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招待
1.
しおりを挟む土曜日が来るのは意外と早かった。
前日に先輩から連絡があり、市内の百貨店の前で待ち合わせしようということになり、20分も早く着いてしまった。
先週の土曜日は先輩と突然会うことになってしまったけど、今日はなるべく一緒に歩いても恥ずかしくないように少し甘めの格好にした。
メイクも久々に気合いを入れ長めの髪も少しだけ巻いて、職場ではつけないピアスもつけてみた。
このあいだ会った時より気合が入り過ぎて、ちょっとやり過ぎた感じは否めない……。
先輩は私のことなんてなんとも思ってないし、ここまでおめかしする必要もなかったかもな、と思いながら待ち合わせのビルの前でガラスの反射を鏡代わりに風に吹かれた髪を撫でていた。
「あの、すみません」
「はい?」
振り返ると突然見知らぬ男性に声をかけられた。
「今お時間大丈夫ですか?」
「え?」
同年代ぐらいの少し派手目な男性がニコニコしながら近寄って来た。
これはもしかしたら何かの勧誘だと咄嗟に警戒感をあらわにして、作り笑顔を貼り付けた。
「すみません、いま待ち合わせしてるところなので」
「お友達とですか?良ければ来るまで一緒にお茶でも行きませんか?」
勧誘じゃなくてナンパ……。
これもおめかしした効果かなと喜んでみたくもなるけど、行く気はないので断るのみ。
「いえ、もう少ししたら来るので」
「そう言わずに。短時間だけでも」
「他を当たってもらえませんか?」
「いいじゃないですか。行きましょうよ」
わりとしつこいな。
早く着いたから先輩はまだ来ないし、どうしよう……。
何かいい撃退法がないか頭の中を瞬時にフル回転した。
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