怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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5-1 夢の浮橋 side A

3 矛先が向くのは決まっている

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――伝手つての方に連絡してきた、ついでに待ち合わせ場所の予約も。

そう言って、ついでに駐車場の自販機でミニペットボトルの紅茶を二本買って戻って来た直人なおとは、一本を純也じゅんやに渡してきた。
素直にお礼を言って受け取り、一口飲むと、のぼせて火照ほてった顔が少し落ち着いた気がした。

「うん、まあ清く正しく育ちすぎたタイプなんだな、高橋くん」
「うう、やっぱり潔癖ですよね……いや、その、大学時代に、手酷てひどい失恋を、しまして、それ以来、妙齢や同年代の女性は……その、恐怖の方が、勝りまして」
「あー、トラウマ持ちかあ……それは、余計大変だなあ。普通はラッキーな夢とか思うところが悪夢ってことだもんなあ」

ぼんやりと覚えていても、筋肉よりも柔い脂肪をその下に包んだ肌の感触も、鈴を転がすような挑発的で煽情的な声も、さらさらとしたその髪も、純也じゅんやはひどく気持ち悪いと思ってしまう。

「ビジネスなら、いいんです。気があるような素振りや、好意を向けられると、駄目なんです。気持ち悪くて」

どうしても、それが嘘にしか見えなくて、嘘をつくのが信じられなくて、グロテスクな生き物にしか見えなくなる。
いいや、恋愛とはよっぽどグロテスクでエゴイスティックなものだと、純也じゅんやは文学から学んで入るけれども、現実の感じ方とフィクションの感じ方は別の話である。

「よっぽどだね、そりゃ。じゃあ、高橋くんからしたらどうやっても悪夢なわけだ」
「何度か、トイレに駆け込んで朝っぱらから胃液を吐く羽目になりました」
「思ったより深刻だった……別で病院も行っときなさいね。それは食道が絶対荒れるから」

そう言いながら、直人なおとはシートベルトを締める。

「まあ先に簡単でも夢の内容教えてもらって良かったわ」
「……何かありました?」

そう言うと直人なおとはそんな深刻じゃないんだけどさ、と前置きして苦笑する。

伝手つてね、まあ俺の幼馴染おさななじみとそのお弟子さん達なんだけど……お弟子さん、三人中二人が女性だし、未成年でね。今のトラウマのがなくても、内容の説明しにくいでしょ。だから男共で来いって言っといたわけよ」
「それは、気をつかって頂いて、ありがとうございます」

いいよ、いいよ、俺への八つ当たり回避だから、と直人なおとはからからと笑う。
それから、あ、と言って、ポケットからスマートフォンを取り出した。

「事前資料として、高橋くんの記事を送りたいんだけど、例の夢より後のは知ってるから、前の記事のページのアドレスもらえる? ついでにメッセージも交換しとくか」
「あ、はい」

わたわたと純也じゅんやもスマートフォンを取り出して、メッセージアプリの連絡先を交換した後、夢よりも前に書いた記事を二、三見繕みつくろって直人なおとに送る。
その内容を少し確認してから、直人なおとはとても慣れた手つきでスマートフォンを操作して、くだん幼馴染おさななじみに記事を送ったらしい。

「じゃ、待ち合わせ場所の居酒屋まで行くね」
「へ?」

待ち合わせ場所が思っていたよりも、それらしくない場所だったので、純也じゅんやは思わず気の抜けた声を出した。
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