知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第5章 帝国決戦

第0話 ある知力99の軍師の想い

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 最近、ふと思う。

 俺は一体、何のために戦っているのだろう?

 元の世界に戻るため。
 正解。そのために俺は戦っていた。

 死なせたくない人がいるから。
 正解。守るためには戦うしかなかった。

 自分が死にたくないから。
 正解。殺されない状況を作ろうとしたら、戦うしかなくなった。

 けど、本質的にそれらが正解かというと、俺は首をかしげざるを得ないと思う。

 本当にそのためには戦うしかなかったのか。
 話し合いや融和で解決することはできなかったのか。

 そして――本当にその必要があったのか。

 里奈とも合流できた今、元の世界に戻る必要があるのか。
 死なせたくないなら、さっさと降伏してしまった方がいいのか。
 死にたくないと思っても今更で、すでに俺は一度死んでいるのだ。

 そんな俺だけの思いで、数千、数万の人を殺してよい免罪符にはならない。

 戦争なんてものは、所詮は少人数の独善と野望の果てのものでしかないのは歴史が証明している。
 どんな大義名分を掲げようと、どれだけ荘厳美麗そうごんびれいな字句を並べようとも、やっていることは侵略であり、破壊であり、略奪であり、殺人なのだ。

 戦国時代の武田信玄は、米の育ちにくい山間部にいたから他国から奪わざるを得なかったというわけだが、侵略される側としてはいい迷惑だ。
 逆に上杉謙信なんかも、頻繁に関東出兵していた理由は一説では口減らしのために無理やり出兵していたのでは、という説もある。

 どういう思惑があるにせよ、誰かの利益のために誰かが犠牲になるというのは、そうそうあってはならないことだろう。

 もちろん、人間社会である以上、物事には勝敗が付きまとい、誰かの利益になったその反面、誰かが犠牲になるのは当然のことではある。
 けれど、命を奪うほどのものなのか、というのは首をかしげざるを得ない。
 例えばスポーツで負けたとしても、その悔しさをバネにリベンジをすることだってできるし、違う道で大成する可能性だってある。

 けど、戦争は違うのだ。
 命を失ってしまったら、リベンジも別の道もあったものじゃない。

 だから戦争というのは、殺人というのは最も忌むべきものとして古代から定められており、かつ、それでも争うことをやめない究極の矛盾をはらんだ存在なのだ。

 そう考えた時。
 これまで引き起こされた争いは、これから引き起るだろう戦いは。
 完全に個人の独善と野望によるものと言えないだろうか。

 俺が戦う、その理由。
 そのために起きた争い。

 もしかしたら、この世界に俺がいなければ、ここまで戦いがもつれこんで人が死ぬことはなかったのではないか。
 手前みそで自意識過剰で驕った考えかもしれないが、あるいはと思えてしまうのだ。

 オムカが独立なんてしなければ、今頃は帝国が大陸を統一してすべてが終わっていたかもしれない。
 その方が万民が幸せかは別として、犠牲は俺が戦うことによって消えた命よりははるかに少ない可能性は否めない。

 もちろん、命の量でことの善悪を論じるのは、愚かを通り越して滑稽であると言えよう。
 この世に死んで良い人間はいない。それが大前提としてあるのだから。

 ただ1点。
 威張れるものではないけど、俺がやってきたことの中で誇れるもの。
 それはいついかなる時も前線に俺はいたということ。
 自らが戦争を唱え、それでいて安住の地で平穏を謳歌おうかするような恥知らずの人間ではないことが、俺にとっては少なからず誇りであると思っている。

 責任がある者は責任を取るべく行動をしなければならない。
 できないならそもそも事を起こしてはならない。

 そう俺は考える。

 だけど、そんな誇りなんてへの役にもたたない。
 あるいは、俺は自分をそれほど影響のある人間だと思っていないが、あるいは。
 俺がいなければ、あるいは俺が早々に死んでいれば、守れた命も、消えなくてよかった命もあるんじゃないか。

 そう思ってしまうと、自分が嫌になる。
 自分の存在が世界にそこまで迷惑をかけているのなら、人々に不幸の影を背負わせようというのなら。
 こんな二度目の生なんて欲しくなかった。

 それでも、だ。
 それでも、家に帰りたい、誰かを守りたい、死にたくない。

 そう思うのはそんなに罪深いことなのだろうか。
 責められるほどの悪行なのだろうか。
 それらは人間が――生物が原始より持つ当たり前の精神なのではないだろうか。

 もちろん自己正当化をはらんだ自己陶酔で自己弁護のヒューマニズムでしかないのは重々承知だ。

 それでも。
 それが、原始より刻まれた精神が駄目だというのなら。
 俺がここで生きる意味は、戦う意味はなんだという話になる。

 逆に簡単に命のやり取りが行われて消えていくこの世界が、やっぱり狂っているのであって。
 俺はその激流の中で、必死に抗うようにして踊っている草船でしかないわけで。
 そんな責任転嫁ともとれる思いを抱いてはいけないのだろうか。

 分からない。
 結論は全て闇の中だ。
 あの女神のいる空間のように。

 こんな思考など、有史以来、いくどとなく語り考え尽くされた議論なのかもしれない。
 そしてそれは到達することのない、永遠の命題ともいえるものなのかもしれない。

 それでも、こうして状況が煮詰まって、ついに帝国との大陸を二分する戦いに決着がつこうという時だ。

 俺が戦う意味。
 俺が生きる意味。

 それをもう一度、洗いなおさなければ。
 あるいは、俺は戦う意味をなくしてしまう。
 生きる意味をなくしてしまう。

 そんな気がした。
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