前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー~うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと!~

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第185話:アルプスの草原で牧歌的パニック!? もうどうにもならねえよ、この状況!

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 俺の名前は佐藤太一、18歳。
 コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
 最近はコンビニ弁当だけじゃなく、友達の手料理でも胃をやられてる俺の運命が恨めしい。
 俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。  
 トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
 もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
 このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー!」なんて浮かれてた自分が恨めしい。  
 昨日は昭和の大阪万博開会式で「オナラ万博」と間違われて歴史をカオスに変えた。
 その前は安倍晴明の悪霊退治で笑いものにしたし、毎回毎回が試練だ。
 なのに、今日もまた腹がゴロゴロ鳴ってる。
 原因は昨夜の飯だ。
 半額の「激辛キムチチャーシューメン」を食っただけじゃなく、美月が「太一ならこれくらい余裕だよね?」って持ってきた手作り激辛唐辛子パンも一緒に食っちまった。
 コンビニの辛さと美月の挑戦的な優しさ(と辛さ)が胃の中で暴れてる感じだ。
 パン食った瞬間、口の中が火事みたいになって「これはヤバい」って分かってたけど、美月の「美味しいでしょ?」ってニヤニヤ顔見たら断れなくて、結局全部平らげちまったんだよ。  
 学校から帰って少しスマホ見てたけど、我慢の限界が来た。
 胃が「ギュルルル!」って唸ってて、冷や汗が止まらない。
 仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
 青々とした草の匂いと、牛の鳴き声が鼻と耳に飛び込んできた。
 目の前にはアルプスの草原、広がる緑と遠くの雪山が織りなす牧歌的風景。
 俺の便器は、その草原のど真ん中、牛たちが草食んでる場所にポツンと出現。  
「うおっ、アルプス!? 草原かよ!?」  
 周りにはのんびり草を食む牛が「モーッ」と鳴いてて、遠くで羊飼いが「ヨーデル~!」って歌ってる。
 緑の丘が風に揺れて、雪をかぶったアルプスの山々が背景にそびえてる。
 青い空には雲がぽっかり浮かんでて、絵本みたいな平和な景色が広がってる。
 でもそのど真ん中に俺の便器がドーンと浮いてて、まるで俺が草原の新名物みたいになってるよ。
 牧歌的な雰囲気が俺の便器でぶち壊しになってて、どうしていいか分かんねえよ!  
「こんなとこで用を足すとか、マジで無理ゲーだろ……!」  
 腹痛は待ってくれない。
 キムチチャーシューメンの辛さと美月の唐辛子パンのスパイスが下腹部をギュルギュル締め付けてきて、冷や汗が止まらない。
 でもさ、アルプスの草原で、どうやって集中しろって言うんだよ!
 牛が「モーッ」と俺の便器の周りをウロウロしてるし、羊飼いが「ヨーデル~!」って近づいてくる。
 風が草を揺らす音と牛の鈴の「カランカラン」が耳に響いてて、平和すぎるこの状況が逆に焦りを増してくる。
 牛の一頭が俺の便器に顔近づけて「モーッ?」って首かしげてるけど、見えてないはずだよな……?  
「いやいや、落ち着け俺。『俺からは見えてるけど、向こうからは見えない』がルールだろ?」  
 そう自分に言い聞かせて、深呼吸する。
 でもその瞬間、腹が「グゥゥゥ!」ってデカい音立てちまった。
 草原が一瞬静まり返って、牛が「モーッ!?」ってビクッと飛び退く。
 羊飼いが「何や、この音は?」ってヨーデル止めてこっち見る。
 近くの羊が「メェェ!」って逃げ出し、鳥が「ピーッ!」って飛び立つ。
 見えてないはずなのに、腹音でバレかけてて、俺、自分の腹に「アルプスの平和を乱すなよ!」って心の中で叫んでるよ!  
「やばい、やばい、やばい! 早く終わらせないと精神持たねえ!」  
 腹に全神経を集中させる。
 おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ!
 ブッ。  
「……うっ、音が草原に爆音で響いた!」  
 風に乗って音が広がり、牛が「モオオオ!」って一斉にパニックで走り出す。
 羊飼いが「何や!?」って笛落として、羊が「メェェェ!」って四方八方に逃げ惑う。
 見えてないはずなのに、匂いが漂ってきて完全にバレてるじゃん!
 牛の一頭が俺の便器に突進してきて、物理的干渉できないから当たらないけど、錯覚で心臓止まりそうだ。
 羊飼いが「悪魔の仕業か!?」って叫んで笛吹きまくるけど、牛と羊が「モーッ!」「メェェ!」って暴走して収拾つかねえ。
 草原全体が「謎の音と匂い」で大混乱になってて、俺、この牧歌的風景を台無しにしちまった罪悪感で頭おかしくなりそうだよ!
 羊飼いが「我が家畜を返せ!」って空に向かって叫んでるけど、俺の便器が原因だって気づかれてないのが唯一の救いだ。  
「いや、アルプス、ごめんって! ……って、どうにもならねえ!」  
 ポチャン。  
「よっしゃ、出た! 終わった! ……って頭抱えるしかない!」  
 次の瞬間、頭の中にいつもの声が響く。
「ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」  
 光に包まれてアパートのトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
 心臓バクバクで息を整えながら、俺は便器に座ったまま放心状態で「うわあ……」って呻く。
 笑いものにする気はなかったけど、アルプスの平和な草原をこんなカオスに変えちまって、罪悪感が重いよ。  
「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」  
 汗だくで呟く。
 アルプスの草原で牛と羊をパニックに陥れるなんて、俺の人生ハードすぎるだろ。
 今回は遥や彩花たちが出てこなくて一人だったけど、牧歌的な風景が俺のせいで大混乱に変わった。
 あの草原のど真ん中で耐えた俺、よくやったよ……いや、やりたくなかったよ!  
「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」  
 腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
 次に開けるのが怖い。
 でもキムチチャーシューメンと唐辛子パンの残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
 コンビニ飯も美月の手料理も、やめたいけどやめられないんだよな。
 安いし美味いし、友情も嬉しいし、つい食べちゃうんだよ。  
 考えてみれば、このトイレのせいで歴史や平和な場所をめちゃくちゃにしまくってるわけだけど、毎回こんなカオスに放り込まれるのは笑えない……いや、笑える時もあるけど、今回は焦りと罪悪感しかないよ。
 羊飼いが「我が家畜を返せ!」って叫んでる声と、牛の「モーッ!」が頭から離れねえよ。
 あのアルプスの草原が俺のせいでパニックに変わっちまったんだから、自然愛好家が知ったら卒倒するだろうな。
 とりあえず水飲んで落ち着こう。
 次はどんな場所に飛ばされるか分からないけど、ちょっとだけ平和な場所を願いたい……って、無理か。
 このトイレ、絶対また何かやらかす気だよ。  
 少し休憩して、腹を落ち着かせたいけど、この胃じゃ無理だろうな。
 コンビニの激辛と美月のスパイスが俺を離してくれねえ。
 羊飼いのヨーデルが耳に残ってて、ちょっと懐かしい気分になるけど、あの混乱思い出したら懐かしむどころじゃねえよ。
 アルプスの牛と羊、ごめんな。
 お前らの平和をぶち壊しちまったよ。
 次は頼むから動物がいない場所に飛ばしてくれ……って、期待しても無駄か。  
 とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
 でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
 アルプスでやらかしただけでも褒めてくれよ、自分。
 あの草原のど真ん中でミッションクリアしたんだからさ。
 次はどんなカオスが待ってるか分からないけど、もう慣れた……いや、慣れねえよ!  

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