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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
第50話 女神VS軍師
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場所に変わりはない。
オムカ王都バーベルの王宮にある謁見の間。
そこはいつもの通り、チリ1つなく掃き清められていて、数分前の死闘が嘘のように破壊の跡もない。
そしてそこに集められた17人のプレイヤーと、9人のこの世界の人間。
そして、1人のこの世ならざる者が、この場にいるすべてだ。
そのこの世ならざる者が、楽しそうに言い放つ。
「はい、どーもー! みんなのアイドル、女神ちゃんDEATH! 初めての人も、そうでない人も元気かな!?」
「…………」
右手をピースにして右目に当て、ウィンクしながらそうはしゃぐ女神に、周囲の人間は当惑で返す。
それも当然だろう。
突然のこの状況、この女神のテンション。
戸惑わない方がどうかしてる。
だが女神自身は不満そうに、俺に向かって、
「アッキー、空気が悪い」
「頼むから俺に話を振るな」
知り合いと思われたくなかった。
「うわ、アッキーがいけず。ね、リナちゃん。こんなひどいやつ、放っておいてわたしといいことしない? わたしならリナちゃんを満足させられるよ、ゴーゴーヘブンだよ?」
「え、えぇ……」
「おい、里奈に変なことを吹き込むな」
「え? なんのこと? わたしはただリナちゃんとカラオケに行きたいって思っただけだけど? わたしって歌うまいからね。ま、女神の歌声は世界を癒すからね!」
女神の空気を読まないいつも通りのテンションにため息。
自分が変なルール変更して、ここにいるプレイヤー全員の恨みを買ってるのを分かってるのだろうか。
……絶対分かってないだろうけど、こいつに限って言えば、分かったうえであえてそうする可能性があるからな。
本当に最悪だ。
「さぁて、アッキーをからかって毒舌もいただいたところで。そろそろ本題に入ろうかな!」
周囲の困惑などなんのその。
ゴーイングマイウェイな女神は、座り込んだままの九神に向かって、
「というわけでこれにて各国の優劣がはっきりついたよね? エイン帝国は軍の総司令である堂島元帥を失い、赤星教皇がオムカ王国に対し敗北を宣言。ビンゴ王国はもとよりオムカに膝を屈し、そして今。シータ王国もオムカ王国に屈したってことでいいかな?」
「好きにしてよ」
吐き捨てるような九神の言葉に、女神はにんまりと笑う。
「グッド! それでは認めよう。オムカ王国が大陸を統一したと! いやー、長かったね。なんだかんだで1年以上やってたからねー」
「1年?」
「あ、いや。こっちの話ー。むふふー、さてさて、それではいっちゃいましょうか! やっちゃいましょうか!」
女神は抑えきれない大きな笑みを顔面に浮かべる。
どこか、それが人を食らう化け物のように見えて、背筋がゾッとする。
一体何をする気だ。
嫌な予感しかしないが、それは的を得ていた。
「皆さんお楽しみの処刑ターイム! 敗北者が夢の跡。生き様、死にざま、おまざまぁ(笑)。いや、やっぱりこれがないとしまらないよね!」
そう来るか。
こいつの性質的にはそういうのだとは思ったけど、先にこれをやらせるわけにはいかない。
「ちょっと待て」
「なになに、アッキー?」
「オムカに降伏した連中は対象外になるよな」
「んん? わたしがそんなこと言ったかにゃー? いつ、どこで、誰が、何時何分、地球が何回まわったとき約束した? 女神ちゃん覚えてないなー? してませーん! エイン帝国、シータ王国に属してたプレイヤーは、処刑します!」
「そんな……」
死刑宣告を受け、愛良がわなわなと体を振るわせて声を落とす。
歯をきつく噛みしめる。
こいつ。どこまで最悪だ。
けどそれを黙って受け入れるわけにはいかない。
俺を頼って来た人たちのためにも、何よりこれ以上の犠牲を出さないために。
「異議あり。そんな取り決めは最初からなかった。そもそも、そんな大事なことなら最初から伝えるべきだろ。この契約は違反だ」
「お得意の戯言で論破しに来たね。でもダメだよ。言わなかったけど、聞かれなかったからね。もちろん、そんな抜け穴はあっりませーん! 残念でしたー!」
「それこそ通らない。そもそも双方の合意のない契約書に履行の力はないし、書かれていないのであれば、それは無効にすべきだ」
「あはっ。それって法律の話? あんたこの女神様をなめてんじゃないわよ。この女神が! 人間ごときの! 法だ契約だに縛られるわけないでしょ! それに昔から言うよね? 約束ってのは破るためにあるって」
この……ああ言えばこう言う!
「はい、もう耳は貸しませーん。アッキーの助命嘆願なんて聞く価値もなし! というわけでエイン帝国所属の尾田張人、仁藤光紀、クリスティーヌ・マメール、澪標愛良、シータ王国所属の水鏡八重、大山雫、吉川良介、そして最後に九神明は皆殺しじゃー。ぐぇっへっへー。この瞬間を楽しみに待っていたんだー!」
「ふっざけんな!」
その言葉に一番にキレたのは、やはりというか、澪標愛良だった。
女神に対して全力で駆け寄る。
その手を宙に向け、
「来い! 剣豪将軍!」
彼女のスキルを叫ぶ。
そうすれば剣がどことなく降ってきて――
「え?」
来なかった。
一本たりとも、剣はこの場所に顕現しなかった。
「あはは、残念。この女神様がそんなことを許すわけないじゃん? スキルはもう君たちには無用の長物だからね。すべて使用禁止にさせていただきましたぁん! ざ・ん・ね・ん、でした!」
腹を抱えて笑う女神。
その様子にさらに腹を立てた愛良は、それでも女神に殴りかかる。
それでも女神はまだ笑いこけている。
入る。
そう思った。
次の瞬間。
「がふっ!」
愛良が吹き飛んだ。
5メートルほど吹っ飛び、ごろごろと転がってようやく止まる。
特段、女神が何かをしたわけではない。
むしろ左手を彼女に向けてかざしただけだ。触れてもいない。
それでも愛良は吹き飛んだ。
触れずに、吹き飛ばした。
それはまさに人知を超えた力。
「人間ごときが、神に勝てると思わないでよね」
ゾッとするほどの女神のセリフ。
そこにある、圧倒的な力の差。
九神が可愛く思えるほどの力量差。
愛良はひどくせき込んだ後、ゆっくりと女神の方へと這い進む。
「くそ……愛梨沙……死にたく、ない」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。
彼女ほど、水鏡と同じくらい元の世界に未練がある人間はいない。
なのに、彼女は救われない。
女神の定めた法に従って、その命を捧げなければいけない。
他の名前を呼ばれた人間も、大なり小なり同じだった。
泣き叫ぶものはいなかったが、諦めてその場で座り込む者、スキルを発動させようともがく者、女神を罵倒する者など、筆舌に耐えがたい光景が広がっていた。
そのことに、逆に俺の心も痛みを覚える。
彼らに対する責任。
それが俺の中にもある。
だから、俺は一歩前に出る。
女神に対し、彼らプレイヤーへの責任を果たすために。
「1つ提案がある」
そう告げると、女神はさらににんまりと笑みを濃くして、
「お、アッキーの目つきが変わったね。何? 一応聞くだけ聞いてみようか」
「先に、俺たちを元の世界に戻してくれ」
その言葉に周囲がざわつく。
マリアと目が合った。
なんとも言えない視線が痛い。
けど、俺は力強く見つめ返し、そして安心させるように少し微笑んでやった。
マリアはそれで安心したのか分からないが、少し悲しそうな顔を浮かべつつも、小さくうなずく。
「んん? それって……あぁ、なるほど。人が殺されるのを見たくない、というよりは、助かる希望を見せて投降させたのにこうして殺される運命を背負った人たちが、怨嗟の矛先を向けられるのが嫌だってことだね? さっすがアッキー。自己保全は化け物級だね!」
「なんとでも言え」
途端、愛良が泣きわめくように、激しく吠える。
何を叫んでいるのかは分からない。愛しの娘の名か、何の意味もない言葉か――あるいは、俺を罵倒する言葉か。
そして同時に、他のオムカ以外の連中からも非難の声があがる。
俺はそれを甘んじて受け入れた。
大きく深呼吸して、腹の中にしまった。
ここから先は詰将棋みたいなものだ。
一手間違えれば、本当に最悪の展開になる。
それを防ぐために、まずこの心の痛みは封じ込める。
だから受け入れたうえで、女神の返答を待つ。
「うーーーーーん。そうだねー。ま、ここから先はわたしの趣味みたいなものだしー。先に帰しちゃってもいいかなー? あ、でもアッキーはダメだよ?」
「?」
「だって、アッキーは依り代だから。コーヤくんから聞かなかった? わたしは、この世界に受肉を果たす。その時に、異界からの神官の命を得て顕現するって。そう、つまりアッキーはわたしに乗っ取られる。わたしになって、わたしのいう通りに何もかも行う。彼らを殺すことも、この世界を滅ぼすことも。うふふ、可愛い子でよかった」
いい加減にしろ。
そう叫びたかったが、ここはぐっと我慢した。
「あー、分かった分かった。じゃあ、アッキーにはちょっとだけ元の世界に戻って、それからわたしの依り代になってこの世界に戻ろうか。そしてアッキーと一緒になって、この世界を滅ぼそう? 大丈夫、最初は痛いけど、あとは気持ちいいから」
こんな状況でも色々とアウトな発言。
それでも、1つ、話を進めるためには甘んじて受け入れるしかない。
「それに、うん。まぁ先にじゃあ、元の世界に戻しちゃいますか。これも言ってみれば“茶番劇”みたいなものだからね」
勝手に話を進めるな、と言いたかったけど、もはや俺たちに抵抗する力はない。
だから女神のやらせたいようにやらせる。
1種の確信を持って。
「それでは行きます! もどーれ、もどーれ、元の世界、もーどーれー!」
女神がわけのわからない呪文を唱えだした途端、空間が変質したような気がした。
揺れるような、かすむような。
途端、女神を中心に閃光があたりに広がる。
目をあけられていられない。
けど、この光が収まった先。
そこにあるのは元の世界で。
そして――
「はい! これで君たちは元の世界に戻りました! お疲れさーまー!」
目を開く。
そして、見た。
何も変わっていない。
この光景を。
オムカ王都バーベルの王宮にある謁見の間。
そこはいつもの通り、チリ1つなく掃き清められていて、数分前の死闘が嘘のように破壊の跡もない。
そしてそこに集められた17人のプレイヤーと、9人のこの世界の人間。
そして、1人のこの世ならざる者が、この場にいるすべてだ。
そのこの世ならざる者が、楽しそうに言い放つ。
「はい、どーもー! みんなのアイドル、女神ちゃんDEATH! 初めての人も、そうでない人も元気かな!?」
「…………」
右手をピースにして右目に当て、ウィンクしながらそうはしゃぐ女神に、周囲の人間は当惑で返す。
それも当然だろう。
突然のこの状況、この女神のテンション。
戸惑わない方がどうかしてる。
だが女神自身は不満そうに、俺に向かって、
「アッキー、空気が悪い」
「頼むから俺に話を振るな」
知り合いと思われたくなかった。
「うわ、アッキーがいけず。ね、リナちゃん。こんなひどいやつ、放っておいてわたしといいことしない? わたしならリナちゃんを満足させられるよ、ゴーゴーヘブンだよ?」
「え、えぇ……」
「おい、里奈に変なことを吹き込むな」
「え? なんのこと? わたしはただリナちゃんとカラオケに行きたいって思っただけだけど? わたしって歌うまいからね。ま、女神の歌声は世界を癒すからね!」
女神の空気を読まないいつも通りのテンションにため息。
自分が変なルール変更して、ここにいるプレイヤー全員の恨みを買ってるのを分かってるのだろうか。
……絶対分かってないだろうけど、こいつに限って言えば、分かったうえであえてそうする可能性があるからな。
本当に最悪だ。
「さぁて、アッキーをからかって毒舌もいただいたところで。そろそろ本題に入ろうかな!」
周囲の困惑などなんのその。
ゴーイングマイウェイな女神は、座り込んだままの九神に向かって、
「というわけでこれにて各国の優劣がはっきりついたよね? エイン帝国は軍の総司令である堂島元帥を失い、赤星教皇がオムカ王国に対し敗北を宣言。ビンゴ王国はもとよりオムカに膝を屈し、そして今。シータ王国もオムカ王国に屈したってことでいいかな?」
「好きにしてよ」
吐き捨てるような九神の言葉に、女神はにんまりと笑う。
「グッド! それでは認めよう。オムカ王国が大陸を統一したと! いやー、長かったね。なんだかんだで1年以上やってたからねー」
「1年?」
「あ、いや。こっちの話ー。むふふー、さてさて、それではいっちゃいましょうか! やっちゃいましょうか!」
女神は抑えきれない大きな笑みを顔面に浮かべる。
どこか、それが人を食らう化け物のように見えて、背筋がゾッとする。
一体何をする気だ。
嫌な予感しかしないが、それは的を得ていた。
「皆さんお楽しみの処刑ターイム! 敗北者が夢の跡。生き様、死にざま、おまざまぁ(笑)。いや、やっぱりこれがないとしまらないよね!」
そう来るか。
こいつの性質的にはそういうのだとは思ったけど、先にこれをやらせるわけにはいかない。
「ちょっと待て」
「なになに、アッキー?」
「オムカに降伏した連中は対象外になるよな」
「んん? わたしがそんなこと言ったかにゃー? いつ、どこで、誰が、何時何分、地球が何回まわったとき約束した? 女神ちゃん覚えてないなー? してませーん! エイン帝国、シータ王国に属してたプレイヤーは、処刑します!」
「そんな……」
死刑宣告を受け、愛良がわなわなと体を振るわせて声を落とす。
歯をきつく噛みしめる。
こいつ。どこまで最悪だ。
けどそれを黙って受け入れるわけにはいかない。
俺を頼って来た人たちのためにも、何よりこれ以上の犠牲を出さないために。
「異議あり。そんな取り決めは最初からなかった。そもそも、そんな大事なことなら最初から伝えるべきだろ。この契約は違反だ」
「お得意の戯言で論破しに来たね。でもダメだよ。言わなかったけど、聞かれなかったからね。もちろん、そんな抜け穴はあっりませーん! 残念でしたー!」
「それこそ通らない。そもそも双方の合意のない契約書に履行の力はないし、書かれていないのであれば、それは無効にすべきだ」
「あはっ。それって法律の話? あんたこの女神様をなめてんじゃないわよ。この女神が! 人間ごときの! 法だ契約だに縛られるわけないでしょ! それに昔から言うよね? 約束ってのは破るためにあるって」
この……ああ言えばこう言う!
「はい、もう耳は貸しませーん。アッキーの助命嘆願なんて聞く価値もなし! というわけでエイン帝国所属の尾田張人、仁藤光紀、クリスティーヌ・マメール、澪標愛良、シータ王国所属の水鏡八重、大山雫、吉川良介、そして最後に九神明は皆殺しじゃー。ぐぇっへっへー。この瞬間を楽しみに待っていたんだー!」
「ふっざけんな!」
その言葉に一番にキレたのは、やはりというか、澪標愛良だった。
女神に対して全力で駆け寄る。
その手を宙に向け、
「来い! 剣豪将軍!」
彼女のスキルを叫ぶ。
そうすれば剣がどことなく降ってきて――
「え?」
来なかった。
一本たりとも、剣はこの場所に顕現しなかった。
「あはは、残念。この女神様がそんなことを許すわけないじゃん? スキルはもう君たちには無用の長物だからね。すべて使用禁止にさせていただきましたぁん! ざ・ん・ね・ん、でした!」
腹を抱えて笑う女神。
その様子にさらに腹を立てた愛良は、それでも女神に殴りかかる。
それでも女神はまだ笑いこけている。
入る。
そう思った。
次の瞬間。
「がふっ!」
愛良が吹き飛んだ。
5メートルほど吹っ飛び、ごろごろと転がってようやく止まる。
特段、女神が何かをしたわけではない。
むしろ左手を彼女に向けてかざしただけだ。触れてもいない。
それでも愛良は吹き飛んだ。
触れずに、吹き飛ばした。
それはまさに人知を超えた力。
「人間ごときが、神に勝てると思わないでよね」
ゾッとするほどの女神のセリフ。
そこにある、圧倒的な力の差。
九神が可愛く思えるほどの力量差。
愛良はひどくせき込んだ後、ゆっくりと女神の方へと這い進む。
「くそ……愛梨沙……死にたく、ない」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。
彼女ほど、水鏡と同じくらい元の世界に未練がある人間はいない。
なのに、彼女は救われない。
女神の定めた法に従って、その命を捧げなければいけない。
他の名前を呼ばれた人間も、大なり小なり同じだった。
泣き叫ぶものはいなかったが、諦めてその場で座り込む者、スキルを発動させようともがく者、女神を罵倒する者など、筆舌に耐えがたい光景が広がっていた。
そのことに、逆に俺の心も痛みを覚える。
彼らに対する責任。
それが俺の中にもある。
だから、俺は一歩前に出る。
女神に対し、彼らプレイヤーへの責任を果たすために。
「1つ提案がある」
そう告げると、女神はさらににんまりと笑みを濃くして、
「お、アッキーの目つきが変わったね。何? 一応聞くだけ聞いてみようか」
「先に、俺たちを元の世界に戻してくれ」
その言葉に周囲がざわつく。
マリアと目が合った。
なんとも言えない視線が痛い。
けど、俺は力強く見つめ返し、そして安心させるように少し微笑んでやった。
マリアはそれで安心したのか分からないが、少し悲しそうな顔を浮かべつつも、小さくうなずく。
「んん? それって……あぁ、なるほど。人が殺されるのを見たくない、というよりは、助かる希望を見せて投降させたのにこうして殺される運命を背負った人たちが、怨嗟の矛先を向けられるのが嫌だってことだね? さっすがアッキー。自己保全は化け物級だね!」
「なんとでも言え」
途端、愛良が泣きわめくように、激しく吠える。
何を叫んでいるのかは分からない。愛しの娘の名か、何の意味もない言葉か――あるいは、俺を罵倒する言葉か。
そして同時に、他のオムカ以外の連中からも非難の声があがる。
俺はそれを甘んじて受け入れた。
大きく深呼吸して、腹の中にしまった。
ここから先は詰将棋みたいなものだ。
一手間違えれば、本当に最悪の展開になる。
それを防ぐために、まずこの心の痛みは封じ込める。
だから受け入れたうえで、女神の返答を待つ。
「うーーーーーん。そうだねー。ま、ここから先はわたしの趣味みたいなものだしー。先に帰しちゃってもいいかなー? あ、でもアッキーはダメだよ?」
「?」
「だって、アッキーは依り代だから。コーヤくんから聞かなかった? わたしは、この世界に受肉を果たす。その時に、異界からの神官の命を得て顕現するって。そう、つまりアッキーはわたしに乗っ取られる。わたしになって、わたしのいう通りに何もかも行う。彼らを殺すことも、この世界を滅ぼすことも。うふふ、可愛い子でよかった」
いい加減にしろ。
そう叫びたかったが、ここはぐっと我慢した。
「あー、分かった分かった。じゃあ、アッキーにはちょっとだけ元の世界に戻って、それからわたしの依り代になってこの世界に戻ろうか。そしてアッキーと一緒になって、この世界を滅ぼそう? 大丈夫、最初は痛いけど、あとは気持ちいいから」
こんな状況でも色々とアウトな発言。
それでも、1つ、話を進めるためには甘んじて受け入れるしかない。
「それに、うん。まぁ先にじゃあ、元の世界に戻しちゃいますか。これも言ってみれば“茶番劇”みたいなものだからね」
勝手に話を進めるな、と言いたかったけど、もはや俺たちに抵抗する力はない。
だから女神のやらせたいようにやらせる。
1種の確信を持って。
「それでは行きます! もどーれ、もどーれ、元の世界、もーどーれー!」
女神がわけのわからない呪文を唱えだした途端、空間が変質したような気がした。
揺れるような、かすむような。
途端、女神を中心に閃光があたりに広がる。
目をあけられていられない。
けど、この光が収まった先。
そこにあるのは元の世界で。
そして――
「はい! これで君たちは元の世界に戻りました! お疲れさーまー!」
目を開く。
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何も変わっていない。
この光景を。
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