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『謎のドリンクで、止まらない!?~トイレへの疾走と青春の限界突破編~』
第152話『謎のドリンクの正体、そして真犯人!?』
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──数日後。
あの“ドリンク騒動”から教室内に漂っていた沈黙は、徐々に笑い話に変わりつつあった。
「ねぇハルカ、あの日のステップダンス、まじで伝説だったって」
「壁ドンで誤魔化してたの、バレバレだったよねー!」
「ていうか、結局“誰がやらかした”のか、まだ不明ってのが最高に怖い」
笑いながら話す女子たちの中で、
ただひとり、タブレットを睨み続けていた少女がいた。
──エミリ・セレスタ。
「ふむ……ついにここまで来ましたか……」
ぽつりと呟き、キーボードを連打。
何画面も翻訳された英語とロシア語とアラビア語のネットショップが重なって表示されている。
「怪しいドリンク【Zrblé X-TREME ENERGY SHOCK!】……販売元は……」
“Alchemical Body Cultivation Supply Co.(ABCサプライ社)”
販売元の説明にはこう書かれていた。
「トイレを我慢することは、集中力・自制心・意志力の強化に繋がる」
「古今東西の武人・修道者が用いた“尿意”メソッドを、今こそ君に!」
「やっぱり……変なやつじゃないかぁぁぁぁ……」
ハルカが机に突っ伏して呻く。
「これ、明らかにトレーニング用の飲み物じゃん……!」
「てか、“修道者も使ってました”って誰が信じるの!?」
「わたしはちょっと信じかけました」
ユイがそっと手を挙げた。
「だよね、こういうの絶対“道を極める”系の罠だよね」
ミキも苦笑しながらプリントを折り畳んでいた。
「で、その謎ドリンクを“クラス全員に差し入れ”したのって誰なの?」
ナナがそう言った瞬間、
エミリがタブレットをピッと操作した。
画面には、校内の“発注履歴データ”が表示されている。
「注文者の名前は──」
保健委員長・霞ヶ関 みさと(かすみがせき みさと)
その瞬間、全員の脳内に静電気のような緊張が走った。
「……え、みさと先輩って、あの……?」
「保健室に常駐してて……清楚で真面目で、ちょっと浮世離れしたあの人……?」
「学年一つ上の……!?」
ハルカたちの声が、次々に重なった。
***
場所は、校舎南側の“保健室”前。
授業後、エミリの「直接確認したい」という提案で、ハルカたちは現場に向かっていた。
扉の前に立つエミリが、ノックする。
「失礼します」
中から、ゆっくりとした優しい声が返ってくる。
「どうぞ、お入りなさい」
スライドドアが静かに開き、現れたのは──
淡い藤色の髪に、白衣を羽織った上品な少女。
切れ長の瞳、眼鏡越しの知的な光。
そして、穏やかに微笑んでいる口元。
保健委員長・霞ヶ関みさと。
「こんにちは、皆さん。今日はどうされましたか?」
「単刀直入に聞きます──」
エミリが一歩前に出る。
「“Zrblé X-TREME ENERGY SHOCK!”を、この学校に届けたのは、あなたですね?」
一瞬──みさとの眼鏡が、光を反射して見えた。
だが、彼女は微笑を崩さない。
「ええ。私です」
即答。
「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ハルカたち、全員で叫ぶ。
「な、なんでそんなヤバい飲み物、学校に配ったの!?」
「ていうか、私たち……本気で……漏れかけたよ!?ねぇ!!?」
レイナが涙目で叫ぶ中、みさとは椅子に静かに座り、語り出した。
「私、ずっと思ってたのです」
「現代人は、“出すこと”には敏感なのに、“我慢すること”には無頓着すぎると」
「自制心は、人生における最大の武器です」
「ならば、最も強烈な“衝動”である尿意を制御できるようにすれば──」
「すべての集中力・意志力が開花すると」
「まさかの“トイレ我慢理論”!!!!」
ミキが口を押さえ、ナナは天を仰ぐ。
「それ、どこかでちゃんと研究されてるの!?」
ハルカがツッコミを入れると、
みさとは平然と頷いた。
「イギリスのニュー・マインド研究所が提唱している“Bladder Control Learning System”に基づいています」
「通称──BCLS」
「信じられるか……?」
「尿意に、理論名がついてんだぜ……?」
サバナが膝から崩れ落ちた。
「私は……人類の認識が一段階進んだのだと思っています」
「それを、あなたたちに先駆けて届けたかっただけです」
ハルカたちは、全員しばらく言葉を失った。
……そして。
「──せめて、説明書入れておいてくれぇぇぇぇ!!!」
全員が一斉にツッコんだ。
みさとは、またしても静かに笑った。
「“知らないからこそ、己を知る”」
「これも、教育です」
ハルカは震えながら机をバンバン叩いた。
(この人、ただ者じゃない……!!)
そしてこの学校は……やっぱりおかしい。
──それでも。
確かに、誰かの“尿意”で培われた友情と団結は、
何かを育てていた気がした。
(続く)
あの“ドリンク騒動”から教室内に漂っていた沈黙は、徐々に笑い話に変わりつつあった。
「ねぇハルカ、あの日のステップダンス、まじで伝説だったって」
「壁ドンで誤魔化してたの、バレバレだったよねー!」
「ていうか、結局“誰がやらかした”のか、まだ不明ってのが最高に怖い」
笑いながら話す女子たちの中で、
ただひとり、タブレットを睨み続けていた少女がいた。
──エミリ・セレスタ。
「ふむ……ついにここまで来ましたか……」
ぽつりと呟き、キーボードを連打。
何画面も翻訳された英語とロシア語とアラビア語のネットショップが重なって表示されている。
「怪しいドリンク【Zrblé X-TREME ENERGY SHOCK!】……販売元は……」
“Alchemical Body Cultivation Supply Co.(ABCサプライ社)”
販売元の説明にはこう書かれていた。
「トイレを我慢することは、集中力・自制心・意志力の強化に繋がる」
「古今東西の武人・修道者が用いた“尿意”メソッドを、今こそ君に!」
「やっぱり……変なやつじゃないかぁぁぁぁ……」
ハルカが机に突っ伏して呻く。
「これ、明らかにトレーニング用の飲み物じゃん……!」
「てか、“修道者も使ってました”って誰が信じるの!?」
「わたしはちょっと信じかけました」
ユイがそっと手を挙げた。
「だよね、こういうの絶対“道を極める”系の罠だよね」
ミキも苦笑しながらプリントを折り畳んでいた。
「で、その謎ドリンクを“クラス全員に差し入れ”したのって誰なの?」
ナナがそう言った瞬間、
エミリがタブレットをピッと操作した。
画面には、校内の“発注履歴データ”が表示されている。
「注文者の名前は──」
保健委員長・霞ヶ関 みさと(かすみがせき みさと)
その瞬間、全員の脳内に静電気のような緊張が走った。
「……え、みさと先輩って、あの……?」
「保健室に常駐してて……清楚で真面目で、ちょっと浮世離れしたあの人……?」
「学年一つ上の……!?」
ハルカたちの声が、次々に重なった。
***
場所は、校舎南側の“保健室”前。
授業後、エミリの「直接確認したい」という提案で、ハルカたちは現場に向かっていた。
扉の前に立つエミリが、ノックする。
「失礼します」
中から、ゆっくりとした優しい声が返ってくる。
「どうぞ、お入りなさい」
スライドドアが静かに開き、現れたのは──
淡い藤色の髪に、白衣を羽織った上品な少女。
切れ長の瞳、眼鏡越しの知的な光。
そして、穏やかに微笑んでいる口元。
保健委員長・霞ヶ関みさと。
「こんにちは、皆さん。今日はどうされましたか?」
「単刀直入に聞きます──」
エミリが一歩前に出る。
「“Zrblé X-TREME ENERGY SHOCK!”を、この学校に届けたのは、あなたですね?」
一瞬──みさとの眼鏡が、光を反射して見えた。
だが、彼女は微笑を崩さない。
「ええ。私です」
即答。
「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ハルカたち、全員で叫ぶ。
「な、なんでそんなヤバい飲み物、学校に配ったの!?」
「ていうか、私たち……本気で……漏れかけたよ!?ねぇ!!?」
レイナが涙目で叫ぶ中、みさとは椅子に静かに座り、語り出した。
「私、ずっと思ってたのです」
「現代人は、“出すこと”には敏感なのに、“我慢すること”には無頓着すぎると」
「自制心は、人生における最大の武器です」
「ならば、最も強烈な“衝動”である尿意を制御できるようにすれば──」
「すべての集中力・意志力が開花すると」
「まさかの“トイレ我慢理論”!!!!」
ミキが口を押さえ、ナナは天を仰ぐ。
「それ、どこかでちゃんと研究されてるの!?」
ハルカがツッコミを入れると、
みさとは平然と頷いた。
「イギリスのニュー・マインド研究所が提唱している“Bladder Control Learning System”に基づいています」
「通称──BCLS」
「信じられるか……?」
「尿意に、理論名がついてんだぜ……?」
サバナが膝から崩れ落ちた。
「私は……人類の認識が一段階進んだのだと思っています」
「それを、あなたたちに先駆けて届けたかっただけです」
ハルカたちは、全員しばらく言葉を失った。
……そして。
「──せめて、説明書入れておいてくれぇぇぇぇ!!!」
全員が一斉にツッコんだ。
みさとは、またしても静かに笑った。
「“知らないからこそ、己を知る”」
「これも、教育です」
ハルカは震えながら机をバンバン叩いた。
(この人、ただ者じゃない……!!)
そしてこの学校は……やっぱりおかしい。
──それでも。
確かに、誰かの“尿意”で培われた友情と団結は、
何かを育てていた気がした。
(続く)
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