知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第40話 託され者の小唄

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「ミカを、助けて。ジャンヌ・ダルク」

 そう言った雫の瞳から、一筋の涙がこぼれ出た。

 その言葉で様々なものを理解した。

 彼女は本気で水鏡のことを心配していること。
 水鏡が本心からこの王都攻めを望んでいないこと。

 おそらくその根本にあるのは九神明くかみあきらか。
 重病と偽って水鏡らを撤退させたのだから。

 いや、この場合。九神すらも傀儡。
 そのすべての絵図を引いたのは、あの今や最悪の名をほしいままにしている女神だろう。

 つまり九神もあの女神に踊らされ、その余波が水鏡に行き、そのとばっちりを雫たちが受けているという図か。

 すべて、理解した。

 ただ理解したとはいえ、納得できたわけではない。

 九神。
 女神に踊らされたとはいえ、もう少し考えればそれが悪手だってことは気づいたはずだ。
 あるいは俺たちが話し合えば、もっとも最悪の展開は防げたはずだ。

 なのに女神の誘いを受け、こうも短絡的な行動に移ったあいつには怒りしか覚えない。
 せっかく終わりかけたこの乱世。それを無駄に長引かせて、余計な犠牲を出させたのだから。

 あるいはそれは勝者の驕りなのか。
 でも驕りでもなんでもいい。
 無駄に人が死ぬのを見るよりは。
 不幸な人間が1人でも出るよりは。
 はるかに億数千万倍良いに決まってる。

 それに何より。
 俺の大切な人たちを、不安に陥れて命を奪おうとした九神には、正直許せる余地はない。

 だから俺は答える。
 このぶっきらぼうで、初めて会った時からあまり良い印象は抱かず、それでも純粋で、純情で、一途な彼女の思いを叶えさせるために。

「大丈夫だ。俺がなんとかする。俺が水鏡を助ける」

「……ありが……なんでもない」

 視線を一瞬あげたが、ぷいっとそっぽを向いてしまった雫。
 照れ屋なんだな。
 そう思うと可愛らしく見える。

 時雨。
 お前、こんな可愛い子を袖にしてたのか。もったいない。

「明彦くん」

「ど、どうした里奈」

 雫を可愛いと思ってしまったところに、里奈が話しかけてきたので思わずどもってしまった。
 こいつ、変なところで勘が良いからなぁ……。

 だが、俺のその内心の焦りとは裏腹に、里奈は笑顔で、

「頑張ろうね!」

「お、おぅ」

 なんだ。
 てっきりまた小言でも言われるのかと思った。

 と、安心していたところに、里奈が小声で、

「もし明彦くんがこのに変な色目使ったら……を……するから」

「お、おぅ!?」

 だから怖いよ!
 肝心なところが聞こえなかったのがまた怖い!

「ジャンヌ、ちょっと良いかの。この後に国民に向けてスピーチの場を設けておるのじゃが、そこでジャンヌも出てほしいのじゃ」

「すでに手配は終えてるわ。あんたにも壇上に立って、皆を安心させてほしいの」

 話がひと段落したところで、マリアが実務的な件に話題を変えた。

 なるほど。
 さすがマリアも分かっている。

 籠城戦の肝は心だ。

 もうだめだと諦めた時に城は落ちる。
 それは反撃の力が落ちて力攻めされたり、敵の策に対応できずに攻め落とされたり、あるいは内応者が出て開城したり。

 古来より金城鉄壁が落ちるのは中から崩れると相場が決まっている。
 援軍なき籠城が無意味であると同時、士気なき籠城もまた無意味なものなのだ。

 だからこのスピーチは意義のある事。
 それをマリアの方から言い出したことに、なんだか嬉しさを感じる。

 何万もの国民の前に出るとか、正直吐きそうな気分だけど、そんなことも言ってられない。

「ああ、分かった」

 覚悟を決めて力強くうなずくと、マリアが小さく笑い、だがどこか悲し気な表情をする。

 何があったのだろうか。
 そう思って見た彼女の手は震えていた。

「大丈夫、じゃよな。また、ジャンヌがやっつけてくれるんじゃよな」

 思えば彼女も2度目の籠城戦の経験者なのか。
 何度も自分の本拠地を攻められるお姫様もそうそういないのに。
 浅井三姉妹かよ。

 南群への援軍要請を自らしにいったり、今のようなスピーチの件といい、無鉄砲ながらにもそれなりに自分の立場を考えて行動した彼女は、成長したといってもいい。

 けどやはり死が身近にあるのは恐ろしいのだろう。
 俺もそうだった。けど、いつの間にか慣れていた。
 それがとても恐ろしいことだと、マリアを見て改めて思い知らされる。

 だから彼女を必要以上に不安にさせる必要はない。
 俺はマリアの頭に手をやって、

「あぁ、大丈夫だ。北門の敵は追っ払ったからあと少しの辛抱だ」

 嘘をついた。

 正直、まだ状況を見極められていないし、水鏡を傷つけずに敵を撤退させる方針も、その後にどう終戦にもっていくか、それから女神の扱いをどうするか。何も考えられていない。

 それでも、ここで嘘を言ってでも俺がなんとかするしかないのだ。
 もはやそこまで状況が行き詰ってしまっているのと同時、なんとなく、俺ならできる。その思いが強い。

 煌夜も言っていた。
 この戦い。プレイヤーとしての後始末。
 それができるのは、確かに俺か煌夜しかいない。

 そしてその煌夜がいなくなった今、俺がやるしかない。

 うぬぼれでも驕りでもない。
 きっと、俺のこの力は今、この時のためにあった。
 そう思えてならないんだ。

 しかし……煌夜か。

 あいつが最後に言っていたこの世界の真実。

 改めてマリアを見て、そして里奈を見てなるほどと思う。

 初めてマリアを見て抱いた想い。
 それが里奈に似ている、だった。
 そして今、こうやって2人を並べて見た時。その思いは確かに強まった。

 同時、本当に煌夜の言っていたことが真実なのだと思い知らされる。

 本当に……最悪だ。

「どうしたの、明彦くん?」

 里奈をじっと見ながら考えごとをしてしまっていたらしい。
 不審に思った里奈だが、すぐに何かを悟ったように、

「はっ、まさか。分かった。今日は一緒に寝ようね? ううん、まずは旅の疲れを落とさなきゃね。さ、すぐにお風呂入ろう? マリアも一緒に入る? 姉妹として!」

「入るのじゃ! それからジャンヌには、皆の前に出て恥ずかしくないお化粧と洋服をしなくては!」

「あ、女王様が入るならあたしも! そしてひさびさのジャンヌのお着換え会!」

「雫も、お風呂。入る」

「よし、明彦くん。レッツお風呂!」

「お前ら、なんか色々ちがぁう!」

 いつの間にか圧倒的多数派に押し切られそうになった、この世界の命運を背負わされる哀れな1人の生贄がここにいた。
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