知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第54話 刹那の休息

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 ブリーダ率いるオムカの3千の騎兵と、アズ将軍が率いるワーンス王国の援軍4千は、俺はもと来た道を、彼らは初めて通る道を全力で駆けていく。

 とはいえ、ワーンスの軍は騎馬1千、歩兵3千の混合部隊。歩兵に合わせた速度なので遅い。

『我々は後からついていきます。ビンゴ王国の兵に見とがめられたら、いただいた通行証でなんとかしますので』

 というアズ将軍の厚意を得て、俺とブリーダは騎馬隊で先行する。
 補充兵ということだから、今まで歩兵だった者を騎兵に移したり、新兵も混じっているというが、なかなかどうして。きっちりと隊列を作って走る様はなかなか壮観だ。

 むしろ俺が逆に遅れそうになるのだから懸命についていく。
 一応、王都で若くてよく走る馬を譲り受けたのだが、それでも時に遅れた。

 そんな強行軍のおかげか、王都を発って2日目の夕方には元のゾイ川岸の砦に戻ってくることができた。
 これまで通って来た砦と同じように、ほぼ兵はいない。もぬけの殻だ。

 だが、そこで予想外の人物に会うことになった。

「喜志田! 生きてたか!」

 喜志田志木が、病室にいた。
 顔色が悪い。彼は前合わせの布製の服を着ている。覗く胸元には仰々しいほどの包帯が巻かれていた。

「はっ、慣れないことするからこのざまさ」

 自嘲気味の笑みも、どこか力がない。
 だが生きている。それだけで俺は胸のつっかえがおりた気がした。
 なんだかんだ、こいつに頼ってるところがあるのだと思う。

「やられたのか?」

「まぁ、ね。お気に入りのベッドを焼かれたから、むきになってさ」

 どこまで本気か分からないその言葉に、なんて答えたらいいか分からなかった。

「そうか。すまんな、間に合わなくて」

「ま、期待してなかったよ。てかあれ、ヤバいね」

「あれ?」

「君の彼女だよ。立花里奈くんだっけか? いや、『収乱斬獲祭ハーヴェスト・カーニバル・カニバリズム』って言った方がいいかな」

「気づいてたのか……」

「本人から聞いたんだよ。厄介なスキルだね。いや、呪いと言った方がいいのかな」

「まぁ、な」

 この部屋には俺と喜志田しかいない。
 だからここまで突っ込んだ話ができた。

「ま、だからってどうしようってことはしないよ。てか彼女は?」

「置いてきた。王都に」

「はぁ? あー、アッキーってあれ? 大切なものは押入れの奥底にしまうタイプ?」

「そんなわけじゃないけど……」

「ふーん。ま、いーけど。あーあ、里奈さん可哀そうに」

「お前に里奈の何が分かるんだよ」

「君が里奈さんの何を知ってるのさ?」

 こいつ……ああ言えばこう言う。
 本当に口から生まれたような男だよ。

「君に言われたくないんだけどなー」

「何がだよ」

「君が心の中で俺のことを評価した言葉だよ」

 本当にどこまで本気なんだよ、こいつ!
 やりにくいったらありゃしない。

 これはさっさと本題に入った方がよさそうだ。

「それで、軍のことだけど……」

「あぁ、それも聞いたよ。入れ違いだったから、留守居の兵に。なんか派手にやりあったんだって?」

「そういうわけじゃ……」

「てかどうでもいい噂に踊らされるとか……そこまで馬鹿だったか」

「相手が巧妙だったんだろ。村を襲って怒らせて、うちらとの不和を誘って」

「はぁ……アッキーの言う事ちゃんと聞けって言ったのに。ヴィレスなんて命かけるとか言ってたのに。子供かよ。後でお仕置きだな」

「生きてれば、な」

「まだ生きてるよ。砦を3つとしたって、自慢が来てる」

「そうか。じゃあまだ間に合うな。後は任せた。明日か明後日にはワーンス王国の4千が来るから、いいように使ってくれ」

「はいはい。で、やっぱ負ける?」

「俺が考える通りなら、な」

「はぁ……しょうがないなぁ。本当、めんどくさいことしてくれるよね。で、もう出るの? 少し休んでけば?」

「いや、そんなこと言ってられない。せめて対岸には渡るさ。この数時間の差で全滅なんて憂き目にあったら、俺は俺を許せないからな」

「はいはい、真面目なこって。もう少し力抜いてこーよ」

「お前は抜きすぎだけどな」

 とりあえずこれで守りのことはこいつに任せればいい。
 後はただ駆けるのみ。

 俺は病室からブリーダのところへと向かう。
 厩舎で馬を休ませていて、なぜかそこにはクロエとウィット、そしてフレールとサールもいた。

「30分後には出る、いけるか?」

「了解っす。ただ馬は少しの間、並足で走らせるっす」

「ん、そこらへんは任せる」

「少し休まないのですか? このまま強行軍を続けても、脱落者が出るか、いざ戦闘になっても力が出せません。大事な新兵を死なせることにはしたくないのですが」

「アイザ! 黙るっす!」

 アイザのつっけんどんな質問に、ブリーダが慌てたように非難する。
 急がなくてはいけないことは伝えているのだが、それを全て理解した上で突っかかってくるようにしか思えない。

「いや、いいブリーダ。皆も聞いてくれ。先も言ったけど、今はスピードが大事だ。1分でも1秒でも早く味方のもとに駆け付けるのが先決だ。馬はブリーダの言う通りなら問題ないだろう。人間の方は馬上で休憩しろ。問題はあるか?」

 無茶苦茶な理論を言っていると思う。
 それでもここまで来たら、最後まで全力で走りたい。手を抜いて後悔するより、全力でやって後悔した方がまだ救われるから。

 それに、兵を大事に思うアイザの気持ちは分からなくもないし、戦術上はアイザの方に理があるのは分かっている。
 けど今は戦略的には理外のことをしないといけない。
 だから反対意見を聞いている場合じゃない。

「別に」

 不服そうに頷くアイザだが、これ以上構っている暇はなかった。
 というかもっと構ってる暇はないのが来た。

「隊長殿! 私たちも行きます!」

「そうです! 俺たちの方が元気ありますよ!」

 クロエとウィットだ。
 怒鳴りつけてやろうかと思ったけど、その前に妙案が浮かんだ。

「残ってるのはお前たちだけか?」

「はい! 師団長殿とクルレーン隊は川を渡りました。隊長殿が戻ったら、サポートしろと」

 サカキめ。
 親切心か、押し付けたのか。両方だろう。

「当然、私たちも行きます」

「ジャンヌさん。守る。当然」

 フレールとサールだ。
 きっと断ってもついてくるだろうなぁ。しょうがない。

「分かった、一緒に出るぞ」

「そう来なくっちゃ!」

「っし! やってやるぜ!」

 意気揚々と出て行くクロエとウィット。
 あぁ、これで本当の命令を出したら悲しむんだろうな。めんどくさい。

 ふと、立ち眩みがした。

 まだだ。
 まだ、倒れない。

 クロスたちの軍を無事に戻して、ここに戻るまでは。
 まだ、倒れるわけには……いかない。
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