破滅確定の悪役令嬢ですが、魅惑の女王になりました。

専業プウタ

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18.ビンゴ⋯⋯結構なクズ男ね⋯⋯。

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「これは、アレキサンドライトです。レオから貰って⋯⋯」

 私は慌てて指輪を外した。

「盗聴器がついていたかもしれません」

 私の言葉にオスカーとアリスが顔を見合わせる。
 盗聴器のような魔法道具が存在することを私は知っている。

 なぜなら、ルシアがアリスに嫌がらせをしていた証明に使われたのが盗聴器のような魔法道具だった。

 取り巻きにアリスに嫌がらせをするように指示していた音声が、断罪の際に証拠品として使われたのだ。

(あれもルシアが自分が断罪される為に仕込んでたりしない?)

「盗聴器とは、人の会話を盗み聞く魔法道具のことかな? ルシア、周りが全て敵かもしれないと思っているかもしれないいけど、僕とアリスは味方だ」
 オスカーが私をそっと抱きしめてくる。
 私は、今、2人のことを疑っていない。

「そういった人の会話を盗める魔法道具を、カイロス国王殺しを誘導したかもしれないステラン公爵家なら持っていそうだと思っただけです⋯⋯」
 私は今推測することを語りながら、レオがくれた指輪を見つめた。
 よく見ると必要以上に石が大きい。

 富を象徴するために敢えてそうしたという可能性も否定できない。
(怪しい⋯⋯この石って盗聴器なんじゃないの?)

「お兄様、よく見たらこの石⋯⋯趣味が悪いです。愛を伝えるならダイヤモンドを選んで欲しいわ」
 咄嗟に私は指輪を外した。
「ルシア⋯⋯君の想いのままに⋯⋯その宝石の調査をするよ」 
 オスカーが私から指輪を受け取り握りしめた。

 盗聴できる魔法道具は、現代のようにオンタイムで盗聴している側が音声を盗み聞くことはできない。
 あの指輪を回収して調査し、初めて音声を聞き取ることができる。

「午後から、早速国葬をするらしい⋯⋯通常なら王族の葬儀には最低でも2週間は準備期間を設けるはずだ」
 オスカーの言葉に複雑な気分になった。
『誘惑の悪女』では死ななかったはずの人間が死んでいる。

 そして、カイロス国王の死因が不審死という曖昧な形になっている。
 このまま遺体を埋められてしまったら、死因の原因も解明できない。
(今できることをやらなきゃ⋯⋯これ以上の犠牲者を出さない為に⋯⋯)

 ミカエルの精神状況も普通じゃなくなっていた。
 彼が国王に即位しても、扱いづらいと見做されたら秘密裏に処理されるのではないだろうか。
 
「では、私は午後までにアルベルト王子殿下に話を通しておきます。お兄様、せっかくなのでアリスとこちらでゆっくりしていってください」

 私の言葉にアリスとオスカーが顔を見合わせて頬を染める。
(この2人は乙女ゲームしてて癒されるわ⋯⋯)

 部屋を出て、私はまず先ほどの秘密の部屋に向かった。
 鍵が閉まっていなければ、あの部屋の秘密が解き明かせるはずだ。

 先程レオに案内された長い通路を通って、秘密の部屋の扉を開ける。
(よし、開いた鍵がかかってない!)

「レオとライアン⋯⋯」
 目の前に現れた光景に一瞬動揺が走る。
 ソファーに足を組んで座ったレオの前に、跪いたライアンがいた。

 ライアンは口から血を流している。
(位置的にレオがライアンの顔を蹴ったの?)

「ルシア⋯⋯どうしたの? 寂しくなっちゃった?」

 冷たい表情でライアンを見下していたレオが、すぐに甘い顔を作って近づいてくる。

 私はそっと目を閉じた。

 レオにとっての『誘惑の悪女』を演じてみようと思ったのだ。
 私は日本で目指していた高校の演劇部に入りたいと思っていた。

 文化祭に訪れた時に、大人しいと思っていた近所のお姉さんがサイコな殺人鬼の演技をしていたのだ。

 殻を破って全く別の自分になれる瞬間があることに憧れていた。

 昔から、勉強が好きだったせいで真面目だというレッテルを貼られていた。

 私もそのレッテルに沿った性格を演じていたと思う。

 当然のように毎年委員長をして、教師の意図を組んだ発言ばかりしていた。
 
 でも、厄介事を押し付けてくる教師に言いたいことは沢山あったし、面倒な事を押し付けてくるクラスメートも狡いと思っていた。

 だから、自分とは真逆に想いのままに生きてそうな柊隼人の不良っぽさに憧れていた。
 彼を知っていくと実は誠実そうで、気のあるそぶりを見せられ好きになってしまった。

 ふと目を開けると、レオにキスされる寸前だった。
 私はそのキスを避けて、そっとライアンを覗き見る。
(顔に怪我して、目を逸らして、一体何をやってるのよ⋯⋯柊隼人)

「レオ⋯⋯さっきの指輪って盗聴できる魔法道具でしょ。私のこと信用していない男とはキスなんかしてあげないんだから」

 経験0でも、私は男を惑わす女を演じられる。
 散々、海外生活で恋の駆け引きをするカップルを観察してきた。

 レオが咄嗟に私から目を逸らした。
(ビンゴ⋯⋯結構なクズ男ね⋯⋯)
 
「ルシア⋯⋯君が僕を不安にさせるからいけないんだよ。火の魔力をいきなり見せるなんて予定になかったじゃないか」

「だから、盗聴しようと指輪を渡したんだ。その件は許してあげる。でも、なんだかレオって私の思っていた人と違うかも⋯⋯」
 レオの心をゆさぶるように挑戦的な視線を送る。

「私がなんで火の魔力を見せたか本心を伝えるね。 少しでも早くレオと一緒になりたくて我慢できなかったのよ⋯⋯それなのに、そんな私を疑ったのね」

 私は寂しそうな顔をしながら、彼の髪に手を伸ばして愛おしそうに撫でた。
(本当はこのまま髪を全部引っこ抜いてやりたい! このクズ男が!)

「ルシア⋯⋯なんと言って良いのか⋯⋯僕のこと嫌いになってないよね?」
「嫌いになるはずないじゃない。でも、しばらくキスはお預けよ。ちゃんといい子にして挽回してね」

 私が彼の唇に人差し指を当てると、彼は頬を染めた。
(ルシアと秘密の大人の関係なのかと思っていたけれど、意外とピュアなのかしから)

 よく考えればレオが完全に汚れ切った人間なら、アリスの存在で改心などしないだろう。
 アリスがオスカールートを選んでいる以上、レオはアリスによる心の救済は受けられない。

「じゃあ、私はここで失礼するわ。ライアンはあなたの騎士にしたの?」
「そうだよ。君が捨てたみたいだから拾った。お願いルシア、僕のことは捨てないで⋯⋯君のことが本当に好きなんだ」

 私は無言でその場を後にした。
(ここで慰めず、相手に蟠りを残し自分のことを考えさせる! それが、男を惑わす女のやり方なはず!)

 私は小走りで、アルベルト様の部屋まで急いだ。
 後ろから急に凄いスピードの足跡が聞こえてきた。
 振り向くとライアンが私を追いかけてきていた。

「ライアン、ちょっと何!」
 私は彼に追いつかれて、壁に押し付けられていた。

「お前、茉莉花だよな⋯⋯海外行ってビッチ女になったみたいだけど」
 私を怒りで燃え上がるような瞳で見つめてくるライアンは、柊隼人なんだろう。

 真面目委員長の私を揶揄って、裏で笑っていた彼になぜ私は非難されているのか。
 私があの程度のことで不登校になる程、打たれ弱すぎたことは認める。
 でも、彼に私を非難する権利はないはずだ。

「だったら何? あなたは隼人? 私、もう、あなたと関わりたくないんだけど」
「俺はずっと茉莉花が好きだった。お前のことを忘れたことなかったし、茉莉花が行きたかった高校に入って待ってたんだ」

 隼人の成績で県内トップの進学校に合格したとしたら、相当勉強しただろう。
(それが何? 私は学校に行こうとしても行けなくて苦しんだのに⋯⋯)









 
 
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