転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス

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一章 異世界への降り立ち。そして序章

天界って存在がファンタジーだけどファンタジーだったのは存在だけだったよ

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「こんにちは、凸守優斗さん。ようこそ死後の世界へ。私は日本で死んだ人間を案内する女神です」



 気が付くと真っ白い部屋にいた優斗は、部屋に設けられていた木製の椅子に腰掛け、目の前の豪華そうな椅子に座っている少女にそのようなことを言われた。



「は………え………?」



「混乱するのも無理はございません。ですが、あなたが死んだことは紛れもない事実なのです」



「そんなこと言われたって………俺、死んだ時の記憶も無いですが?」



「それはそうでしょう。死因が何であれ死んだという事実はショックであり、その記憶はトラウマなり得るもの。故に、死んだ時の記憶はこちらで封印させていただいております」



「トラウマって………俺の死因って、そんなに悲惨なものなんですか?」



「いいえ?あなたの死因はトラウマなり得るものではありませんよ。ですが、時には悲惨なものになっている時もあるのです。自殺なんて特にそうですね。死因に心当たりがあっても自殺何てものは己を確実に殺すために行う行為。ある程度は悲惨な状態になるのは確実ですし、死ぬこと自体は恐れていませんが、死ぬ瞬間の痛み、消失感。それを思い出してここで発狂する人も少なくありませんから」



 なるほど。そういうことであれば、記憶を封印するのも頷ける。

 結局、優斗の死因は分かりそうに無いが、流石にそこまでの精神的ダメージを負うのは嫌だ。

 優斗は自分が自殺する理由に心当たりが無いため、他殺か事故なのだろうと死因を予想し、そこで一度思考を中断する。



 それにしても、記憶の保護だったり、記憶に関しての説明だけだが親切な対応。創作物の女神様みたいな傲岸不遜な態度だったり、雑な対応をしないのを見る限りやはり創作物は創作物。実物は実物なのだと改めて感じる。

 自己紹介はしてくれないので名前はわからないが。



「さて、自分の17年の生が幕を閉じたと認識したところで、貴方にはいくつかの選択肢があります」



「選択肢、ですか?」



「ええそうです。一つは天国に行くこと。一つは地獄に行くこと。一つは生まれ変わり、日本で新たな生を謳歌すること」



 女神様は指を一つづつ立てながらゆっくりと説明してくれる。それにしても、女神様が天国に案内したり生まれ変わりを促すのはわかるが



「地獄までの案内もしてるのですね」



 優斗が意外そうな声でそう言うと



「数多くの異世界物の小説が出てる日本人の人達でも、そういう反応の人は多かったですね。女神とは、本来魂を導く者。地獄に行くも天国に行くもその道は魂の持ち主が決め、私たちはその道を用意するだけの存在ですから」



「そうなんですね………」



 意外な反応。それは優斗もわかる。創作物的にも女神が地獄行きを案内してる作品は決して多くはなく、仏教的にも天界を経由することは無い考えが殆どだ。



「そもそも、地獄行きか天国行きを決めれるなんて思いもしませんでしたし」



「まあ、優斗さんの中の常識だとそうかもしれませんが、実はこれが現実なんですよね。それに、勘違いしているかもしれませんが、地獄も天国も優斗さんが想像しているものとは違うかもしれませんよ?」



「と言うと?」



「まず、地獄には管理責任者として閻魔大王は存在しますが、それだけです。罪を犯したからと言って舌を抜かれるなんてことはありませんので安心してください」



「え?じゃあ、地獄って何するところなんですか?」



「何をする、ということはないですね。強いていえば働いて、お金を得て、そしてご飯を食べる。何処にでもあるありふれた日常を歳老いる事なく、娯楽すらも最低限以下しかない世界で、その生に終止符が打たれることなく永遠に続くだけ、ですね」



 つまり、永遠に続く命の中、現代日本に生きる社畜が如く働き続けるということなのだろう。

 いや、その社畜よりも尚酷い。日々の楽しみとなり得る娯楽すらも奪われた世界で只々働き続けるだけの生活。そんなもの



「正しく、地獄じゃないですか………」



「はい。だから、そう言いましたよ?」



 目の前の女神はクスクスと笑いながら軽く言うが、この時点で優斗にとって始めから無いも同然だった〈地獄行き〉という選択肢は完全に潰えた。



「まあ、お客様なら神々がいますし?天使の子達も来ますので。それに、悪行を働き地獄に落ちた者は永遠に地獄行きですが、自ら望んで地獄に行った人達は任意のタイミングで転生も可能ですしね」



「そ、そうですか。では、一応選択肢が用意されている俺なら」



「勿論、地獄に行っても転生は可能ですよ。無論、好んで地獄に行く人はよっぽど働く事が好きな人だけですし、これは天国に行ったとしても変わりませんが」



 つまり、天国に行っても任意のタイミングで転生が可能ということらしい。



「それで、天国とは?」



 想像している天国は、正しく楽園のような世界なのだが、実際の天国とはどのようなものなのだろうか。もしかして、案外ろくでもないのが出てくるかもしれない。そう思ったのだが



「天国は存外普通ですよ?娯楽も十分にありますし、欲しいものは大体手に入りますし。邪魔に入る神も天使もいないので好きなだけ遊んで、飽きたら転生するだけの場所ですね」



「じゃあ、その世界で長続きする人は少なそうですね」



「そうですね。実際、一番長かった人でも天界の時間で千年程。平均で二百年と言ったところでしょうかね」



「………なんか、多くないか?」



「現世に未練がある人が多いのでしょう。例えば、連載中の漫画や放送中のアニメ。活動中の動画投稿者の作品を見続けたいと思う人は多いみたいですからね」



「それが、天国だと更新され続けると?」



「まあ、そうですね。無論、地獄でも確認することは可能ですが、発行部数が少なかったり、発売されるまでにかなりの時間が必要だったりと比べるまでもないデメリットがあるのでそういった面も踏まえて天国の方がおすすめ度は高いですが」



 それはそうだろう。



「では、三つ目の選択肢。転生について説明させていただきます」



 来た。

 恐らくメインディッシュ。この選択を今するか、後にするかによってこの先の運命が大きく変わる。



「転生と行っても簡単ですね。今の魂を綺麗に浄化してまっさらな状態にしてから新たに生まれる身体に受肉する。簡単に言えばそれだけですね」



「それだけって………他に何かないんですか?転生先とか、種族とか」



 テンプレだと選べたりするのだが、ここは今のところ優斗の知るテンプレが何一つ通用していない空間だ。自分を信用することなかれ。女神の言葉を、余すことなく最後まで聞き入れろ。



「種族に関しては人間ですよ?人間の魂を他の生物に受肉させることは器的に無理なので。仮に受肉させようとすると魂を削らないと駄目ですし、そうすると魂に不具合が生じるので」



「そ、そうですか」



 第一関門クリア。これで種族がランダムだったら終わるところだった。

 一先ず優斗は来世でも人間として生きることを許されたらしい。



「ちなみに性別の方は………」



「当然ランダムです。魂の器に問題があるだけで、性別に関しては特に問題ありませんので」



 性別に関しては優斗はそこまできにしないので一先ず問題は無い。



「そして生まれる場所ですが、これもランダムですよ」



「ら、ランダムということは、日本以外の可能性も全然有り得るということですか?」



「勿論。器的には問題ありませんし、次いでに言うと別世界。通称異世界の器に受肉させても何も問題ないのですよね。同じ種族なので器的には問題無いので」



 ここまで聞く感じでは、女神側はあくまでも器を重視しているだけで魂を入れる場所には拘っていないみたいだ。



「っていうか、異世界なんてあるんですね」



「それは勿論ですよ。この天界が存在するのは貴方が元々住んでいた世界だけではありませんし、そんな勿体ないことはしません」



 そう考えると、天国も地獄もあらゆる世界の文化や技術が交流し合い、元々住んでいた日本よりも技術的には発展しているのかもしれない。



「天国か地獄か転生か………」



 提示された三つの選択肢。そして地獄行きは普通に嫌なので実質二つの選択肢。

 天国に行くか、転生するか。

 正直、ここは一度天国に行った方がいいと思う。

 折角天国に行く権利が与えられたのだから、ここは天国で残りの時間を謳歌してから満を持して転生するべきだと思う。

 死んでしまったからと割り切ってしばらくは天国で自堕落に過ごそうかと考える。



「あの………」



 天国希望で。そう言おうとして、優斗は言葉を一度飲み込んだ。そしてもう一度思考する。

 ここは死んだ人間の魂を導く場所。そして先程女神は異世界の存在を匂わせていた。



 元々、優斗は異世界に夢を見るような普通の思春期の男子高校生だ。もし異世界に行ってチート能力を得られたら。そんな事を考えた回数は一度や二度ではない。

 それに、女神は先程言っていたではないか。浄化された魂が異なる世界の器に定着する可能性を。ならば



「質問、いいですか?」



「?なんでしょうか」



 女神は次はなんの質問だろうかと軽く疑問符を浮かべながら優斗の質問を促す。

 この時点で女神に人の心を読む、或いは心の中を覗き込むような能力がないのはわかったが、本題はそこではない。



「先程、選択肢は3つしか無いって言っていたが、それは本当でしょうか」



「………と言うと?」



 女神は優斗の言葉に対して、少し警戒しながらも次の言葉を促す。どうやら、優斗の台詞を止める気はないようだ。

 ならば遠慮することは無い。



「ライトノベルなんかでは死んだ人達にとっては定番のイベントで、あなたもその可能性を少なからず示唆していた。異なる世界への器への転生という可能性を」



「………それで?」



「だったらある筈だ。一昔前までの異世界ものの定番の選択肢が。『転生特典を得て異世界に降り立つ』という選択肢か、或いはそれと似たような選択肢が!」



 優斗は興奮のあまりつい言葉を少しだけ荒らげてしまうが、女神はそれに対して気にする素振りはない。

 寧ろ、優斗が第4の選択肢を聞いてきたことの方が問題のようだった。



「なるほど。異世界の存在を示唆したのは迂闊でしたか。まさか少ない情報でその選択肢の可能性を思い浮かべてしまうなんて………」



「それで、どうなんでしょうか。この選択肢は」



 自信満々に言ったものの、確証はなかった。だから大丈夫なのかと期待に胸を膨らませながら質問をし



「勿論。ございますよ」



 その言葉に胸が震えた。



「もっとも、おすすめはしませんが」



 だが、その次に紡がれた女神の言葉の意味が優斗には一瞬理解出来なかった。



「え?なんでですか?」



「それは、異世界が優斗さんが想像している以上に過酷な世界だからです」



 たしかに。異世界とは過酷な世界だとは少なからず認識している。

 ゆるふわな雰囲気でチート能力を貰って俺Tueeeしている作品は沢山ある。

 だが、世の中に広く広まり、そして高い人気を得ている異世界作品たちは、存外過酷な作風のものばかりだった。

 そして、過酷だと聞いて優斗の頭の中に一つの可能性が横切った。



「もしかして、転生特典は貰えないのですか?」



 過酷な世界を生きるために必要な能力。才能。そういった特別なチート能力。それが貰えないとなると話は変わってくるし、優斗も異世界に行こうという気持ちは薄れてくる。もっとも、それでも転生する世界の世界観によってチートが不要だったりするので異世界転生への願望は0ではないのだが。



「いいえ?転生特典は与えますよ?」



 だが、そんな力は無事に手に入るようだった。



「だったら、何故おすすめしないのですか?たしかに過酷な世界が多いのかもしれませんが、強力な力を得たのであればその力を行使して困難を乗り越えて行くのではないでしょうか」



 そんな至極尤もな疑問を優斗は抱く。そうなのだ。そもそも、強力な能力さえ持っていれば困難は困難で無くなる。



「そもそもですが、普通の人間がその身に余る力を得たとして、その力を存分に振るうことができると思いますか?」



「………つまり?」



「例えばあなたが転生特典として『世界を破壊できるほどの攻撃力』を望んだとしましょう。それを転生特典として与えたとしても、その人間の身には大きすぎる力は一度振るうだけでもその身を滅ぼすことになります。力の度合いで考えると、異世界に降り立った瞬間に大きすぎる力に身体が耐えきれず崩壊する可能性もありますね」



 つまり、大きすぎる力は身を滅ぼす。それを体験するということだろうか。



「だったら」



「強力な武器や防具なら大丈夫。確かにそうかもしれませんね。ですが、もし『理すらも斬り裂ける剣』を特典に得たとしても、凄いのは所詮その剣だけです。本人のスペックが無ければ剣を失った瞬間に無力化されますし、そもそも斬れ無ければ意味がありませんからね」



「持ち主の身体能力の補助なんかは………」



「ないことはないですが、期待しない方がいいですよ?武器や防具のメインは与えられた能力や本来の用途であり、身体能力の補助等はオマケでしかありません。それも持ち主の身体が耐え切れる範囲での補助ですのでいずれにせよ限界は直ぐに来ますね」



「ちなみにチートと一緒に身体能力の特典はないんですか?」



「それも与えるのは特典過多で天界規約に違反するのでダメです」



 なんとも世知辛い話しだ。

 つまり、異世界に行くためにはやはり転生特典は必要。だが、チートすぎるとその能力に身体が追いつかないため程々のチートが望ましいということだろう。



「って言うか、程々のチートってなんだ?」



「そうですね。普通に思い浮かぶ壊れ能力の下位互換、みたいなものでしょうか。『世界を破壊できる一撃』という能力なら『一撃だけ強力な攻撃ができる』だったり、『無限の魔力と全魔法に適正』だったら『魔力量が増える、若しくは魔力回復速度が速くなり、魔法への適正が上がる』だったり?」



「それ、下位互換すぎないですか?」



 恐らく人間の身体でも対応できる範囲ということなので、強力な一撃は鉄を破壊できるくらいだったり、魔法の容量も精々が2倍程度と考えても良さそうだ。

 あまりにも劣化版すぎる。



「程々のチートなんてそんなものですよ。『現実改変』『世界最強』『時間旅行』『死に戻り』。確かにどれも強力な力であることには変わりはありません。しかし、人間の身体は、本来このような能力に耐え切れるものじゃないのですよ」



 今女神が言った能力は、確かにチートと呼べる能力だ。作品毎にそれを上手く使っている作品もあれば、有効利用できていない作品もある。

 だが、ここは夢でも物語の中でもない。現実だ。そして、現実の問題として人間の身体はそのあまりにも強力な能力を受け止める器としては弱すぎるのだろう。



「それで、どうしますか?異世界転生は辞めますか?」



「………いいえ、異世界には行きます」



 本当ならば異世界に行くのはベストな選択肢では無いのだろう。だが、折角掴んだチャンスだ。



「でしたら、転生特典を決めてください」



 女神はそう言いながら一冊の本を召喚し、優斗に手渡した。



「これは?」



「この本は優斗さんが転生する世界について書かれた本です。どのような世界で、どんな地理なのかが書かれています。流石に歴史まで書くと読むのが面倒だと思うので歴史は書いていませんが」



 つまり、この本を読んで、適切な能力を決めろということなのだろう。

 人の身で受け止められる程度のチート能力を。



 一先ず、優斗が転生する予定の世界はRPGゲームみたいな世界だ。

 貰った本は攻略本みたいな本になっていて、最初は周辺に住むモンスターのレベルが低い街に降り立って、そこから冒険者として生活するか、他の職業に就いて異世界ライフを満喫するからしい。



 レベルは最初は1で、そこからモンスターを倒すか、専用のアイテムを使ってレベルアップをし、ステータスを伸ばして活動の幅を広げ、またレベルアップの際に貰えるスキルポイントを使って様々なスキルを手に入れるらしい。



 どうやら冒険者事にクラス、ジョブというものはないらしく、スキルポイントさえあれば誰でもどんなスキルでも習得できるらしい。しかし、それも才能があればの話で、才能がある者はレベルが低い内から上位の魔法やスキルを手に入れられるらしいが、才能が無いものはレベルを上げてスキルを解放しなくてはいけないらしい。

 こうして見ると中々ややこしそうだが、逆に言えば才能があれば最初から豊富なスキルで幅広く戦える。

 身体能力があれば、後は戦い方次第で器用に戦える。

 スキルポイントがあれば、どのスキルを習得しようかで悩むことが無くなる。



 才能か、身体能力か、スキルポイントか。優斗の中で、貰う特典はこの3つのうちのどれかになった。



 先ず才能。これは難しい。才能だけ貰ってもスキルポイントが無かったりステータスが低ければ十分に使いこなすことができなくなるからだ。魔法の才能はあるのに魔力のステータスが低すぎて魔法を使えないとか。意味はわからないが。



 次に身体能力。これは却下だ。これはセンスがあればステータスがあるだけで十分かもしれない。だが、優斗は平和な日本で過ごしてきた人間だ。戦いのセンスなんてあるはずが無い。これから鍛えるにしても、中途半端なステータスでは直ぐに限界が来てしまうだろう。



 最後にスキルポイント。一番はこれだろうか。優斗の才能がどんなものかはわからないが、正直勉強はそこそこできるし手先も器用な方だ。魔法系の才能が少しでもあれば戦えるかもだし、思いがけない才能があるかもしれない。才能が無ければ無駄な力かもしれないが、そこはお祈りするしかない。



 攻略本を読んでも才能の有無はわからないし、女神に聞いてもそこまでは答えてくれないという記載もある。ならば、これに賭けてもいいだろう。



 後は交渉次第だ。



「決めました」



「わかりました。それで、特典の内容は?」



「スキルポイントをください。出来れば上限のない、無限スキルポイントを!」



「………先程までの私の話しを聴いていましたか?」



 女神は呆れたように言ってくる。それも無理は無いだろう。先程魔力で例を出してくれたように、無限の魔力は人間の身には大きすぎる力。だが、



「あくまで魔力は人間の生命活動の重要なエネルギーの一つであり、その身体能力に見合う適切な量の魔力を常に循環し続けなければならない。だから無限の魔力は耐えられないんでしょう?」



「それをどこでって、そうですか。その本に書いてありましたか」



「耐えられない理由までは書いてませんでしたけどね」



 だが、これで無限の魔力が駄目な理由は解消された。



「でも、それをわかっているのであれば無限のスキルポイントも無理だと思うのではないでしょうか?」



 そう。シンプルに考えると無限のスキルポイントも同じ原理で無理だと思う。だが、魔力とスキルポイントには決定的な違いがある。



「本を読んだ限りだと、スキルは才能によって解放され、スキルポイントはその解放許可証の役割を持っているみたいですね」



「そうですね。ポイントはあくまでも習得の為の権利を得るものですから」



「ならば、こうも考えられます。スキルポイントは交換券みたいなものですから、無限に持っていても身体に悪影響は無い、と」



「確かに魔力とは違いますが、そんな暴論が通じると思いますか?」



「商品券やクーポン券みたいな物をイメージしてみてくださいよ。あれだって、持っていても悪影響は無い。スマホに入っている物ならば荷物が嵩張ることも無いし、使っても問題無し。使わなくて溜め込んでいても悪影響は何もないじゃないですか」



「スキルポイントじゃなくても、強力なスキルを特典にすれば良いのでは?」



「それじゃあ幾つか制限がつくんじゃないですか?さっき言ってたじゃないですか。身体が耐えきれないって。それに、この世界にある既存のスキルを選んでも、それも才能や身体が追いつかなければ十分に使えないはずです」



 だからこそ



「そう。だからこそのクーポン券です。強力なスキルや既存のスキルの全習得だったら身体が耐えきれないかもしれませんが、引換券ならば身体が追いつく範囲のスキルを手に入れられるので何も問題無いと思うのですが」



 優斗の力説に、女神は少し考える素振りを見せながら優斗のことを見てくる。そして目をつぶって上を向いたかと思うと



「わかりました。あなたの転生特典〈無限スキルポイント〉の授与を認めます」



「!!!」



 認めて貰えないかもしれない特典の授与を認めて貰えた。これは紛れもない優斗の最初の勝利の証だった。



「では異世界への降臨と同時にあなたにスキルを付与します。それとこれを」



 女神はそう言うと、指を鳴らして中に小さな袋を召喚して優斗の方へとゆっくりと飛ばした。



「これは?」



「路銀です。流石に一文無しで放り出すほど薄情じゃありませんしね。日本円にして50万円程入っています。どう使うかはあなた次第です」



 50万円。大金だ。だが、異世界の物価がわからない以上慎重に使うように心がける必要がある。



「それでは行ってらっしゃい。未来の勇者様。あなたの旅の幸福を祈っています」



 女神にそう告げられると、優斗の足元に魔法陣が展開され、優斗は異世界へと旅立って行った。
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