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第4章 ジャンヌの西進
第69話 心の灯
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「これから我々はビンゴ王国の首都スィート・スィトンへ向かう!」
砦の西門に集合したオムカ、ビンゴ、ワーンスの連合軍1万2千の前で声を張る。
相変わらずこの人数を前に喋ることは、気の遠くなるような思いだが、この遠征が成功するか否かの大一番に挑むのだから、わがままなんて言ってられない。
「今、首都スィート・スィトンは新興独立国家ユートピアに占領されている。オムカの諸君の家族が、友が、理不尽な扱いを受けて首都に閉じ込められているのだ。これを開放するのがこの戦いの目的である」
クロスの率いるビンゴ軍が無言のまま、瞳に熱を灯らせる。
義勇軍は残した。彼らに過酷な攻城戦はまだ力不足だろう。
それに対して、オムカとワーンスの軍の反応は鈍い。
当然だ。
自分の家族が人質に取られているのなら燃えもしようが、誰かも知らない人のために自分の命を賭けるなんて馬鹿げている。
だからこそこうして集めて、そしてビンゴ軍と同じように瞳に、心に熱を灯らせなければならない。
そのための、言葉だった。
「だが、オムカ王国とワーンス王国の諸君にとって、この戦は対岸の火事。まったく関係のない、他国の戦だろう」
ざわざわとどよめきが走る。
図星に思った人もいるだろう。
何を言い出すのかと困惑する人もいるだろう。
だがこういうのは始めが大事だ。
ここで心を1つにしないと、きっと本当にギリギリの、あっちゃいけないようなところで不満が噴出し、連合軍は瓦解する。
驕兵の計での大敗。
あれを再び引き起こさないためには、ここが大事。
「だが、この私。オムカ王国の軍を預かる者として断言する。今回の戦い。これは大陸の勢力圏を書き換える重要な一戦である! ここでもし負ければ、我々の命だけではない。遠く、皆の帰りを待っている家族をも危険にさらすことになる。考えても見てほしい。北の帝国領と西のビンゴ領から帝国軍が進行すれば、オムカに、南群に、それを防ぎきる力があるだろうか」
言葉を切り、息を吸う。
正直、大言壮語は好きじゃない。
けどここにいる皆を生かして帰すため、勝って生きるため、俺は嘘つきと言われようと虚言癖と言われようとも、言わなくちゃいけない。
「答えは否だ。残念ながら自分でもその状況になって帝国相手の勝算はないに等しい。何より、その前にこの戦いで負ければ我々は死ぬ。もちろん私も、死ぬ」
再びざわめきが起こる。
俺の死。
それがどれだけ影響を与えたか、後で喜志田たちに聞いた。
あの女神の言う通りというのが癪だけど、どうやら俺は彼らの中でだいぶ大きな存在になっているらしい。
少なくとも士気を阻喪するほどには。
そうなれば負けだ。
どれだけ精鋭でも戦う気がなければ簡単に殺される。
だが俺は生きる。
生きて、生きて、生きて、負けそうな時でも逆転の手を考え続ける。
それが軍師としての俺の生きる術。
俺の生きる導。
だから皆には人質を取らせてもらった。
俺という、心の支えという人質を。
我ながら最低な思想だと思う。
けど、それで皆の命が保障されるなら。
勝って、すべてを守れるなら。
いくらでも汚名をかぶってやるつもりだ。
とはいえ、それだけじゃまだ弱い。
だからもうひと押しが必要だった。
「そしてそれだけではない。我らの父も、母も、夫も、妻も、子も、何もかもが帝国によって蹂躙される。そして今後、子孫代々と帝国の奴隷として飼われることになるだろう。皆はそれでよいのか? 自分の父を、母を、夫を、妻を、子を、孫を、帝国の支配下において悲惨な目に遭わせてよいのか!?」
オムカ軍とワーンス軍の眼の色が変わる。
灯った。小さい灯。
それを、一気に燃え上がらせる。
「いいわけがない! そのような未来は実現してはならない! ならばこの一戦は未来の家族を守るための一戦と心得ろ! この大陸の趨勢を占う決戦と戒めてくれ!」
誰も何も言わない。
ただ誰もが俺を見る。
その2万4千の瞳に負けないよう、奥歯をかみしめ、そして続ける。
「皆の命をくれとは言わない。ただ、力をくれ。私は独りでは何もできない、最弱の軍人だ。だが、皆とならできる。皆となら戦える! だから力をくれ! この旗の下で、ともに戦い、ともに勝利の盃を再び交わそう!」
旗を掲げた。
俺の旗。
敗走の中で紛失したから、これはスペアのものだ。
俺の最後の一振り。
そして、俺自身。
旗を振る者という存在意義。
それを掲げる。
馬に乗った俺の姿。
その姿を、1万2千の衆目にさらす。
静寂が辺りを包んだ。
失敗した。
そうは思わなかった。
熱い。
何かが来る。
そして、熱が来た。
1万2千の口から放たれる雄たけび。
大地を揺るがす、大衆の力。
男も女も関係なく口々に、叫びをあげる。
ガシャガシャと鉄が鳴る音。
兵たちが鉄籠手を胸板に叩きつけて音を出しているのだ。
「うおおおお! ジャンヌぅぅ、愛してるぜぇ!」
「こっちの方が隊長殿を愛してますよ! 何に変えても、隊長殿を守りますから!」
やけに重い愛を叫ぶ馬鹿2人。
はぁ……こいつらは平常運転でうらやましいよ。
まぁ、心強い限りではあるけど。
「進発!」
俺の号令のもと、1万2千が動き出す。
陣容の詳細は俺直属が250。ブリーダの軍が2400、ワーンス軍4000、ビンゴ軍4000の計12650。
それに喜志田が率いる王太子の軍が2万が合流する。
それを考えれば帝国軍5万では兵数、兵力ともに劣る。
何よりうちらは3か国からなる混成部隊だ。
連携がうまく取れているならいいが、正直不安はある。
アズ将軍が裏切ることはないだろうが、その部下はどうか分からない。
たった今、焚き付けたものの、人間極限状態になればどうなるかはわからない。
使命感や直接的な脅威がなければ、命が失われる恐怖に耐えきれなくなって逃げ出すようなこともありえるだろう。
それからビンゴの王太子。
喜志田が難色を示すような、どこか予測しづらい性格だとしたら……かなりやっかいだ。
『古の魔導書』で調べてみたものの、プライドが高いとか、血統至上主義とか、頭を抱えたくなるような単語が出てきたのもそれを助長している。
それに対し相手は帝国軍の元帥に率いられた生粋の精鋭。
よって数だけでなく、質もかなり劣っていると見て良い。
帝国軍の遠征の疲労を差し引いても分は悪いと見ている。
だがそれは野戦で真正面からぶつかればの話。
はっきりと負けるというわけではないのが、今回の戦がかなり特殊だからだろう。
そう、首都スィート・スィトン、そこに籠る新興国ユートピア。
それがどう動くかで全てが変わる。
まずは協力して帝国軍を撃退し、その後に攻城戦に入るかあるいは講和の話などを詰めてもいい。
三すくみの状況を利用して、帝国軍の兵糧切れを待つのもいい。
一般人への被害を考慮に入れなければ、帝国軍と戦わせた後に出張って、疲弊した帝国軍を撃退した後にそのまま疲弊した首都になだれ込むみたいな漁夫の利作戦もなくはない。やらないけど。
このような次第で、状況としてはかなり複雑で難しい。
それでも出陣しなければ何も始まらない。
里奈、竜胆、愛良は砦に残した。
正直、里奈のことは迷った。
結局何も話せないままだったわけで、それはかなり心残りだったからだ。
だがこれから始まる大がかりな戦闘を考えると、彼女を連れて行くのは憚られた。
これまで以上に何が起こるか分からないという危険がある。
戦闘による危険というより、味方の不協和音による危険だ。
里奈が心配とはいえ、彼女を連れていくことで敗北の確率をあげていては世話がない。
『色々、すまなかった。帰ったら、ちゃんと話しよう』
『うん……待ってる』
だから里奈とはそれで別れた。
どこか寂しそうな顔だったのは忘れられない。
だが感傷に引きずられて機を逃すわけにはいかないから、想いを振り払って俺はさらに西進する。
首都までは直線距離で20キロほど。
だがその行軍はかなり難航した。
そこまでにあるのは高低差1千メートルはある山岳地帯。
道もかなり狭く、1万以上の兵が通るのはかなり難渋した。
一応、軍用道として整備はされているから進めないことはないが、速度は出ない。
だから山道を抜け、開けた場所に出るのにほぼ2日を費やすことになった。
平地に出た時には全員が疲れ切っていた。
それに高度も上がったため、酸素の薄さにあえいでいるというべきか。ただ、ビンゴ兵はまだ慣れているからそれほどでもないので、クロスからの提案を受け、彼らに歩哨を任せてその日は野営した。
翌日、周囲を山脈に囲まれた盆地をさらに西へと軍を進める。
そこかしこに丘やくぼみ、森があり、大軍が布陣するのは場所が限られそうだ。
そして太陽が中天に差し掛かろうとするとき、遠くに巨大な建物が見えてきた。
あれが旧ビンゴ王国首都スィート・スィトンだろう。
だが、どこか異変を感じ取った。
音が聞こえるというか。
「おい、もう攻めてないか?」
サカキが遠くを見て呟く。
「あー、なんか戦ってますね。門のところにいる軍が、弓で次々やられてますー」
遠目の効くルックが緊張感がないように答えた。
確かに遠く、喚声が聞こえる気がする。
馬鹿な。どこの軍だ。
いや、喚声が聞こえるのは南門。
つまり南から攻め入った軍で、そんなのは1つしかない。
「喜志田……なにやってんだよ!」
本来ならここで合流して、首都を囲むないし、帝国軍に対する布陣を整えるはずだった。
先に攻め立てたところで2万の兵では、無駄に兵を失うだけだ。
だから歯噛みする。
いや、何かわけがあったに違いない。
あいつも軽々に動くようなことは考えていないだろう。
ならば何かがあった。
そして、その日の夜。
喜志田がやってきた。
どこか憔悴した顔色の中に、どこか喜色が見えた表情で。
彼は言った。
「ビンゴ王国滅亡のお知らせですよっと」
砦の西門に集合したオムカ、ビンゴ、ワーンスの連合軍1万2千の前で声を張る。
相変わらずこの人数を前に喋ることは、気の遠くなるような思いだが、この遠征が成功するか否かの大一番に挑むのだから、わがままなんて言ってられない。
「今、首都スィート・スィトンは新興独立国家ユートピアに占領されている。オムカの諸君の家族が、友が、理不尽な扱いを受けて首都に閉じ込められているのだ。これを開放するのがこの戦いの目的である」
クロスの率いるビンゴ軍が無言のまま、瞳に熱を灯らせる。
義勇軍は残した。彼らに過酷な攻城戦はまだ力不足だろう。
それに対して、オムカとワーンスの軍の反応は鈍い。
当然だ。
自分の家族が人質に取られているのなら燃えもしようが、誰かも知らない人のために自分の命を賭けるなんて馬鹿げている。
だからこそこうして集めて、そしてビンゴ軍と同じように瞳に、心に熱を灯らせなければならない。
そのための、言葉だった。
「だが、オムカ王国とワーンス王国の諸君にとって、この戦は対岸の火事。まったく関係のない、他国の戦だろう」
ざわざわとどよめきが走る。
図星に思った人もいるだろう。
何を言い出すのかと困惑する人もいるだろう。
だがこういうのは始めが大事だ。
ここで心を1つにしないと、きっと本当にギリギリの、あっちゃいけないようなところで不満が噴出し、連合軍は瓦解する。
驕兵の計での大敗。
あれを再び引き起こさないためには、ここが大事。
「だが、この私。オムカ王国の軍を預かる者として断言する。今回の戦い。これは大陸の勢力圏を書き換える重要な一戦である! ここでもし負ければ、我々の命だけではない。遠く、皆の帰りを待っている家族をも危険にさらすことになる。考えても見てほしい。北の帝国領と西のビンゴ領から帝国軍が進行すれば、オムカに、南群に、それを防ぎきる力があるだろうか」
言葉を切り、息を吸う。
正直、大言壮語は好きじゃない。
けどここにいる皆を生かして帰すため、勝って生きるため、俺は嘘つきと言われようと虚言癖と言われようとも、言わなくちゃいけない。
「答えは否だ。残念ながら自分でもその状況になって帝国相手の勝算はないに等しい。何より、その前にこの戦いで負ければ我々は死ぬ。もちろん私も、死ぬ」
再びざわめきが起こる。
俺の死。
それがどれだけ影響を与えたか、後で喜志田たちに聞いた。
あの女神の言う通りというのが癪だけど、どうやら俺は彼らの中でだいぶ大きな存在になっているらしい。
少なくとも士気を阻喪するほどには。
そうなれば負けだ。
どれだけ精鋭でも戦う気がなければ簡単に殺される。
だが俺は生きる。
生きて、生きて、生きて、負けそうな時でも逆転の手を考え続ける。
それが軍師としての俺の生きる術。
俺の生きる導。
だから皆には人質を取らせてもらった。
俺という、心の支えという人質を。
我ながら最低な思想だと思う。
けど、それで皆の命が保障されるなら。
勝って、すべてを守れるなら。
いくらでも汚名をかぶってやるつもりだ。
とはいえ、それだけじゃまだ弱い。
だからもうひと押しが必要だった。
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灯った。小さい灯。
それを、一気に燃え上がらせる。
「いいわけがない! そのような未来は実現してはならない! ならばこの一戦は未来の家族を守るための一戦と心得ろ! この大陸の趨勢を占う決戦と戒めてくれ!」
誰も何も言わない。
ただ誰もが俺を見る。
その2万4千の瞳に負けないよう、奥歯をかみしめ、そして続ける。
「皆の命をくれとは言わない。ただ、力をくれ。私は独りでは何もできない、最弱の軍人だ。だが、皆とならできる。皆となら戦える! だから力をくれ! この旗の下で、ともに戦い、ともに勝利の盃を再び交わそう!」
旗を掲げた。
俺の旗。
敗走の中で紛失したから、これはスペアのものだ。
俺の最後の一振り。
そして、俺自身。
旗を振る者という存在意義。
それを掲げる。
馬に乗った俺の姿。
その姿を、1万2千の衆目にさらす。
静寂が辺りを包んだ。
失敗した。
そうは思わなかった。
熱い。
何かが来る。
そして、熱が来た。
1万2千の口から放たれる雄たけび。
大地を揺るがす、大衆の力。
男も女も関係なく口々に、叫びをあげる。
ガシャガシャと鉄が鳴る音。
兵たちが鉄籠手を胸板に叩きつけて音を出しているのだ。
「うおおおお! ジャンヌぅぅ、愛してるぜぇ!」
「こっちの方が隊長殿を愛してますよ! 何に変えても、隊長殿を守りますから!」
やけに重い愛を叫ぶ馬鹿2人。
はぁ……こいつらは平常運転でうらやましいよ。
まぁ、心強い限りではあるけど。
「進発!」
俺の号令のもと、1万2千が動き出す。
陣容の詳細は俺直属が250。ブリーダの軍が2400、ワーンス軍4000、ビンゴ軍4000の計12650。
それに喜志田が率いる王太子の軍が2万が合流する。
それを考えれば帝国軍5万では兵数、兵力ともに劣る。
何よりうちらは3か国からなる混成部隊だ。
連携がうまく取れているならいいが、正直不安はある。
アズ将軍が裏切ることはないだろうが、その部下はどうか分からない。
たった今、焚き付けたものの、人間極限状態になればどうなるかはわからない。
使命感や直接的な脅威がなければ、命が失われる恐怖に耐えきれなくなって逃げ出すようなこともありえるだろう。
それからビンゴの王太子。
喜志田が難色を示すような、どこか予測しづらい性格だとしたら……かなりやっかいだ。
『古の魔導書』で調べてみたものの、プライドが高いとか、血統至上主義とか、頭を抱えたくなるような単語が出てきたのもそれを助長している。
それに対し相手は帝国軍の元帥に率いられた生粋の精鋭。
よって数だけでなく、質もかなり劣っていると見て良い。
帝国軍の遠征の疲労を差し引いても分は悪いと見ている。
だがそれは野戦で真正面からぶつかればの話。
はっきりと負けるというわけではないのが、今回の戦がかなり特殊だからだろう。
そう、首都スィート・スィトン、そこに籠る新興国ユートピア。
それがどう動くかで全てが変わる。
まずは協力して帝国軍を撃退し、その後に攻城戦に入るかあるいは講和の話などを詰めてもいい。
三すくみの状況を利用して、帝国軍の兵糧切れを待つのもいい。
一般人への被害を考慮に入れなければ、帝国軍と戦わせた後に出張って、疲弊した帝国軍を撃退した後にそのまま疲弊した首都になだれ込むみたいな漁夫の利作戦もなくはない。やらないけど。
このような次第で、状況としてはかなり複雑で難しい。
それでも出陣しなければ何も始まらない。
里奈、竜胆、愛良は砦に残した。
正直、里奈のことは迷った。
結局何も話せないままだったわけで、それはかなり心残りだったからだ。
だがこれから始まる大がかりな戦闘を考えると、彼女を連れて行くのは憚られた。
これまで以上に何が起こるか分からないという危険がある。
戦闘による危険というより、味方の不協和音による危険だ。
里奈が心配とはいえ、彼女を連れていくことで敗北の確率をあげていては世話がない。
『色々、すまなかった。帰ったら、ちゃんと話しよう』
『うん……待ってる』
だから里奈とはそれで別れた。
どこか寂しそうな顔だったのは忘れられない。
だが感傷に引きずられて機を逃すわけにはいかないから、想いを振り払って俺はさらに西進する。
首都までは直線距離で20キロほど。
だがその行軍はかなり難航した。
そこまでにあるのは高低差1千メートルはある山岳地帯。
道もかなり狭く、1万以上の兵が通るのはかなり難渋した。
一応、軍用道として整備はされているから進めないことはないが、速度は出ない。
だから山道を抜け、開けた場所に出るのにほぼ2日を費やすことになった。
平地に出た時には全員が疲れ切っていた。
それに高度も上がったため、酸素の薄さにあえいでいるというべきか。ただ、ビンゴ兵はまだ慣れているからそれほどでもないので、クロスからの提案を受け、彼らに歩哨を任せてその日は野営した。
翌日、周囲を山脈に囲まれた盆地をさらに西へと軍を進める。
そこかしこに丘やくぼみ、森があり、大軍が布陣するのは場所が限られそうだ。
そして太陽が中天に差し掛かろうとするとき、遠くに巨大な建物が見えてきた。
あれが旧ビンゴ王国首都スィート・スィトンだろう。
だが、どこか異変を感じ取った。
音が聞こえるというか。
「おい、もう攻めてないか?」
サカキが遠くを見て呟く。
「あー、なんか戦ってますね。門のところにいる軍が、弓で次々やられてますー」
遠目の効くルックが緊張感がないように答えた。
確かに遠く、喚声が聞こえる気がする。
馬鹿な。どこの軍だ。
いや、喚声が聞こえるのは南門。
つまり南から攻め入った軍で、そんなのは1つしかない。
「喜志田……なにやってんだよ!」
本来ならここで合流して、首都を囲むないし、帝国軍に対する布陣を整えるはずだった。
先に攻め立てたところで2万の兵では、無駄に兵を失うだけだ。
だから歯噛みする。
いや、何かわけがあったに違いない。
あいつも軽々に動くようなことは考えていないだろう。
ならば何かがあった。
そして、その日の夜。
喜志田がやってきた。
どこか憔悴した顔色の中に、どこか喜色が見えた表情で。
彼は言った。
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