怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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4-2 うろを満たすは side B

6 時速60キロ(自動車全般の場合)

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「いや、織歌おりか、優秀か優秀じゃないかなら、優秀なんですよ?」

ほけ~っと、まるで心当たりがないなんて顔をしている織歌おりかひろは言う。
横の高みの見物二人も無言でうなずいている。

「ただ……そう、ただ、何事にも限度がある、という話なだけで」
「どうしてこうなったかなあ……」
「センセイの影響にしたって、ねえ……」

師匠まで含めて、三者三様にどうしてこうなったのか、と疑問符にまみれた視線を織歌おりかに送る。
が、織歌おりかからも疑問符の乗った視線が返ってくるだけなので、益体やくたいもない。

「まあ、織歌おりかの理解度の法定速度外疑惑は置いといて、ひとりかくれんぼにおけるぬいぐるみについてのは理解できましたね」

紀美きみもロビンもそのひろの言い草にツッコむ気はないらしい。
むしろ全面的に同意されてる気配すらする。

「はい。でも、ぬいぐるみ関係で直接的な変わった事というと、あとはお米と赤い糸ぐらいですか?」

確かにぬいぐるみの前準備でお米を詰めるし、それを赤い糸で縫うのである。

「まあ、そうなりますね。それをどう解釈するか、なんですが」
「うーん……お米は穀物の代表格ではありますよね……これ、粳米うるちまい糯米もちごめの違いはないんですよね?」
「どうして、そこに行き着けるのかな?」
「おかしいなあ……ゆっくり育てるはずだったのになあ」

とうとう師匠と兄弟子が二人して頭をかかえ始めたし、その気持ちがわからぬでもないので、ひろのうるさいという気持ちすらえた。

「確かに同じお米でも、糯米もちごめの方がと考えるのが妥当ですけど……ひとりかくれんぼ上、区別はありませんね」

糯米もちごめのその性質は、潜性せんせい――ひろが初めて聞いた頃は劣性――遺伝である。
あらわれにくい遺伝であるということは、すなわち全体に対して少数派であり、つまりは普通の多数派に対する非普通、何かと価値や意味を付与されがちななのである。糯米もちごめはその価値・意味がプラス方向だっただけで。

「まあ、一粒に三柱の神様だの仏様だの、なんなら神様の目だなんて言うのもありますし、占いだったり、塩と一緒に使われたりもしますし、大陸の道術系でもなんかあったような気がしますが……」
「ということは、粳米うるちまい糯米もちごめかにかかわらず、お米は聖性せいせいを持つ、ということでしょうか」
「……さっき言った通り、格としては糯米もちごめの方が上ですけどね」

もう何かあきらめるしかないな、とひろは思った。
いや、何をあきらめるのかと言われたらなんなのかわかんないけど。

「まあ、聖性せいせいと言うよりは神性しんせいに近いとボクは思うな。神はたたるから、それで両義性りょうぎせいが生まれる」
あるいは、本来は聖性せいせいであったのが、神性しんせいとごっちゃになったとも考えられるね。こういう似通にかよったのは、いつの間にか合体するのが世の常」

補足の連携を見せる師匠と兄弟子をちらりと見て、ひろはとりあえずこれ以上言う事はなかった。
織歌おりかはふんふん、と考えつつうなずきながら、自分の考えの及ぶゴールに辿たどいたらしい。
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