【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

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第二章

【五】星夜ー月子と白馬のお殿様③

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月子ちゃんはドン引きしているのかと思いきや、手を叩いて喜んでいる。やはり宮城県民。伊達のお殿様は姫の関心を数ポイント掴んだようだ。だが、恋心は生まれるのか?

「月子ちゃんの見合い相手は、乗馬ができるんだな」

 俺の質問に蜂谷さんが答えた。

「管建設は県下でも十本の指に入る大きな土建屋よ」
「へえ~」



「ヒヒ~ン」

 いななきと共に、朝礼台前で止まった白馬。ひらりと地上に下りた武将が月子ちゃんの前に立った。台から移動していた生徒会長が手を伸ばし、マイクで会話の音声を拾おうとしていた。

【ご指名ありがとう。はじめまして、菅暁則すがあきのりです】
【お忙しい中、おいでいただきありがとうございます。萩野月子はぎのつきこです】

 付き添い役の海人が続いて挨拶を交わしていた。
 二十メートル離れた俺たち見学者には、兜の下にある面差しが見えない。


「イケメンかしら?」
「身長は180センチ超、筋肉隆々とみたわ。あっ、電光掲示板のスクリーンに、二人のアップが映ったわ!」
「「おおー」」

 凜々しい眉の青年が、黒髪の美少女へ微笑んでいた。副会長ナイスズームアップ!

「あら、殿が姫に何か渡しているわよ!」
「え、なになに?」
「まさか、土地の権利書じゃないわよね?」
「それ、時代劇設定www」
「いや、平安時代じゃん」
「いや、現代では愛人に使うプレゼントでしょ」
「あんたら、本当にJK?」
「俺にくれ」
「お前、蔵王に別荘持ってるじゃん」
「それ、叔母の遺産」

 観覧席のツッコミが止まらない。殿様は何をプレゼントしたんだ?

 生徒会長が片手をあげると、ピタリと会話が止んだ。群衆が固唾を飲んで見守る。


【月子さんが欲しがっているプレゼントは、これかな?】
【開けてもよろしいでしょうか?】
【どうぞ】

 月子ちゃんが受け取った包装紙を開けて、そして現れたのは……。

【これは……ベルばら先生の……サイン本?】
【直筆サインだ。実は仙台市在住なんだよ。直接会ってきた】


 なんだってー?

「「キャー!」」
「「ベルばら先生の直筆サイン?」」
「「欲しい~」」

 数十人の女生徒が叫んでいるぞ。腐女子なのか?



【ありがとうございます……。大変だったのでは?】
【いいや。君が欲しがるかなと思って、見合い話が来てからすぐ、もらいに行ったんだ。渡す機会が巡ってきてよかったよ】

 微笑みあう、いかつい武士と女子高生がスクリーンに映し出される。


「「おお~」」

 観衆がどよめく。
 見合い話がいつ持ち上がったのかは分からないが、一朝一夕で手に入れるのは不可能だ。


「つまりは、殿は本気で月子姫を手に入れるつもりだったのね……」

 蜂谷さんが感動で目を潤ませて呟くと、多賀城さんと気仙沼さんが頷いた。

「なんということでしょう……」
「腐女子を理解してるなんて、私が結婚したい!」

 おい、略奪はやめておけ!

「伊達★武将隊まで来る必要があったのかー?」
 男子生徒Aのヤジに、女性陣がブーイングだ。

「だまらっしゃい!」
「日本男児なんだから、スポーツカーやリムジンに頼っちゃダメでしょ!」

「あっ、二人が馬に乗るみたいだぜ」
「え?」


 なんと、伊達★武将隊の手を借りて、菅氏と月子ちゃんが馬に乗ってしまったぞ。

 パッパカ、パッパカ。パッパカ、パッパカ。

【伊達★武将隊の退場です。みなさま、拍手で見送ってください!】

 パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。
 パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。


「「おお~」」
「婚約成立かな?」
「当たり前でしょ!」
「おめでと~」
「お幸せにー」

 マジか? 本当にそうなのか?


【イベントは終了です。生徒の皆さんは、速やかに下校、または部活動を開始してください】


 生徒会長の終了宣言で、移動が始まった。

「海人君が伊達★武将隊と一緒に走って行くわよ!」
「俺たちも行こう!」

 居ても立ってもいられず、俺が腐女子トリオに叫んだ。すると俺たちの後を、アジャール王子も着いて来た。

「王子、帰れよ」
「イヤダ。サイゴマデ、ミタイ」
『王子、あと十五分です』


 北門まで約二百メートル。たどり着いた頃には、二人とも馬から降りていた。
白馬は控えていたトラックに乗せられている。海人も交えて、朗らかに談笑を交わす月子ちゃんと見合い相手。

 これはもしかすると、もしかするのか?

 
 俺たちは少し離れた場所で見守った。

「馬まで用意してくるなんて、気合いの入れようが半端ないな」

 電話を受けてから数時間で準備し、月子ちゃんの趣味嗜好まで把握していた。菅氏の財力と手腕は他の二人に比べて圧倒的勝利だった。アジャール王子には、これが理解できたのだろうか。


「星夜スキナジョセイハ、イルノカ?」

「いない。俺はここで、楽しい高校生活を送るのが優先事項だよ。最優先事項は祖母ちゃんの同人イベントを成功させる事だけど」
「「イベント活動?」」
 腐女子の質問がハモった。
「うん。J庭インオータムにサークル参加するんだ」
「「J庭インオータム!」」


 甲冑姿のまま黒いワンボックスカーに乗り込む菅氏を、萩野兄妹が見送った。

 いつの間にか武将隊も撤収している。ギャラはいくらだったんだ?

「ワタシモ、イベントニイキタイ」
「え~。王子が来たら、イベント会場が警備員で一杯になりそうだからダメだよ」
「ゼッタイニ、イク!」

「「私たちも行きたい!」」

 腐女子トリオが叫んだ。
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