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半竜の少女
半竜の少女(1)
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息が止まる。
冷気で冷たくなった岩の表面が背中に食い込み、皮膚を剥がし、赤い肉を露出させる。
少女の身体が岩の表面を滑るように落ち、そのまま雪と砂利だらけの地面に腹ばいに崩れ落ちる。
剥き出しの胸と腹に砂利が食い込む。
黒髪が散らばり、身体中の裂傷から血が溢れ、雪を赤く染め、砂利の中に泥水のように染み込んでいく。
そんな痛々しい少女に向けられたのは殴りつけるような嘲笑の波。
その笑い声に少女は、血の気のない唇を噛み締め、身体を小刻みに震わせる。
それを見てさらに嘲笑が膨れ上がる。
彼女を嘲笑う者たち。
巨大な体躯、黒く光沢の放つ鋼の如き鱗、夜の帷のような翼、雄牛のように捻じ曲がった2本の角、そして神すらも裸足で逃げ出すのではないかと思わせる凶暴な形相。
竜。
現世に存在するあらゆる生物の中でも最強とされる存在。
その中でも彼らは暗黒竜と呼ばれる邪神の眷属とも呼ばれる凶暴と凶悪の象徴ともされる竜。
彼らは、凶悪な貌に侮蔑と愉快の入り混じった表情を浮かべて少女を見下している。
少女は、姿こそ人の形をしているものの人間とは明らかに違っていた。
地面に散らばるように広がった長い黒髪に隠れるように覗く流木のような小さな2本の角、元は美しい顔立ちであったのだはずなの白い肌に浮き出るように腫れ上がった瘤と痣に染まっており、腫れぼったくなった両目の下には暗黒竜と同じ形の、しかし淡雪のように白い鱗が左右に3つずつ並んでいた。一糸纏わぬ痣だらけ、傷だらけ、血だらけの身体の何箇所かにも小さな鱗が幾つか浮かんでいる。
半竜。
竜と人間との間に生まれた存在。
少女は、この雪と岩に覆われた山脈を治めていた白竜の王の娘。
そして今はこの山脈を略奪し、支配する暗黒竜達の玩具であり、奴隷であった。
百を超える暗黒竜達は、純白の雪で覆われた美しい山を墨で汚すように強靭な爪で地面を掻き、大地を踏み締め、身の毛のよだつ下卑た笑い声を上げて地面に倒れ伏す少女を見る。
怖い、逃げ出したい。
恐怖が少女の心を襲う。
しかし、四肢の腱を竜達に噛みちぎられて立ち上がることは愚か這うことすら出来ない。
暗黒竜の一頭が少女に近づいてくる。
少女は、音と振動でそれに気づき、指一本動かない手足をバタつかせ、身体を震わせる。
「礼は?」
暗黒竜の大きな足が少女の小さな身体を踏みつける。
少女は、苦鳴を上げ、血痰と胃液を吐く。
「鞠の代わりにお前で遊んでやった礼はどうした?」
竜は、何度も何度も少女を踏みつける。
その度に少女は、苦鳴を上げて泣き叫ぶ。
暗黒竜達は、暇さえあれば動くことの出来ない少女を踏みつけ、顎で咥え、放り投げ、蹴り上げ、丸太のように太い尾で払って鞠の代わりにして遊んでいた。
そしてそれが終わるといつもこういうのだ。
礼を言え、と。
そしてその度に少女は、激痛と恐怖の中でこう答える。
「私の・・・」
少女は、震える声を絞り出す。
「私の弱く、つまらない身体で・・・遊んでいただき・・ありがとうござ・・います」
少女は、涙し、嗚咽しながら言う。
しかし、暗黒竜は、不満足げに黄色く濁った縦目を細めて少女の身体を踏みつける。
「礼を言うのが遅い!」
暗黒竜は、何度も何度も踏みつける。
少女の身体を痛めつけるくらいの、恐怖を植え付け、壊れないくらいの力で。
「申し訳・・・申し訳ありません・・・」
少女は、懇願するように謝るも暗黒竜は、踏みつけるのを止めない。
痛みと恐怖に苦しむ少女の目に平坦な表情でこちらを見る白い竜達の姿が見える。
彼らは、かつて少女の父である白竜の王に仕えていた竜達だ。彼らは王の娘である少女をとても可愛いがり、共に遊び、共に育ってきた者たち。
しかし、彼らの目には少女に対する憐憫も同情も、助けようとする気力すら感じられない。
平静に、何事もないかのように痛ぶられる少女を見ている。
彼らの目にはもはや少女が同じ群れの仲間としては映ってはいない。
とある竜の習性の為に。
「何をしているお前たち?」
穏やかな声が辺りを響き渡る。
暗黒竜の足が止まる。
他の暗黒竜たちは、嘲笑うのを止めて声の方を向く。
白竜達も一斉に向く。
少女も痛みを弱めるように息を吐きながら血に汚れた顔を上げる。
その声は、少女がこの世で最も愛し、最も慕い、最も尊敬していた父・・白竜の王の声。
その声を聞く度に少女は絶望する。
そこに現れたのは少女を見下す暗黒竜よりも大きく、闇よりも深い鱗に身を包み、震え上がるような形相を浮かべた暗黒竜であった。
巨大な暗黒竜が現れた瞬間、他の暗黒竜達は、首を下げて畏まり、白竜達も首が地面で削られるのではないかと思われるほどに下げる。
暗黒竜の王。
突然、白竜の治める山脈に群れを引き連れて現れ、惨殺の限りを尽くし、父である白竜を殺した憎むべきもの。
そして・・・そして・・・。
「どうした娘よ」
暗黒竜は、黄色く濁った縦目を細めて汚いものを見るように少女を見下す。
「何故、そんな悲しい目で父を見る?」
暗黒竜が放つ声。
それは聞き間違えるはずのない父の声だった。
少女は、唇を噛み締め、暗黒竜の王を睨む。
「父の声で・・父の声で話さないで・・・」
少女は、涙ながらに懇願する。
暗黒竜達の凶暴な顎から薄ら笑う声が漏れる。
暗黒竜の長は、黄色く濁った縦目を細めて少女に近寄ると少女の身体よりも大きな指を近づけ、爪先で少女の涙を拭う。
「悲しいことを言うな娘よ」
暗黒竜は、父の声で切なく言う。悲しげに目を細め・・大きな顎を醜く歪ませる。
「萎えちまうじゃねえか!」
声が変わる。
父の優しく、慈悲に満ちた声から悪意ある下卑た声に。
暗黒竜の王の爪先が少女の身体を弾く。
人間から指先でゴミを払うような行為。
しかし、それだけで少女の身体は吹き飛び、雪と砂利だらけの地面の上を飛び跳ね、転げ回り、岩に身体を叩きつける。
腱を切られて手足を動かせない少女の身体は防ぐことも身を捩ることも出来ずにぶつかり、苦鳴と血反吐を吐いてそのまま地面に落ちる。
「我は、お前の親父と変わらねえってのによ」
暗黒竜の王は腹の鱗を震わせながら笑う。
それに釣られるように他の暗黒竜達も笑う。
暗黒竜は、少女に近寄ると獰猛な爪を器用に使って少女の身体を摘み上げる。
羽虫でも捕まえるように。
「俺は、お前の親父の心臓を食ったんだからな」
濁った縦目を大きく広げて少女を睨む。
少女は、痛みで力の入らない身体で暗黒竜の目を見返す。
少女を睨みつける暗黒竜の目には父の面影など一つもなかった。
竜は、鱗の色の数だけ種類と種族が存在する。
空をかけるもの、火山の中に潜むもの、海底の中に身を置くもの。
しかし、どんな竜にもある共通の特性と習性があった。
闘い、殺した竜の心臓を食べる。
それは勝者にのみ与えられた特権であり、強大な力を持つ竜がさらなる力を得る為の唯一の方法。
殺した竜の心臓を食すことでその竜はその竜が持っていた力、経験、記憶、そして群れを手に入れることが出来る。
つまりその竜の持っていた力のみならず、得てきたもの、さらに種族に関係なく群れを支配することが出来る。
その為に、白竜達は暗黒竜に逆らわない。
それは意思とは関係ない、竜が生まれながらに持つ特性であり習性であり、本能であるから。
しかし・・・。
「半竜ってのは厄介だな。おいっ」
暗黒竜の長は少女の身体を自分の顔に近づける。
黒く硬い鱗が少女の顔に触れそうになる。
「腱を切られたぐらいで再生しない、火も吹けない、くだらねえ人間の血なんて入ってるから本能がまるで働かねえ。我を父と慕わねえ」
暗黒竜は、ざらついた舌を出し、少女の頬を舐める。
それだけで少女の柔肌が削れ肉が見え、血が流れる。
「お前も残念な奴だな。本能が働いてれば俺に逆らうこともなく、こんな目に合わないですんだのにな」
暗黒竜は、鱗を震わせて笑う。
「人間なんかを孕ませた馬鹿な親父を恨むんだな・・」
馬鹿な父親・・・。
少女は、悔しくなって唇を噛み、暗黒竜の王を睨みつける。
しかし、暗黒竜の王は、そんな少女を見て馬鹿にするように鼻で笑う。熱い息が漏れ、少女の皮膚を焼く。
「なんだ?悔しいのか?」
暗黒竜の王は、愉快なものでも見るように自分の眼に少女を近づける。
「悔しけりゃ炎でも吐いて我の目を焼いてみな」
暗黒竜の王の言葉に少女は、悔しげに表情を歪ませる。
暗黒竜の王は、つまらなそうに鼻息を漏らすと、少女の身体を宙に投げ捨てる。
少女の身体は力なく宙を舞い、そのまま落下する。
しかし、少女の身体は固い地面にぶつかることはなかった。
その変わりに少女の身体を襲ったのは粘りつく感触と腐敗した臭い。
少女は、痛みに狂いそうになる手足の動かない身体を持ち上げ、喉を詰まらせ、涙を流す。
「お父様・・・」
少女が落下した場所、それは戦いに負け、そのまま放置されて腐った父である白竜の王の身体であった。
白竜の心臓があった部分は無惨に食い散らかされ、骨と腐った肉の欠片が散らばっていた。
少女は、傷だらけの身体で父に縋り付くように身体を擦り寄せる。
失われた父の温もりと声と魂を求めるように。
「おいっ」
暗黒竜の王が近寄り、父の遺体に縋る少女を見下す。
「それを食え」
少女の目に絶望が走る。
「腹減ってんだろ?それを食え」
少女は、信じられないものを見るように暗黒竜を見上げる。
しかし、暗黒竜は、濁った縦目を冷酷に向け、凶暴な顎を歪ませて笑う。
「親父の身体でも食えば少しはでかくなるだろ?そんな貧相な身体じゃ我の子を孕ませられねえ」
父たる白竜の王を殺し、心臓を喰らってから暗黒竜は絶えず少女に自分の子を孕むように言い続けた。
それは竜としての本能と言うよりも雄としての欲を持って言っていた。
竜同士であればそれが肉親の心臓を食べた憎い仇であっても逆らうことは出来なかった。
しかし、少女は半竜。
竜としての本能を持たない少女はそれを拒んだ。
そして迫害、虐待された。
本能以上の恐怖で縛るために。
そして暗黒竜の長の目論見はもう成功しようしていた。
少女の心は暗黒竜への恐怖と支配に縛られていた。
逆らう気力も抗う気力も残ってなかった。
しかし・・・。
「出来ません」
少女は、恐怖に震える心で言葉を吐き出す。
「父を食べるなんて・・出来ません」
暗黒竜達に怒りが走る。
暗黒竜の長の縦目の瞳孔が獰猛に動く。
「食え!」
暗黒竜の長の足が白竜の王の遺体ごと少女を踏みつける。
少女の身体が父の身体の中にめり込み、骨が砕ける音が身体の中で響き渡る。
「あああっ!」
少女は、泣き叫ぶ。
しかし、暗黒竜は、足を退かさない。
少女が死なない程度に力を入れて苦しめる。
「食え!王に、父に逆らうな!」
少女は、暗黒竜を見る。
自分の心と身体を恐怖で縛るつける畏怖の存在を。
痛い。
怖い。
もう嫌だ。
これから・・この苦しみから逃れるためには・・。
少女は、痛みに火花の散る目で腐りかけた父の顔を見る。
「お父様・・・」
しかし、少女が呼びかけても父の身体は反応しない。
父の力も、記憶も、魂すらも自分の支配者たる暗黒竜に食われてしまったんだから。
「私を食べなさい。愛しい娘よ・・」
暗黒竜の王が父の声を真似て言う。
「お前はご飯を食べるのが大好きではないか。よく私の狩ってきた鹿や猪を食べたなを火を通さないと腹を壊すと言うのに私達の真似をして生で食べようとして・・本当に食いしん坊だ」
いや、真似ではない。
父は、もう暗黒竜の一部になってしまった。
これは父の声。
父の願いなのだ。
「分かりました・・お父様」
少女は、弱々しく口を開く。
ああっこれで父の願いを叶えられる。
楽になれる。
少女は、腐りかけた父親の肉を噛もうとする。
暗黒竜の長は、満足げに笑う。
その時だ。
目を焼くような強烈な光が天を裂く。
空気が震え、暗黒竜達の鱗を叩きつける。
それは天から降り注いだ柱のような雷の群れであった。
暗黒竜の濁った縦目が雷の落ちた方を見る。
「神鳴・・・だと⁉︎」
神鳴?
少女は、父の肉を喰もうとしていた口を閉じ、雷の落ちた方を向く。
「王!」
暗黒竜の一頭が大きく翼を羽ばたかせながら咆哮と一緒に叫びながらこちらに飛んでくる。
恐らく見張りとして配置されていた暗黒竜だ。
「王!奴らが!勇者どもがやって・・・!」
しかし、その竜は、次の言葉を告げることが出来なかった。
言葉を告げる前にその首が身体から落ちてしまったから。
暗黒竜達に衝撃が走る。
暗黒竜の首とその胴体が地面に落ちる。
竜達の縦目が一斉に首を失った竜を追う。
地面に落ちて動かなくなった暗黒竜の胴体と首。
その首の上に人間の男が乗っていた。
暗黒竜の鱗のように光沢のある黒い着流しの着物、重ね合わせた部分から覗く鍛え上げられた身体、顔を半分割るように鼻の上を走る大きな傷の上で猛禽類のような目が凶暴に輝き、血の抜けたような白い髪が風に揺れる。
男は、右手に持った片刃の剣・・・刀を肩の上に乗せ、威嚇するように暗黒竜達を睨みつける。
その瞬間、暗黒竜達に命を鷲掴みにされたような恐怖が伝染する。
「アメノ」
麓へと続く斜面の方から声が聞こえる。
鮮烈に赤く輝く全身鎧を纏った金髪の男が現れる。
その手には見事な装飾をされた刃太い大槍が握られ、蛇が絡みつくように雷を帯びている。
「紅玉の・・・勇者?」
暗黒竜の王に戦慄が走る。
勇者・・・勇者?
少女は、痛みと恐怖で麻痺した頭のまま顔を上げる。
「なるほど。依頼通りとんでもない群れですね」
紅玉の勇者と呼ばれた男の後ろから紫の長衣を纏い、白の混じった金髪の眼鏡をかけた痩せぎすの男が現れ、100を超える竜の群れに辟易する。
「苦戦しそうですね」
そんなことを口にしながらも眼鏡の男の口元には余裕を持った笑みが浮かび、左手に持った樫の木で出来た杖を構える。
紅玉の勇者は、戦々恐々と自分たちを警戒する暗黒竜達を舐めるように見据え、最後に猛禽類のような目をした白髪の男に目を向ける。
白髪の男は、紅玉の勇者を振り返りもせず、凶暴な眼差しを暗黒竜に向ける。
「アメノ」
紅玉の勇者は、大槍の切先を暗黒竜の王に向ける。
「竜殺しだ」
その瞬間、アメノと呼ばれた白髪の男が暗黒竜の首を蹴り上げて飛び上がり、片刃の剣を振るい上げる。
勇者一行と暗黒竜の群れの戦いが始まった。
冷気で冷たくなった岩の表面が背中に食い込み、皮膚を剥がし、赤い肉を露出させる。
少女の身体が岩の表面を滑るように落ち、そのまま雪と砂利だらけの地面に腹ばいに崩れ落ちる。
剥き出しの胸と腹に砂利が食い込む。
黒髪が散らばり、身体中の裂傷から血が溢れ、雪を赤く染め、砂利の中に泥水のように染み込んでいく。
そんな痛々しい少女に向けられたのは殴りつけるような嘲笑の波。
その笑い声に少女は、血の気のない唇を噛み締め、身体を小刻みに震わせる。
それを見てさらに嘲笑が膨れ上がる。
彼女を嘲笑う者たち。
巨大な体躯、黒く光沢の放つ鋼の如き鱗、夜の帷のような翼、雄牛のように捻じ曲がった2本の角、そして神すらも裸足で逃げ出すのではないかと思わせる凶暴な形相。
竜。
現世に存在するあらゆる生物の中でも最強とされる存在。
その中でも彼らは暗黒竜と呼ばれる邪神の眷属とも呼ばれる凶暴と凶悪の象徴ともされる竜。
彼らは、凶悪な貌に侮蔑と愉快の入り混じった表情を浮かべて少女を見下している。
少女は、姿こそ人の形をしているものの人間とは明らかに違っていた。
地面に散らばるように広がった長い黒髪に隠れるように覗く流木のような小さな2本の角、元は美しい顔立ちであったのだはずなの白い肌に浮き出るように腫れ上がった瘤と痣に染まっており、腫れぼったくなった両目の下には暗黒竜と同じ形の、しかし淡雪のように白い鱗が左右に3つずつ並んでいた。一糸纏わぬ痣だらけ、傷だらけ、血だらけの身体の何箇所かにも小さな鱗が幾つか浮かんでいる。
半竜。
竜と人間との間に生まれた存在。
少女は、この雪と岩に覆われた山脈を治めていた白竜の王の娘。
そして今はこの山脈を略奪し、支配する暗黒竜達の玩具であり、奴隷であった。
百を超える暗黒竜達は、純白の雪で覆われた美しい山を墨で汚すように強靭な爪で地面を掻き、大地を踏み締め、身の毛のよだつ下卑た笑い声を上げて地面に倒れ伏す少女を見る。
怖い、逃げ出したい。
恐怖が少女の心を襲う。
しかし、四肢の腱を竜達に噛みちぎられて立ち上がることは愚か這うことすら出来ない。
暗黒竜の一頭が少女に近づいてくる。
少女は、音と振動でそれに気づき、指一本動かない手足をバタつかせ、身体を震わせる。
「礼は?」
暗黒竜の大きな足が少女の小さな身体を踏みつける。
少女は、苦鳴を上げ、血痰と胃液を吐く。
「鞠の代わりにお前で遊んでやった礼はどうした?」
竜は、何度も何度も少女を踏みつける。
その度に少女は、苦鳴を上げて泣き叫ぶ。
暗黒竜達は、暇さえあれば動くことの出来ない少女を踏みつけ、顎で咥え、放り投げ、蹴り上げ、丸太のように太い尾で払って鞠の代わりにして遊んでいた。
そしてそれが終わるといつもこういうのだ。
礼を言え、と。
そしてその度に少女は、激痛と恐怖の中でこう答える。
「私の・・・」
少女は、震える声を絞り出す。
「私の弱く、つまらない身体で・・・遊んでいただき・・ありがとうござ・・います」
少女は、涙し、嗚咽しながら言う。
しかし、暗黒竜は、不満足げに黄色く濁った縦目を細めて少女の身体を踏みつける。
「礼を言うのが遅い!」
暗黒竜は、何度も何度も踏みつける。
少女の身体を痛めつけるくらいの、恐怖を植え付け、壊れないくらいの力で。
「申し訳・・・申し訳ありません・・・」
少女は、懇願するように謝るも暗黒竜は、踏みつけるのを止めない。
痛みと恐怖に苦しむ少女の目に平坦な表情でこちらを見る白い竜達の姿が見える。
彼らは、かつて少女の父である白竜の王に仕えていた竜達だ。彼らは王の娘である少女をとても可愛いがり、共に遊び、共に育ってきた者たち。
しかし、彼らの目には少女に対する憐憫も同情も、助けようとする気力すら感じられない。
平静に、何事もないかのように痛ぶられる少女を見ている。
彼らの目にはもはや少女が同じ群れの仲間としては映ってはいない。
とある竜の習性の為に。
「何をしているお前たち?」
穏やかな声が辺りを響き渡る。
暗黒竜の足が止まる。
他の暗黒竜たちは、嘲笑うのを止めて声の方を向く。
白竜達も一斉に向く。
少女も痛みを弱めるように息を吐きながら血に汚れた顔を上げる。
その声は、少女がこの世で最も愛し、最も慕い、最も尊敬していた父・・白竜の王の声。
その声を聞く度に少女は絶望する。
そこに現れたのは少女を見下す暗黒竜よりも大きく、闇よりも深い鱗に身を包み、震え上がるような形相を浮かべた暗黒竜であった。
巨大な暗黒竜が現れた瞬間、他の暗黒竜達は、首を下げて畏まり、白竜達も首が地面で削られるのではないかと思われるほどに下げる。
暗黒竜の王。
突然、白竜の治める山脈に群れを引き連れて現れ、惨殺の限りを尽くし、父である白竜を殺した憎むべきもの。
そして・・・そして・・・。
「どうした娘よ」
暗黒竜は、黄色く濁った縦目を細めて汚いものを見るように少女を見下す。
「何故、そんな悲しい目で父を見る?」
暗黒竜が放つ声。
それは聞き間違えるはずのない父の声だった。
少女は、唇を噛み締め、暗黒竜の王を睨む。
「父の声で・・父の声で話さないで・・・」
少女は、涙ながらに懇願する。
暗黒竜達の凶暴な顎から薄ら笑う声が漏れる。
暗黒竜の長は、黄色く濁った縦目を細めて少女に近寄ると少女の身体よりも大きな指を近づけ、爪先で少女の涙を拭う。
「悲しいことを言うな娘よ」
暗黒竜は、父の声で切なく言う。悲しげに目を細め・・大きな顎を醜く歪ませる。
「萎えちまうじゃねえか!」
声が変わる。
父の優しく、慈悲に満ちた声から悪意ある下卑た声に。
暗黒竜の王の爪先が少女の身体を弾く。
人間から指先でゴミを払うような行為。
しかし、それだけで少女の身体は吹き飛び、雪と砂利だらけの地面の上を飛び跳ね、転げ回り、岩に身体を叩きつける。
腱を切られて手足を動かせない少女の身体は防ぐことも身を捩ることも出来ずにぶつかり、苦鳴と血反吐を吐いてそのまま地面に落ちる。
「我は、お前の親父と変わらねえってのによ」
暗黒竜の王は腹の鱗を震わせながら笑う。
それに釣られるように他の暗黒竜達も笑う。
暗黒竜は、少女に近寄ると獰猛な爪を器用に使って少女の身体を摘み上げる。
羽虫でも捕まえるように。
「俺は、お前の親父の心臓を食ったんだからな」
濁った縦目を大きく広げて少女を睨む。
少女は、痛みで力の入らない身体で暗黒竜の目を見返す。
少女を睨みつける暗黒竜の目には父の面影など一つもなかった。
竜は、鱗の色の数だけ種類と種族が存在する。
空をかけるもの、火山の中に潜むもの、海底の中に身を置くもの。
しかし、どんな竜にもある共通の特性と習性があった。
闘い、殺した竜の心臓を食べる。
それは勝者にのみ与えられた特権であり、強大な力を持つ竜がさらなる力を得る為の唯一の方法。
殺した竜の心臓を食すことでその竜はその竜が持っていた力、経験、記憶、そして群れを手に入れることが出来る。
つまりその竜の持っていた力のみならず、得てきたもの、さらに種族に関係なく群れを支配することが出来る。
その為に、白竜達は暗黒竜に逆らわない。
それは意思とは関係ない、竜が生まれながらに持つ特性であり習性であり、本能であるから。
しかし・・・。
「半竜ってのは厄介だな。おいっ」
暗黒竜の長は少女の身体を自分の顔に近づける。
黒く硬い鱗が少女の顔に触れそうになる。
「腱を切られたぐらいで再生しない、火も吹けない、くだらねえ人間の血なんて入ってるから本能がまるで働かねえ。我を父と慕わねえ」
暗黒竜は、ざらついた舌を出し、少女の頬を舐める。
それだけで少女の柔肌が削れ肉が見え、血が流れる。
「お前も残念な奴だな。本能が働いてれば俺に逆らうこともなく、こんな目に合わないですんだのにな」
暗黒竜は、鱗を震わせて笑う。
「人間なんかを孕ませた馬鹿な親父を恨むんだな・・」
馬鹿な父親・・・。
少女は、悔しくなって唇を噛み、暗黒竜の王を睨みつける。
しかし、暗黒竜の王は、そんな少女を見て馬鹿にするように鼻で笑う。熱い息が漏れ、少女の皮膚を焼く。
「なんだ?悔しいのか?」
暗黒竜の王は、愉快なものでも見るように自分の眼に少女を近づける。
「悔しけりゃ炎でも吐いて我の目を焼いてみな」
暗黒竜の王の言葉に少女は、悔しげに表情を歪ませる。
暗黒竜の王は、つまらなそうに鼻息を漏らすと、少女の身体を宙に投げ捨てる。
少女の身体は力なく宙を舞い、そのまま落下する。
しかし、少女の身体は固い地面にぶつかることはなかった。
その変わりに少女の身体を襲ったのは粘りつく感触と腐敗した臭い。
少女は、痛みに狂いそうになる手足の動かない身体を持ち上げ、喉を詰まらせ、涙を流す。
「お父様・・・」
少女が落下した場所、それは戦いに負け、そのまま放置されて腐った父である白竜の王の身体であった。
白竜の心臓があった部分は無惨に食い散らかされ、骨と腐った肉の欠片が散らばっていた。
少女は、傷だらけの身体で父に縋り付くように身体を擦り寄せる。
失われた父の温もりと声と魂を求めるように。
「おいっ」
暗黒竜の王が近寄り、父の遺体に縋る少女を見下す。
「それを食え」
少女の目に絶望が走る。
「腹減ってんだろ?それを食え」
少女は、信じられないものを見るように暗黒竜を見上げる。
しかし、暗黒竜は、濁った縦目を冷酷に向け、凶暴な顎を歪ませて笑う。
「親父の身体でも食えば少しはでかくなるだろ?そんな貧相な身体じゃ我の子を孕ませられねえ」
父たる白竜の王を殺し、心臓を喰らってから暗黒竜は絶えず少女に自分の子を孕むように言い続けた。
それは竜としての本能と言うよりも雄としての欲を持って言っていた。
竜同士であればそれが肉親の心臓を食べた憎い仇であっても逆らうことは出来なかった。
しかし、少女は半竜。
竜としての本能を持たない少女はそれを拒んだ。
そして迫害、虐待された。
本能以上の恐怖で縛るために。
そして暗黒竜の長の目論見はもう成功しようしていた。
少女の心は暗黒竜への恐怖と支配に縛られていた。
逆らう気力も抗う気力も残ってなかった。
しかし・・・。
「出来ません」
少女は、恐怖に震える心で言葉を吐き出す。
「父を食べるなんて・・出来ません」
暗黒竜達に怒りが走る。
暗黒竜の長の縦目の瞳孔が獰猛に動く。
「食え!」
暗黒竜の長の足が白竜の王の遺体ごと少女を踏みつける。
少女の身体が父の身体の中にめり込み、骨が砕ける音が身体の中で響き渡る。
「あああっ!」
少女は、泣き叫ぶ。
しかし、暗黒竜は、足を退かさない。
少女が死なない程度に力を入れて苦しめる。
「食え!王に、父に逆らうな!」
少女は、暗黒竜を見る。
自分の心と身体を恐怖で縛るつける畏怖の存在を。
痛い。
怖い。
もう嫌だ。
これから・・この苦しみから逃れるためには・・。
少女は、痛みに火花の散る目で腐りかけた父の顔を見る。
「お父様・・・」
しかし、少女が呼びかけても父の身体は反応しない。
父の力も、記憶も、魂すらも自分の支配者たる暗黒竜に食われてしまったんだから。
「私を食べなさい。愛しい娘よ・・」
暗黒竜の王が父の声を真似て言う。
「お前はご飯を食べるのが大好きではないか。よく私の狩ってきた鹿や猪を食べたなを火を通さないと腹を壊すと言うのに私達の真似をして生で食べようとして・・本当に食いしん坊だ」
いや、真似ではない。
父は、もう暗黒竜の一部になってしまった。
これは父の声。
父の願いなのだ。
「分かりました・・お父様」
少女は、弱々しく口を開く。
ああっこれで父の願いを叶えられる。
楽になれる。
少女は、腐りかけた父親の肉を噛もうとする。
暗黒竜の長は、満足げに笑う。
その時だ。
目を焼くような強烈な光が天を裂く。
空気が震え、暗黒竜達の鱗を叩きつける。
それは天から降り注いだ柱のような雷の群れであった。
暗黒竜の濁った縦目が雷の落ちた方を見る。
「神鳴・・・だと⁉︎」
神鳴?
少女は、父の肉を喰もうとしていた口を閉じ、雷の落ちた方を向く。
「王!」
暗黒竜の一頭が大きく翼を羽ばたかせながら咆哮と一緒に叫びながらこちらに飛んでくる。
恐らく見張りとして配置されていた暗黒竜だ。
「王!奴らが!勇者どもがやって・・・!」
しかし、その竜は、次の言葉を告げることが出来なかった。
言葉を告げる前にその首が身体から落ちてしまったから。
暗黒竜達に衝撃が走る。
暗黒竜の首とその胴体が地面に落ちる。
竜達の縦目が一斉に首を失った竜を追う。
地面に落ちて動かなくなった暗黒竜の胴体と首。
その首の上に人間の男が乗っていた。
暗黒竜の鱗のように光沢のある黒い着流しの着物、重ね合わせた部分から覗く鍛え上げられた身体、顔を半分割るように鼻の上を走る大きな傷の上で猛禽類のような目が凶暴に輝き、血の抜けたような白い髪が風に揺れる。
男は、右手に持った片刃の剣・・・刀を肩の上に乗せ、威嚇するように暗黒竜達を睨みつける。
その瞬間、暗黒竜達に命を鷲掴みにされたような恐怖が伝染する。
「アメノ」
麓へと続く斜面の方から声が聞こえる。
鮮烈に赤く輝く全身鎧を纏った金髪の男が現れる。
その手には見事な装飾をされた刃太い大槍が握られ、蛇が絡みつくように雷を帯びている。
「紅玉の・・・勇者?」
暗黒竜の王に戦慄が走る。
勇者・・・勇者?
少女は、痛みと恐怖で麻痺した頭のまま顔を上げる。
「なるほど。依頼通りとんでもない群れですね」
紅玉の勇者と呼ばれた男の後ろから紫の長衣を纏い、白の混じった金髪の眼鏡をかけた痩せぎすの男が現れ、100を超える竜の群れに辟易する。
「苦戦しそうですね」
そんなことを口にしながらも眼鏡の男の口元には余裕を持った笑みが浮かび、左手に持った樫の木で出来た杖を構える。
紅玉の勇者は、戦々恐々と自分たちを警戒する暗黒竜達を舐めるように見据え、最後に猛禽類のような目をした白髪の男に目を向ける。
白髪の男は、紅玉の勇者を振り返りもせず、凶暴な眼差しを暗黒竜に向ける。
「アメノ」
紅玉の勇者は、大槍の切先を暗黒竜の王に向ける。
「竜殺しだ」
その瞬間、アメノと呼ばれた白髪の男が暗黒竜の首を蹴り上げて飛び上がり、片刃の剣を振るい上げる。
勇者一行と暗黒竜の群れの戦いが始まった。
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