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第二章
【二】星夜ー祖母ちゃんの商業デビューと月子ちゃんの試練①
しおりを挟むゴールデンウィークは観光地の混雑を避けて、毎日祖母ちゃんとバーベキューやタコパをしてぐーたらを満喫していた。
「にゃーん」
「ルビー、鰹節が欲しいのか?」
「うにゃーん」
タコ焼きはやっぱり、庭でやるのが最高だな~。籐のカウチに寝そべって、サファイアを吸ってみた。もふもふ最高。
「星夜、これを見て!」
ルカ叔母さんが封筒を手にしている。中身を受け取って、目が飛び出た。
「セイウチブックス……出版契約書?」
「お母さんの小説を内緒で応募したら、採用されたのよ。商業デビューよ!」
「えええええ~っ⁉」
「しょ、商業デビュー?」
祖母ちゃんは、たこ焼きを芝生に落として呆然としていた。
「いまはネット小説や電子漫画の時代でしょ。電子出版社に原稿を送ってみたの。そしたらほら、お母さんの小説を電子ストアで配信してくれるって!」
「電子ストア?」
「テレビコマーシャルで見たことあるでしょ。ランタ! とか、コミックニャーモアとか、ニャマゾンとかよ!」
「すごいよ、祖母ちゃん!」
「そうよ、母さん。やったわね!」
「い、いいのかしら。私の小説で……」
「出版社が売れるって判断したんだから、いいのよ!」
「お、俺、海人に電話しなくちゃ」
「星夜、いまはゴールデンウィークなんだから後でいいんだよ」
荻野兄妹には世話になりっぱなしだから、とラン祖母ちゃんに止められた。
「そうだな。休み明けに学校で知らせるよ。きっと驚くぜ」
ラン祖母ちゃんの同人誌頒布計画は順調に進んでいた――。
①ラン祖母ちゃんはパートの合間に小説の推敲と校正作業を進める。
②俺は学校から帰宅したらラン祖母ちゃんのサポートとプピッターでの宣伝活動。
③月子ちゃんは習い事や勉強に影響が出ない程度に表紙を制作する。
④海人は月子ちゃんが祖母ちゃんと打ち合わせする時に家まで同伴する。(萩野家令嬢はひとりの外出が禁止されている)
⑤ルカ叔母さんは同人誌の印刷会社への入稿作業や通販手段を手配する。
小説の同人誌を作るには、中身(小説)と外側(表紙絵)の制作工程がまるで違うのを初めて知った。
A ①の小説を、ワープロソフトを使って本の大きさ(今回はA5版二段組み)に文章を整えて、さらに校正や推敲をする。読み上げ機能で誤字や脱字もチェックする。
B Aの原稿をコピーして、紙でミスがないかチェックする。発見したら赤ペンで記す。
C ミスがあればパソコンで修正し、再びパソコンの校正機能でチェック。
D もう一度印刷して最終チェック。
この工程が済んで、やっと印刷会社に依頼するらしい。マジか。俺、同人誌制作舐めてたわ。
表紙の制作も、これとは違った行程があることを月子ちゃんから教えてもらった。
画像の種類(PNG、JPEG、他)って何じゃらホイ?
解像度って何の違いがあるのかなー?(イケメン度が増すとか?)
大体、絵をデジタルで描くテクニックを習得するんだって、一朝一夕じゃ無理って俺だって分かる。月子ちゃんは努力家だと絵を見て悟ったよ。
俺も都会じゃ缶詰状態で勉強したけれど、何かを得たのかと言われれば、誇れるものはない。あの学校から逃げ出したくて勉強しただけ。俺は将来なりたい職業もない。
夢はここで平和に暮らしたい、ただそれだけだ――。
俺はスマホを学校に持って行かない主義なので、月子ちゃんや海人がルカ叔母さんやラン祖母ちゃんとの昼間のやり取りを教えてくれた。
転校当初は腐女子をどうやって探そうかと頭を抱えていた俺は、月子ちゃんの登場により全てが解決したと思い込んでいた。だが、それは間違っていたようだ。
俺が萩野兄妹に頼り切ってしまったために、月子ちゃんの立場を追い詰めてしまった――。
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