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第1章 オムカ王国独立戦記
第5話 古の魔導書
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「うぉ、まぶし!」
周囲を照らす閃光。
思わず俺も目をつぶる。
その時、右手が何かを掴んだ。ひどく懐かしい感じがする何か。それが何かが光で見えない。ただ、ここで重要なのは質量を持った手のひらサイズということ。
だから――
「どっせい!」
殴った。
キザ男の顔がある位置を憶測で手にした何かを全力で殴りつける。衝撃。体から重さが消える。同時に転がるようにして、その場から逃れて立ち上がる。
「はぁ……はぁ……これは」
鼻は血で詰まっているようで、口で荒い息を抑えながら、右手に握るものを見る。
それは本だった。
文庫、いや新書サイズの薄い本。本。本だ。それ以上でも以下でもない。
…………これが、スキル?
すごく、嫌な予感がした。
ページを開く。
「スキル『古の魔導書』の使い方。この本は古今東西の本を網羅した本です」
は!? 以上? それだけ?
ふざけんな! これのどこがお役立ちスキルだ。覇王とか神算鬼謀とかそっちよこせ!
しかも魔導書とか書いてあるけど、魔法が使えるわけではなさそうだ。なぜなら最初のページ以外すべて空白。真っ白のページが並ぶだけ。
終わった。
知力は99あるけど使い道がないし、攻撃系じゃないスキルで筋力1の俺はどうやって生きていけばいいんだ。大学生活が、里奈の顔が遠ざかっていく。
「てめぇ、よくも反抗しやがったな」
「きひひ、ラッシュ、どうするよ?」
「当然犯す。このラシュクフト・サンビエルの顔を傷つけておいて。今さら許せるかよ!」
3人が怒りで顔を赤に染めて俺を睨みつけてくる。あー、ヤバい。怖い。こいつらチンピラでしかないんだろうけど、暴力のプロフェッショナル。暴力なんかと縁のなかった俺からすれば、そんな下っ端でも相手にすれば足だってすくむさ。
それにしても……このキザ男はラシュクフト・ザンビエルっていうのか。変な名前。
と、その時だ。
右手にある本が僅か光ったのを見た。何かと思って見てみると、空白のページに文字が浮かび上がった。
『ラシュクフト・ザンビエル。27歳、男。名門ザンビエル家の次男。兄リリエールと異なり、小心で臆病。ビンゴ軍タキワ将軍の後方補給部隊に配属。軍需品の横領や非制圧地帯での略奪で富を稼ぐ。これ以上は情報が足りません』
これは……。
思わず絶句した。
書かれていること。おそらく目の前のキザ男の情報だ。
正直それがどうしたという内容だが、それに応じて俺の頭がフル回転し始めた。知力99の恩恵なのか、情報を得た脳があらゆる方向へ分散し、1つの仮説に集約されていく。
そしてそれはすぐさま、とある言葉を生み出す。
「おい、ラシュクフト・ザンビエル!」
「あ? なに呼び捨てにしてんだ、てめぇ!」
「私は知っているぞ。貴様の犯した罪の数々を」
ラシュクフトの顔色が変わる。
反して俺の頭の中は、泉が湧きだすように知恵の言葉が生み出される。
「軍需品の横領、民衆からの略奪。そして婦女への暴行。これだけで軍法会議ものだな。おっと、私をどうにかしようと考えるなよ。私が戻らなければ事と次第がザンビエル家の当主に届くことになる。そう、君の兄上に」
「な……」
「タキワ将軍は名門ザンビエル家のことを思いこれまで黙認していたが、将軍直下の私にこんな狼藉をするとは言語道断!」
「ひっ!」
正直、自分でも何を喋っているのか分からない。
だが得た情報を、相手の反応を見ながらジグソーパズルのように組み上げていくとこうなる。
「しょ、証拠はあるのかよ! 俺が横領、略奪、暴行をしたっていうよぉ!」
「貴様、脳みそがピーマンか? 今、ここに、私という証人がいるだろう。貴様に暴行されそうになった私が!」
「ち、ちちち違う! これはこいつらが――」
見事なうろたえようだ。
そして見事に地雷を踏んでくれた。だから俺はこう言ってやる。
「おやおや、いざとなったら仲間のせい。トカゲのしっぽ切りってやつか?」
「な、そうなんだな?」
「きひっ、お、俺らに罪をかぶせようっていうのかよ!」
「ち、違う! お前らだって恩恵を受けただろ! だから俺のために罪を償え!」
「ふ、ふざけるなだな!」
「きひひ、ザンビエル家の坊ちゃんだからついてやったのに――」
そのあとはもう聞かなかった。
悲鳴が聞こえた気がするが、誰の悲鳴かは分からない。
誰だっていい。あいつらは要は本の中の登場人物だ、ゲームのキャラクターだ。だから何が起きても関係ないし、俺は悪くない。今はそう思おう。
とにかく今は一歩でも遠く、奴らが仲間割れから目を覚ます前に視界の外に出てしまう必要がある。鼻血はあまり出てはいなかった。ちょっと切っただけだったみたいだ。骨も折れてないし。痛みはあるけど耐えられないほどじゃない。
それからどれだけ歩き、転んだか分からない。
先ほどの何とか言う魔道書もどこかに落としてしまったのか今はない。
体力はすでに空で、方角も、どこに行けばいいのかも分からない。もはや精根も尽き果て、ただ逃げ出したい一心で歩く。
そしてどれだけ歩いたのか、山を進んだ先に見える人家の明かりを見た時にはすでに限界はとうに超えていた。
それでもと足を前に出して人家の前にたどり着いたところで、ぷつりと糸が切れたように俺の意識は途切れた。
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読んでいただき、大変ありがとうございます。
いいねやお気に入りをいただけると大変励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
周囲を照らす閃光。
思わず俺も目をつぶる。
その時、右手が何かを掴んだ。ひどく懐かしい感じがする何か。それが何かが光で見えない。ただ、ここで重要なのは質量を持った手のひらサイズということ。
だから――
「どっせい!」
殴った。
キザ男の顔がある位置を憶測で手にした何かを全力で殴りつける。衝撃。体から重さが消える。同時に転がるようにして、その場から逃れて立ち上がる。
「はぁ……はぁ……これは」
鼻は血で詰まっているようで、口で荒い息を抑えながら、右手に握るものを見る。
それは本だった。
文庫、いや新書サイズの薄い本。本。本だ。それ以上でも以下でもない。
…………これが、スキル?
すごく、嫌な予感がした。
ページを開く。
「スキル『古の魔導書』の使い方。この本は古今東西の本を網羅した本です」
は!? 以上? それだけ?
ふざけんな! これのどこがお役立ちスキルだ。覇王とか神算鬼謀とかそっちよこせ!
しかも魔導書とか書いてあるけど、魔法が使えるわけではなさそうだ。なぜなら最初のページ以外すべて空白。真っ白のページが並ぶだけ。
終わった。
知力は99あるけど使い道がないし、攻撃系じゃないスキルで筋力1の俺はどうやって生きていけばいいんだ。大学生活が、里奈の顔が遠ざかっていく。
「てめぇ、よくも反抗しやがったな」
「きひひ、ラッシュ、どうするよ?」
「当然犯す。このラシュクフト・サンビエルの顔を傷つけておいて。今さら許せるかよ!」
3人が怒りで顔を赤に染めて俺を睨みつけてくる。あー、ヤバい。怖い。こいつらチンピラでしかないんだろうけど、暴力のプロフェッショナル。暴力なんかと縁のなかった俺からすれば、そんな下っ端でも相手にすれば足だってすくむさ。
それにしても……このキザ男はラシュクフト・ザンビエルっていうのか。変な名前。
と、その時だ。
右手にある本が僅か光ったのを見た。何かと思って見てみると、空白のページに文字が浮かび上がった。
『ラシュクフト・ザンビエル。27歳、男。名門ザンビエル家の次男。兄リリエールと異なり、小心で臆病。ビンゴ軍タキワ将軍の後方補給部隊に配属。軍需品の横領や非制圧地帯での略奪で富を稼ぐ。これ以上は情報が足りません』
これは……。
思わず絶句した。
書かれていること。おそらく目の前のキザ男の情報だ。
正直それがどうしたという内容だが、それに応じて俺の頭がフル回転し始めた。知力99の恩恵なのか、情報を得た脳があらゆる方向へ分散し、1つの仮説に集約されていく。
そしてそれはすぐさま、とある言葉を生み出す。
「おい、ラシュクフト・ザンビエル!」
「あ? なに呼び捨てにしてんだ、てめぇ!」
「私は知っているぞ。貴様の犯した罪の数々を」
ラシュクフトの顔色が変わる。
反して俺の頭の中は、泉が湧きだすように知恵の言葉が生み出される。
「軍需品の横領、民衆からの略奪。そして婦女への暴行。これだけで軍法会議ものだな。おっと、私をどうにかしようと考えるなよ。私が戻らなければ事と次第がザンビエル家の当主に届くことになる。そう、君の兄上に」
「な……」
「タキワ将軍は名門ザンビエル家のことを思いこれまで黙認していたが、将軍直下の私にこんな狼藉をするとは言語道断!」
「ひっ!」
正直、自分でも何を喋っているのか分からない。
だが得た情報を、相手の反応を見ながらジグソーパズルのように組み上げていくとこうなる。
「しょ、証拠はあるのかよ! 俺が横領、略奪、暴行をしたっていうよぉ!」
「貴様、脳みそがピーマンか? 今、ここに、私という証人がいるだろう。貴様に暴行されそうになった私が!」
「ち、ちちち違う! これはこいつらが――」
見事なうろたえようだ。
そして見事に地雷を踏んでくれた。だから俺はこう言ってやる。
「おやおや、いざとなったら仲間のせい。トカゲのしっぽ切りってやつか?」
「な、そうなんだな?」
「きひっ、お、俺らに罪をかぶせようっていうのかよ!」
「ち、違う! お前らだって恩恵を受けただろ! だから俺のために罪を償え!」
「ふ、ふざけるなだな!」
「きひひ、ザンビエル家の坊ちゃんだからついてやったのに――」
そのあとはもう聞かなかった。
悲鳴が聞こえた気がするが、誰の悲鳴かは分からない。
誰だっていい。あいつらは要は本の中の登場人物だ、ゲームのキャラクターだ。だから何が起きても関係ないし、俺は悪くない。今はそう思おう。
とにかく今は一歩でも遠く、奴らが仲間割れから目を覚ます前に視界の外に出てしまう必要がある。鼻血はあまり出てはいなかった。ちょっと切っただけだったみたいだ。骨も折れてないし。痛みはあるけど耐えられないほどじゃない。
それからどれだけ歩き、転んだか分からない。
先ほどの何とか言う魔道書もどこかに落としてしまったのか今はない。
体力はすでに空で、方角も、どこに行けばいいのかも分からない。もはや精根も尽き果て、ただ逃げ出したい一心で歩く。
そしてどれだけ歩いたのか、山を進んだ先に見える人家の明かりを見た時にはすでに限界はとうに超えていた。
それでもと足を前に出して人家の前にたどり着いたところで、ぷつりと糸が切れたように俺の意識は途切れた。
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