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一章 異世界への降り立ち。そして序章
隠されていた真実が判明する時ってなんで絶望しちゃうんだろうね
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冒険者ギルド。それは異世界の定番とも言える施設。
世間一般には荒くれ者とも呼ばれる冒険者達が主に拠点とする場所であり、この場所からクエストを受注して仕事をこなして報酬を貰う。そんな場所だ。
そんな場所に、先程この世界に転移してきた少年、凸守優斗は足を踏み入れた。
「なるほど。そう来たか」
優斗が入った冒険者ギルドは酒場と一体化したような見た目だった。
簡易的なテーブルと椅子に、何人かの人たちが座っている。
ただ、酒を飲んでいる様子はあまりなく飲み物とつまみのようなものを食べながら話しをしているようだ。
別の場所に視線を移すと、掲示板のようなものに幾つかの紙が貼られている。大きな掲示板にはわかりやすい目印こそ無いものの、その掲示板の前に冒険者らしき人たちがが何人か集まって話し、紙を剥がして持って行っているのであそこがクエストの掲示板だろうか。
そして小さな掲示板の上には分かりやすく『仲間募集』と書かれている。恐らくあそこからパーティメンバーを募集したり探したりするのだろうか。
そして先程大きな掲示板から紙を剥がしていた人たちが持って行った場所が受付だろう。まんま窓口の見た目をしている。
「お客様、いらっしゃいませ。受付はあちらになります」
っと、優斗が周りを見ているとお姉さんが話しかけて来て受付の場所を教えてくれた。
やはりあの窓口が受付みたいだが、それにしても妙だ。
些細なことかもしれないが、あの人は優斗が食事に来たという可能性を考えていなかった。
ここの料理がそこまで美味しくないのか。それともあの席は食事を持ち込んで話しをするだけでここは酒場としては機能していないのか。
「まあ、ここで考えてても仕方ないか」
必要なことは全部受付で聞こう。
そう判断して優斗も受付に向かう。
受付の窓口は3つあり、その全てに女性が対応していた。
そしてやはりみんな美人がいいのか美人の窓口にそこそこ長い列が出来ており、他のふたつは少なめだ。勿論少なめなだけで人はいるが、美人の窓口に並んでいるのは全員男。そして少ない受付に並んでいるのは女性が少々。
「冒険者比率は流石に男の方が多いのか」
そのことを再確認しつつ、優斗は一番列が少ない場所に並ぶ。だって美人の受付とはいえ態々長い列に並ぶ必要が感じられなかったから。
「次の方どうぞ」
そして実際に優斗が並んでなら数分程度で順番が回ってきた。ちなみに隣の列の美人受付嬢の列は先程と殆ど変わってない。これは受付嬢が仕事が出来ないと言うよりも列に並ぶ男が多いのが原因だろう。
「はい」
「お待たせしました。男性の方ですか?」
「そうですが。なにか問題が?」
「いえ。男性の方でフレデリカさんの窓口に並ばないのは珍しいなと思いまして」
「フレデリカさん?」
「隣で受付してる人ですよ」
どうでもいいが美人受付嬢の名前を知ることが出来た。
あとやっぱり男性でそのフレデリカさん以外に受付してもらうのは珍しいらしい。やっぱり美人受付嬢の方がいいのだろうか。優斗は個人的には受付嬢の顔には特に何も求めてない。そこから出会いに発展することなんてそんなに無いのだから。
「まあ、個人的には早く済むに越したことはないので」
「そうですよね。では、本日はなんの御用でしょうか」
「冒険者登録をしたくて来ました」
「冒険者登録ですね。ではまず始めに登録料として1万ブカとなっています」
ブカ。この世界の通貨のことだろう。どうやら円ではなくブカと言うらしい。それはそうと
「冒険者って登録にお金が必要なんですね」
「はい。冒険者も職業ですし。それに採取クエスト等の比較的平和なクエストもあるとは言え、基本はモンスターが住まう街の外に出てもらう訳ですから。下手すれば命に関わりますし、それを無料で登録させて死なせてしまっては親族の方から色々と言われてしまう可能性もございますので。登録料の方も、下手に子どもが登録出来ないように少しお高めになっていますしね」
そういう事か。
確かに、慈善事業では無いし本当に命に関わってくる。その可能性を改めて確認して優斗の心の中に改めて緊張感が走る。だが、ここで立ち止まってはいけない。
「わかりました。じゃあ1万ブカを………」
と、財布を取り出そうとして優斗の手は止まった。
そう。今優斗が取り出そうとした財布は日本の物。勿論日本の通貨しか入っていない。
だが、女神から貰った財布袋もある。この中ならこの世界の通貨もあるのだがそれにも一つ問題があった。
(この世界の貨幣価値、まだ知らない………)
財布袋の中には白色のコインが4枚と金色のコインが10枚あった。
これらのコインの合計が日本円で50万円相当なことは知っているし、恐らく白色のコインが一枚10万円程で、金色のコインが一枚1万円の価値だということは枚数的になんとなくわかるものの、1万ブカが日本円で幾らなのかを優斗はまだ知らない。
「すみません。実は結構な田舎から来たもので通貨価値がわからなくて………これで幾らくらいになりますかね?」
と、わからないことは正直に聞く。優斗はこの世界では無知な赤ん坊と同じなのだ。ここは素直に人に聞いた方がいい。
「そうだったんですね。ブカ通貨が分からないとなると国境付近にある地図にも乗ってない小さな村ですか?」
「そんなところです。それで、この金額は」
「そうですね。白金貨4枚と金貨10枚。合計で50万ブカですね」
「そうですか。ありがとうございます。では、この金貨一枚で冒険者登録をお願いします」
「わかりました。必要書類を用意しますので少々お待ちください」
受付嬢が書類を準備している姿を横目に優斗は少しづつ思考を固める。
まず、これでブカ通貨は日本の通貨と通貨基準が一緒だとわかった。1円=1ブカ換算。これは間違いないだろう。
「お待たせしました。こちらが必要書類となります」
そうして手渡された書類は、簡単に言えば冒険者になる為の許諾書。そして、死亡した際にギルドに対して責任を追求しないことに対しての了解証であった。
「はい。大丈夫です」
「承知しました。それではギルドカードを発行しますね」
受付嬢はそう言うと、一枚のカードを取り出してそれを魔導具の上に置き、手を翳すと準備が終わったのかそれを優斗に手渡してきた。
「それではこちらがギルドカードになります」
「ありがとうございます。一応、説明を聞いておきたいのですがお願いできますか?」
「勿論です。今お渡ししたのは冒険者のギルド登録カードになっております。そう聞くとただギルドに登録しただけの様に聞こえますがそれだけではありません」
「ということは、他にも機能が?」
「はい。冒険者としての身分証明書としての機能は勿論、所有者のステータスやスキルポイント、取得したスキル等も表示されます。また、ギルドカードの所持者同士でフレンド登録をする事によって遠距離にいても文章による意思疎通が可能になります。更に、ギルドカードを使ってパーティ登録をすると、パーティメンバーの生命力を表示することが可能です。もしはぐれてもこれで生死がわかるので希望を持って探すことができますね」
つまり、この世界のスマホのようなものだろう。アプリも自分の状態を見ることしか出来ないが、メッセージ昨日もあるのでなんだかんだ電話とゲームの出来ないスマホと言える。
あとは生命力を見ることができる機能。これはある意味優しく、ある意味残酷とも言える機能だ。もし、危険地帯ではぐれた仲間を探そうとしても、既に死んでいれば気力も無くなる。仲間を失えば、それだけで士気に関わるし、それが危険地帯で無事を確認しようとして判明すれば尚のことだ。
「説明、ありがとうございます。もしギルドカードを無くした時はどうすればいいですか?」
「それは大丈夫です。登録は、ギルドカードの魔法陣の上にご自身の血を垂らして頂くことによって登録出来るのですが、血によって生体情報が登録されて登録者とギルドカードの間にパスが繋がれます。そのパスを使って、登録者の許可無しにギルドカードを見ることは出来なくなりますし、無くしても登録した瞬間に自動的に取得されるスキル〈カード召喚〉を用いれば直ぐに手元にカードを呼び寄せることが出来ます」
「じゃあ無くしても安心という訳ですか」
ついでに登録情報もわかったし、早速優斗も登録してみる事にする。
受付嬢の人に針を借りて、自分の指にさして軽く血を魔法陣に付着させる。すると魔法陣が光だし、何も書いていなかったギルドカードに文字が浮かび上がってくる。
「これが………」
「それが、あなたの情報です。そこから自身のステータス、所持スキルは勿論、スキルの取得等も可能ですよ」
夢にまで見たスキル取得。早速転生特典〈無限スキルポイント〉を使う時だ。
「じゃあ早速スキル取得画面を………ってあれ?」
意気揚々とスキル取得画面を開いたのだが、取得可能スキルが表示されなかった。
「操作に慣れるのが早いですね。それで、取得可能スキルは表示されましたか?」
「いや、されてません。これって………」
「確かに、スキルの取得は才能に左右されますが、レベル1の時は才能はあまり関係ありません。単純にレベル1の肉体だとスキルを持つには相応しくないと判断されるのでしょうね」
じゃあまだスキルは取得出来ないのか。
そう少し落ち込んでいると受付嬢が飴玉を持ってきてくれた。
「昔はレベル1のまま戦場に送り出すこともあったのですが、今は違います。レベル1で外に出すと危険ですからね。あので、今はレベル5くらいまではギルドの方で援助させて頂いております」
「それで、その飴玉ですか?」
「はい。この飴は通称〈秘伝の飴玉〉と呼ばれています。この飴玉を食べると、経験値を取得することが可能なのです。ギルドで用意している〈秘伝の飴玉〉は低レベル冒険者用で〈錬金術〉スキルで生成可能なものですが、レベル5までならば十分です。レベルが40や50になるとギルドの〈秘伝の飴玉〉じゃ効果が無くなって、ダンジョンにある高濃度の魔素を含んだ〈秘伝の飴玉〉じゃないとレベルが上がらないのですが………」
「レベルアップアイテム………!」
これがあれば、スキルも取得できるかもしれない。
優斗は早速期待を胸に飴玉を一つ口に含む。
〈秘伝の飴玉〉を口の中で噛み砕き、体の中に何かが入り込む感覚に満たされた後にもう一度ギルドカードを確認する。
「レベルアップしてる………!じゃあスキルも………」
と、取得可能スキルを確認すると今度はきちんと取得可能欄の中に〈初級魔法〉という文字が浮かび上がっていた。
「じゃあ早速このスキルを取得して………」
転生特典〈無限スキルポイント〉のお陰で、レベルアップの際にしか入手できないスキルポイントに心配は無い。
「スキルを取得出来たのですね。ちなみにどんなスキルですか?参考程度に教えて下さるとありがたいです」
「えっと、〈初級魔法〉ですね」
「〈初級魔法〉ですか!別名生活魔法とも呼ばれていて、便利なスキルですよ。まぁ、その性質上大体の人はレベル2から取得出来るのですが………」
………。
「もしかして、これだけだと弱いですか?」
「ま、まぁ?戦えるスキルがありませんからね。どうしましょうか?まだレベル5になっていない筈ですのでまだギルドからレベル援助はありますが………?」
「………いただきます」
そして優斗はレベル5になるまで〈秘伝の飴玉〉を食べ続けた。と言っても、そこからレベル5になるまでに必要な飴玉は3つだけだったが。
そしてレベル5になった結果。優斗のスキル欄にはこのスキルが追加で表示された。
「〈自然影響耐性〉………」
「そのスキルは魔法に頼らない自然現象。地震や雷、津波、台風や竜巻に強くなりますね。そして、それも戦闘向きではありません………」
受付嬢から同情の眼差しを受けながら優斗は軽く絶望する。
そしてなんとなく察してしまった。優斗が〈無限スキルポイント〉という転生特典を得ることが出来た理由が。
(絶対に大した才能が無かったからだろこれ)
優斗はこの先の異世界生活に軽く絶望するしか無かった。
世間一般には荒くれ者とも呼ばれる冒険者達が主に拠点とする場所であり、この場所からクエストを受注して仕事をこなして報酬を貰う。そんな場所だ。
そんな場所に、先程この世界に転移してきた少年、凸守優斗は足を踏み入れた。
「なるほど。そう来たか」
優斗が入った冒険者ギルドは酒場と一体化したような見た目だった。
簡易的なテーブルと椅子に、何人かの人たちが座っている。
ただ、酒を飲んでいる様子はあまりなく飲み物とつまみのようなものを食べながら話しをしているようだ。
別の場所に視線を移すと、掲示板のようなものに幾つかの紙が貼られている。大きな掲示板にはわかりやすい目印こそ無いものの、その掲示板の前に冒険者らしき人たちがが何人か集まって話し、紙を剥がして持って行っているのであそこがクエストの掲示板だろうか。
そして小さな掲示板の上には分かりやすく『仲間募集』と書かれている。恐らくあそこからパーティメンバーを募集したり探したりするのだろうか。
そして先程大きな掲示板から紙を剥がしていた人たちが持って行った場所が受付だろう。まんま窓口の見た目をしている。
「お客様、いらっしゃいませ。受付はあちらになります」
っと、優斗が周りを見ているとお姉さんが話しかけて来て受付の場所を教えてくれた。
やはりあの窓口が受付みたいだが、それにしても妙だ。
些細なことかもしれないが、あの人は優斗が食事に来たという可能性を考えていなかった。
ここの料理がそこまで美味しくないのか。それともあの席は食事を持ち込んで話しをするだけでここは酒場としては機能していないのか。
「まあ、ここで考えてても仕方ないか」
必要なことは全部受付で聞こう。
そう判断して優斗も受付に向かう。
受付の窓口は3つあり、その全てに女性が対応していた。
そしてやはりみんな美人がいいのか美人の窓口にそこそこ長い列が出来ており、他のふたつは少なめだ。勿論少なめなだけで人はいるが、美人の窓口に並んでいるのは全員男。そして少ない受付に並んでいるのは女性が少々。
「冒険者比率は流石に男の方が多いのか」
そのことを再確認しつつ、優斗は一番列が少ない場所に並ぶ。だって美人の受付とはいえ態々長い列に並ぶ必要が感じられなかったから。
「次の方どうぞ」
そして実際に優斗が並んでなら数分程度で順番が回ってきた。ちなみに隣の列の美人受付嬢の列は先程と殆ど変わってない。これは受付嬢が仕事が出来ないと言うよりも列に並ぶ男が多いのが原因だろう。
「はい」
「お待たせしました。男性の方ですか?」
「そうですが。なにか問題が?」
「いえ。男性の方でフレデリカさんの窓口に並ばないのは珍しいなと思いまして」
「フレデリカさん?」
「隣で受付してる人ですよ」
どうでもいいが美人受付嬢の名前を知ることが出来た。
あとやっぱり男性でそのフレデリカさん以外に受付してもらうのは珍しいらしい。やっぱり美人受付嬢の方がいいのだろうか。優斗は個人的には受付嬢の顔には特に何も求めてない。そこから出会いに発展することなんてそんなに無いのだから。
「まあ、個人的には早く済むに越したことはないので」
「そうですよね。では、本日はなんの御用でしょうか」
「冒険者登録をしたくて来ました」
「冒険者登録ですね。ではまず始めに登録料として1万ブカとなっています」
ブカ。この世界の通貨のことだろう。どうやら円ではなくブカと言うらしい。それはそうと
「冒険者って登録にお金が必要なんですね」
「はい。冒険者も職業ですし。それに採取クエスト等の比較的平和なクエストもあるとは言え、基本はモンスターが住まう街の外に出てもらう訳ですから。下手すれば命に関わりますし、それを無料で登録させて死なせてしまっては親族の方から色々と言われてしまう可能性もございますので。登録料の方も、下手に子どもが登録出来ないように少しお高めになっていますしね」
そういう事か。
確かに、慈善事業では無いし本当に命に関わってくる。その可能性を改めて確認して優斗の心の中に改めて緊張感が走る。だが、ここで立ち止まってはいけない。
「わかりました。じゃあ1万ブカを………」
と、財布を取り出そうとして優斗の手は止まった。
そう。今優斗が取り出そうとした財布は日本の物。勿論日本の通貨しか入っていない。
だが、女神から貰った財布袋もある。この中ならこの世界の通貨もあるのだがそれにも一つ問題があった。
(この世界の貨幣価値、まだ知らない………)
財布袋の中には白色のコインが4枚と金色のコインが10枚あった。
これらのコインの合計が日本円で50万円相当なことは知っているし、恐らく白色のコインが一枚10万円程で、金色のコインが一枚1万円の価値だということは枚数的になんとなくわかるものの、1万ブカが日本円で幾らなのかを優斗はまだ知らない。
「すみません。実は結構な田舎から来たもので通貨価値がわからなくて………これで幾らくらいになりますかね?」
と、わからないことは正直に聞く。優斗はこの世界では無知な赤ん坊と同じなのだ。ここは素直に人に聞いた方がいい。
「そうだったんですね。ブカ通貨が分からないとなると国境付近にある地図にも乗ってない小さな村ですか?」
「そんなところです。それで、この金額は」
「そうですね。白金貨4枚と金貨10枚。合計で50万ブカですね」
「そうですか。ありがとうございます。では、この金貨一枚で冒険者登録をお願いします」
「わかりました。必要書類を用意しますので少々お待ちください」
受付嬢が書類を準備している姿を横目に優斗は少しづつ思考を固める。
まず、これでブカ通貨は日本の通貨と通貨基準が一緒だとわかった。1円=1ブカ換算。これは間違いないだろう。
「お待たせしました。こちらが必要書類となります」
そうして手渡された書類は、簡単に言えば冒険者になる為の許諾書。そして、死亡した際にギルドに対して責任を追求しないことに対しての了解証であった。
「はい。大丈夫です」
「承知しました。それではギルドカードを発行しますね」
受付嬢はそう言うと、一枚のカードを取り出してそれを魔導具の上に置き、手を翳すと準備が終わったのかそれを優斗に手渡してきた。
「それではこちらがギルドカードになります」
「ありがとうございます。一応、説明を聞いておきたいのですがお願いできますか?」
「勿論です。今お渡ししたのは冒険者のギルド登録カードになっております。そう聞くとただギルドに登録しただけの様に聞こえますがそれだけではありません」
「ということは、他にも機能が?」
「はい。冒険者としての身分証明書としての機能は勿論、所有者のステータスやスキルポイント、取得したスキル等も表示されます。また、ギルドカードの所持者同士でフレンド登録をする事によって遠距離にいても文章による意思疎通が可能になります。更に、ギルドカードを使ってパーティ登録をすると、パーティメンバーの生命力を表示することが可能です。もしはぐれてもこれで生死がわかるので希望を持って探すことができますね」
つまり、この世界のスマホのようなものだろう。アプリも自分の状態を見ることしか出来ないが、メッセージ昨日もあるのでなんだかんだ電話とゲームの出来ないスマホと言える。
あとは生命力を見ることができる機能。これはある意味優しく、ある意味残酷とも言える機能だ。もし、危険地帯ではぐれた仲間を探そうとしても、既に死んでいれば気力も無くなる。仲間を失えば、それだけで士気に関わるし、それが危険地帯で無事を確認しようとして判明すれば尚のことだ。
「説明、ありがとうございます。もしギルドカードを無くした時はどうすればいいですか?」
「それは大丈夫です。登録は、ギルドカードの魔法陣の上にご自身の血を垂らして頂くことによって登録出来るのですが、血によって生体情報が登録されて登録者とギルドカードの間にパスが繋がれます。そのパスを使って、登録者の許可無しにギルドカードを見ることは出来なくなりますし、無くしても登録した瞬間に自動的に取得されるスキル〈カード召喚〉を用いれば直ぐに手元にカードを呼び寄せることが出来ます」
「じゃあ無くしても安心という訳ですか」
ついでに登録情報もわかったし、早速優斗も登録してみる事にする。
受付嬢の人に針を借りて、自分の指にさして軽く血を魔法陣に付着させる。すると魔法陣が光だし、何も書いていなかったギルドカードに文字が浮かび上がってくる。
「これが………」
「それが、あなたの情報です。そこから自身のステータス、所持スキルは勿論、スキルの取得等も可能ですよ」
夢にまで見たスキル取得。早速転生特典〈無限スキルポイント〉を使う時だ。
「じゃあ早速スキル取得画面を………ってあれ?」
意気揚々とスキル取得画面を開いたのだが、取得可能スキルが表示されなかった。
「操作に慣れるのが早いですね。それで、取得可能スキルは表示されましたか?」
「いや、されてません。これって………」
「確かに、スキルの取得は才能に左右されますが、レベル1の時は才能はあまり関係ありません。単純にレベル1の肉体だとスキルを持つには相応しくないと判断されるのでしょうね」
じゃあまだスキルは取得出来ないのか。
そう少し落ち込んでいると受付嬢が飴玉を持ってきてくれた。
「昔はレベル1のまま戦場に送り出すこともあったのですが、今は違います。レベル1で外に出すと危険ですからね。あので、今はレベル5くらいまではギルドの方で援助させて頂いております」
「それで、その飴玉ですか?」
「はい。この飴は通称〈秘伝の飴玉〉と呼ばれています。この飴玉を食べると、経験値を取得することが可能なのです。ギルドで用意している〈秘伝の飴玉〉は低レベル冒険者用で〈錬金術〉スキルで生成可能なものですが、レベル5までならば十分です。レベルが40や50になるとギルドの〈秘伝の飴玉〉じゃ効果が無くなって、ダンジョンにある高濃度の魔素を含んだ〈秘伝の飴玉〉じゃないとレベルが上がらないのですが………」
「レベルアップアイテム………!」
これがあれば、スキルも取得できるかもしれない。
優斗は早速期待を胸に飴玉を一つ口に含む。
〈秘伝の飴玉〉を口の中で噛み砕き、体の中に何かが入り込む感覚に満たされた後にもう一度ギルドカードを確認する。
「レベルアップしてる………!じゃあスキルも………」
と、取得可能スキルを確認すると今度はきちんと取得可能欄の中に〈初級魔法〉という文字が浮かび上がっていた。
「じゃあ早速このスキルを取得して………」
転生特典〈無限スキルポイント〉のお陰で、レベルアップの際にしか入手できないスキルポイントに心配は無い。
「スキルを取得出来たのですね。ちなみにどんなスキルですか?参考程度に教えて下さるとありがたいです」
「えっと、〈初級魔法〉ですね」
「〈初級魔法〉ですか!別名生活魔法とも呼ばれていて、便利なスキルですよ。まぁ、その性質上大体の人はレベル2から取得出来るのですが………」
………。
「もしかして、これだけだと弱いですか?」
「ま、まぁ?戦えるスキルがありませんからね。どうしましょうか?まだレベル5になっていない筈ですのでまだギルドからレベル援助はありますが………?」
「………いただきます」
そして優斗はレベル5になるまで〈秘伝の飴玉〉を食べ続けた。と言っても、そこからレベル5になるまでに必要な飴玉は3つだけだったが。
そしてレベル5になった結果。優斗のスキル欄にはこのスキルが追加で表示された。
「〈自然影響耐性〉………」
「そのスキルは魔法に頼らない自然現象。地震や雷、津波、台風や竜巻に強くなりますね。そして、それも戦闘向きではありません………」
受付嬢から同情の眼差しを受けながら優斗は軽く絶望する。
そしてなんとなく察してしまった。優斗が〈無限スキルポイント〉という転生特典を得ることが出来た理由が。
(絶対に大した才能が無かったからだろこれ)
優斗はこの先の異世界生活に軽く絶望するしか無かった。
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