本当の外れスキルのスロー生活物語

転定妙用

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苦境に陥る

殺戮者?正当防衛?➁

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 不穏な空気はかなり前からあり、悪い噂も流れていた。オズワルドとしても、自分の小さな領地の治安維持、防衛のために、領民から志願兵を募り、傭兵を雇い入れたりしていた。エバンス公爵家から動員された場合、これに馳せ参じることも考えての上でのことでもあった。つまりは、エバンス公爵家の一員として行動、対処するという考えであった。その最中、彼の2人の妻がいなくなった。彼が、足しげく領内を見回っている最中に姿をくらましたのだ。その巧みさから、かなり前から密かに準備していたのでは?と疑われるものだった。頭が2つの重大事に押しつぶされるようになった。彼は、こういう時にはパニックに陥るのが常だった。
 実際にそうなった。それを、短時間で理性、知識、経験、見栄、臆病さ、他人への配慮から、何とか抜け出した時、反乱軍こと救世軍数千が、領地を包囲した。付近には、まともな兵力はオズワルドの僅かな私兵しかいない状況で、その数も微々たるものだった。
 圧倒的質量の差。彼は、領地の村々を守るため、反乱軍こと救世軍との交渉をせざるを得なかった。降伏しなければ周辺を焼き払うというのが、救世軍こと反乱軍の意志だった。
 オズワルドは、交渉を自分の邸宅でと考え、提案したところ救世軍は同意したのだが、その指揮官は約1千人からなる親衛隊とともに彼の邸宅を包囲した上で幹部達とともに入ってきた。

「オズワルド、久しいな?」
と、多数の部下を引き連れて、大広間に入った救世軍の頭目は、まだかなり若い金髪の、そしてなかなか逞しい美形の男だった、は用意されたイスにドカっと座ると見下すように言った。オズワルドの後ろには数名の護衛の騎士達がいた。事前の約束では同程度の人数で入って来るはずだったが、彼は守らなかった。もともと領内への進駐も、邸宅を囲む部隊のことも事前の約束を保護にしてのことではあったから、何をか言わんというところではあったが。しかし、オズワルドには記憶はなかった。
「申し訳ないが、私には貴公には見覚えがないが。」
と言わざるを得なかったが、
「ふん。ご領主様は、残り物を食わせた奴のことは覚えてはおられないようだ。」
そういうと笑った。それには、残虐さと怒りと見下すものが入り混じっていた。
 怖いよ、とオズワルドは思った。救世軍の頭目の部下達も笑った。すると、
「お、お前達、ご領主様の恩を忘れたのか?」
とオズワルドの後ろから叫び声があがった。振り向かなくてもわかった。今回のことで領内に募集した兵に、まっさきに応募してきた孤児院出身の若者だった。
「何が恩だよ?お前、まだ信じているのかよ?あれはな、こいつの食った残り物だったんだよ、残飯だったんだよ。あれだけのことで恩に着せて、恩返をしろなんて偉そうにぬかしやがった、ご貴族様にまだ尻尾を振っているのかよ?」
 救世軍の頭目は、オズワルド領内の孤児院出身の若者だった。武芸と魔法の才能があり、王都に旅立っていった。その後の消息は、手紙も最初に2通ほどで孤児院には来なくなっていたので不明だった。
「ご領主さまは孤児院を支援してくれていたんだぞ。それで、俺達はここまでなれたんだぞ。」
「その金や物はみんな領地の農民から取り上げたものだろうが?そしてこいつは、俺達が寒さに震え、暑さにうだっている時に、ここで快適に暮らしていたんだよ。これからは、ご領主様に俺達の暮らしを与えてやるさ。この快適な場所は、俺が使わせてもらうさ。お?この空間で自分無しには過ごせない、とかおもっているだろう?分かっているんだぜ。エルフが聖樹と契約した結果なんだろう。お前の女のさ、エルフがやったんだろう?こちとらには、ハイエルフがいるんだよ。新しい契約者は俺になるんだよ。どこまでエルフの血が流れているかわからない似非エルフの力なんて効果はないんだよ。」
 どこかで情報がねじ曲がっているようだな、とオズワルドは思ったが、口には出さなかった。それが反撃のチャンスになると思ったからである。その時彼の頭には、冷酷で残忍とも思える計画が浮かんでいた。
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