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第5章 第十五次帝国戦役編
第444話 奇策は下策
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次の日も、その次の日も、アラタたち冒険者大隊の快進撃は続いた。
連戦連勝、敵も夜通し戦うつもりは無いみたいで、日が暮れるとほとんどが引き返していく。
連日の戦闘による疲労と被害は相当なものがあるが、それ以上の打撃を敵に与えているという感触が彼らを元気づけていた。
一方、ウル帝国軍中盤の士気は惨憺たる有様だった。
寡兵にいいようにやられて連戦連敗、相手は鬼のように強い上位冒険者たち。
脱走兵が出るのはまあ分かるが、公国軍が夜間戦闘も辞さない動きを取っていることでノイローゼになる者まで出る始末。
挙句の果てには味方同士で乱闘騒ぎまで頻発するのだから、もう散々といった様子だ。
そもそも、彼らは彼らの仕事をもう終えた気になっていたのだ。
彼らはコートランド川沿いに布陣していた部隊が大半で、すでにかなりの数の戦闘に参加していた。
疲弊度、仕事量を見てもそれは明らかで、それを鑑みて亡きエヴァラトルコヴィッチ中将は彼らを後方に下げていた。
彼らの力を使うまでもなく、元から公国軍第1師団と対峙していた2万6千の生き残りを投入すればいいだけ、シンプルな考えだった。
それがここに来て冒険者たちによる中盤への攻撃。
これが実によく刺さった。
実際の所、リーバイもアダムもレイヒムも、公国の指揮官たちはそこまで細かく考えていない。
ただ普通に撤退戦を展開するだけではもたないという試算が出たから無茶な作戦を取らざるを得なかっただけで、これが戦況を決定づけるなんてまるで考えていなかった。
レイヒム率いる冒険者たちには悪いが、ある意味捨て石と言っても過言ではない。
だが世の中不思議なもので、当てにいくと当たらないくせに当てようとせずに投げると案外当たってしまうものなのだ。
だからこうしてアラタたちは今日も敵を斬る。
「騎兵突っ込め! 貫通して旋回までいくぞ!」
レイヒムは隊長自ら先陣を切って敵を蹴散らしていく。
帝国兵の身体能力は確かに高い。
しかしこと馬術に限って言えば公国に分があった。
それはお国柄や地形、環境要因が複雑に組み合わさった結果であり、一朝一夕で覆せるものでは無い。
アドバンテージを活かしつつ、苦手な歩兵戦を引っ張るのはBランカーたち。
「カイワレ」
現場指揮を執るトマスは隣にいるパーティーメンバーに声を掛けた。
トマスと違って戦術指揮を執ることが出来ない彼の役目は、単純な斬り合いだ。
「150秒解放。残りは温存しておくこと」
「分かった」
ひっじょ~に軽い返事だった。
中身をくりぬいてヘリウムでも入れているのかと疑うくらい軽い返事。
もっと気合を入れて、心を込めて、覚悟を決めて、熱意と共に、そんなことを言いたくなる昭和生まれのおじさんが沸いてきてもおかしくない。
「まったく。だがまぁ……」
カイワレが最前線に向かうと道が開く。
道を譲っているようにも見えるし、単に彼のことを避けているようにも見える。
返事同様足取りも軽やか、とても命のやり取りをしに行くようには見えない。
だが、これでいいのだ。
カイワレにとって、戦争もクエストも、食事も睡眠も関係ない。
ただの日常動作の延長線上に過ぎない。
平常心とよく唱える人がいる。
彼は非日常でも日常と同じように振舞おうと気を揉んで、結果的に自己暗示をかけるため平常心と唱えるのだ。
カイワレにそんな呪文は必要ない。
ある意味アラタよりも頭のおかしいCランク冒険者は、限定的な戦闘能力ならアラタと張るし、何なら勝つ。
それは彼がカンストするまで育て上げたスキル【狂化】の力だ。
「えーっと、時計は……まぁいいや」
時間を守れないカイワレにと、仲間がプレゼントしてくれた懐中時計。
この時代、カナン公国で時計は非常に高価な品物だ。
アラタは金が無くて買えないし、クリスも必要としていない。
リーゼも貴重だから普段持ち歩くようなことはせず、常に携帯しているのはノエルくらいのものだ。
そんな貴重で想いの込められた時計を、カイワレはどこにやったか忘れてしまった。
背嚢の中にあるのは確かで、失くしたわけではない。
ただ、時間を図るために取り出せないのなら、それはなくしたと言って差し支えない。
「通せ! 早くしないと巻き込まれるぞ!」
怒鳴られた公国兵は、そんなこと言われてもと頭を抱える。
今まさに自分の目の前に敵がいるわけで、こうして武器を振り回し合っている。
そんな中道を開ければ、なだれ込まれる云々の前に自分が死にかねない。
無理無理、何とかしてくれよと男は天に願った。
——力を寄越せ。
——いつものように【狂化】だけ使えばいいじゃないか。コントロールは得意だろう?
——いいから早くしろよ。えっと150……180だっけ? 180秒寄越せ。
——代価は貰うぞ。
——うん。
強いバネのような動き。
エネルギーとパワーに溢れ、ダイナミックな動きを想起させるだろう。
カイワレは全身の筋肉をフル活用して剣を振った。
もちろん【身体強化】を発動した上での話だ。
さらに、彼は理性を引き換えに他の能力を底上げしている。
筋力も動体視力も敏捷性も、全てが大幅に強化されていた。
「ゔゔゔ…………」
野生の獣のようなうなり声、狂犬病を疑うほど常軌を逸した形相。
公国兵の肩を踏み台にして、彼は敵陣に踏み込んだ。
まずは先頭の兵士の頸動脈を撫で斬り、返す剣で首を飛ばす。着地と同時にくるりと半回転、周囲の敵の足を薙いだ。
恐怖、純粋に恐怖体験だ。
押し合いへし合いをすることで、ある意味均衡が取れていた歩兵戦。
そのバランスを立った1人で破壊しようとしているのだから、そりゃ戦慄もするだろう。
同様のことをしてみろと命じられれば、アラタも似たような成果を上げることは出来る。
しかし彼をもってしても成功率はそう高くないだろう。
カイワレは、100回やって100回この攻撃を成功させる自信がある。
それがアラタとカイワレの違いであり、メンタルが結果を分けるシビアな世界のお話だ。
「ゔゔ……ゔあぁぁぁあああ!」
その日アラタ以上の働きを見せたカイワレは、大いに味方の命を救い、敵には精神疾患を持つ敵の記憶が刻まれた。
※※※※※※※※※※※※※※※
コートランド川やミラでアラタたちがそうだったが、連戦連敗となると気が滅入るしイライラもする。
それを部下に当たるようでは信頼が得られないと、帝国士官たちは平静を装って静かにしていた。
だがやはり、内心穏やかではない。
自分含めて味方はもう十分戦って、残りは最前線の部隊が全部片づけて終戦だと思っていたのだ。
そこにまるで自分たちを狙い撃ちに来たかのような冒険者の襲来。
「どうしたものか……」
連隊の指揮所で、西部方面隊の尉官が溜息をついた。
男は地方出身者、その割には軍属として成功している。
大所帯の家族を養っているし、同年代の中ではエリートに分類される。
だから、ここで評価を落とすわけにはいかなかった。
勝ちがほぼ決まっているこの戦争で、自分は武功を上げられなかったとなると軍の内でも外でも風当たりが厳しくなる。
それは嫌だと彼も仕事を頑張るのだが、どうにも周囲と歩調が合わずに空回ってしまう。
それもこれも、全て連隊長殿のやる気の無さが原因だと男は断定して心の中で糾弾した。
「中尉、何か意見でも?」
「あ、いえ……何でもありません」
「そうか」
帝国軍第4連隊長グレゴリウス・オニキス大佐。
中尉と違って帝都グランヴァインの出身、家も軍人の家系で、いわゆる金持ちボンボンのハイパーエリート。
よほどの馬鹿でもなければ初めから将官の座を目指すキャリア形成をするような家庭の子である。
思うような戦果を挙げられず、味方の損害ばかりが目に付く中尉とは対照的に、グレゴリウスの様子は落ち着いたものだった。
それが虚勢か真実かはさておき、意図的だとしたら大したものである。
大勢の命を預かるのなら、迷う姿を部下に見せてはいけない。
本当は首がねじ切れるくらい熟考に熟考を重ねていたとしても、凛としながら部下と接することで尊敬と信頼は生まれる。
「みな口に出す必要は無い。じきに状況は一変する」
木の椅子で舟を漕ぎながらそう言い切る。
あまりに自然と口にしたものだから、一部の人間は環境音として処理してしまったくらいだ。
「大佐殿、それはどういう……?」
周囲の注目が集まる中、グレゴリウスはハンドブックサイズにまとめられた戦況報告を見ながら言う。
「脱走兵は仕方ないとして、連日の戦いで大きな損害を被った」
彼の口から出る事実は、言葉の軽さとは裏腹に周囲の人間へ重くのしかかる。
だが、それを知ってか知らずかグレゴリウスは平気な顔をしている。
「これだけ戦ったのだ、敵はさぞ疲弊しているだろうし、今日は良い夢を見れることだろう。諸君、軍を3分割し昼夜1部隊休憩と予備部隊を兼任させるのだ。そろそろ反転して敵を叩く」
「はっ!」
彼の部下が勢いよく返事をすると、周りの士官たちもそれにつられて返事を返す。
「大佐、さきほどの作戦の意味をお聞きしても?」
「別に大したことじゃない。敵が勢いよく突っ込んでくるものだからまずは受け止めて、疲れて帰ろうとする背を突いてやるだけの話さ。この規模の相手を全力ですり潰すのは品がないが、かと言って奇策を用いるような必要もない。ただひたすらに正攻法で敵を削る、今までの戦いと同じだよ」
そう自信ありげに断言するグレゴリウスの脳内には、はっきりとした勝利までのロードマップが描かれている。
これより8時間稼働3交代制で24時間の戦闘へ移行すると、グレゴリウス大佐はそう宣言した。
対するアラタたちは日中の戦闘で疲れていて、今は休息に努める必要がある。
奇策を用いるは下策、グレゴリウス大佐の座右の銘が、冒険者大隊に襲い掛かろうとしていた。
連戦連勝、敵も夜通し戦うつもりは無いみたいで、日が暮れるとほとんどが引き返していく。
連日の戦闘による疲労と被害は相当なものがあるが、それ以上の打撃を敵に与えているという感触が彼らを元気づけていた。
一方、ウル帝国軍中盤の士気は惨憺たる有様だった。
寡兵にいいようにやられて連戦連敗、相手は鬼のように強い上位冒険者たち。
脱走兵が出るのはまあ分かるが、公国軍が夜間戦闘も辞さない動きを取っていることでノイローゼになる者まで出る始末。
挙句の果てには味方同士で乱闘騒ぎまで頻発するのだから、もう散々といった様子だ。
そもそも、彼らは彼らの仕事をもう終えた気になっていたのだ。
彼らはコートランド川沿いに布陣していた部隊が大半で、すでにかなりの数の戦闘に参加していた。
疲弊度、仕事量を見てもそれは明らかで、それを鑑みて亡きエヴァラトルコヴィッチ中将は彼らを後方に下げていた。
彼らの力を使うまでもなく、元から公国軍第1師団と対峙していた2万6千の生き残りを投入すればいいだけ、シンプルな考えだった。
それがここに来て冒険者たちによる中盤への攻撃。
これが実によく刺さった。
実際の所、リーバイもアダムもレイヒムも、公国の指揮官たちはそこまで細かく考えていない。
ただ普通に撤退戦を展開するだけではもたないという試算が出たから無茶な作戦を取らざるを得なかっただけで、これが戦況を決定づけるなんてまるで考えていなかった。
レイヒム率いる冒険者たちには悪いが、ある意味捨て石と言っても過言ではない。
だが世の中不思議なもので、当てにいくと当たらないくせに当てようとせずに投げると案外当たってしまうものなのだ。
だからこうしてアラタたちは今日も敵を斬る。
「騎兵突っ込め! 貫通して旋回までいくぞ!」
レイヒムは隊長自ら先陣を切って敵を蹴散らしていく。
帝国兵の身体能力は確かに高い。
しかしこと馬術に限って言えば公国に分があった。
それはお国柄や地形、環境要因が複雑に組み合わさった結果であり、一朝一夕で覆せるものでは無い。
アドバンテージを活かしつつ、苦手な歩兵戦を引っ張るのはBランカーたち。
「カイワレ」
現場指揮を執るトマスは隣にいるパーティーメンバーに声を掛けた。
トマスと違って戦術指揮を執ることが出来ない彼の役目は、単純な斬り合いだ。
「150秒解放。残りは温存しておくこと」
「分かった」
ひっじょ~に軽い返事だった。
中身をくりぬいてヘリウムでも入れているのかと疑うくらい軽い返事。
もっと気合を入れて、心を込めて、覚悟を決めて、熱意と共に、そんなことを言いたくなる昭和生まれのおじさんが沸いてきてもおかしくない。
「まったく。だがまぁ……」
カイワレが最前線に向かうと道が開く。
道を譲っているようにも見えるし、単に彼のことを避けているようにも見える。
返事同様足取りも軽やか、とても命のやり取りをしに行くようには見えない。
だが、これでいいのだ。
カイワレにとって、戦争もクエストも、食事も睡眠も関係ない。
ただの日常動作の延長線上に過ぎない。
平常心とよく唱える人がいる。
彼は非日常でも日常と同じように振舞おうと気を揉んで、結果的に自己暗示をかけるため平常心と唱えるのだ。
カイワレにそんな呪文は必要ない。
ある意味アラタよりも頭のおかしいCランク冒険者は、限定的な戦闘能力ならアラタと張るし、何なら勝つ。
それは彼がカンストするまで育て上げたスキル【狂化】の力だ。
「えーっと、時計は……まぁいいや」
時間を守れないカイワレにと、仲間がプレゼントしてくれた懐中時計。
この時代、カナン公国で時計は非常に高価な品物だ。
アラタは金が無くて買えないし、クリスも必要としていない。
リーゼも貴重だから普段持ち歩くようなことはせず、常に携帯しているのはノエルくらいのものだ。
そんな貴重で想いの込められた時計を、カイワレはどこにやったか忘れてしまった。
背嚢の中にあるのは確かで、失くしたわけではない。
ただ、時間を図るために取り出せないのなら、それはなくしたと言って差し支えない。
「通せ! 早くしないと巻き込まれるぞ!」
怒鳴られた公国兵は、そんなこと言われてもと頭を抱える。
今まさに自分の目の前に敵がいるわけで、こうして武器を振り回し合っている。
そんな中道を開ければ、なだれ込まれる云々の前に自分が死にかねない。
無理無理、何とかしてくれよと男は天に願った。
——力を寄越せ。
——いつものように【狂化】だけ使えばいいじゃないか。コントロールは得意だろう?
——いいから早くしろよ。えっと150……180だっけ? 180秒寄越せ。
——代価は貰うぞ。
——うん。
強いバネのような動き。
エネルギーとパワーに溢れ、ダイナミックな動きを想起させるだろう。
カイワレは全身の筋肉をフル活用して剣を振った。
もちろん【身体強化】を発動した上での話だ。
さらに、彼は理性を引き換えに他の能力を底上げしている。
筋力も動体視力も敏捷性も、全てが大幅に強化されていた。
「ゔゔゔ…………」
野生の獣のようなうなり声、狂犬病を疑うほど常軌を逸した形相。
公国兵の肩を踏み台にして、彼は敵陣に踏み込んだ。
まずは先頭の兵士の頸動脈を撫で斬り、返す剣で首を飛ばす。着地と同時にくるりと半回転、周囲の敵の足を薙いだ。
恐怖、純粋に恐怖体験だ。
押し合いへし合いをすることで、ある意味均衡が取れていた歩兵戦。
そのバランスを立った1人で破壊しようとしているのだから、そりゃ戦慄もするだろう。
同様のことをしてみろと命じられれば、アラタも似たような成果を上げることは出来る。
しかし彼をもってしても成功率はそう高くないだろう。
カイワレは、100回やって100回この攻撃を成功させる自信がある。
それがアラタとカイワレの違いであり、メンタルが結果を分けるシビアな世界のお話だ。
「ゔゔ……ゔあぁぁぁあああ!」
その日アラタ以上の働きを見せたカイワレは、大いに味方の命を救い、敵には精神疾患を持つ敵の記憶が刻まれた。
※※※※※※※※※※※※※※※
コートランド川やミラでアラタたちがそうだったが、連戦連敗となると気が滅入るしイライラもする。
それを部下に当たるようでは信頼が得られないと、帝国士官たちは平静を装って静かにしていた。
だがやはり、内心穏やかではない。
自分含めて味方はもう十分戦って、残りは最前線の部隊が全部片づけて終戦だと思っていたのだ。
そこにまるで自分たちを狙い撃ちに来たかのような冒険者の襲来。
「どうしたものか……」
連隊の指揮所で、西部方面隊の尉官が溜息をついた。
男は地方出身者、その割には軍属として成功している。
大所帯の家族を養っているし、同年代の中ではエリートに分類される。
だから、ここで評価を落とすわけにはいかなかった。
勝ちがほぼ決まっているこの戦争で、自分は武功を上げられなかったとなると軍の内でも外でも風当たりが厳しくなる。
それは嫌だと彼も仕事を頑張るのだが、どうにも周囲と歩調が合わずに空回ってしまう。
それもこれも、全て連隊長殿のやる気の無さが原因だと男は断定して心の中で糾弾した。
「中尉、何か意見でも?」
「あ、いえ……何でもありません」
「そうか」
帝国軍第4連隊長グレゴリウス・オニキス大佐。
中尉と違って帝都グランヴァインの出身、家も軍人の家系で、いわゆる金持ちボンボンのハイパーエリート。
よほどの馬鹿でもなければ初めから将官の座を目指すキャリア形成をするような家庭の子である。
思うような戦果を挙げられず、味方の損害ばかりが目に付く中尉とは対照的に、グレゴリウスの様子は落ち着いたものだった。
それが虚勢か真実かはさておき、意図的だとしたら大したものである。
大勢の命を預かるのなら、迷う姿を部下に見せてはいけない。
本当は首がねじ切れるくらい熟考に熟考を重ねていたとしても、凛としながら部下と接することで尊敬と信頼は生まれる。
「みな口に出す必要は無い。じきに状況は一変する」
木の椅子で舟を漕ぎながらそう言い切る。
あまりに自然と口にしたものだから、一部の人間は環境音として処理してしまったくらいだ。
「大佐殿、それはどういう……?」
周囲の注目が集まる中、グレゴリウスはハンドブックサイズにまとめられた戦況報告を見ながら言う。
「脱走兵は仕方ないとして、連日の戦いで大きな損害を被った」
彼の口から出る事実は、言葉の軽さとは裏腹に周囲の人間へ重くのしかかる。
だが、それを知ってか知らずかグレゴリウスは平気な顔をしている。
「これだけ戦ったのだ、敵はさぞ疲弊しているだろうし、今日は良い夢を見れることだろう。諸君、軍を3分割し昼夜1部隊休憩と予備部隊を兼任させるのだ。そろそろ反転して敵を叩く」
「はっ!」
彼の部下が勢いよく返事をすると、周りの士官たちもそれにつられて返事を返す。
「大佐、さきほどの作戦の意味をお聞きしても?」
「別に大したことじゃない。敵が勢いよく突っ込んでくるものだからまずは受け止めて、疲れて帰ろうとする背を突いてやるだけの話さ。この規模の相手を全力ですり潰すのは品がないが、かと言って奇策を用いるような必要もない。ただひたすらに正攻法で敵を削る、今までの戦いと同じだよ」
そう自信ありげに断言するグレゴリウスの脳内には、はっきりとした勝利までのロードマップが描かれている。
これより8時間稼働3交代制で24時間の戦闘へ移行すると、グレゴリウス大佐はそう宣言した。
対するアラタたちは日中の戦闘で疲れていて、今は休息に努める必要がある。
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