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第4章 ジャンヌの西進
第89話 敗北者の懺悔
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「やぁ、よく来ましたね。待っていましたたよ、ジャンヌ・ダルク」
「…………」
「ああ、これですか。無様な格好でしょう? 君の彼女にやられたのですよ」
「…………」
「いやはやしかし……君の彼女。とんでもないですね。50もの精鋭が、一瞬でしたよ。肉塊になるのに」
「…………」
「それからわたしの鼻骨と左足を折って、両手の指を丁寧に一本ずつへし折った後に両肩を脱臼させて、地面に倒れたわたしの背中をギリギリと踏みつぶすようにして来ました。あと少しで、背骨を折られていたかもしれない。何です? 彼女、骨に恨みでもあるのですか?」
「…………」
「しかもそのあとの彼女の言葉ですよ。『あなたを殺せば明彦くんが困る。だから、命は取らないであげる。死なない程度に憂さを晴らさせてもらうから。それで私を思い出して。明彦くんの邪魔をするなら、それよりもっとひどい目にあわせることができるって』。いやいや……まさしく拷問のプロフェッショナル。こちらの反抗の意志をここまで叩き折るとは。なんという純真。一途さ。本当、こちらからすれば迷惑なんですが」
「…………」
「いやしかし、わたしが言うのもなんですが、彼女は生かしておいてよいのですか? わたしは予言しますよ。彼女の存在はいずれ君に害をなす。君の存在が、この国に害をなすように」
「…………」
「いや、失礼。これは余談ですよ。では本題に入りましょうか。わたしが何で今回ことを起こしたか。それを聞きにきたんでしょう?」
「…………」
「答えは簡単。それがオムカのためになるから。それ以上でもそれ以下でもありません」
「…………」
「以前君は言いましたね。オムカのためにならないことをしたらわたしを殺すと。でも少し考えてみてください。君を権力の座から降ろすこと。それがどれだけこの国の利益になるか」
「…………」
「いや、利益とは少し違いますね。崩壊を止める唯一の方法というべきですか」
「…………」
「さっきも言いましたが、君の存在はオムカに害をなす。考えてもみてください。今やジャンヌ・ダルクの名前は大陸中に響き渡っている。オムカの女王の名前を知らずとも、ジャンヌ・ダルクの名前を知らない者はいないといわんまでにね。ま、大半は君に家族を殺された人たちですが」
「…………」
「そんな状況、歴史に詳しい君なら知っているでしょう? そう、天に二日なし。空に太陽が1つしかないように、国の支配者は1人でなければならない。1つの国に実力と人気を備えるものが2人いれば、確実にその国は割れる。そして滅ぶのですよ。ま、君には釈迦に説法でしょうが」
「…………」
「そんな気はないと? それを君が言ったところで何ら意味がないのはわかるでしょう? 人間なんて別れて群がりたいどうしようもない愚物ばかり。派閥を作るのが大好きなのです。望む望まないにかかわらず、必ず君を担いで女王様を廃するような動きが出てくる。あるいは敵国につけ入る隙を与えることになる。離間の計でしたっけか? わたしはそれを防ぎたかったのですよ」
「…………」
「だから古来より、有能な家臣は粛清の憂き目にあってきた。狡兎死して走狗烹らるのことわざ通り、有能な家臣は必要なくなれば殺される。だからわたしはこの国のため、そして君のために立ち上がったんですよ。いや、こういうと誤謬がありますね。私は1ミリも立ち上がってはいない。なぜならわたしは何も動いていないのですからね」
「…………」
「さて、そして今です。こうして君が直々に来て、わたしの言い分を聞いて黙っているということは。わたしの処分は保留ということで良いのですかね? そうだとありがたい。これでも命は惜しい方だ。そもそも君との約束は破っていないしね。なにより毎年宰相が変わるというのはあまり国にとってよくないことだろうからね」
「…………」
「黙ってないで何か言ってくれませんか? そろそろわたしだけでしゃべるのも疲れてきました。君の生の声を久しぶりに聞かせてくれるとありがたい。そうすればわたしも安心できるのですから」
「…………お前」
「うん。なんでしょう?」
「お前、やっぱり最低だな」
「ありがとう。その言葉が聞きたかった」
「…………」
「ああ、これですか。無様な格好でしょう? 君の彼女にやられたのですよ」
「…………」
「いやはやしかし……君の彼女。とんでもないですね。50もの精鋭が、一瞬でしたよ。肉塊になるのに」
「…………」
「それからわたしの鼻骨と左足を折って、両手の指を丁寧に一本ずつへし折った後に両肩を脱臼させて、地面に倒れたわたしの背中をギリギリと踏みつぶすようにして来ました。あと少しで、背骨を折られていたかもしれない。何です? 彼女、骨に恨みでもあるのですか?」
「…………」
「しかもそのあとの彼女の言葉ですよ。『あなたを殺せば明彦くんが困る。だから、命は取らないであげる。死なない程度に憂さを晴らさせてもらうから。それで私を思い出して。明彦くんの邪魔をするなら、それよりもっとひどい目にあわせることができるって』。いやいや……まさしく拷問のプロフェッショナル。こちらの反抗の意志をここまで叩き折るとは。なんという純真。一途さ。本当、こちらからすれば迷惑なんですが」
「…………」
「いやしかし、わたしが言うのもなんですが、彼女は生かしておいてよいのですか? わたしは予言しますよ。彼女の存在はいずれ君に害をなす。君の存在が、この国に害をなすように」
「…………」
「いや、失礼。これは余談ですよ。では本題に入りましょうか。わたしが何で今回ことを起こしたか。それを聞きにきたんでしょう?」
「…………」
「答えは簡単。それがオムカのためになるから。それ以上でもそれ以下でもありません」
「…………」
「以前君は言いましたね。オムカのためにならないことをしたらわたしを殺すと。でも少し考えてみてください。君を権力の座から降ろすこと。それがどれだけこの国の利益になるか」
「…………」
「いや、利益とは少し違いますね。崩壊を止める唯一の方法というべきですか」
「…………」
「さっきも言いましたが、君の存在はオムカに害をなす。考えてもみてください。今やジャンヌ・ダルクの名前は大陸中に響き渡っている。オムカの女王の名前を知らずとも、ジャンヌ・ダルクの名前を知らない者はいないといわんまでにね。ま、大半は君に家族を殺された人たちですが」
「…………」
「そんな状況、歴史に詳しい君なら知っているでしょう? そう、天に二日なし。空に太陽が1つしかないように、国の支配者は1人でなければならない。1つの国に実力と人気を備えるものが2人いれば、確実にその国は割れる。そして滅ぶのですよ。ま、君には釈迦に説法でしょうが」
「…………」
「そんな気はないと? それを君が言ったところで何ら意味がないのはわかるでしょう? 人間なんて別れて群がりたいどうしようもない愚物ばかり。派閥を作るのが大好きなのです。望む望まないにかかわらず、必ず君を担いで女王様を廃するような動きが出てくる。あるいは敵国につけ入る隙を与えることになる。離間の計でしたっけか? わたしはそれを防ぎたかったのですよ」
「…………」
「だから古来より、有能な家臣は粛清の憂き目にあってきた。狡兎死して走狗烹らるのことわざ通り、有能な家臣は必要なくなれば殺される。だからわたしはこの国のため、そして君のために立ち上がったんですよ。いや、こういうと誤謬がありますね。私は1ミリも立ち上がってはいない。なぜならわたしは何も動いていないのですからね」
「…………」
「さて、そして今です。こうして君が直々に来て、わたしの言い分を聞いて黙っているということは。わたしの処分は保留ということで良いのですかね? そうだとありがたい。これでも命は惜しい方だ。そもそも君との約束は破っていないしね。なにより毎年宰相が変わるというのはあまり国にとってよくないことだろうからね」
「…………」
「黙ってないで何か言ってくれませんか? そろそろわたしだけでしゃべるのも疲れてきました。君の生の声を久しぶりに聞かせてくれるとありがたい。そうすればわたしも安心できるのですから」
「…………お前」
「うん。なんでしょう?」
「お前、やっぱり最低だな」
「ありがとう。その言葉が聞きたかった」
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