【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

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第二章

【二】星夜ー祖母ちゃんの商業デビューと月子ちゃんの試練②

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「商業デビュー? 凄いな!」
「わあ、おめでとうございます。面白い話だもの、当然だわ!」
「そ、そうかな。ありがとう」

 実は俺、未だに読んでないんだよね。
「放課後、お邪魔していいかしら。直接お祝いを伝えたいわ」
「祖母ちゃんがよろこぶよ」
 萩野兄妹は身内のように喜んでくれた。
 
 キーンコーン。カーンコーン。

 ゴールデンウィーク明けの学校では海外組が日焼けして登校し、有名避暑地で過ごしたクラスメイトがご当地限定菓子をばらまいていた。

 紀文先生はニューバージョンのハンペンボールペンを胸に挿していた。あれ特注品らしいけど、どこで売ってるんだろう。公式サイトか?

「おはよう。皆さんにお知らせがあります。海外から短期留学生がこのクラスに編入します。期間は一ヶ月です。特例のウエルカム行事があるので、昼休み明けにロータリー広場へ集まるように」
「ゲゲー。このクラスに入るのか」
「いいじゃん。玉の輿狙えるかもよ」
「紀文先生、転校生はどんな人ですか?」
「某国の皇太子クラスの人物だよ。いまはこれしか明かせない。校長先生が発表するので、それまでのお楽しみだ」
「キャー。皇太子クラス! てことは、王子様?」
「ああ。男子生徒だ」
「ちぇ。がっかり。王女様じゃないのか~」
「お前は彼女いるだろ」

 わいわいとクラスが盛り上がっている。

「短期留学って、結構あるのか?」

 俺の質問に、海人が頷く。

「かなりの大金が入るらしいぜ。世界中の金持ち子息や令嬢が来てる。アメリカやフランス、イギリスやカナダ、南アフリカやロシア、中国……」
「玉の輿って、実際にあるのか」
「去年、アメリカから留学してきたジョージが、茶道の次期家元の女子高校生と結婚したな」
「それって、逆玉ってやつ?」
「もと華族の家柄だからね。血筋ってのに弱いタイプだったんだろ」
「へー」

 よく婚姻が成立したもんだな。愛って摩訶不思議だぜ……。

 留学生の正体よりも、休み時間に萩野兄妹と同人誌の進捗状況を報告したかった。

「ねえ、若生君。ちょっといい?」

 海人へ話しかける前に、クラスメイトの女子に捕まってしまった。たしか、クラス委員の蜂谷さんだっけ。

「なに?」
「こんどみんなで街に遊びに行こうよ」
「ああ~。ごめん。俺、予定があるんだ」
「じゃあ、暇なとき教えてよ。スマホは持たないの?」
「俺、友達としか電話しないんだ。ごめん」
「星夜君」

 月子ちゃんが近づいてきた。手を上げて立ちあがったら、またしても蜂谷さんに阻まれた。

「萩野さんには名前で呼んでるなんて、若生君と付き合ってるの?」
「いいえ。友人よ」
「そんなの嘘でしょ。だって、いつも一緒にいるじゃないの!」
「兄も一緒よ」
「じゃあ、邪魔しないでよ。私が若生君と話してるのよ」
「え、もう断ったよね?」

 俺のひと言が、場の空気を凍らせてしまったらしい。

「うわ~。蜂谷さん、恥ずかし~」
「悪あがきするからでしょ。萩野さんに勝てるわけないじゃん」
「やっぱ、若生君と付き合ってるのかな」
「あれ、お見合い決まってるって噂だよ」
「じゃあ、若生君は遊び?」
「愛人とか」
「根も葉もない噂はやめてもらえるかしら。私は、若生君の友人よ」
「でも、やけに親しげよね」
「私たちだって、若生君に近づけないし」
「そうよ、そうよ」

 いつの間にかクラスの女子達が机の周りに集まってきて、月子ちゃんを責めだした。
 これじゃ、中学校時代の二の舞だ。
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