313 / 544
第5章 第十五次帝国戦役編
第308話 翼を背負う烏たち
しおりを挟む
「旦那様、それでは行ってまいります」
深い碧色の髪の男は、主であるマッシュ男爵に挨拶をした。
これから出兵するにあたり、使用人兼護衛の任を一時的に解かれるから。
扱いは休職と同じで、戦争が終わり次第復帰する予定だ。
「帝国人の血が流れているこの身としては複雑な気持ちだが……亡国の憂き目に遭っている我が国を頼むぞ」
「お任せ下さい。2人で粉骨砕身の働きをしてまいりますゆえ」
「頼もしい限りだ。所属の部隊は決まったのか?」
「えぇ。ずっと前から、決まっていました」
男はそう呟くと、もう一人の従者に次いで乗馬した。
彼らはまず、手紙に書かれていた集合場所の首都アトラへと向かう。
「生きて帰ってこい」
「御意」
馬上から返事とした男は、馬の腹を蹴って駆け出した。
ここ数日、カナン公国中で同じような光景が生まれた。
地元を後にして、戦地へと赴く兵士たちの門出。
喜ぶべきことではないが、止めることは出来ない。
彼らは自分たちの代わりに、敵国の兵士を殺害しに向かってくれているのだから。
現役、予備役、軍属、非軍属を問わず、カナン公国に存在する戦力のうち、およそ3万の兵士たちが、起軍命令に従って準備を開始した。
※※※※※※※※※※※※※※※
「エリーがいなくなってから、もう5か月も過ぎたんだ。月日が過ぎるのは本当に速いよ」
リリーやシャーロットが運営している孤児院の敷地内、誰も来ない林の奥に、アラタはいた。
鬱蒼とした木々の間を抜けると、爽やかな風が吹く草原が広がっている。
その中心には、前回の帝国戦役で没したシャーロットの戦友たちが眠っている。
アラタもここ数日、多少なりとも帝国との戦争について調べた。
帝国による侵略戦争の原因は様々だが、決してこれは外交的解決手段の一つという扱いではない。
まず言葉による外交、その後どうしようもなくなったら戦争という現代世界の理とは違い、帝国はある日突然攻めてくる。
それは例えば政治的空白を狙った侵略行為であったり、民族解放を謳った国土略奪行為だったり、果てには皇帝に子供が生まれた記念に戦争を起こしたなんてこともある。
要するに、理解しようとするだけ無駄な相手だ。
そんな頭のとち狂った類人猿以下の野蛮な国家が、この世界の人間界において最大の国土と軍事力を有しているのだから、手の付けようがない。
出来るのは、帝国に迎合して生きながらえるか、こうしてたまに起こる戦争に勝つか、2つに1つだ。
アラタはレイの働く花屋で買ってきた花束を供えると、そっと手を合わせる。
いつまで経っても風化しない、風化してくれない悲しみ。
どんなに平和で楽しい毎日だろうと、悲しみと憎しみが消えた日は一日たりともなかった。
その負の感情こそが、彼をここまで強くした。
アラタは目を開けて、手を下ろす。
「結局、エリーのいう通りだった。これから何千何万という人が死ぬんだろう。エリーが大公になることで犠牲になるのが一部の貴族だけだったとして、俺はそうすべきだったのかもしれない。どちらにせよエリーが死んでしまうのなら、あとは誰が死んでもおんなじだった」
ほとんど誰も寄り付かないはずの無名の墓前に、一人、また一人と、人が集まって来た。
それは影から染み出てくるように、何もないところから湧いてくるように、静かに出現していく。
それらは思い思いに墓前にものを供えたり、手を合わせたりして、アラタの後ろに集まる。
「君の犠牲の上に今のカナンがあるのなら、この命続く限り、俺はそれを守るよ。それが君の生きた証を守るってことだと思うから。それが俺に、俺たちに課せられたたった一つの役割だから」
アラタの背後には、すでに19名の男たちが集結している。
「エリー、ずっと愛している」
そこまで言い終わると、アラタは後ろを振り返った。
見知った顔もちらほらといて、過去に因縁のある者たちも少なからずいた。
そのどれもが、アラタの眼で見て選んだ一流の使い手たち。
すなわち、精鋭部隊だ。
「久しぶり、という人間もいれば、初めまして、という人間もいる。まずは俺の自己紹介からさせてもらおう。冒険者アラタ、ランクはB。元八咫烏総隊長だ、以後よろしく」
彼を見る視線には、大きく分けて3つある。
一つは懐かしい旧友を見る顔、これは問題ない。
一つは憧れの存在を見るような顔、これも問題ない。
そして一つは、まるで親の仇かと言わんばかりに彼のことを睨みつけている顔、こちらは少々問題だ。
「右側から順番に、名前と所属と言ってほしい。ついでに一言も。じゃあお前から」
そう言われて、アラタから見て最も右側にいた男から自己紹介が始まった。
「カロン、元八咫烏第5小隊長。今は無職。アラタ隊長には聞きたいことが山ほどある。だがまあ、それは追々でいい。よろしく」
「アーキム・ラトレイア、特務警邏所属。カロンと同じく元八咫烏第2小隊長だ。よろしく」
「バートン・フリードマンです。元八咫烏、現特務警邏です。以後よろしくお願いします」
「うっす、エルモっす。特務警邏所属っす。よろしくおねしゃっす」
「元黒狼、八咫烏のダリルだ。アラタさんの頼みでここに来た。総隊長の邪魔をする奴は容赦しない」
「デリンジャーです。公国軍士官学校を今年卒業しました。よろしくお願いします」
「……ヴィンセント。よろしく」
「ウォーレンだ。中央戦術研究所から来た。腕利き部隊に配属されて緊張している、優しくしてくれ」
「ハリスっていいます。一応元八咫烏です。今はパン屋で働いているので、もしよかったら買ってください」
「冒険者のテッドです。ランクはCで、軍の戦闘工兵カリキュラムを修了しています。そっち方面を担当すると思うのでよろしく」
「公国軍北部方面隊から来ましたカイです。精鋭部隊で仕事を出来ることに感動しています」
「アレサンドロだ。警邏機構対テロ特殊部隊出身、よろしく」
「同じく対テロ特殊部隊出身、バッカスだ。まさかテロリストたちと共に戦うことになるとは思わなかったが、仕事に私情は持ち込まない派だ。よろしく」
「えーサイロスです。元中央軍第1師団所属、今は冒険者やっています。軍と交渉することもあると思うので、その時は任せてください」
「サイロスのパーティーメンバーのシリウスです。俺は普通の冒険者、よろしく」
「クラーク伯爵家で私設兵として雇われているエリックです。よろしくお願いしましゅ……します」
「メトロドスキー子爵家から来ましたギャビンです。東部動乱ではご迷惑をおかけしました。子爵家の名誉を回復するために、粉骨砕身働かせていただきます」
「キィです。マッシュ男爵家から来ました。元八咫烏です」
「同じくマッシュ男爵家使用人兼護衛のリャン・グエルです。元八咫烏ですので、動きについて分からないことがあれば遠慮なく聞いてください」
リャンで締めくくられた自己紹介イベントを聞く限り、どいつもこいつも粒ぞろい。
ここに戦力を集めている分他が薄くならないか不安になるレベルでの精強な部隊。
それを率いるのは、当然彼だ。
「みんな硬いし壁を感じるなぁ。まあ友達じゃねーし、追々仲良くなっていこうや。それじゃまずは分隊長と班分けを発表する」
アラタは隣に置いてある大きな袋の中から、さらに小分けされた麻袋を取り出した。
そこには誰のものかわかるように名前が書かれている。
「第1分隊長は俺として、リャン・グエル、キィ、カロン。お前たちは第1分隊だ」
そう言いながら、アラタは3人に袋を手渡した。
この部隊として動くために必要な装備が入っていて、それらは全てメイソンが死ぬ気で制作したものだ。
彼のおかげで、出陣に間に合った。
「久しぶりですね」
「あぁ。クリスはいねーけどな」
「アラタ、僕少し背が伸びたんだ」
「おー、確かに。期待してるぞ」
元八咫烏第1小隊の面々は再会を喜び、次はカロンに荷物を渡す。
「頼むぞ」
「隊長、話したいことがたくさんあるので、それまで死なないでください」
「お前もな」
カロンは大公選後の混乱の中、首都から脱出しようとした第1小隊とぶつかり撃破されている。
彼らに対して思うところがあるのだろう。
様々な人間を登用するという事は、そういう問題も包括的にフォローするということになる。
彼らの今後の課題の一つだ。
「続いて第2分隊長アーキム、班員はバートン、エルモ、ダリル。第3分隊長はデリンジャー、班員ヴィンセント、ウォーレン、ハリス。第4分隊長テッド、班員カイ、アレサンドロ、バッカス。最後に第5分隊長サイロス、班員シリウス、エリック、ギャビンだ。名前を呼ばれなかった者は?」
誰も手を挙げない。
これにて完了だ。
「俺たちの所属は公国軍、第1師団、第1旅団、第2連隊、第32特別大隊、第206中隊、その中の第1192小隊だ。第1192小隊は明日9:00にアトラを発つ。初めの仕事は輜重隊、物資を運搬管理する物流部門だが、この間に部隊の訓練を行う。みんなそのつもりで心の準備をしてくれ。何か質問のあるやつはいるか?」
数名の手が上がり、アラタはその一番左側、アーキム・ラトレイアを指名した。
「クリスの姿が見えないが、来ないのか」
「あいつは従軍しない。大公の娘たちと別行動だ」
「小隊長が遠ざけたのですか」
「別に。必要ないと判断しただけで他意はない。他にあるか」
次に、テッドを指名した。
「隊長はこの部隊をどのように使いますか」
「用兵は専門外だ。ただ勝つために、負けないために、生き残るために戦う。その中にはお前ら兵士も含まれている。つまり、無駄死にするつもりもさせるつもりもない」
「なるほど、よく分かりました」
「もういいか」
いくつか質問が重複していたようで、これ以上手は上がらない。
これにて結成式終了のようだ。
「では明日から、我々は一心同体の戦闘単位となる。武力ではカナンを侵せないと帝国の連中に知らしめるのだ! 解散!」
こうして公国軍第1192小隊は組織された。
この部隊は通称、八咫烏。
大公選時に活躍した組織の名を受け継ぐこの名前の部隊を率いるのは、同じく冒険者アラタ。
前回は失敗した。
エリザベスを護り切れず、壊滅と言っても差し支えない損害を被り、そして部隊は解散した。
今回は違う。
そう誓うように、全員に配布された黒装束装備の背中には、三本足の烏の紋章が刻まれている。
新時代を飛翔するための翼を背負い、彼らは飛び立つのだ。
帝国の宣戦布告から3日、ついに中央軍3万が動き出す。
深い碧色の髪の男は、主であるマッシュ男爵に挨拶をした。
これから出兵するにあたり、使用人兼護衛の任を一時的に解かれるから。
扱いは休職と同じで、戦争が終わり次第復帰する予定だ。
「帝国人の血が流れているこの身としては複雑な気持ちだが……亡国の憂き目に遭っている我が国を頼むぞ」
「お任せ下さい。2人で粉骨砕身の働きをしてまいりますゆえ」
「頼もしい限りだ。所属の部隊は決まったのか?」
「えぇ。ずっと前から、決まっていました」
男はそう呟くと、もう一人の従者に次いで乗馬した。
彼らはまず、手紙に書かれていた集合場所の首都アトラへと向かう。
「生きて帰ってこい」
「御意」
馬上から返事とした男は、馬の腹を蹴って駆け出した。
ここ数日、カナン公国中で同じような光景が生まれた。
地元を後にして、戦地へと赴く兵士たちの門出。
喜ぶべきことではないが、止めることは出来ない。
彼らは自分たちの代わりに、敵国の兵士を殺害しに向かってくれているのだから。
現役、予備役、軍属、非軍属を問わず、カナン公国に存在する戦力のうち、およそ3万の兵士たちが、起軍命令に従って準備を開始した。
※※※※※※※※※※※※※※※
「エリーがいなくなってから、もう5か月も過ぎたんだ。月日が過ぎるのは本当に速いよ」
リリーやシャーロットが運営している孤児院の敷地内、誰も来ない林の奥に、アラタはいた。
鬱蒼とした木々の間を抜けると、爽やかな風が吹く草原が広がっている。
その中心には、前回の帝国戦役で没したシャーロットの戦友たちが眠っている。
アラタもここ数日、多少なりとも帝国との戦争について調べた。
帝国による侵略戦争の原因は様々だが、決してこれは外交的解決手段の一つという扱いではない。
まず言葉による外交、その後どうしようもなくなったら戦争という現代世界の理とは違い、帝国はある日突然攻めてくる。
それは例えば政治的空白を狙った侵略行為であったり、民族解放を謳った国土略奪行為だったり、果てには皇帝に子供が生まれた記念に戦争を起こしたなんてこともある。
要するに、理解しようとするだけ無駄な相手だ。
そんな頭のとち狂った類人猿以下の野蛮な国家が、この世界の人間界において最大の国土と軍事力を有しているのだから、手の付けようがない。
出来るのは、帝国に迎合して生きながらえるか、こうしてたまに起こる戦争に勝つか、2つに1つだ。
アラタはレイの働く花屋で買ってきた花束を供えると、そっと手を合わせる。
いつまで経っても風化しない、風化してくれない悲しみ。
どんなに平和で楽しい毎日だろうと、悲しみと憎しみが消えた日は一日たりともなかった。
その負の感情こそが、彼をここまで強くした。
アラタは目を開けて、手を下ろす。
「結局、エリーのいう通りだった。これから何千何万という人が死ぬんだろう。エリーが大公になることで犠牲になるのが一部の貴族だけだったとして、俺はそうすべきだったのかもしれない。どちらにせよエリーが死んでしまうのなら、あとは誰が死んでもおんなじだった」
ほとんど誰も寄り付かないはずの無名の墓前に、一人、また一人と、人が集まって来た。
それは影から染み出てくるように、何もないところから湧いてくるように、静かに出現していく。
それらは思い思いに墓前にものを供えたり、手を合わせたりして、アラタの後ろに集まる。
「君の犠牲の上に今のカナンがあるのなら、この命続く限り、俺はそれを守るよ。それが君の生きた証を守るってことだと思うから。それが俺に、俺たちに課せられたたった一つの役割だから」
アラタの背後には、すでに19名の男たちが集結している。
「エリー、ずっと愛している」
そこまで言い終わると、アラタは後ろを振り返った。
見知った顔もちらほらといて、過去に因縁のある者たちも少なからずいた。
そのどれもが、アラタの眼で見て選んだ一流の使い手たち。
すなわち、精鋭部隊だ。
「久しぶり、という人間もいれば、初めまして、という人間もいる。まずは俺の自己紹介からさせてもらおう。冒険者アラタ、ランクはB。元八咫烏総隊長だ、以後よろしく」
彼を見る視線には、大きく分けて3つある。
一つは懐かしい旧友を見る顔、これは問題ない。
一つは憧れの存在を見るような顔、これも問題ない。
そして一つは、まるで親の仇かと言わんばかりに彼のことを睨みつけている顔、こちらは少々問題だ。
「右側から順番に、名前と所属と言ってほしい。ついでに一言も。じゃあお前から」
そう言われて、アラタから見て最も右側にいた男から自己紹介が始まった。
「カロン、元八咫烏第5小隊長。今は無職。アラタ隊長には聞きたいことが山ほどある。だがまあ、それは追々でいい。よろしく」
「アーキム・ラトレイア、特務警邏所属。カロンと同じく元八咫烏第2小隊長だ。よろしく」
「バートン・フリードマンです。元八咫烏、現特務警邏です。以後よろしくお願いします」
「うっす、エルモっす。特務警邏所属っす。よろしくおねしゃっす」
「元黒狼、八咫烏のダリルだ。アラタさんの頼みでここに来た。総隊長の邪魔をする奴は容赦しない」
「デリンジャーです。公国軍士官学校を今年卒業しました。よろしくお願いします」
「……ヴィンセント。よろしく」
「ウォーレンだ。中央戦術研究所から来た。腕利き部隊に配属されて緊張している、優しくしてくれ」
「ハリスっていいます。一応元八咫烏です。今はパン屋で働いているので、もしよかったら買ってください」
「冒険者のテッドです。ランクはCで、軍の戦闘工兵カリキュラムを修了しています。そっち方面を担当すると思うのでよろしく」
「公国軍北部方面隊から来ましたカイです。精鋭部隊で仕事を出来ることに感動しています」
「アレサンドロだ。警邏機構対テロ特殊部隊出身、よろしく」
「同じく対テロ特殊部隊出身、バッカスだ。まさかテロリストたちと共に戦うことになるとは思わなかったが、仕事に私情は持ち込まない派だ。よろしく」
「えーサイロスです。元中央軍第1師団所属、今は冒険者やっています。軍と交渉することもあると思うので、その時は任せてください」
「サイロスのパーティーメンバーのシリウスです。俺は普通の冒険者、よろしく」
「クラーク伯爵家で私設兵として雇われているエリックです。よろしくお願いしましゅ……します」
「メトロドスキー子爵家から来ましたギャビンです。東部動乱ではご迷惑をおかけしました。子爵家の名誉を回復するために、粉骨砕身働かせていただきます」
「キィです。マッシュ男爵家から来ました。元八咫烏です」
「同じくマッシュ男爵家使用人兼護衛のリャン・グエルです。元八咫烏ですので、動きについて分からないことがあれば遠慮なく聞いてください」
リャンで締めくくられた自己紹介イベントを聞く限り、どいつもこいつも粒ぞろい。
ここに戦力を集めている分他が薄くならないか不安になるレベルでの精強な部隊。
それを率いるのは、当然彼だ。
「みんな硬いし壁を感じるなぁ。まあ友達じゃねーし、追々仲良くなっていこうや。それじゃまずは分隊長と班分けを発表する」
アラタは隣に置いてある大きな袋の中から、さらに小分けされた麻袋を取り出した。
そこには誰のものかわかるように名前が書かれている。
「第1分隊長は俺として、リャン・グエル、キィ、カロン。お前たちは第1分隊だ」
そう言いながら、アラタは3人に袋を手渡した。
この部隊として動くために必要な装備が入っていて、それらは全てメイソンが死ぬ気で制作したものだ。
彼のおかげで、出陣に間に合った。
「久しぶりですね」
「あぁ。クリスはいねーけどな」
「アラタ、僕少し背が伸びたんだ」
「おー、確かに。期待してるぞ」
元八咫烏第1小隊の面々は再会を喜び、次はカロンに荷物を渡す。
「頼むぞ」
「隊長、話したいことがたくさんあるので、それまで死なないでください」
「お前もな」
カロンは大公選後の混乱の中、首都から脱出しようとした第1小隊とぶつかり撃破されている。
彼らに対して思うところがあるのだろう。
様々な人間を登用するという事は、そういう問題も包括的にフォローするということになる。
彼らの今後の課題の一つだ。
「続いて第2分隊長アーキム、班員はバートン、エルモ、ダリル。第3分隊長はデリンジャー、班員ヴィンセント、ウォーレン、ハリス。第4分隊長テッド、班員カイ、アレサンドロ、バッカス。最後に第5分隊長サイロス、班員シリウス、エリック、ギャビンだ。名前を呼ばれなかった者は?」
誰も手を挙げない。
これにて完了だ。
「俺たちの所属は公国軍、第1師団、第1旅団、第2連隊、第32特別大隊、第206中隊、その中の第1192小隊だ。第1192小隊は明日9:00にアトラを発つ。初めの仕事は輜重隊、物資を運搬管理する物流部門だが、この間に部隊の訓練を行う。みんなそのつもりで心の準備をしてくれ。何か質問のあるやつはいるか?」
数名の手が上がり、アラタはその一番左側、アーキム・ラトレイアを指名した。
「クリスの姿が見えないが、来ないのか」
「あいつは従軍しない。大公の娘たちと別行動だ」
「小隊長が遠ざけたのですか」
「別に。必要ないと判断しただけで他意はない。他にあるか」
次に、テッドを指名した。
「隊長はこの部隊をどのように使いますか」
「用兵は専門外だ。ただ勝つために、負けないために、生き残るために戦う。その中にはお前ら兵士も含まれている。つまり、無駄死にするつもりもさせるつもりもない」
「なるほど、よく分かりました」
「もういいか」
いくつか質問が重複していたようで、これ以上手は上がらない。
これにて結成式終了のようだ。
「では明日から、我々は一心同体の戦闘単位となる。武力ではカナンを侵せないと帝国の連中に知らしめるのだ! 解散!」
こうして公国軍第1192小隊は組織された。
この部隊は通称、八咫烏。
大公選時に活躍した組織の名を受け継ぐこの名前の部隊を率いるのは、同じく冒険者アラタ。
前回は失敗した。
エリザベスを護り切れず、壊滅と言っても差し支えない損害を被り、そして部隊は解散した。
今回は違う。
そう誓うように、全員に配布された黒装束装備の背中には、三本足の烏の紋章が刻まれている。
新時代を飛翔するための翼を背負い、彼らは飛び立つのだ。
帝国の宣戦布告から3日、ついに中央軍3万が動き出す。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる