
・彼の背に“音をふれさせた”ときの、心の弾み。
・はじめて笑い合った“あの共鳴”のこと。
・ふれたくなってしまった夜。
・でも、ふれられなかった自分の弱さ。
・それでも、あたたかく見守ってくれた優しさ。
すべてが、“音”として込められていた。
旋律は、語った。
「あなたにふれてしまった、わたしの心を」
「あなたの音に、溶けてしまったことを」
「そして今、わたしはあなたを“愛している”ことを」
音には名前がない。
でも、これだけは確かだった。
──それは、ルセナの“恋の旋律”だった。
*
流星は、震えていた。
ふれていないのに、
腕が熱い。
胸がぎゅっと苦しい。
まるで心が、そっと抱きしめられているようだった。
涙が頬を伝う。
声が、喉に詰まる。
でも――
彼は、はっきりと口をひらいた。
「……ルセナ」
それは、この森で彼が初めて“声にした”音精の名だった。
名を持たぬ音に、
名を呼ぶことで、応えた。
「ありがとう。
俺に、その音を、
その気持ちを、
……“君自身”を、聴かせてくれて」
ルセナの目が揺れた。
彼女の音晶が、静かに鳴った。
──“わたしの音は、あなたのもの”。
その瞬間。
森全体に、音が走った。
ふれずに響く音と、
名を持つ声が、
共存した瞬間だった。
音精たちの間に、静かな波紋が走る。
長老たちは顔を上げ、
その振動に、初めて“言葉の重さ”を理解しはじめた。
そして、ひとつ。
音晶が震え、森の律が書き換えられる。
『癒しは、音であり、声でもある』
『旋律は、名を持ってもよい』
『“ふれられた記憶”を、誰かに渡していい』
*
ルセナは、静かに寄ってきた。
ふれないまま、胸の前に両手を重ねる。
流星も同じように手を重ね、頷く。
言葉と音。
声と旋律。
名と想い。
そのすべてが、
今ここに――共鳴した。
だが、その音を聴いた瞬間、
流星は「自分のためだけに奏でられた」と、確信した。
それは、“恋”の音だった。
ふれずに、触れられる。
語らずに、伝わる。
言葉では追いつけない感情が、音になって、ただ静かに彼の心に落ちた。
*
夜。
《共鳴の泉》――森で最も音が澄んでいる場所。
そこに、ルセナがいた。
空には星。
風は止み、
泉の水面はまるで空と地の境を忘れたように透明だった。
流星が姿を見せたとき、
ルセナは何も言わず、ただひとつの音晶を手にしていた。
その板は、どこか震えていた。
まだ完成しきっていない旋律の“はじまり”が、そこに宿っていた。
彼女は、手を差し出す。
そこに、言葉はなかった。
でも、伝わった。
──「聞いて」。
*
音が、流れはじめた。
風も、木々も、止まる。
ただ、ひとつの音だけが夜を震わせた。
それは、メロディとは呼べなかった。
むしろ、記憶だった。
・流星に初めて会った日の、鼓動のズレ。
・目が合ったときの、息が止まる感覚。
・彼の背に“音をふれさせた”ときの、心の弾み。
・はじめて笑い合った“あの共鳴”のこと。
・ふれたくなってしまった夜。
・でも、ふれられなかった自分の弱さ。
・それでも、あたたかく見守ってくれた優しさ。
すべてが、“音”として込められていた。
旋律は、語った。
「あなたにふれてしまった、わたしの心を」
「あなたの音に、溶けてしまったことを」
「そして今、わたしはあなたを“愛している”ことを」
音には名前がない。
でも、これだけは確かだった。
──それは、ルセナの“恋の旋律”だった。
*
流星は、震えていた。
ふれていないのに、
腕が熱い。
胸がぎゅっと苦しい。
まるで心が、そっと抱きしめられているようだった。
涙が頬を伝う。
声が、喉に詰まる。
でも――
彼は、はっきりと口をひらいた。
「……ルセナ」
それは、この森で彼が初めて“声にした”音精の名だった。
名を持たぬ音に、
名を呼ぶことで、応えた。
「ありがとう。
俺に、その音を、
その気持ちを、
……“君自身”を、聴かせてくれて」
ルセナの目が揺れた。
彼女の音晶が、静かに鳴った。
──“わたしの音は、あなたのもの”。
その瞬間。
森全体に、音が走った。
ふれずに響く音と、
名を持つ声が、
共存した瞬間だった。
音精たちの間に、静かな波紋が走る。
長老たちは顔を上げ、
その振動に、初めて“言葉の重さ”を理解しはじめた。
そして、ひとつ。
音晶が震え、森の律が書き換えられる。
『癒しは、音であり、声でもある』
『旋律は、名を持ってもよい』
『“ふれられた記憶”を、誰かに渡していい』
*
ルセナは、静かに寄ってきた。
ふれないまま、胸の前に両手を重ねる。
流星も同じように手を重ね、頷く。
言葉と音。
声と旋律。
名と想い。
そのすべてが、
今ここに――共鳴した。
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