知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
5 / 627
第1章 オムカ王国独立戦記

第5話 古の魔導書

しおりを挟む
「うぉ、まぶし!」

 周囲を照らす閃光。
 思わず俺も目をつぶる。

 その時、右手が何かを掴んだ。ひどく懐かしい感じがする何か。それが何かが光で見えない。ただ、ここで重要なのは質量を持った手のひらサイズということ。
 だから――

「どっせい!」

 殴った。
 キザ男の顔がある位置を憶測で手にした何かを全力で殴りつける。衝撃。体から重さが消える。同時に転がるようにして、その場から逃れて立ち上がる。

「はぁ……はぁ……これは」

 鼻は血で詰まっているようで、口で荒い息を抑えながら、右手に握るものを見る。

 それは本だった。
 文庫、いや新書サイズの薄い本。本。本だ。それ以上でも以下でもない。

 …………これが、スキル?

 すごく、嫌な予感がした。

 ページを開く。

「スキル『古の魔導書エンシェントマジックブック』の使い方。この本は古今東西の本を網羅した本です」

 は!? 以上? それだけ?
 ふざけんな! これのどこがお役立ちスキルだ。覇王とか神算鬼謀とかそっちよこせ!

 しかも魔導書とか書いてあるけど、魔法が使えるわけではなさそうだ。なぜなら最初のページ以外すべて空白。真っ白のページが並ぶだけ。

 終わった。
 知力は99あるけど使い道がないし、攻撃系じゃないスキルで筋力1の俺はどうやって生きていけばいいんだ。大学生活が、里奈の顔が遠ざかっていく。

「てめぇ、よくも反抗しやがったな」

「きひひ、ラッシュ、どうするよ?」

「当然犯す。このラシュクフト・サンビエルの顔を傷つけておいて。今さら許せるかよ!」

 3人が怒りで顔を赤に染めて俺を睨みつけてくる。あー、ヤバい。怖い。こいつらチンピラでしかないんだろうけど、暴力のプロフェッショナル。暴力なんかと縁のなかった俺からすれば、そんな下っ端でも相手にすれば足だってすくむさ。

 それにしても……このキザ男はラシュクフト・ザンビエルっていうのか。変な名前。

 と、その時だ。
 右手にある本が僅か光ったのを見た。何かと思って見てみると、空白のページに文字が浮かび上がった。

『ラシュクフト・ザンビエル。27歳、男。名門ザンビエル家の次男。兄リリエールと異なり、小心で臆病。ビンゴ軍タキワ将軍の後方補給部隊に配属。軍需品の横領や非制圧地帯での略奪で富を稼ぐ。これ以上は情報が足りません』

 これは……。
 思わず絶句した。

 書かれていること。おそらく目の前のキザ男の情報だ。
 正直それがどうしたという内容だが、それに応じて俺の頭がフル回転し始めた。知力99の恩恵なのか、情報を得た脳があらゆる方向へ分散し、1つの仮説に集約されていく。
 そしてそれはすぐさま、とある言葉を生み出す。

「おい、ラシュクフト・ザンビエル!」

「あ? なに呼び捨てにしてんだ、てめぇ!」

「私は知っているぞ。貴様の犯した罪の数々を」

 ラシュクフトの顔色が変わる。
 反して俺の頭の中は、泉が湧きだすように知恵の言葉が生み出される。

「軍需品の横領、民衆からの略奪。そして婦女への暴行。これだけで軍法会議ものだな。おっと、私をどうにかしようと考えるなよ。私が戻らなければ事と次第がザンビエル家の当主に届くことになる。そう、君の兄上に」

「な……」

「タキワ将軍は名門ザンビエル家のことを思いこれまで黙認していたが、将軍直下の私にこんな狼藉をするとは言語道断!」

「ひっ!」

 正直、自分でも何を喋っているのか分からない。
 だが得た情報を、相手の反応を見ながらジグソーパズルのように組み上げていくとこうなる。

「しょ、証拠はあるのかよ! 俺が横領、略奪、暴行をしたっていうよぉ!」

「貴様、脳みそがピーマンか? 今、ここに、私という証人がいるだろう。貴様に暴行されそうになった私が!」

「ち、ちちち違う! これはこいつらが――」

 見事なうろたえようだ。
 そして見事に地雷を踏んでくれた。だから俺はこう言ってやる。

「おやおや、いざとなったら仲間のせい。トカゲのしっぽ切りってやつか?」

「な、そうなんだな?」

「きひっ、お、俺らに罪をかぶせようっていうのかよ!」

「ち、違う! お前らだって恩恵を受けただろ! だから俺のために罪を償え!」

「ふ、ふざけるなだな!」

「きひひ、ザンビエル家の坊ちゃんだからついてやったのに――」

 そのあとはもう聞かなかった。
 悲鳴が聞こえた気がするが、誰の悲鳴かは分からない。

 誰だっていい。あいつらは要は本の中の登場人物だ、ゲームのキャラクターだ。だから何が起きても関係ないし、俺は悪くない。今はそう思おう。

 とにかく今は一歩でも遠く、奴らが仲間割れから目を覚ます前に視界の外に出てしまう必要がある。鼻血はあまり出てはいなかった。ちょっと切っただけだったみたいだ。骨も折れてないし。痛みはあるけど耐えられないほどじゃない。

 それからどれだけ歩き、転んだか分からない。
 先ほどの何とか言う魔道書もどこかに落としてしまったのか今はない。

 体力はすでに空で、方角も、どこに行けばいいのかも分からない。もはや精根も尽き果て、ただ逃げ出したい一心で歩く。

 そしてどれだけ歩いたのか、山を進んだ先に見える人家の明かりを見た時にはすでに限界はとうに超えていた。
 それでもと足を前に出して人家の前にたどり着いたところで、ぷつりと糸が切れたように俺の意識は途切れた。

//////////////////////////////////////
読んでいただき、大変ありがとうございます。
いいねやお気に入りをいただけると大変励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...