異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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《「ふれない快楽」から「ふれ合う覚悟」へ》

第194話『名を呼べぬ国、官能の扉ひらく』

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 仮面は、国を守るための儀礼。
 それを言い渡されたのは、国境の香霧を越えた直後だった。

「この国では、“名”を呼ぶことが最大の侮辱とされています。外来者の皆さまには、仮面を着けていただきます」

 流星とルセナは、案内役の青年──いや、正確には性別すらわからぬ“無名の案内者”から、仮面を渡された。
 滑らかな陶製の白面には、感情も個性もなかった。ただ一片の“音の印”だけが刻まれている。

 異様な沈黙が辺りを支配していた。喋ることすら、はばかられる空気。
 それでも、ルセナは目だけで、流星にこう語りかけていた。

(まるで──息を殺した風俗街、ね)

 彼女の言葉には、揶揄も侮蔑もなかった。ただ、心からの戸惑いと、ちょっとした好奇心だけが、瞳に宿っていた。

 ◇ ◇ ◇

 無名国には、一般的な風俗施設は存在しない。
 その代わり、“香の瞑想室”と呼ばれる官能施設があった。
 しかし、それは肉体の快楽とは程遠い──
 完全無音、完全無触、そして完全匿名で行われる「内面共鳴」のための空間だった。

「……ねえ、流星」

 滞在初日の夜、ルセナは木製の仮面を脱ぎ、ため息混じりに語り始めた。
 視線の先には、瞑想室で静かに香炉を見つめる、仮面の男女──いや、性別も年齢も分からない“存在”たち。

「ここって……誰かに“愛されたい”って、思ってる人がいるのかしら?」

 彼女の問いは、まるで鏡のようだった。
 誰かを“抱きしめたい”と思った瞬間、それは罪になる。
 名を呼べぬ世界。触れてはいけない社会。

「きっと、傷つくのが怖いんだよ」
 流星は答えた。「名前を持つと、誰かの記憶に“固定”される。そうしたら……愛されたぶん、失ったときに壊れるって、知ってるんだ」

「でも、ねえ。だったら……なんで、こんなに泣きそうになる香りを焚いてるの?
 あたし、感じたわよ……あの香炉の向こうから、“さびしい”って音がした」

 ルセナは立ち上がる。
 風俗巫女としての彼女が、今──新たな快楽の地平を開こうとしていた。

 彼女の手が、音叉を鳴らす。
 瞑想室の中心で、その音はやさしく共鳴し、空間全体を震わせる。

 ──コン……コン……
 微細な音の波が、沈黙を破る。
 誰もが仮面の奥で、鼓動がひとつ跳ねるのを感じていた。

「……ふれなくても、愛されたいと思っていい」

 その音が、確かに告げていた。

 ここから“快楽と名のない愛”をめぐる、エロティックで官能的な文化衝突の幕が開く──。

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