知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
219 / 627
第3章 帝都潜入作戦

第20話 タルフ関

しおりを挟む
 ヨジョー城から川を渡って1週間も移動すれば景色が変わってきた。
 緑豊かな草原や森、山、川といった大自然の量が増えてきて、それに合わせて畑や水田といったものが、オムカの何倍もの規模で広がっているのだ。
 その中に軍事施設的な砦も随所に見られるのだから、ここが軍事国家の庇護のもとに統治されているエリアだと分かる。

「こりゃ国力からして違うなぁ……」

「そうですね。ざっと見の人数、それに対する収穫量からしても5倍はあるでしょう」

 ザインが答えた。
 どうやらこういったことにも少し知識があるらしく、どちらかと言えばやんちゃ系の彼の印象とは違って驚いた。

「心外ですね、これでも農家の次男なんですから」

「あ、そっか」

 そういえば俺の隊はほとんどが農民や職人の子供ということだから、それぞれに得意としているものもあるのだ。

「ん、あのくるくる回ってる円形のなんでしょう? 水が回って……? すみません、ちょっと見てきていいですか?」

「こらこら。ザイン、俺たちはそんな堂々としてられないんだぞ。好奇心は認めるけど、今はダメ」

「あぁ……そうですね。すみません」

「まぁそうやって得た知識をうちに持ってくるのはいいな。だから帰りなら少し時間を作って見てきてよ。それと、多分あれは水車だから」

「あ、ありがとうございます! そっか、あれが水車かぁ。さすが隊長は物知りっすね」

 うん、そうやって戦争だけじゃなく他のこともできる人間になってくれたらいいなぁ。
 マールも色々考えてるみたいだし。
 それに比べて……。

「な、なんですか隊長殿? もしかしてそろそろ私が恋しくなっちゃいました?」

「……はぁ、なんでもない」

 クロエももうちょっとなぁ、ちゃんとしてくれたらどれだけ楽か。
 手間のかかる妹の元祖だもんなぁ。現時点ではあっちの方が年齢上だけど。

 そして、それからさらに北上していくと、平地にいきなり巨大な城が見えた。
 あれが帝都……? いや、それにしては左右に長すぎる。

 遠目で見ても長さ1キロ以上はあるだろう、それは中にあるものを守るというより通せんぼするような壁の意味合いが近い。
 それはつまり――

「あれは……関所か?」

「はい、あれが帝都を守るタルフ関。東をエイン川が、西をグズル台地に挟まれた、帝都への玄関口です」

 事情通らしくマネージャーのホーマが解説してくれた。

 なるほど。難所に挟まれた空間に関所を作ってしまったわけだ。
 西の大地と言っても、急こう配でしかも高さが関所並みにあるのだから、小さな山みたいなものだ。
 そこから攻め登ったとしても、関所の上から台地に移動できる通路があるようで、少しの兵を回せば登ってくる敵を容易に撃退できる仕組みだろう。

 三国志の虎牢関ころうかん並みに厄介な砦だ。
 裏を返せば、それに守られているエインの帝都は、それだけ安全という事か。

「エイン帝国の帝都は東西南北をこのような関所で囲っていると聞きます」

「こんなのがあと3つあんのか……」

 3方面から一気に攻めれば帝都を下すことは簡単だと思ったが、これは認識を改めた方が良さそうだ。
 まったく、本当に楽させてくれない世界だ。

「あそこが入り口になっているのでしょうか。人が集まっているようですが」

 ウィットが示したのは、関の中央部分。
 そこが門になっているようで、中に入ろうという人が列をなしている。

「あれは順番待ち? ちょっとめんどくさそうですねー。人が多すぎです」

「そうね。多分、今日中には通れそうにないわね」

 ルックとマールのやり取りを片耳に聞いて頭を掻く。

 参ったな、ここで足止めとは。
 季節ももう7月になって、照らす太陽が暑さを運んでくる。さっさと帝都に入って休みたいところだけど……。

「ジャンヌ、多分なんだけど、それだけ長い時間かかるってことは、あそこに見えるの宿屋とかある街じゃないかな」

 アヤが指摘したように、関所のふもとにある街並みらしきものが見える。

 なるほど。
 なんで内側じゃなく外側にあるのかと思ったけど、順番待ちする人が泊まるための施設があるということか。

 そんなわけで俺たちはその街に立ち寄ることにした。
 そして圧倒された。

「見てって見てって、買ってって! うちの店では他より安い! オムカ王国から南部自治領まで、さらにはシータ王国の品物だって扱っちゃう。こんな店ないよ!?」

「さぁ、今日の商品はこれ、オムカ織りのドレス。見てよ奥さん、そして触ってって。この肌触り、代々受け継がれた技法でしか再現できないのよ。しかも今はオムカは帝国から離反した敵国! そんな商品を今ならこのお値段! ね、お得でしょう?」

「ここでしか手に入らない、大珍品! なんと南部自治領のさらに南、砂漠を超えて入ってきた翡翠の指輪だぁ! 翡翠も帝都にはあるけど、これほどの大きさはないでしょう!? なんとこの大珍品が今ならこの価格でご提供!」

「そこ行く兵隊さん。ちょっと見てってよ。いやいや、最近の騒ぎで今じゃ手に入れられなくなったけど、これ。オムカのお酒。敵国のお酒なんて飲めるか、と思うかもしれないでしょう? でもこれまでこのお酒、上流階級でしか飲めなかったんだけど、あたしが開発した独自ルートで入手してなんとこのお値段! さぁ、一杯どうです?」

 どうやら帝都に商売しに行く商人が、チャンスとばかりにここで露店を広げているようだ。
 それも1人や2人じゃない。街の端から関所のところまでざっと1キロあまりに、100を超える露店があるのだから、その騒々しさたるや、だ。

 そのおかげか、そこまで大きな街ではないにもかかわらず、王都バーベル並みの盛り上がりをしているのだ。

 そうなると宿泊施設も飽和するのではと思ったが、意外にも部屋はすんなりとれた。
 商人たちは独自のテントや馬車を持っていて、大事な商品が盗まれないよう、夜は街のはずれでそれぞれ自由に過ごすらしい。
 商人以外の通行人はそこまで多くないということだろう。

 そんなこんなで宿で出された夕食を食べた後、さっそく俺の部屋で作戦会議に入る。
 関所を見に行った面子から、ウィットが代表して報告する。

「どうやら関の通行はお昼前から日没まで。それ以外は門を閉ざしてしまうそうです」

 昼から日没の仕事時間って……どんな重役出勤だよ。

「整理券をもらいましたが、どうやら明日の夕方、日没ギリギリになりそうです」

「分かった、ありがとうウィット。とりあえずはここでまた一泊ってことか」

「じゃあ隊長殿! 今日は一緒にお風呂ですね!」

 クロエの能天気ともいえる一言に、俺はずっこけそうになった。

「お前、今がどんな時期か分かってんのか? もうすぐ帝都なんだぞ」

「分かってますよ。だからこそじゃないですか! 最後の日だからこそ目一杯楽しむ! それが正義ジャスティスです!」

「おお、クロエさんも正義ジャスティスを理解し始めましたね!」

 視線を交わし、手を握り合うクロエと竜胆。
 うぅ、変なのが増殖した……。
 でもなんか微妙な説得力。

 でも前みたいな惨事はごめんだ。

「あー、今日は俺はいいや」

「またまた、そんなこと言って。暑いんですから汗かいたでしょう? あ、そうだ流しっこしましょう!」

「汗をかいたらシャワーを浴びる! それが正義ジャスティスです!」

 駄目だ。こうなったら援護先を変えるしかない。

「おい、マール、なんとか言ってくれ!」

「はぁ……いいと思います」

「え?」

「最後の夜ですからね。少しは羽目外してもいいんじゃないでしょうか。汗もかきましたし」

 マジか。ちょっと人選ミスった!?

「じゃあ、お姉さんがまとめて面倒みましょう!」

 アヤまで乗り気になってしまい、そそくさと退散していく男子連中をしり目に、憐れな子羊の俺は再び浴場へドナドナされていった……。



 ――余談。

「隊長殿ー! もっとこっちで楽しみましょうよー!」

 話し込んだ後のため少し遅い時間だったからか、浴場はほぼ貸し切り状態だった。
 それでも俺は真っ先に洗い場に出て汗を流し、そのまま浴場の端に身を縮めて温まる。

 クロエたちは相変わらずきゃっきゃとはしゃいでいるが、その輪に入るのは男としてどうかと思うわけで。

 ……まぁ、いっか。

 なんて思ってた時だ。

『おい、バカあまり動くなよ』

 ふと声がした。
 ザイン?

 振り向くが古い石づくりの壁しかない。

 あぁ、隣が男子浴場なのかな。
 なんて思ったのだが、どうもこそこそとうるさい。

 気になってお湯からあがり、タオルを巻いて壁をペタペタと触る。

「どうしましたー、隊長殿?」

 クロエ、そして竜胆が俺の様子に気づいて近寄ってきた。

「いや、なんか隣の声が漏れてるなって。男子浴場なのかな」

「え? 隣? 確か男子のって少し離れてましたよ?」

「…………」

 不意に沈黙がその場を支配する。
 まさかな。そんなお決まりのパターン……マジ?

「きゅぴーんと来ました! スキル『九紋竜くもんりゅう』!」

 竜胆がスキルを発動し、木刀を壁に突き立てた。
 すると、壁がもろいクッキー生地のように割れて、石が向こう側へと吹き飛んだ。

「痛つつつ……」

 そして、いた。

 お風呂にいったはずのウィット、ザイン、ルックが。
 もちろん服を着た状態で、だ。

「あっ……」

 目が合った。
 そしてその視線が下へ。そしてまた上に戻ってくる。

 あぁ、何をしているかと思えば。
 へぇ、ふーん、そうかそうか、そういうことね。まぁそうだよね。やっぱり男のロマンだもんね。元男の俺にはよく分かる。よぅく分かる。

 けどそれ以上に、今の俺は女だ。

 なるほど。
 覗かれる立場の女性の想いが良く、よぅく、よぅくよぅく分かった。

 そしてあの言葉の意味も。

「お前ら、覚悟はできてるだろうな……」

「いや、違うんですよ、これはその……冒険で!?」「その! 俺は隊長じゃなく、そのマール……いや、違くて!」「あーあ、だから言ったのにー」

「竜胆、貸して」

「どうぞ! 今回はお任せします!」

 竜胆が顕現させた木刀を借りると、大きく振りかぶり、

正義ジャスティス!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...