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31.順調な旅の途中で遭遇
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ナサニエルがぐずりだし、慌てて抱き上げる。泣き止まないので困っていると、お母様がさっと奪った。驚くことにすぐに泣き止んでしまう。
「お母様、いまの……どうやったんです?」
「コツがあるのよ。あなたも自然と体が覚えるわ」
そうなのでしょうか。まるで御伽話の魔法のようだったわ。隣に運び込ませたベッドで寛ぐお母様の姿に、ふと疑問が浮んだ。明日から移動なのに、何も準備をしなくていいのかしら。
「お母様、明日の朝出発でしたよね」
「変更したわよ、当然でしょう。あなたが落ち着いたら明後日、無理ならもう一日延ばすわ」
私の体調次第でした。早く調子を整えなければ、いつまでも大公家に迷惑がかかる。お祖父様やひいお祖父様もお待ちでしょう。
「ひいお祖父様達に心配をおかけしてしまいますね」
「毎日フクロウ便を飛ばしてくるわよ。今は4羽ほど滞在してるわ」
緊急事態にしか飛ばさないはずのフクロウが、ほぼフル回転。そう聞いたら、慌ててしまう。ひいお祖父様にとても心配を掛けている状況は、お母様に笑い飛ばされた。
「安心して。フクロウはわざと休ませて返さないの。そうしたら、フクロウが尽きて、早馬になるでしょう? まったく、子どもみたいな我が侭で軍用のフクロウを使うなんて」
懲らしめるつもりのお母様は、ほほほと笑う。他の方がしたら大問題だが、末の第三皇女であったお母様なら許される。いえ、誰も咎められない気がした。
ゆっくり休む間に、大叔父様とオスカル様が一緒に謝罪に訪れました。連れ回してしまい悪かったと謝るお二人に、楽しかったのでまた今度と約束を取り付ける。公爵家の領地はまだ場所が不明でも、すぐ会えるはず。少なくとも外出の邪魔をする夫はいないのだから。
結局、心配してくれる周囲の言葉に甘え、予定から二日遅れての出発となった。使用人達はゆっくり休めたとか。放牧された馬も毛艶がいい。騎士達も休息を取れたことで、馬車の列は予想より早く次の宿場に到着した。
見送るリリアナが泣きながら手を振るのを、見えなくなるまで振り返した。とても可愛い子で、素直だったわ。過去に両親が虐待したなんて嘘のよう。あんなに可愛い子なら、何をしても愛しいでしょうに。
ナサニエルは久しぶりの馬車が気に入らないのか、大泣きしては疲れて眠る。お母様と交互に抱きながら、旅は続いた。三つ目の宿場町を過ぎたある日、前方から走ってきた一団が合流する。止まった馬車の窓から、ひょいっと人の首が入ってきてびっくりした。
「おお! これが我が玄孫ナサニエルか。そなたらにそっくりじゃ」
大きな声でがははと笑うひいお祖父様の声に、小ナサニエルは大泣きした。その泣き声が立派だとまた褒められ、私はひいお祖父様の頬をぽんと叩く。
「ひいお祖父様、外でこの子を抱いてくださいませ」
「おうおう! そうであった。休憩の間はわしが抱いていよう」
馬車を囲む騎士団も休憩となり、あっという間にテントが用意される。その中でひいお祖父様はナサニエルを膝に乗せ、満足そうに薄い金髪を撫でた。
「良い子だ。さすがは自慢のひ孫バレンティナの息子よ。フクロウ共が戻って来ぬので心配になってな。飛び出してしまった」
護衛は慌てて追いかけたらしく、大した装備ではないと将軍が呆れていた。お母様が故意にフクロウを引き留めた話をして、ひいお祖父様をぴしゃりと叱った。
「あのような使い方をするフクロウではありません。あれは軍事機密を運ぶ訓練をした高価な鳥ですよ」
「だが皇族の安全は、軍事機密並みに重要な任務だぞ」
「ただのお手紙でしょう」
言い訳を潰され、ひいお祖父様は項垂れる。が、膝の上のナサニエルを見て頬が崩れた。
「お祖父様! 聞いてますの?」
お母様が怖い。お父様は何も言わず、聞かないフリで目を逸らしていた。
「お母様、いまの……どうやったんです?」
「コツがあるのよ。あなたも自然と体が覚えるわ」
そうなのでしょうか。まるで御伽話の魔法のようだったわ。隣に運び込ませたベッドで寛ぐお母様の姿に、ふと疑問が浮んだ。明日から移動なのに、何も準備をしなくていいのかしら。
「お母様、明日の朝出発でしたよね」
「変更したわよ、当然でしょう。あなたが落ち着いたら明後日、無理ならもう一日延ばすわ」
私の体調次第でした。早く調子を整えなければ、いつまでも大公家に迷惑がかかる。お祖父様やひいお祖父様もお待ちでしょう。
「ひいお祖父様達に心配をおかけしてしまいますね」
「毎日フクロウ便を飛ばしてくるわよ。今は4羽ほど滞在してるわ」
緊急事態にしか飛ばさないはずのフクロウが、ほぼフル回転。そう聞いたら、慌ててしまう。ひいお祖父様にとても心配を掛けている状況は、お母様に笑い飛ばされた。
「安心して。フクロウはわざと休ませて返さないの。そうしたら、フクロウが尽きて、早馬になるでしょう? まったく、子どもみたいな我が侭で軍用のフクロウを使うなんて」
懲らしめるつもりのお母様は、ほほほと笑う。他の方がしたら大問題だが、末の第三皇女であったお母様なら許される。いえ、誰も咎められない気がした。
ゆっくり休む間に、大叔父様とオスカル様が一緒に謝罪に訪れました。連れ回してしまい悪かったと謝るお二人に、楽しかったのでまた今度と約束を取り付ける。公爵家の領地はまだ場所が不明でも、すぐ会えるはず。少なくとも外出の邪魔をする夫はいないのだから。
結局、心配してくれる周囲の言葉に甘え、予定から二日遅れての出発となった。使用人達はゆっくり休めたとか。放牧された馬も毛艶がいい。騎士達も休息を取れたことで、馬車の列は予想より早く次の宿場に到着した。
見送るリリアナが泣きながら手を振るのを、見えなくなるまで振り返した。とても可愛い子で、素直だったわ。過去に両親が虐待したなんて嘘のよう。あんなに可愛い子なら、何をしても愛しいでしょうに。
ナサニエルは久しぶりの馬車が気に入らないのか、大泣きしては疲れて眠る。お母様と交互に抱きながら、旅は続いた。三つ目の宿場町を過ぎたある日、前方から走ってきた一団が合流する。止まった馬車の窓から、ひょいっと人の首が入ってきてびっくりした。
「おお! これが我が玄孫ナサニエルか。そなたらにそっくりじゃ」
大きな声でがははと笑うひいお祖父様の声に、小ナサニエルは大泣きした。その泣き声が立派だとまた褒められ、私はひいお祖父様の頬をぽんと叩く。
「ひいお祖父様、外でこの子を抱いてくださいませ」
「おうおう! そうであった。休憩の間はわしが抱いていよう」
馬車を囲む騎士団も休憩となり、あっという間にテントが用意される。その中でひいお祖父様はナサニエルを膝に乗せ、満足そうに薄い金髪を撫でた。
「良い子だ。さすがは自慢のひ孫バレンティナの息子よ。フクロウ共が戻って来ぬので心配になってな。飛び出してしまった」
護衛は慌てて追いかけたらしく、大した装備ではないと将軍が呆れていた。お母様が故意にフクロウを引き留めた話をして、ひいお祖父様をぴしゃりと叱った。
「あのような使い方をするフクロウではありません。あれは軍事機密を運ぶ訓練をした高価な鳥ですよ」
「だが皇族の安全は、軍事機密並みに重要な任務だぞ」
「ただのお手紙でしょう」
言い訳を潰され、ひいお祖父様は項垂れる。が、膝の上のナサニエルを見て頬が崩れた。
「お祖父様! 聞いてますの?」
お母様が怖い。お父様は何も言わず、聞かないフリで目を逸らしていた。
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