知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第12話 死んでる?死んでない?

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 総力戦とも言える、あの壮絶な戦いがあって3日。
 それまで敵は動いてこなかった。

 その理由として、元帥が死んだという話が出ている。

 だがそれは嘘だ。
 その理由を俺は知っている。

 ボージャンという男。
 どうやらあの元帥の副官らしいが、その言動をスキルで見る限り、まだ元帥が復調していないが生きていることが分かる。

 とはいえ帝国軍の最高責任者であり、精神的主柱でもある元帥が重傷を負って倒れているなんてことを許せば、味方も不安に思うに違いない。
 だから元帥が死んだ、という噂を流した。
 その噂に乗ってのこのこ出てきた俺たちを返り討ちにするための嘘で、そのため元帥は死んだふりをしているのだ、と伝えれば部下たちの士気も落ちないし、現実に俺たちが出ていけば迎撃する仕掛けはあるはずだ。
 どちらに出てもうまみがある策のつもりだろう。

 けど残念ながら、それはもうお見通しなんだよなぁ。
 相手の内情を包み隠さず筒抜けになるスキルのおかげ。いやー、チートチート。

 とはいえ、噂はすでに上にも下にも浸透していて、3日も休めば元気いっぱいという者たちだ。
 打って出るべし、という意見が多くなってきた。

「敵のトップが死んだんならチャンスだろ! 今こそ帝国をこの大陸から叩き出してやろうぜ!」

 主戦派の筆頭はやはりというかサカキ。

「うむ! 今こそ我が王国を滅亡の間際まで侵した帝国に裁きの鉄槌を! さぁ、行くぞメメンダー!」

「いや、なんでそうなるんすか。でも好機を逃すのはよくないと思うっすね」

「はいはい! 隊長殿! こうなったらクロエ隊が先陣切ってやります!」

「だから貴様はなんでそんな単純なのだ! いや、攻めることは反対ではないのだが、貴様が出て何になる!」

 そして騎馬隊の2人と、あとはいつもの元気組いったところ。

「しかし相手の罠ということもあるでしょう。ここは慎重にことを運ぶべきかと」

「ええ。いかにもな流言に見えます。ジーン総司令官はよくものを見ていらっしゃる。さすがはジャンヌ殿が見出したお方」

「悪いけど私もこっちよ。理由? 理由は……雫の勘よ。悪い?」

 対する慎重派は、ジル、天、水鏡。そしてマール、ルック、雫と続く。

「ま、俺はどちらでもいいがね。やれと言えば従うだけさ」

 などといって中立を宣言するのはクルレーンだった。

 はぁ、しかしまんまと流言に乗って真っ二つになってるじゃないか。
 やれやれ。

「ジャンヌ様。ぜひご意見をお聞きしたい」

 俺が何も言わないので、ジルが俺に意見を求めてきた。
 ほかのみんなも口をつぐんで、俺に期待(もちろん支持してくれるだろうという願望込み)の視線を向ける。

「そうだぜ、ジャンヌ。さっさと出て、帝国をぶっ倒そうぜ。今がチャンスだろうがよ」

 サカキが急き立てるように、言い募ってくる。
 何か焦っているような言い方に、少し不信感を抱く。

 だが俺としてはすぐに答えを言うわけにはいかない。

 というか答えを知ってるわけなんだけど、じゃあ何で、となったらスキルのことを説明すると若干億劫だ。
 だからちょっとした芝居を打つことにした。

「ん、分かってる。ちょっと待ってくれ。もうすぐイッガーが戻る」

「イッガー?」

 ジルの疑問に俺は答えず、机をトントンと鳴らして、さも悠長に構えているように見せる。
 その音が合図だった。

「失礼します」

「入ってくれ」

 ノックの後にドアが開きイッガーが入ってくる。
 少し息を切らせているが、もちろん演技だ。

「どうだった?」

「どうやら敵の元帥は重傷の模様。しかし、死んだ、というのは嘘のようです。そのため敵軍は戦意高揚。こちらを待ち構えて糸を引いている模様」

 おお、とその場にいた全員が息をのむ。
 ここまで克明な情報が入ってきたことに驚いているのだろう。

 まぁ、もちろん敵陣潜入などはしてなくて、俺が得た情報をさもイッガーの手柄のように話してもらっているわけだけど。
 仮に俺がそれを知らなくても、イッガーならそれくらいの情報は得てくるだろうから、時間と危険を省略した形だ。

「なるほど、ということはやはり罠ですか」

「いや、でもあの総大将は怪我してるんだろ? じゃあやっぱりチャンスじゃねーか」

「しかし相手にはまだ大将軍と、もう1人、軍を指揮できる人間が確認されています。迂闊に飛び込むわけにはいかないでしょう」

「むむむ! ならばみすみす我がビンゴ王国の仇を逃すというのか!」

 と、再び議論が白熱してくる。

 だがそれも長くは続かない。
 結局は平行線ということになるからだ。

 だから声が静まり始めたころを見計らって、小さく、だが強く机を叩く。

 それでその場は水を打ったように静かになり、みんながこちらを向く。

「ちょっと俺の意見を聞いてほしい」

 結論の出ないままグダグダになった場は、必ず何かしらの方向性を求めるようになる。
 つまり会議を仕切る人と、方向性を示す人だ。

 とはいえここで我を出して押し切っては反対派の意見は切り捨てられたと不満を持つことになる。
 だからあえて出すのは提案。
 そして可能なら折衷案。

 今回はそれが出せる場だ。

「俺は打って出るべきだと思う」

 その言葉に主戦派は喜色を浮かべ、慎重派は落胆の色を浮かべる。
 これでは慎重派に不満が残る。
 だからこその折衷案。

「だがさっきの報告を聞く通り、明らかに罠だ。出撃するが敵を攻めない。それが俺の意見だ」

「でもよぉ、ジャンヌ。じゃあ何のために出るんだよ」

「ええ、敵を攻めないのであれば打って出る必要もないのでは?」

 サカキとジルの両派閥筆頭が指摘してくる。
 それもある程度予想済みだ。

 だから1つ1つ、順を追って説明する。

「1つ、敵の立場に立って想定をしてみようか。敵は元帥の死を偽装している。何のためか。俺たちが疑心暗鬼になって分裂したり、調子に乗って攻めてくるのを迎撃するため。あるいは元帥が復帰するまでの時間稼ぎということも考えられる」

 俺の意見に皆がうなずく。
 そこまでは皆も分かってるはずだ。

「つまり相手は俺たちの行動に合わせて、それに対応した戦術を行おうとしている。これは一見、受け身に回っているように見えるけど、その実は主導権を握ってるのはあちらだ。ではその主導権は何か? 分かるか、クロエ?」

「…………え!? わ、私ですか!? えっと、その……えっと……わかりました! お城ですね! お城にこもれば安全って!」

「馬鹿か貴様は! ここは兵の練度、士気、補給路の確保といった様々な条件が折り重なって相手が有利になってるに決まってるだろ」

「いや、ウィット。それもあるけど、ここはクロエで正解だ」

「え……」

「ひゃっほー! やりました! 隊長殿の一番弟子がやってやりましたよ! はっはー、ウィット。自信満々に『決まってるだろ!』なんて。はっずかしー! これに懲りたら私を怖れ敬うのです。貴様呼びなんてするなです。あ、痛い痛い! 隊長殿、ウィットがいじめるー!」

「そう、つまり地の利だ。相手は城を防御施設として城にこもれる。城攻めは城兵の3倍以上の兵で攻めるのが常道だ。けど今兵力は拮抗しているし、攻城兵器も少ない。あとはウィットの言った士気や補給路といったところもあるから簡単には落ちない」

「がーん! 隊長殿に無視された……」

 悪いけど今はそのテンションに付き合ってる場合じゃないんだよなぁ……。

「しかしジャンヌ様。それではますます打って出る意味がないのでは? それと攻めないというのがどう相いれるのでしょう?」

「ああ、ジル。なら発想を逆転させればいい。城を攻めるのは兵も足りないし危険だ。ならこの状況でどうすれば敵を倒すことができる?」

「……そういうことですか。つまり相手をおびき寄せる、と」

「そういうこと、さすが理解が早い。孫氏いわく、『よく敵を動かす者は、これに形すれば敵必ずこれに従う』ってやつだ」

「え、え? どういうことだよ?」

「いいか、サカキ。相手は城に拠ってるから、こちらが攻めてきても対応できる。なら敵を城から引きずり出して、あちらから攻撃するようにさせてやればいい。そうすればあの元帥がいない状態で戦えるから、こちらにとって有利に戦えるだろ? これが打って出るけど、こちらから攻撃はしないという意味だ」

「それは、そうかもだけどよ……」

「簡単にできるわけがないって? まぁそこは任せてくれ。それを何とかするのが軍師の仕事だ」

 とまぁ大きく言ったけど、相手も野戦を望んでいるのは確か。
 というより明確な勝利という結果を欲しているに違いない。

 初日と2日目。
 奇襲による淡英の討ち死にや、総合的な被害はどっこいというものはあれ、両日ともに帝国軍の方が先に兵を退いている。

 これは掛け値なしに、帝国が負けているという風にも見える。

 そうなれば、様々なことが起こる。
 兵の士気の低下、俺たちには勝てないという自身の喪失。また本国から色々言ってくる可能性もある。対してこちらはその逆の恩恵を受けるわけだから、そろそろ相手とすれば結果を出したいと焦っているはずだ。

 だから流言なんて小細工を弄するし、最終的には野戦でこちらの軍を撃破したいと考えているはず。

 なら、俺はその焦りを突く。

 だからおびき寄せには自信があるものの、その後に勝てるかどうかは正直やってみないと分からない綱渡りの部分がある。
 ま、そこも含めて軍師の仕事ではあるわけだけど。

「水鏡」

「ん、なに?」

「部隊と……雫を借りたい。砲兵部隊の出番だ」

「ん……こっちはいいけど。いける、雫?」

 当の雫は末席でぼうっとしているようで、話を聞いているのか分からない。

 うーん、なんだか不安になってきた。

「…………キー」

 お、何か言ったぞ。
 ぼそぼそだから聞こえなかったけど。

「ごめん、もう一度言ってくれないか?」

「クッキー」

「へ?」

「クッキー、くれるなら、やる」

 …………。
 ずっこけそうだった。

 なんというか。軽いなぁ。
 ま、それでやる気が出てくれるならいいけど。

「分かった。王都に伝令出して、すぐにもってきてもらうよ。少し時間かかるから、先に攻めたいんだけどいいか?」

「ん、やる」

 コクコクと小さくうなずく雫は、どこか小動物みたいで微笑ましい。
 けどそのスキルと率いる部隊はある意味凶悪だと知っている。

 あのチート級の元帥が出てくる前に、勝負を決定的なものにする。
 そのための仕込みは、頭の中では出来上がっていた。
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