知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
361 / 627
第4章 ジャンヌの西進

閑話25 長浜杏(エイン帝国大将軍)

しおりを挟む
「ただいまー元帥いるー?」

 北の平定を終えて、疲れ切った体を休めた翌日。
 元帥に帰還の報告をしながらからかってやろうと思い、元帥府に出頭したのだが。

「お待ちしておりました、長浜さん」

 そこにいたのは煌夜ちんだった。
 黒のカソック姿で、大きい体を折り曲げるようにして、来客用のソファに座っていた。
 その横に麗明っちが座っている。相変わらずの無表情。人形みたいだ。

「あれ、煌夜ちん? どしたの?」

「貴女を待っていたんですよ。そろそろ帰ってくると思いまして」

「へぇ、相変わらずの予知はすごいねぇ。ふーん、で? この部屋の主は?」

「出陣しました。一昨日に」

「え? まさかオムカをとしに行ったとか!? 僕様のいないうちに!?」

「いえ、西です」

 西?
 西ってゆーと、ビンゴ領の反乱の件か。

「旧ビンゴの奴ら、そんなに強いの? あの双子とあの2人に椎葉ちん入れてもダメなの?」

「その椎葉さんから連絡があり、増援として向かいました。なんでもオムカのジャンヌ・ダルクが参戦し、1万以上を失う敗北を喫したとか」

「…………へぇ」

 自分でも気づかぬうちに頬がほころぶ。

 あのジャンヌ・ダルクが動いたか。
 ま、そうだよね。ここでビンゴ領を完全に帝国に取られたら、オムカは詰みだ。
 だから先手を打ってきたわけだろうけど。

 それにしても1万も失うとはねぇ……。やるじゃん。
 てかそれくらいやってもらわないと『引き分けた』僕様としての立場がないよね。

「ってか、1万失ってもまだ5万以上はいるでしょ。それでヤバイの?」

「いえ、どうにかなるとのことです。あのあかし姉弟、我らが想像しているより策略家のようですね」

「ふーん? じゃあなんで元帥は出てったのさ?」

「その丹姉弟が問題なのです。詳しくは分からないのですが、椎葉さんはどこか違和感を感じたようで」

「それって、手ぇ抜いてるってこと?」

「それであれば良いのですが……あるいは彼女らは――ビンゴ領に新しい国を創るのではないかと」

「は?」

 国を、創る?
 どこからそんな言葉が出てきたんだろうか。唐突すぎて分からない。

「国を創るって、ビンゴ王国を復興するってことじゃないよね?」

「おそらくは。これも私が報告を聞き、推論を組み立てた結果の結論でしかないので。椎葉さんも何が目的か分からないとのことです」

 確かに、プレイヤーを5人も行かせるなんてかなり大盤振る舞いな感じだよね。
 さらに元帥まで行くんだから本当に何が起きているのか。

 そもそもあの双子。
 いつも2人で抱き合って、ボンテージファッションで、互いの考えを代弁するような喋り方をして、もう異常以外のなにものでもないわけだけど。
 そんな2人が企むとか、想像もしたくない。

「てか、あの双子とはほとんど喋ったことないんだけど、煌夜ちんから見てどうよ?」

「そう、ですね……おそらく2人とも元の世界ではかなり苦労したようです。お互いを、2人しか信用できないような何かがあったのでしょう」

 まぁ、そういうものかもなぁ。
 あれほど捻じ曲がるには、どんな目に遭えばそうなるのか皆目見当がつかない。

「そして、何故という理由は分かりませんが、何をしようとするかは、なんとなく分かります」

「それが国を創る?」

「ええ。彼らの彼らによる彼らだけの国です。彼ら以外は人ではなく、彼らは唯一の人としてその国に君臨する。おそらく、そういう世界でしょう」

「こりゃまた酷い暗黒世界ディストピアな合衆国だなぁ」

「おそらく……彼女たちもこの世界の真実に気づいているのでしょう」

「世界の真実?」

 なにそれ。
 そんなものがあるの?

「いつか、貴女にも言いましたよね。この世界は女神のおもちゃだと」

「ああ。それで女神を殺すって話になったよね。てか女神なんて最初に出てきたばかりで、とんと会っちゃいないけど」

「やはり、貴女もですか……」

「ん? どういう意味?」

「いえ、なんでもありません。それより長浜さん。この世界が女神のおもちゃだと聞いて、どう思いました?」

 どうって言われてもなぁ。
 もう女神とか顔すら覚えてないし。ぶっちゃけどうでもいいんだよねぇ。
 んー……どう思ったか。

「女神が僕様たちプレイヤーをこの世界に投入して、どうなるかを見る、って感じかな。もうちょっと簡単に言うと……ゲームの中の世界みたいな感じ? わかんないけど」

「なるほど」

 答えを聞いた煌夜陳は、深く考え込むようにして黙ってしまった。

「で? それがどうしたのさ?」

「もし、もしですよ。この世界が……この世界が真実の世界だと言われたら、貴女はどうしますか?」

 意味が分からない。
 この世界が真実の世界?
 ここは今は確かに現実だけど、よくある異世界みたいなものじゃなく?
 だったらこっちも真実だし、元の世界も真実だし問題ないんじゃないか?

「女神がおもちゃにしている世界。そしておもちゃにしているのは、我々プレイヤーも同様。もし、あの姉弟がそれを知ったのであれば、あるいは……」

「えっと、煌夜ちん。話が見えないんだけど? この世界の真実って何?」

「これは……すみません。忘れてください。私もちょっと考えすぎなところがあるかもしれません」

 ふーん。ま、いっか。
 それほどこの世界がどうなろうと、僕様には関係ないし。

「てか、珍しいね。煌夜ちんがそこまで自信ないなんて」

「私はいつも自信なんてありませんよ。臆病で、慎重で、必死なだけです。だからあの姉弟にも目を光らせなければならないのですが……」

「ん、まぁ分かった。とにかくその姉弟に問題ありそうで、元帥はそっちに向かったと。じゃあ僕様ちゃんはこのまま帝都にいた方がいいのかな?」

「はい、それをお願いしたく。あぁ、そういえば北はどうでした?」

「どうも何も。あんまり手ごたえはなかったかなぁ。いつもみたいに一方的に攻めて、適当なところで和睦して終わりだよ。ちょっちフラストレーション溜まる感じだから発散したかったけど、ま、しょうがないね」

「いえ、ありがとうございました。やはり北のことは貴女に任せておけば問題ありませんね」

「それで毎回呼ばれるのは勘弁だけどね。とにかく、兵たちを休ませながら臨戦態勢は整えておくよ」

「ええ。それでよろしくお願いします」

 用件はそれで終わりらしい。
 煌夜ちんが立ち上がるとそのまま部屋の外へ。麗明っちもそれに続いて立ち上がりこちらに会釈をしてくる。

 なーんか、変だよなぁ。

 はっきりしない煌夜ちんも、なにを考えてんのかわかんない麗明っちも、動きすぎる元帥も。
 そしてもちろんあの双子も。

 全員が何を考えてるのかよくわかんない。
 何かに突き動かされているようで、何かに焦らされているようで、何かが変だ。

「女神のおもちゃ、か」

 あるいはそれか? それに突き動かされているのか?

 なーんてね。

 もう、煌夜ちんが変なこと言うから意識しちゃったじゃないか。
 別にそうだろうと僕様には関係ない。

 突き動かされようが、焦らされようが僕様は僕様。
 やることはもう決まっている。

 みんなが何かに突き動かされる中、確固たる自分をもって動いている人物。

 ジャンヌ・ダルク。

 北へ東へ南へ西へ。
 本当によく動く。

 だからこそ、僕様の好敵手ライヴァルにふさわしい。

 僕様はそのまま部屋の奥に。
 今は留守のこの部屋の主が使っている豪奢な椅子に深々と腰を落ち着けた。

「第一ラウンドはジャンヌ・ダルクが取った。第二ラウンドは……さてさて、椎葉ちんが逆襲するか、それともジャンヌ・ダルクがまたまた勝つのか。それとも元帥が間に合うのか、あるいはあの双子が何か仕掛けるのか。ふふっ、しばらくは高みの見物でもさせてもらおうかな」

 僕様も北の大地を駆け巡って少し疲れた。
 少しくらいはこうやって鋭気を養ってもいいだろう。
 椅子をくるりと回転させて、そう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

勇者をしている者なんですけど、キモデブ装甲のモブAにチェンジ魔法を使われて、身体が入れ替わった!? ありがとうモブA!やっと解放された!

くらげさん
ファンタジー
 雑草のように湧いてくる魔王の討伐を1000年のあいだ勇者としてこなしてきたら、キモデブ装甲のモブAに身体を取られてしまった。  モブAは「チェンジ魔法」のユニークスキル持ちだった。  勇者は勇者を辞めたかったから丁度良かったと、モブAに変わり、この姿でのんびり平和に暮らして行こうと思った。  さっそく家に帰り、妹に理由を話すと、あっさりと信じて、勇者は妹が見たかった景色を見せてやりたいと、1000年を取り戻すような旅に出掛けた。  勇者は勇者の名前を捨てて、モブオと名乗った。  最初の街で、一人のエルフに出会う。  そしてモブオはエルフが街の人たちを殺そうとしていると気付いた。  もう勇者じゃないモブオは気付いても、止めはしなかった。  モブオは自分たちに関係がないならどうでもいいと言って、エルフの魔王から二週間の猶予を貰った。  モブオは妹以外には興味なかったのである。  それから妹はエルフの魔王と仲良くなり、エルフと別れる夜には泣き止むのに一晩かかった。  魔王は勇者に殺される。それは確定している。

処理中です...