知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第31話 写楽明彦VS赤星煌夜2

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「話……? こんな時にか?」

「忘れたのかい? そもそもここに君を呼んだのはそのためだろう?」

 そういえばそうだった。
 ポーカーに夢中になっている場合じゃない。

「けど、勝負の方もおろそかにしたくはないからね。仁藤くん、続けてくれ」

「了解っと」

 仁藤は中断したカード配りを再開する。
 それを横目で見ながら、煌夜は話を続けた。

「話というのは、他でもない。これからのことだ」

「戦いを続けるのか、終わらせるのか。そう受け取っていいんだな」

「もちろん」

 言いながら煌夜は配られたカードを手に取って目を通す。
 俺もカードを手にする。

 悪くない。
 ダイヤが4枚ある。
 これならフラッシュが狙える手だ。

「チェンジ、1枚」

 俺はチップを払ってダイヤ以外の1枚を出す。
 そして配られたカードは――

 来た。ダイヤだ。
 よし、と言ってしまいそうになるのを食いしばって耐える。

 フラッシュは中くらいの強さを持つ役だ。
 これが複数人なら微妙だけど、1対1ならば十分に勝負手になりうる。

 あとは相手の動きだが、

「……チェンジは、しない」

 なんと。
 それはどういう自信なのか。
 チェンジなしで役がそろうのは、なくはない。

 俺だってあと1枚でフラッシュだったのだ。
 それにワンペアくらいは普通に配られればできる。

 それでもこの勝負の場で。
 彼にとっては敗けられない状況で、ワンペアで勝負しにくるわけがない。

「それではコールするか、ベットするかを――」

「ベット、1枚」

 俺は機先を制するつもりで先にベットした。
 本来なら順番があるはずだが、2人でやることからそこらはもう早い者勝ちになっている。それを含めての心理戦ということだろう。

 だから先手を打つ。

 そもそもこちらの方がチップが多いのだ。
 なら押せる。

 これで相手を降ろせれば、最終戦で俄然有利になるのだから少し強気でいける。

「ベット1枚が出ました。煌夜さんはどうします? 受けますか? 降りますか? それともさらにベットしますか?」

 降りろ。
 俺のこの手ならもう1枚までベット行ける。

 それで勝てばもう勝負ありだ。

 だから煌夜が口を開き――

「では、ベット……4枚」

 勝っ……は?
 4……4枚!?

「な……それって、全掛けオールインか!?」

 煌夜が場に払ったチップは、ゲーム開始とチェンジ、それからコールでの3枚に加えて4枚。
 7枚しかないチップなわけだから、それはつまり持ちチップ全部を賭けたということ。

 つまりこれで負ければ煌夜のチップはなくなる。
 俺の勝ちだ。

 勝ちなのだ、が……。

 なぜそんなことをする?

 決まってる。
 強いカードが来たからだ。

 俺のフラッシュより強い役は……確かフルハウスとフォーカード、ストレートフラッシュくらいか。
 最強のロイヤルストレートフラッシュは、奇跡みたいなものだからまず除外していい。

 その手が来たのか。
 チェンジもなしで?

 どんな強運だよ。

 これもさっきと同じはったりか。
 いや、それにしてはリスキーすぎる。
 だってここで負ければ、そのままゲームは終わるのだ。

「そういえば勝負の賭けをきめてませんでしたね」

「賭け?」

「せっかくこうして勝負しているのです。勝者にはご褒美がないと不公平でしょう」

「そうやって動揺させようってのか」

「いえいえ。そうではありません。そうですね……では私が負けたら、この世界の真実をお教えしましょう」

「っ!?」

 なんだって。こいつ、何を言い始めた。

「ええ、私がつかんだ真実。それを知ることができれば、あなたはこの後に起こるだろう事件を未然に防ぐことができるでしょう」

「事件? なんだ、それは……」

 待て。焦るな。
 これは相手の罠だ。
 うかつに飛び込めば、がぶりと来る。

 俺が警戒する中でも、煌夜は呑気に話を続ける。

「その代わり私が勝ったら――1つ、お願いを聞いてもらいましょうか」

 それが、狙いか。
 おそらくは彼と麗明とやらの助命。
 それ以外にない。

 ならやはりこの勝負、煌夜は勝負をかけに来ている。
 この短期決戦。
 良いカードが来て勝負を急いだがゆえのオールイン。

 ならここで取るべきは1つ。

「フォールド、だ」

 降りる。
 ここで降りれば、俺が支払った4枚を失うだけで、9対11になる。

 無理に突っ込んで、2対18になるよりは最終戦に望みをつなげられる。

 だからこれが最善手。
 そう思って、俺は下りた。

「では、ショウダウンをお願いします」

 降りた俺は手札を伏せてテーブルに投げ出した。
 対する煌夜は、

「つまらないですね」

 ため息をつき、そして自分の手札を場に放った。

 その内容は、

「え……?」

 目を疑った。
 そこにあるのはフルハウスでもフォーカードでもストレートフラッシュでもなかった。

「ワ……ワンペア?」

 まさか全掛けオールインしてのワンペアで、しかも最弱の2でのペアだなんて。
 ブタじゃなければ勝てた一戦。

 あまりの事実に、見間違いかと思う。
 けど、間違いなかった。

「まさかここまでとは」

 煌夜が深くため息をつき、こちらを睨む。

「私のオールインに対して、おそらくハッタリだと感じたことでしょう。しかし、その後の賭けの内容で、あなたはきっとこう思ったはずです。おそらく私が勝ったときのお願い。それは私と麗明の助命だと」

 なに、違うのか。

「あまり舐めないでほしいですね」

 ゾッと、した。

 煌夜は大声を散らかしたわけでも、般若のような表情を浮かべたわけではない。
 ただ、いつものようにのんびりとした様子で言っただけだ。

 それでもゾッとした。

「舐めないでほしいと言ったのは、もちろん私たちのこともですが……あの女神のことです」

「どういう、意味だ」

「そんなことも分からないあなたに、話すことはありません」

 そう言って、煌夜はこの話から興味を失ったように、話題を切り替える。

「しかし、正直、期待外れですね。こんなのが、あのジャンヌ・ダルクとは。これではっきりと分かりました。あなたはまだまだ子供の甘ちゃんです。臆病で弱虫で人の顔色をうかがうしか生きる術を知らない頭でっかちの世間知らずです。今もそう。あなたは勝負手だったにもかかわらず、私の言葉に惑わされ、怯み、迷い。そして安全策を取った。つまり、勇気がないんですよ。何が何でも勝つという、ハングリー精神とでも言いましょうか。ぬるいと言いましょうか」

「ぐっ……」

「戦いだって、同じこと。少しでも不利になれば、耐えることすらできない。計算外のことに慌てふためく。確たる自信がなく、周囲に流されて戦ってきたのです。そういった人間は……分かりやすい」

 何か言い返したい。
 けど、確かにこのゲームの流れを見れば何も言えない。

 1セット目では勝気をいなされ、2セット目では戦意を手玉に取られた。

 勝てない。

 俺はこの男に、知力で勝つことができない。
 知力こそが、腕力も体力もない、俺の唯一の武器だと言うのに。

 煌夜の前に、俺が丸裸にされていく。

「がっかりです。あなたと勝負できることを少し楽しみにしていたんですが。これほどまでに呆気ない、面白みのない人間だとは……あぁ、やはりあの時、逃げてくれてよかった。こんな腰抜けを同志に迎えようとした自分が恥ずかしい。いっそそのまま野垂れ死んでくれたらよかった。そうすれば、堂島さんも長浜さんも無駄に命を失うこともなかったのですから。全世界を巻き込んで、無駄に死者を増やすこともなかった。そう、あなたは疫病神なんですよ。この世界にあなたがいなければ失われなかった命がたくさんある。あなたがいたから、この世界で数多の人が死んだ。そうではないですか?」

 反論できない。
 それほどまでに、今、彼との力の差を感じているから。
 言われたことは一度ならず考えたことがあることだったから。

 俺には反論できない。
 だからそれは俺以外から来た。

「いい加減にして! あんたは明彦くんの何を知ってるの!」

 里奈だ。
 里奈が勢いよくテーブルを乗り越えようとして、煌夜につかみかかろうとする。

 だが、その動きが急に止まった。

「なに……動け、ない」

 里奈は力の限り体を動かそうとするものの、その場に接着剤で塗り固められたように動けないらしい。

 その不可思議な現象に、俺は1つの恣意的な力を見て取った。

「仁藤、お前! 里奈に、何をした!」

 仁藤に噛みつくように吠える。
 だが、仁藤はすました様子で、

「なにも。言っただろう? この世界は、暴力厳禁の平和な世界だ、と。暴力を振るおうとすると動けなくなる、それがボクの世界のルール」

 仁藤がにやにやとしながら説明する。
 そうだ。確かにそんなことを言っていた。

 しかし、まさか。
 こんな風にそのスキルの効果が効いてくるとは……。

 俺たちが歯噛みしている間にも、煌夜は里奈を一瞥して、

「あなたもあなたです、里奈さん。その短絡的な思考。いったいどれほどの人が迷惑したことか。そのことを理解していますか? いや、私としてはそこそこ良い手駒だったんですが。ええ、短気なあなたはそう、猿よりも扱いやすい」

「ぐっ、ぐぐぐ……」

「堂島元帥も無念でしょう。このような無思慮な輩に命を奪われるとは。ええ、本当に。滑稽です」

「あんたが……堂島さんを、語るな!」

「おお、怖い。しかしここでは私を殺せない。残念ですね」

 煌夜がひたすらに里奈を罵倒し続ける中、どこか違和感を感じた。

 煌夜がここまで執拗に俺たちを罵倒する理由はなんだ?

 この感じ。
 いくら手出しは無用とはいえ、あまりに露骨すぎる。

 何かあると勘ぐるには十分すぎるほどの違和感。

 けどそれが何かは分からない。
 分からない、が、そこにはきっと意味があるに違いない。

 この男は、それほど愚かではないと対峙してきた俺には分かる。
 ならその意味を、隠しているそのわけを、俺の知力で剥ぎ取るんだ。

「里奈、気持ちはありがとう。けど、こいつは俺がやる」

「明彦くん……」

「いい顔つきになりましたね」

 煌夜が優しく笑う。
 そこになんの意味があるか分からない。

 けど、この男との最後の戦い。
 それを避けては、俺は元の世界に戻れない。
 そんな気がした。

「さぁ、最終セットに行きましょうか」
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