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疑惑
7.
しおりを挟む「すみません、電話対応中でしたのでご挨拶が遅れました。改めて若宮千春と申します」
ペコリとお辞儀をしてそう言うと、満足したのか口の端を上げてにっこり笑った。
そうやって普通に笑うと本当に美人なのに、さっきは目が笑ってなくて怖かったな。
「どう?秘書業務にはもう慣れた?」
「はい。まだまだご迷惑かけることもありますけど、なんとか」
「他の人に苛められてない?」
「はい。大丈夫です」
なんだろう、単純に心配してくれてるのかな?
さっき秘書室に来た時とは違って、優しい口調で話しかけてくれた。
「そう、良かったわね。もし困ったことがあったら木村役員に泣きついてみて。相談に乗ってくれるから」
「ははは、加藤さんみたいに泣きつかれるようなことがあったら困るなぁ」
二人とも笑ってるけれど、彼女は苛められてきたんだろうか。
って、聞かなくてもさっきのやり取りだけで判断できそうだけれど……。
「そうならないように、精進します」
「頑張ってね」
そう言ってくれた彼女の顔は、優しく微笑んでくれている。
この短時間で理解するのは難しいけれど、彼女は孤立してたんだろう。言い方はキツイけれど木村役員に泣きつくほど当時は色々と悩んでたのかも。
そう考えると、なんとなく可哀想な気もしてくる。
乗り込む気持ちでお茶を持って行ったけれど、逆に励まされて帰ってきてしまった。
先輩たちにもどうだった?と聞かれて、特に何も無かったですとしか応えようがなかった。
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