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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
第30話 写楽明彦VS赤星煌夜1
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ポーカー。
トランプを使ったゲームで、これほど有名なものはないだろう。
基本5枚一組の手札で、手札を交換しながら強い役を作る。
ただそれだけのことだが、そこにチップという賭け代に、チェンジ(カード交換)にレイズ(上乗せ)やフォールド(降りる)といった要素が加わることで、高度で複雑な心理戦となるゲームだ。
とまぁ、俺も学生の時に友人と遊びでやったくらいで、基本的なやり方と役を知っているくらいだけど……。
「ちまちまチップのやり取りをしてても仕方ありません。本当は楽しみたいのですが。チップは10枚、チェンジは1回まで。それで3本勝負としましょう」
「分かった」
なんでそんなことをするのか。
もうそれはどうでもいい。
あるいは、俺は少し望んでいたのかもしれない。
こいつと決着をつけるのを。
1年前の借りを返すのを。
だが軍を交える勝負はもう終わってしまった。
直に拳の勝負をすれば俺が負けるに決まってる。
だからこういった単なる遊びであっても、大舞台には変わらないわけで。
これをもってよしとする心の動きがあったのかもしれない。
ただそうなると、このアウェイが気になる。
「里奈、こいつを見張っててくれ」
俺は里奈に仁藤へ警戒するよう伝える。
「イカサマしないように、だね。どうする? 変な動きしたら」
「そうだな、ちょっと懲らしめてやれ」
「はいはい。じゃあ指の何本かを折れば十分かな」
なんか最近、里奈の残虐性が言葉の端に現れるような気がしているけど……。
気のせいだよな。
ただの脅しだよな。
「ちょ、ちょちょちょ、待ってくれ! ボクがイカサマを? なんでそんなことするのさ!」
「そりゃお前らが仲間だからだろ。それに、さっきお前は言ったよな。“ボクの意のままに動く世界”って。それってつまり、カードも自在に操れるってことじゃないか? 俺にブタを、煌夜に良い役をつかませるくらい簡単だろ」
「あー、確かに言ったかな。てかこれが例のジャンヌ・ダルクかよ。そんなところからそこまで推測する? はぁ、けど舐めないでほしいね。ボクはそんなことしないよ」
「言葉だけならなんとでも言えるだろ」
「しないよ。だって――“面白くない”んだもの」
「え?」
「言ったよね、おもしろいことがないようおもしろくって。イカサマは確かにやろうと思えばできるよ? 煌夜さんが勝てるように仕向ければできるよ? で? それって面白い? 確定で勝てることやって、面白い?」
「えっと……いや、それは」
それはある意味開き直り。
だけど、どこか彼の真実を物語っているようで、真実味があった。
「面白くないよね? 視聴者も面白くない。数字にならないんだよ。ウケないんだよ。だからしない。しないったらしない。アンダスタァン?」
「はぁ……」
なんかよく分からないけど、勢いに押し切られるようにうなずいてしまった。
「くっ……くくく。世界にその名を轟かした名軍師様もさまさまですね」
煌夜が口元を手で隠しながら、笑いをかみ殺す。
それがたまらなく不快だった。
「それじゃあ始めるよ。ではまず参加料にお互いチップを1枚出してください」
仁藤が取り出したトランプを華麗にシャッフルしながら言う。
その間に、俺と煌夜はそれぞれ与えられた10枚のチップの中から1枚を支払う。
そして仁藤は切り終えたトランプを、煌夜、俺、煌夜、俺と交互に1枚ずつ配っていく。
5枚そろったところで手札を見る。
ダイヤの3、ダイヤの5、スペードの7、ハートの9、クローバーの12。
あまりよくない。
少なくともペアがなく、現状はブタ(役なし)だ。
一見、ストレートを狙えなくもないが、3から7をそろえるか、5から9をそろえるか迷う手札。
だが、その感情を表に出さない。
ポーカーというゲームは、役を作るのが重要だが、それ以上に勝敗を決するのは“いかに相手を降ろさせるか”というところにスポットが当たる。
つまり役なし状態でも、相手にこちらが強い手だと思わせて勝負からフォールド(降ろし)さえさせれば、それで勝ちだ。
逆にどれだけ強い手が来ても、相手が降りてしまえば大きな報酬を奪えない。
だからなるだけ心の動揺を表に出さずに、相手の心を支配することができるか、というのが勝負の肝となる。
ポーカーフェイスという言葉が生まれる理由がそこだ。
煌夜は、というと、さすがに心得ていて、まったく動揺も見えない。
「ね、明彦くん」
と、そんな観察をしている俺に、後ろから里奈が話しかけてきた。
「どうした、里奈」
もしや何かを感じ取ったのか?
しないと言っておきながらイカサマをしてきたのかもしれない。
だから集中して里奈の言葉を聞こうとして、
「ポーカーってどんな遊び?」
ガクッとつんのめった。
危うく手札をばらまくところだった。
煌夜は苦笑、仁藤は本気? と言わんばかりに里奈を疑いの目で見る。
「だって、別にやってこなかったし……それだけだし。友達いないとかそういうわけじゃないし」
「わ、わかったわかった。戻ったら教えてあげるから」
緊張感が霧散したものの、どこか寂し気な里奈がかわいそうな気がして、そう慰める。
さて、気を取り直して勝負に集中しよう。
手札は、ストレート崩れのブタ。
ここは素直にストレートを狙うか、あるいは多めに交換してペアを狙うか、あるいはオールチェンジという手もある。
…………よし。
「それでは、チェンジはしますか? チェンジする場合は、チップを1枚払ってください」
「チェンジ、2枚」
すぐに俺は答える。
チップを払って、2枚を場にさらす。
ダイヤの3とクローバーの12。
結局ストレートを狙い、ワンチャンでワンペアになればよいという読みだ。
12という強い手を放棄するのは心苦しいが、
すぐにカードが配られる。
来い!
来たカードは……。
ハートの7と、スペードの2。
ため息をつきたいのをぐっとこらえる。
つまり結果として俺の手札は、
スペードの2、ダイヤの5、スペードの7、ハートの7、ハートの9、クローバーのクイーンとなった。
まぁつまりは次善の策である7のワンペア。
ブタ(役なし)よりはマシという一番弱い役だ。
「チェンジ、1枚」
煌夜は1枚チェンジを選んだようだ。ハートの9。
チェンジは1回。
つまりこれ以上の手札は望めない。
あとはこれで勝負するかどうかだ。
とはいえ、あまり悩むようなものでもない。
3回勝負ということは短期決戦。
ここでフォールド(降りる)したら、今払ったチップは全部相手のものになる。
そうなるとこちらは残りチップ8枚、相手は12枚となる。
その状態で残り2回。
その間に強い役が来る確率は低いし、仮に来たところでレイズ(上乗せ)に相手が勝負に乗ってこなければチップの移動はないといっていい。
レイズなしでコール(勝負)しても、チップ移動は1枚の差。あとで取り返せる範疇。
だからここは勝負。
たとえワンペアで、しかも数字としてもまぁ悪くないくらいのものでも、勝負するしかない。
「それでは、コールするか、フォールドするか。コールする場合は、チップを1枚払ってください」
「コール」
「同じく」
ほぼ同時に俺と煌夜がチップを支払った。
レイズ(上乗せ)はなしで、そのまま勝負ということだ。
「では、開示してください」
仁藤の宣言を受けて、俺は手札を開示する。
「7のワンペア」
対する煌夜はカードをテーブルに置き、ゆっくりと手を滑らせて手札を公開していく。
その内容はダイヤのエース、クローバーの6、ダイヤの8、ダイヤの9……そして――
「残念、ブタです」
スペードのジャック。
役なし、ブタだ。
「7のワンペア対ブタで、1セット目はジャンヌ・ダルクの勝利です。チップが移動します」
「やった! 勝ったよ、明彦くん!」
里奈が手放しで喜び、俺の肩をバンバンと叩いてくる。
正直痛かったが、俺はそんなことを気に掛ける余裕はなかった。
「どういう、つもりだ?」
言っていた。
煌夜の手札を見ながら、そして顔を上げて睨みつけるようにして煌夜を睨みつける。
「何がでしょう?」
「何が、だと? お前ルール分かってるのか!? 分かってて、これをやったのか!?」
「ど、どうしたの。明彦くん。明彦くんは勝ったんだよ?」
「勝った。いや、勝たされた」
「え?」
口の中に苦みが広がっていく。
この勝ち。わざとつかまされた勝ちだ。
「煌夜の手札はブタだった。けど、その前のチェンジでこいつが出したのは……ハートの9だ。これをチェンジしなければ」
「えっと? あ、スペードの9とそろってる。これってペアってやつだよね」
今のを見て、里奈にも最低限の理屈は分かったようだ。
だからこそ、理屈に合わない煌夜の行動がひっかっかる。
「そう、ハートの9を持っていればスペードの9と合わせて9のワンペアが作れていた。俺は7のワンペアだから負けていた。なのに、なんでわざわざハートの9を捨てた?」
俺の詰問に、煌夜はふっと小さく笑い、
「あぁ、すみません。10と見間違えてました」
「だったらなおさら捨てないんだよ。それなら8、9、10、11でストレートのリーチだ。捨てるべきはダイヤのエースしかないだろ」
「じゃあさらに見間違えたんですね、ダイヤの1と、ハートの9を」
「10と9なら百歩譲って数え間違えってのはあるかもしれないけどよ。さすがにエースと他のカードを見間違うわけないだろ」
「いえ、見間違いです。でなければわざわざ役を崩す意味がありますか?」
それは分からない。
分からないから聞いているが……。
「答える気はない、ってことか」
「答えていますよ。見間違いです」
こいつ。しらを切るつもりか。
そもそも、ブタで勝負をするだなんてよほどの策略家でしかない。
まぁいい。
どうせこんなことをする意味は、俺の精神的動揺を誘いだそうって魂胆だろう。
俺が最初のセットは落としてもいいと思ったのと同じように、いや、それ以上に煌夜はこのラウンドを捨てたってことだ。
逆にそうだと分かっていれば、対処のしようはある。
だから落ち着いていれば、問題ない。
そう、自分に言い聞かせる。
「では次のセットに移ります」
仁藤は淡々とディーラーとしてゲーム進行に徹するようだ。
そっちの方がありがたい。
カードが配られていく。
その最中のことだ。
「少し、話をしようか。写楽……明彦」
急に煌夜が、厳かに口を開いた。
トランプを使ったゲームで、これほど有名なものはないだろう。
基本5枚一組の手札で、手札を交換しながら強い役を作る。
ただそれだけのことだが、そこにチップという賭け代に、チェンジ(カード交換)にレイズ(上乗せ)やフォールド(降りる)といった要素が加わることで、高度で複雑な心理戦となるゲームだ。
とまぁ、俺も学生の時に友人と遊びでやったくらいで、基本的なやり方と役を知っているくらいだけど……。
「ちまちまチップのやり取りをしてても仕方ありません。本当は楽しみたいのですが。チップは10枚、チェンジは1回まで。それで3本勝負としましょう」
「分かった」
なんでそんなことをするのか。
もうそれはどうでもいい。
あるいは、俺は少し望んでいたのかもしれない。
こいつと決着をつけるのを。
1年前の借りを返すのを。
だが軍を交える勝負はもう終わってしまった。
直に拳の勝負をすれば俺が負けるに決まってる。
だからこういった単なる遊びであっても、大舞台には変わらないわけで。
これをもってよしとする心の動きがあったのかもしれない。
ただそうなると、このアウェイが気になる。
「里奈、こいつを見張っててくれ」
俺は里奈に仁藤へ警戒するよう伝える。
「イカサマしないように、だね。どうする? 変な動きしたら」
「そうだな、ちょっと懲らしめてやれ」
「はいはい。じゃあ指の何本かを折れば十分かな」
なんか最近、里奈の残虐性が言葉の端に現れるような気がしているけど……。
気のせいだよな。
ただの脅しだよな。
「ちょ、ちょちょちょ、待ってくれ! ボクがイカサマを? なんでそんなことするのさ!」
「そりゃお前らが仲間だからだろ。それに、さっきお前は言ったよな。“ボクの意のままに動く世界”って。それってつまり、カードも自在に操れるってことじゃないか? 俺にブタを、煌夜に良い役をつかませるくらい簡単だろ」
「あー、確かに言ったかな。てかこれが例のジャンヌ・ダルクかよ。そんなところからそこまで推測する? はぁ、けど舐めないでほしいね。ボクはそんなことしないよ」
「言葉だけならなんとでも言えるだろ」
「しないよ。だって――“面白くない”んだもの」
「え?」
「言ったよね、おもしろいことがないようおもしろくって。イカサマは確かにやろうと思えばできるよ? 煌夜さんが勝てるように仕向ければできるよ? で? それって面白い? 確定で勝てることやって、面白い?」
「えっと……いや、それは」
それはある意味開き直り。
だけど、どこか彼の真実を物語っているようで、真実味があった。
「面白くないよね? 視聴者も面白くない。数字にならないんだよ。ウケないんだよ。だからしない。しないったらしない。アンダスタァン?」
「はぁ……」
なんかよく分からないけど、勢いに押し切られるようにうなずいてしまった。
「くっ……くくく。世界にその名を轟かした名軍師様もさまさまですね」
煌夜が口元を手で隠しながら、笑いをかみ殺す。
それがたまらなく不快だった。
「それじゃあ始めるよ。ではまず参加料にお互いチップを1枚出してください」
仁藤が取り出したトランプを華麗にシャッフルしながら言う。
その間に、俺と煌夜はそれぞれ与えられた10枚のチップの中から1枚を支払う。
そして仁藤は切り終えたトランプを、煌夜、俺、煌夜、俺と交互に1枚ずつ配っていく。
5枚そろったところで手札を見る。
ダイヤの3、ダイヤの5、スペードの7、ハートの9、クローバーの12。
あまりよくない。
少なくともペアがなく、現状はブタ(役なし)だ。
一見、ストレートを狙えなくもないが、3から7をそろえるか、5から9をそろえるか迷う手札。
だが、その感情を表に出さない。
ポーカーというゲームは、役を作るのが重要だが、それ以上に勝敗を決するのは“いかに相手を降ろさせるか”というところにスポットが当たる。
つまり役なし状態でも、相手にこちらが強い手だと思わせて勝負からフォールド(降ろし)さえさせれば、それで勝ちだ。
逆にどれだけ強い手が来ても、相手が降りてしまえば大きな報酬を奪えない。
だからなるだけ心の動揺を表に出さずに、相手の心を支配することができるか、というのが勝負の肝となる。
ポーカーフェイスという言葉が生まれる理由がそこだ。
煌夜は、というと、さすがに心得ていて、まったく動揺も見えない。
「ね、明彦くん」
と、そんな観察をしている俺に、後ろから里奈が話しかけてきた。
「どうした、里奈」
もしや何かを感じ取ったのか?
しないと言っておきながらイカサマをしてきたのかもしれない。
だから集中して里奈の言葉を聞こうとして、
「ポーカーってどんな遊び?」
ガクッとつんのめった。
危うく手札をばらまくところだった。
煌夜は苦笑、仁藤は本気? と言わんばかりに里奈を疑いの目で見る。
「だって、別にやってこなかったし……それだけだし。友達いないとかそういうわけじゃないし」
「わ、わかったわかった。戻ったら教えてあげるから」
緊張感が霧散したものの、どこか寂し気な里奈がかわいそうな気がして、そう慰める。
さて、気を取り直して勝負に集中しよう。
手札は、ストレート崩れのブタ。
ここは素直にストレートを狙うか、あるいは多めに交換してペアを狙うか、あるいはオールチェンジという手もある。
…………よし。
「それでは、チェンジはしますか? チェンジする場合は、チップを1枚払ってください」
「チェンジ、2枚」
すぐに俺は答える。
チップを払って、2枚を場にさらす。
ダイヤの3とクローバーの12。
結局ストレートを狙い、ワンチャンでワンペアになればよいという読みだ。
12という強い手を放棄するのは心苦しいが、
すぐにカードが配られる。
来い!
来たカードは……。
ハートの7と、スペードの2。
ため息をつきたいのをぐっとこらえる。
つまり結果として俺の手札は、
スペードの2、ダイヤの5、スペードの7、ハートの7、ハートの9、クローバーのクイーンとなった。
まぁつまりは次善の策である7のワンペア。
ブタ(役なし)よりはマシという一番弱い役だ。
「チェンジ、1枚」
煌夜は1枚チェンジを選んだようだ。ハートの9。
チェンジは1回。
つまりこれ以上の手札は望めない。
あとはこれで勝負するかどうかだ。
とはいえ、あまり悩むようなものでもない。
3回勝負ということは短期決戦。
ここでフォールド(降りる)したら、今払ったチップは全部相手のものになる。
そうなるとこちらは残りチップ8枚、相手は12枚となる。
その状態で残り2回。
その間に強い役が来る確率は低いし、仮に来たところでレイズ(上乗せ)に相手が勝負に乗ってこなければチップの移動はないといっていい。
レイズなしでコール(勝負)しても、チップ移動は1枚の差。あとで取り返せる範疇。
だからここは勝負。
たとえワンペアで、しかも数字としてもまぁ悪くないくらいのものでも、勝負するしかない。
「それでは、コールするか、フォールドするか。コールする場合は、チップを1枚払ってください」
「コール」
「同じく」
ほぼ同時に俺と煌夜がチップを支払った。
レイズ(上乗せ)はなしで、そのまま勝負ということだ。
「では、開示してください」
仁藤の宣言を受けて、俺は手札を開示する。
「7のワンペア」
対する煌夜はカードをテーブルに置き、ゆっくりと手を滑らせて手札を公開していく。
その内容はダイヤのエース、クローバーの6、ダイヤの8、ダイヤの9……そして――
「残念、ブタです」
スペードのジャック。
役なし、ブタだ。
「7のワンペア対ブタで、1セット目はジャンヌ・ダルクの勝利です。チップが移動します」
「やった! 勝ったよ、明彦くん!」
里奈が手放しで喜び、俺の肩をバンバンと叩いてくる。
正直痛かったが、俺はそんなことを気に掛ける余裕はなかった。
「どういう、つもりだ?」
言っていた。
煌夜の手札を見ながら、そして顔を上げて睨みつけるようにして煌夜を睨みつける。
「何がでしょう?」
「何が、だと? お前ルール分かってるのか!? 分かってて、これをやったのか!?」
「ど、どうしたの。明彦くん。明彦くんは勝ったんだよ?」
「勝った。いや、勝たされた」
「え?」
口の中に苦みが広がっていく。
この勝ち。わざとつかまされた勝ちだ。
「煌夜の手札はブタだった。けど、その前のチェンジでこいつが出したのは……ハートの9だ。これをチェンジしなければ」
「えっと? あ、スペードの9とそろってる。これってペアってやつだよね」
今のを見て、里奈にも最低限の理屈は分かったようだ。
だからこそ、理屈に合わない煌夜の行動がひっかっかる。
「そう、ハートの9を持っていればスペードの9と合わせて9のワンペアが作れていた。俺は7のワンペアだから負けていた。なのに、なんでわざわざハートの9を捨てた?」
俺の詰問に、煌夜はふっと小さく笑い、
「あぁ、すみません。10と見間違えてました」
「だったらなおさら捨てないんだよ。それなら8、9、10、11でストレートのリーチだ。捨てるべきはダイヤのエースしかないだろ」
「じゃあさらに見間違えたんですね、ダイヤの1と、ハートの9を」
「10と9なら百歩譲って数え間違えってのはあるかもしれないけどよ。さすがにエースと他のカードを見間違うわけないだろ」
「いえ、見間違いです。でなければわざわざ役を崩す意味がありますか?」
それは分からない。
分からないから聞いているが……。
「答える気はない、ってことか」
「答えていますよ。見間違いです」
こいつ。しらを切るつもりか。
そもそも、ブタで勝負をするだなんてよほどの策略家でしかない。
まぁいい。
どうせこんなことをする意味は、俺の精神的動揺を誘いだそうって魂胆だろう。
俺が最初のセットは落としてもいいと思ったのと同じように、いや、それ以上に煌夜はこのラウンドを捨てたってことだ。
逆にそうだと分かっていれば、対処のしようはある。
だから落ち着いていれば、問題ない。
そう、自分に言い聞かせる。
「では次のセットに移ります」
仁藤は淡々とディーラーとしてゲーム進行に徹するようだ。
そっちの方がありがたい。
カードが配られていく。
その最中のことだ。
「少し、話をしようか。写楽……明彦」
急に煌夜が、厳かに口を開いた。
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