知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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間章 それぞれの決断

間章7 クロエ・ハミニス(オムカ王国クロエ隊隊長)

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「というわけで、緊急事態です!」

「そうか、緊急事態だな。貴様の頭が」

「なんでウィットはすぐ噛みつくかなー!」

 まったく、本当にウィットはわかってない。
 何が重要なのかもわかってないのだ。

「貴様が言う緊急事態はほとんど大したことないからな」

「そういえば前もあったよね。隊長がかまってくれないとか」

「あー、あったねー。ビンゴに行ってた時だねー」

 こうして夜な夜な、忙しい合間を縫ってウィット、ルック、そして王都に運ばれて療養中のマールに集まってもらったのだ。
 そんな程度の低いことを話すわけないじゃない!

「それはちょっとこのクロエさんをなめすぎじゃないかな? もはや隊長となった私は、以前までの私じゃない! そう、ニュー・アッパー・クロエ隊長と呼んでもらおうかな!」

「ほぅ、そこまでなら当然ちゃんとした内容だろうな? オールド・ダウナー・クロエ組長」

「なんか劣化してる!」

 むぅ、本当にこの男はやかましい。
 けどまぁいいや。きっとこれを聞けば、おおさすがは隊長、と認めなおすに違いない。

 だから私はすうっと吸い込み、

「隊長殿が構ってくれない!」

「よし、帰るぞマール、ルック。というかこれ、もう強権発動していいよな? 隊長に報告して解任動議を発動していいよな!」

「う、うーん? そうなの、かな?」

「あははー」

 あれ? ちょっとなんか変な様子?
 あ、てかもしかして言うの間違えた!?

「ちょっと待った! 今のなし! 間違い!」

「貴様な……そろそろいい加減にしろよ? これでも抑えてる方だぞ? 次にもし隊長が、とかって出だししたら、本当に解任させるからな?」

「え、いや、その、えっと……隊長殿が――」

「よし、聞いたなマール、ルック。解任だ。明日にでもこれを隊長に――」

「隊長殿が変なの!」

「へ?」

 3人の目が点になる。

 あれ? また間違ったかな。
 いや、今度はちゃんと言えた。
 隊長殿が変だって。

 なのにこの反応は何だろう?

「……変? 隊長が?」

 マールが心底不安そうに首をかしげる。

「あははー、やっぱり訳が分からないねー」

 ルックはなんだかもう色々と放棄してる感じ。
 そして残るはウィットだけど。

「隊長って、貴様が変なのは元からだろ?」

「違うって、隊長殿! ジャンヌの隊長殿のこと!」

 もう、なんで通じないかなー!

「…………いや、まぁ確かに講和会議の後はひどい感じだったが」

「そうじゃないの。いや、それもそうなんだけど、最近変なの」

 一応、リナさんから話は聞いた。
 落ち込んでるのを励ました、ということは。

 けど再び一緒に暮らしていく中で、ちょっと、というかかなりの変化が見られたりするのだ。

「変ってなぁ……」

「そういえば最近会ってないから分からないかなー」

「ちなみに具体的にはどういうところが変なの?」

 マールの質問に、私は最近で一番の出来事を公開することにした。

「なんと昨日、一緒にお風呂に入ってくれました」

「おい、誰か金づち持ってこい。こいつを撲殺する」

「まぁまぁー、クロエにしてはすごい変化だったんじゃないかなー? だよね、マール?」

「それは羨ま――」

「え?」

「げふんっ! じゃなくて、確かにいつものクロエと隊長を見てると少し変かな?」

 なんか今、マールが変なこと言わなかった?
 ま、いっか。

「で、で! ほかには何かないの?」

「あとは、うーん、うーん……」

「ほら、何もないだろ。どうせこいつの思い違いだ。これ以上は時間の無駄だ」

「強いてあげるなら今までなかった寝坊したり、朝食を食べなかったり、ぶつぶつと独り言いったり、道行く人にぶつかったり、人の名前間違ったり、お鍋を焦がしたり、お風呂でおぼれかけたり、夜はなんか寝言が激しかったりするくらいかな。あ、あとそんな隊長殿を見てニーアがブチ切れ寸前だったり」

「重症じゃない!」

「てかそっちを先に言え!」

「いやー、さすがクロエだね。優先順位のあたり」

 なんか3人同時に怒鳴られた。
 ちゃんと言ったのになんで……。

「えっと、それって完全に疲れてるんじゃなく? 前もあったよね、隊長が働きすぎて倒れた時」

「ううん、ちゃんと夜は寝てるし、あの時ほど変な感じではなかったかな。どちらかというと、生気がないとかそっちの方」

「それは……やっぱり、講和の?」

「多分。一応、リナさんに元気づけられたみたいだけど、前みたいな感じとは違うのは確か」

「うーん、隊長がそこまで思い詰めてるってことなのか……」

「確かにこれは緊急事態だねー」

 ようやく事の重大さが分かったみたいで、ほっと一安心。
 本当は自分だけで解決して、隊長殿によしよしをしてもらいたかったけど、もう時期が時期だ。

 あと数日したら停戦が終わる。
 だからこそ、クロエ隊の知恵を借りたかったわけで。

「しかし、俺たちに何ができるか……」

「かぁーつ! ウィットは諦めがよすぎ! そんなんだから私に負けるの!」

「なっ、それとこれは関係ないだろ! 今なら貴様に圧勝だ!」

「なら今すぐやる!?」

「おう、受けて立つ!」

「はいはい、あんたらはもうその辺にしなさい」

 ヒートアップしたところにマールが仲介に入ってきた。
 むぅ、影の隊長は相変わらず適格だ。しょうがない、ここはマールに免じて許してあげよう。

 だが愚かなウィットは収まらなかったようで、

「マールは黙っててくれ! いい加減、俺はこいつと決着をつけなきゃ気が済まん!」

「ウィットが熱くなってどうするのよ。監察官なら冷静に、公正にならないとダメなんじゃない?」

「けが人がとやかく言うな! お前は大体――」

「……あ痛たたたー。叫んだらお腹の傷がー。皇帝陛下を守った名誉の傷がー。ウィットのせいで痛いなー」

「え?」

「これ以上反論すると、お腹の傷が開くなー。そうなったら隊長は悲しむだろうなー。残念だなー」

「ぐっ……卑怯な。わ、分かった。怒鳴ってすまなかった」

 おお、マールが怪我を持ち出してウィットを黙らせた。
 ちょっと腹黒な感じになってるマール。成長してる!

「んー、でもやっぱりこれは難しい気がするかな」

「そんな、マールまで!」

「あ、いや。難しいって話。リナさんがやってダメだったんだから、ちょっとやそっとじゃどうしようもないと思う。下手に元気づけようとしても、逆効果になる可能性もあるし」

「八方ふさがりだねー」

「そうだな。俺たちができるのは、隊長のために命を捨てるくらいだろうが、それもあの人は――」

「それだ!」

「え?」

「隊長殿に私の心意気をぶつければいいんだ!」

「貴様の?」

「心意気?」

「あー、またクロエが飛ばしてるねー」

 なんかルックに不当な評価をもらった気がするけど、この際パス。

「ちなみに聞くけど、皆も何があろうと隊長殿についていく? その覚悟がある?」

 いないとは思うけど、これからやろうとしているのは、それ相応の覚悟が必要。
 隊長殿にその心意気を示せば、きっと元気になる、はず!

「なめているのか、貴様。愚問だろう」

 いちいち偉そうにしないとしゃべれないのか、ウィットは。

「この体でどこまでできるかわからないけど、もちろん」

 マールは本当に頼もしい。その献身ぶり、素敵だ。

「なんとかやってみせるよー」

 ルックは……うん、たぶん大丈夫。

 とはいえ、ちゃんと幹部全員の心境を改めて知れたのはよいこと。
 なら、あとはもう隊長殿にこの気持ちを分かってもらえれば、きっと元気になってくれるはず!

「はい、もう分かったんで解散です、解散ー!」

「ちょ、おい! 解散って……貴様、何するきだ!?」

「ウィット、私たちにできることはやったわ」

「そうだねー。こうなったクロエはもう止められないかなー」

「ぐぐ……おい、貴様! 隊長に変なことをしたら、それこそ許さんぞ!」

 まったく失礼な。
 私が隊長殿に変なことをするわけないじゃない。こっちがもたないって。
 てかウィットに許されるためにやるんじゃないし。

 というわけで、早速、その日の夜に作戦を決行することになった。

 名付けて『隊長殿を元気にしよう! これが私の生きる道』作戦スタート!

 切り出すタイミングは見定めた。
 夕飯の後、2人きりで食後のティータイムの時間だ。

「あの! 隊長殿!」

「……ん、どうした?」

 突然声を張り上げたからか、少し驚いたように目を見開いた隊長殿。
 だけどどうも反応が薄い。

 どうする。
 ここで例のプランを決行するか?

「えっと、ですね……」

 いや、無理!
 隊長殿のことならいくらでも恥知らずになれるけど、今度ばかりは無理!
 てゆうか飛んだ。隊長殿を元気づけるための100の言葉も、私の心意気も、何もかも全部。頭真っ白!

 けど今更、言葉をひっこめられない。
 なら少しでも何か、隊長殿を元気づけられるような言葉を。
 もうわからないから即興で行く!

「私は……その、ウィットやマールやルック、それ以外の元ジャンヌ隊のみんなは……その、大丈夫ですから!」

「はぁ……」

 あぁ、大失敗!
 誰だ隊長殿を元気づけようなんて言い出したのはい私ですすみませんでした!

 あー、もう。何を言っていいかわからない。
 だから思ったこと、感じたこと、それをすべて、言葉に乗せてぶつける。

「私は、私たちは、たとえどんなことになろうとも、隊長殿をお守りし、ともに戦うことを誓うのです!」

 正直、なんの話だと思う。
 言うことに欠いて、そんな当然のことを今更。

 きっと隊長殿もあきれ果てているに違いない。
 だからそのお顔を見るのが少し怖くて、でも怖いもの見たさでちらっと視線を上げると、

「そう、だな。ありがとう、クロエ」

 そう言ってほほ笑む隊長殿。
 そのお顔に屈託はなく、久しぶりに見た隊長殿の素敵笑顔に、あれ、なんだろう、視界が……揺れる。

 あー、やっちゃった。
 けどしょうがないよね。
 そんな満点の笑顔を見せられちゃ。

 もう、尊すぎて、私の意識は耐え切れずにブラックアウトした。
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