転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス

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一章 異世界への降り立ち。そして序章

異世界系の作品ってモンスター討伐に忌避感感じてないけど、普通におかしくない?

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 討伐クエスト。それは冒険者の醍醐味とも言えるクエストだ。

 勿論採取系のクエストや半ばボランティアみたいな内容のクエストもあるが、冒険者と言えばと言える仕事。代表として上げられるのはやはり討伐クエストだろう。



 世の中に蔓延る危険なモンスターを倒し、その対価として金銭を得る。

 冒険者が最も輝く仕事にして、最も命の危険に犯される仕事である。



「そして今回行くのはそんな討伐クエストの中でも最も簡単と言われてるクエスト。ゴブリン討伐だよ」



 そんな討伐クエストに向かう道中にエレンはそう教えてくれた。



「簡単ってことは、やっぱり弱いのか?」



「そうだな。確かに弱い。だが、それはモンスター全体を見ての話しだ。レベル5のユウトにとってはお互いに万全の状態で一対一で戦っても負ける可能性が高いだろうな」



 キースの言葉に若干緩んでいた気を引き締める。



「まあまあ、キースもユウトっちを脅すのも大概にしとけよ?なんにせよ、俺っちたちがいればゴブリン討伐自体は難しくねえってことよ」



 ライナーは軽く言っているが、その心中には一つの懸念点がある。

 それは、優斗がゴブリンを殺せるのか、だ。



 そもそもだ、本来新人教育の為に最初のクエストに討伐クエストを選ぶのはギルドとしては推奨していない。

 冒険者ギルドが推奨している新人育成としては、まず採取系のクエストを上級冒険者の護衛の元行い、街の近くの地理をある程度理解し、先輩冒険者の戦闘を見ながらある程度の戦いを学んで、そこから満を持して討伐クエストに臨むのだ。



 だが、ライナーたちはその王道を破っていく。

 無論、それにも理由はある。

 それは、モンスターと言えども、他の生物の命を奪う覚悟ができるかどうかだ。

 これが存外に多く、採取系クエストを無事にこなせてもモンスターを殺せなければ意味が無いし、そこでリタイアしてしまう者も少なくは無い。



 だからライナーはそこまでの時間を無駄にしない為に最初に討伐クエストに赴き、そこで命を奪う覚悟を決めてもらってから採取系クエストを教えて地理を理解してもらう。



 それがライナーたちのパーティの方針であり、実際にある程度の実績も出しているのでギルドも黙認するしかない状態だ。



「優斗はよく聞いておけ。ゴブリンは平原みたいな開けた場所に出ることは少なく、森の中に住んでいることが多い。そしてその多くが洞窟を拠点としているな」



 キースはそう言いながら優斗に地図を渡してくる。

 それを広げ、エレンが現在位置を指差しで教えてくれる。



「確かに、この森を進んだら洞窟があるんだな」



「この辺は比較的強いモンスターは少ないし、森の入口ともなるとモンスターなんて殆どゴブリンかコボルトしか出ないんだよね」



「だから初心者のうちはいい狩場にもなるし、ユウトっちの初クエストにもピッタリって訳よ!」



「そういう事。それじゃあ、私は行ってくるね」



 一通り話し終わると、エレンは先に森の奥へと向かってしまった。



「えっと、追わなくてもいいのか?」



「いいんだ。最初にユウトにも言っただろ?あいつの役割は斥候。後方支援も得意だが、偵察も大得意だ。今はゴブリンの正確な現在地と数を調べに行ってもらってる」



「本来、ゴブリンは群れるが、数は少ない。精々10匹程度だ。だが稀に20や30の数が群れてる時もある。そうなると初心者には対処が難しく、中級冒険者でも苦戦するからな。それに今はユウトっちもいる。流石に俺らも危険は犯せねぇよ」



 それはつまり、優斗さえ居なければこの3人だけでゴブリンの20や30は殲滅できるという事なのだろう。

 仕事の為とは言え、今の優斗は完全なお荷物状態。少し気分が沈みそうになるが、だからこそ甘え過ぎないようにする為にいち早くレベルを上げることを決意する。



 優斗は静かに剣の柄を持つ。



 そうしていると、ガサゴソと草を掻き分ける音と共にエレンが帰ってきた。



「エレン、どうだった?ゴブリンいっぱいいたか?」



「ライナー。ゴブリンは合計で8匹だったよ。今は洞窟内で休んでる様子だった」



「聞くまでもないと思うが、周囲の索敵は済んでるか?」



「勿論だよ。私がそんなミスする訳ないじゃん。ちゃんと、索敵は済んでるし、近くに人やモンスターの気配は無かったよ」



 エレンの報告を聞いて、ライナーとキースは頷いている。やはり、普段は巫山戯た態度のライナーだが、こういう時は真面目なのだろう。



「じゃあ、数も少なくて丁度いいし、俺っちが考えていた事を実行するぜ」



 ライナーはニヤリと笑いながらそう言う。考えていた事と聞いて優斗は不安になってエレンとキースを見たが、2人とも何をするのかわかっていたのか不思議そうな表情をしていない。



「俺は賛成だ。今後のユウトの為にもなる。必要事項だと思うしな」



「私も賛成。ユウトくんには、是非とも長い間冒険者として活動して欲しいもんね」



「じゃ、決定だな。なあユウトっち!」



「………なんだ?」



 3人の会話を聞いて自分に必要な事なのだと判り、それと同時に自分のことをしっかりと考えてくれていることに嬉しくなった優斗はそのままライナーの声に反応して



「今回のゴブリン討伐。8匹全部ユウトっちに倒して貰うからな」



「………は?」



 その言葉に思考が止まった。



「無理もない。事前に言った方が俺は良かったと思う。だが、ユウトがゴブリンを倒すことは今後のお前の為にもなるんだ」



「私たちは冒険者。必然的に生物の命を奪う覚悟は持つべき。だからライナーのこの考えは否定しないし、このタイミングでモンスターの討伐を経験していれば、ユウトくんの力になると思うの」



「そういう理由だったら断る理由は無いけど………もっと前もって言って欲しかったな」



 優斗が苦言を呈すと、ライナーは苦笑を浮かべながら言う。



「ユウトっち的にはそっちの方が良かったかもしれねぇな。覚悟も決まりやすかっただろうし。だが、先に言っちまうと直前でトンズラかく奴も居るんだよ。そしてそれが実際多い。だから俺っちは直前に言うようにしてる。これから冒険者を続けるにせよ、続けないにせよ、モンスターを倒す、それか倒すまでいかなくても直接相見えることは大切な事だって俺っちは思ってるんだ。実際、冒険者になるまでモンスターを見たことないって人は多いからな。何が大切で、何が大切じゃないか。それを決めるのは結局本人で俺っちたちじゃない。俺っちの考えを理解して欲しいなんて、そんな傲慢なことはユウトっちにも言わない。だけど、俺っちたちのこの考えだけは知っておいて欲しいんだ」



 いつになく真剣なライナーの言葉を、結斗は静かに聞き、そして頷く。

 そうだ。異世界転生は浪漫だとか夢だとか。そんなことは平和な日本で生活していたから出てきた話し。そもそもが危険な場所に変わりは無いのだ。



 ライナーたちは覚悟を持って考えて、優斗の為に実行に移してくれている。

 人によってはパワハラだとか言う者もいるかもしれない。だが、優斗は、今はその気持ちに答えたい。



「………正直、ライナーのその考えを完全に理解することはできていないかもしれない。でも、今このタイミングで俺に答えてくれた。その覚悟には答えたい」



 優斗は森の奥を真っ直ぐと答えながら言う。

 そんな優斗の言葉にライナーは言葉を失い、エレンはただ微笑むだけ。そしてキースは苦笑を浮かべながら呟く。



「真面目だな」



 だが、優斗の覚悟が伝わったのか、キースは何も言わずに奥へと向かって進む。

 ライナーもまた歩きだし、エレンは優斗と共に2人の後ろを着いていく。



 そして見えてきた洞窟。



「エレン。まだゴブリンは巣の中にいるか?」



「いるよ。〈索敵〉のスキルの範囲内に他のゴブリンは見当たらない。〈敵感知〉の範囲内にも他のモンスターは見当たらないよ。他にも探してみる?」



「いや、充分だ」



 エレンから必要な情報だけ聞くと、キースは大盾を構える。



「じゃあユウトっち。仕事の時間だぜ?今日は慣れることから始めようぜ」



「ああ。よろしく頼む」



 優斗とライナーのその静かで、短い会話が終わると、エレンが動き出した。



「じゃあ誘き出さないとね。〈狙撃〉!」



 エレンは弓を構えると、洞窟の奥へと向かって矢を飛ばした。



「当たってないか?」



「今回は優斗くんの獲物だからね。ちゃんと当ててないよ」



「なら、いい。〈デコイ〉!続いて〈挑発〉」



 エレンの矢で敵が来たことをゴブリンに伝え、その意識をキースへと向ける。



「これが、冒険者か………」



「〈狙撃〉は遠距離攻撃が命中しやすくなるスキル。〈デコイ〉は敵対者の注目を自分に集めるスキルで、〈挑発〉は相手を怒らせてスキルや能力の使用頻度を減らすスキルだな」



 そして優斗の横で2人が使用したスキルの説明をしながら、ライナーもまた準備をする。



『ゴギュゴギュ!!』



 そうしていると、合計8匹のゴブリンがキース目掛けて洞窟から出てくる。



「あれが、ゴブリン………!」



 始めてみるモンスター。その姿を認識しているとゴブリンがキースに襲いかかり、



「ふんっ!温いわ」



 キースが盾でゴブリンの攻撃を弾いてしまった。

 弾かれたことによってゴブリンは転倒し、その隙をベテラン冒険者の2人は見逃さない。



「エレンは1匹だけ狙ってくれ。〈エレキネット〉!」



「了解リーダー。〈バインド〉!!」



 ライナーが放った電気の網はゴブリン7匹を拘束し、エレンが放ったワイヤーは1匹のゴブリンを拘束した。



「よし、一先ずはこれで全部だな」



 ライナーがゴブリンを確認すると、優斗へと視線を向けた。



「………もしかして、このゴブリンを倒すのか?」



「そうだぜ、ユウトっち。これが俺っち達からユウトっちへの課題。7匹のゴブリンを倒し、その後にワイヤーからゴブリンを解放。レベルが上がったユウトっちとゴブリンで一対一で戦ってもらう」



 成程、鬼畜だ。

 そもそもとして拘束されたゴブリンにトドメを刺す行為そのものがトラウマものだと言うのに、その後直ぐにゴブリンと一対一?色々考えていることは理解したが、これは少し



「惨すぎる、か?」



 と、キースが優斗の考えを見透かすように言ってくる。



「………そうだな。少し、ゴブリンに同情してしまうな」



「ライナーは、ここでその気持ちすら殺そうとしている」



 キースは優斗の気持ちをわかっていたのか、すぐさま反応してくる。



「ユウトが知っているのかは俺にはわからない。だが、ゴブリンはモンスターの中でも弱いモンスターだが、冒険者ではない者たちにとっては紛れもない脅威で、何人もの罪なき人々がその毒牙にかかっている。他のモンスターは勿論、全ての元締めとも言われている魔王に至っては人類共通の敵として映っているだろうな」



 だから、ライナーは行動で。キースは言葉で。モンスターへの同情心を殺す。



「真面目であることは否定しない。優しさを捨てろとも言わない。その心は冒険者をする上では辛いものかもしれないが、とても大切で尊いものだと俺は思う。だからこそいざという時。その時行動できるように。ユウト。これはお前に必要な事だと俺も断言する」



 キースは言いたいことだけ言うと、1歩下がった。

 エレンもライナーも。言いたいことは同じなのか、口を出さないし手も出さない。



 優斗は少しだけ目を瞑って考える。



(モンスターによる被害。この世界の過酷さ。創作の世界でも、過酷な世界はもっと過酷で、こんな先輩冒険者が教えてくれるだなんて幸運は無かった。でも)



 目の前には倒すべき標的がいる。ライナーの魔法が強力なのか、今もグギャグギャと喚きながら地面に倒れている。



 優斗は受けた優しさに報いるため。決めた覚悟に嘘をつかない為。柄を掴み、短剣を取り出す。



「許しは請わない」



 ただ、己の糧にする。それだけの気持ちで、短剣をゴブリンの胸に突き刺した。



「ゴギュ!?」



 エレキネットに触れないように。気をつけながらゴブリンの心臓部に突き刺し、ゴブリンは少し暴れたかと思うと、そのまま動かなくなってしまった。

 優斗はあと6回、同じ動きを繰り返す。



「よくやった。ユウトっち」



 ライナーは優斗の頭に手を置いて労う。



「じゃあユウトくん。ギルドカードを確認して、今のレベルと習得可能スキルを見て、準備が終わったら最後の1体も解放するね」



 エレンに勧められ、優斗はギルドカードを確認する。

 ゴブリンの6匹も倒したお陰か、レベルが9まで上がっており、ステータスも上昇していた。

 そして取得可能スキルは一つだけ増えていたのでそれを習得する。



「準備、出来ました」



「了解。じゃあ、バインド、解除」



 エレンが拘束を解くと、ゴブリンは動き出しエレンの元へ向かうものの、簡単にあしらわれ、逃亡を許してしまった。



 ライナーへの距離は遠い。キースへの、距離も遠い。そして近くには同胞を殺した怨敵の優斗が1人。



「ゴギャギャギャ!!」



 ゴブリンは拘束された時に落とした棍棒を拾い上げると優斗へと向かって走る。



(見えるな)



だが、優斗も焦らない。先程レベルが上がった為、動体視力も上がっており、新たに習得したスキル〈弱点看破〉によって目の前のゴブリンのどこが弱点なのか丸わかりだ。



「居合切りでも、試してみようか」



 そう言うと、優斗は剣の柄を持って構える。

 今優斗が持っている剣は西洋剣であり、居合切りには適していない。

 だが、スキル取得の意味も含めてここで試し斬りをする。



「タイミングは〈弱点看破〉が教えてくれる。あとはゴブリンを首を切り落とすだけ」



 優斗は静かにタイミングを狙い、



「グギャグギャ!」



「今!!」



 優斗が放った斬撃は、一撃の元ゴブリンの首を切り飛ばした。
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