知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第5章 帝国決戦

第43話 (ある意味)惨劇の夜に、決意の夜に・後

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 思考がフル回転で回り、その演算の結果を弾き出す。
 まずはクロエを抱き込む。あとで色々してやると耳打ちすればイチコロだろう。
 マリアはとりあえず別の遊びをしようと提案すれば行けそうだし、ミストに至っては金でどうにかなる。里奈はもうここまで来てるなら酔い潰せば問題なし。問題はニーア。だがそこはマリアになんとかしてもらうか。

 ここまで0.3秒!

 悪女?
 いやいや、策士と言ってくれ。

 だからここは口約束。
 舌先三寸口八丁。
 まずは手錠を外させてからどうにかする!

 だが――

「じゃあこの誓約書にサインするさ」

「え?」

「手錠を外す代わりに、その日の残りの時間、撮影に協力するという誓約書さ。違約金は50億コル。きっと払えないだろうから、月1回の会員の握手会と撮影会。あとCDデビューに全国営業を5年続けることになるさ」

 なにその最悪の悪徳芸能プロダクション的な誓約書。
 人生終わらせる気?

「ええい、うだうだ言ってないでさっさと着替える!」

「そうだ、そうだ! 明彦くんのちょっといいとこ見てみたい!」

 ヤバイ、この2人。
 完全に飲み会のモード……。

 てか里奈、酔うとそんな感じなのね。

 だがここで流されたら負けだ。
 こんな時こそ頭を働かせるんだ。

 相手は酔っ払い。
 なら頭脳戦に持ち込んで、一気に内容を反故にさせてぐだぐだにさせる。
 それが最もベスト!

「いや、ちょっと落ち着け。ここは公平にじゃんけんで勝負――」

「え?」

「は?」

 あ、ヤバイ。これ断ったら殺されるやつ。
 そんなことを一瞬で思ったほど2人の――オムカ王国最強の2人の殺意に満ちた視線を受け、俺の背筋は凍り付いた。

 くそ、腕力でこられたら、それこそ何をされるか分からない。そして煙に巻こうにも、酔っ払い相手には下手な道理も通用しない。

 しかもマリアも期待したような視線を向けてくるし。

「あぁ、もう! やってやる!」

 俺の決意の咆哮に、部屋にいる連中が騒ぎだす。

 こうなったらなるだけ露出の低い服に着替えてお茶を濁す。
 その間に酒をどんどん追加して、相手の主力2人をつぶせば勝ちだ。

 ミストの契約書も、撮影会に協力するというだけの内容だから、別にどんな衣装でも構わないだろうし、なんならミストの方から撮影会を打ち切りにするよう仕向ければ、契約はそれで終わりだ。

 というわけで時間稼ぎのために、布地が多くて着替えにくいものを――

「……これ、紐なんだけど?」

「そりゃあそうじゃなきゃ紐パンとは言わないさ」

「……これ、面積が足りないんだけど」

「そりゃあそうじゃなきゃ際どい水着とは言わないさ」

「……これ、明らかに透けてるんだけど」

「そりゃあそうじゃなきゃシースルーとは言わないさ」

 駄目でしたー。
 てかなんだ、このチョイス。悪意しか感じないぞ!

「ふっふっふ、甘いさアッキー。そうやって露出の少ないものを選んでお茶を濁そうなんて、この大商人ミスト様の前で通用するなんて思うなさ!」

「く、くっそー! やられたー!」

「ん、ジャンヌは着ないのかの? なら余が着るのじゃー」

「全力でやめろ!」

「あぁ、隊長殿がこんなものを……こんなものを……」

「うん、クロエ。お前は病院へ行け」

「ほらほら、ジャンヌ。早く着替える着替える。それとも、お姉さんに脱がさせて欲しい? ほら、こうして……あふぅ、ジャンヌの肌きれー」

「明彦くんももう飲める年だよね? よね? うー……それとも、あたしのお酒が飲めないの? 明彦くんの馬鹿! こうなったらもうギュー、だ!」

「ちょ、お前ら……脱がすな、くっつくな!」

 セクハラ&パワハラ女2名に囲まれ、なぜかシャッターを切るミストに、顔に手を当て上気させながらも隙間から食い入るように見てくるクロエ。
 さらに余もやるのじゃー、とメイド服に着替えたマリアが乱入してきてもう支離滅裂。

 なんだこれ。
 なんなのこの状況?

 もはや地獄絵図なんだけど。
 女4人が男に女の子の格好させて何が楽しいのかまったく分からないんだけど。


 ――というわけで。

 なんだかんだでどんちゃん騒ぎは収まらず、ニーアと里奈、そしてミストを加えた年長者3名は速いピッチと、疲れもあったのか、幸運なことに早々と酔いつぶれて爆睡してしまった。
 クロエは途中で体調不良で退場していた。なんなんだあいつ。

 そんな状況を生き残ったマリアと眺めながら嘆息。

「ったく、どうしろってんだよ、これ」

「まぁ、久しぶりにジャンヌと一緒で楽しかったのじゃ」

 約2名はずっと一緒だったはずなんだけどな。

「あふぅ」

 マリアが小さくかみ殺したようにあくびをする。
 もういい時間だ。

「もう寝るか?」

「ん……いや、もうちょっとお話ししていたいのじゃ」

「そうか」

 マリアがいつ倒れても大丈夫なように、2人でベッドに腰かける。

「んふふ、楽しいのぅ。やっぱりこうやってみんなと一緒にいるのが一番じゃ」

「ま、それなら何よりだよ」

 ちなみに今の俺の格好はナース服(メイド・イン・シータ王国)。
 もう何も考えないようにしたから、恥ずかしいとかそういう気持ちは時空のかなたに消し去った。

 そしてマリアはセーラー服(メイド・イン・シータ王国)。
 これがまた微妙に似合っているのだからしょうがない。
 まぁ彼女もお年頃と言えばお年頃だしな。

 はぁ、というかなんでこんなことに。
 そもそも大事な話があるというところから色々おかしかった。

「結局大事な話なんてないじゃないか」

「いや、違うのじゃ。ちゃんとあるのじゃ」

「はいはい、どうせ俺を着せ替え人形にすることが大事なこととか――」

「余も参加するのじゃ」

「は?」

 振り向く。
 そこにはこれまでのことを喜んでいる無邪気な少女ではなく、一国の主として皆を導く立場にいる女王の姿があった。セーラー服だけど。

「余も、その講和の会議に参加するのじゃ」

「はぁ!?」

 それは、また。
 どういうことだ?

「それと、その前に皇帝と話をしたいのじゃ。2人きりで」

「…………」

 人間、あまりに驚きが大きいと言葉が出なくなるようだ。

 俺はマリアを見ながらも、数秒、いや十数秒止まった。
 思考も止まった。

 ようやく動き出した頭で、なぜここでマリアが停戦交渉に行き、皇帝と話すかを考える。
 分からない。

 いや、停戦交渉にマリアがおもむくのは分かる。
 国の代表として、帝国では煌夜が来るだろうし、皇帝もそこにいる。
 ならこちらも代表がいないのでは、対等の状況とは言えない。

 いくら内容が対等の条約でも、締結の場に国家元首がいるといないとでは重みが違う。
 要はそんな大事な場でも代理に任せるような脆弱な国主、とみられてしまうのだ。

 そうなったら今後、ただでさえ差がある国力にさらに差がつく可能性は否めない。
 だからマリアの参加に異議はない。むしろそう立候補してくれたことに感謝さえする。

 だが皇帝と話がしたいというのはまた話が変わる。

「なぜ、そんなことを?」

「んと、えっと……」

 マリアは眠い頭で必死に言葉を選んでいるようだ。
 そして言ったのが、

「仲良くするには、お互いのことを知らなきゃ駄目じゃろ?」

 あぁ、なるほど。
 その一言だけで得心した。

 彼女の中は何も変わってない。

 いや、1つ遠くに飛躍した。

 皆、仲良く。一緒に。

 その理念は今、国を超えた。

 正直、俺の見立てはまだまだのようだ。
 まさかこのマリアが、この人見知りで恥ずかしがり屋で独善的で変態でちょっと残念仕様の彼女が。
 まさかそこまで、圧倒的な平和を望んでいるなんて。

「だ、駄目かの……」

 まったく、そんな顔しちゃ止められない。
 いや、彼女の邪魔をしちゃいけない。
 彼女が望む、平和のための道を。

 そうだ。彼女がそう望むなら、そのしるべとなり導くのが俺の仕事。
 だからここは潔く賛成する。そして全力で手助けをするんだ。

「分かった。なんとかするよ。ただし、無茶はするなよ」

「分かったのじゃ!」

 目いっぱい嬉しそうな顔でほほ笑むマリア。

 まったく、分かってるのかね。
 分かってるんだろうな。
 あぁ、もう。なら何も言えないって。

「でも、ジャンヌは本当に良いのかの? 元の世界に戻るというのは……」

「ああ、いいんだ。俺たちのために、マリアたちが辛くて悲しい目に遭うのは、やっぱりなんか違うし」

 それに、この世界も捨てたものじゃない。
 そう思えたから。
 お前に、出会えたから。

「? なんじゃ、じっと見て。は、恥ずかしいのじゃ」

「いや、なんでもないよ」

 だから後悔はない。
 皆には悪いけど、俺はこの道を行く。

 誰も傷かず、悲しむことのない、平和への道を。
 そう、確かに思ったんだ。
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