【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
34 / 122

34.頂いた愛を我が子に注ぐ

しおりを挟む
 皇帝陛下であるお祖父様に会う前に、旅支度を解いて埃を払う。そう聞いたのに、これはどういうことかしら。

 与えられた客室は大きく立派だった。お父様とお母様にも一室ずつで、ひいお祖父様は将軍閣下に引き摺られていく。見送ってから、ナサニエルを連れて入浴する。先に洗い終えた我が子を、年配の侍女に託した。私の髪を丁寧に洗い、香油を体に塗り込まれる。侍女3人がかりで整えた私が部屋に戻ると。

「お祖母様!?」

「おほほ、久しぶりですわね。バレンティナ」

 慌てて挨拶しようとするも、先に身支度を終えるよう言われてしまった。その通りなので、遠慮なく着替える。髪を乾かし梳かす間に、お祖母様はナサニエルをその腕に抱いた。続き部屋のベッドではなく、移動式のベビーベッドに眠っていた我が子は、驚いたのか泣き出す。

「泣かせてしまったわ。バーサ、どうしましょう」

 先ほどナサニエルを預かってくれた年配侍女が、バーサのようで。慣れた手つきであやし、お祖母様の腕に戻した。

「バーサは、あなたの母フェリシアの乳母だったのよ。シアの時も私が抱くと泣いてしまうのに、バーサが抱けば泣かないの」

 お祖母様はまだ50歳代後半。少し白が入った金茶の髪をゆったり結い上げ、皺が少ない艶のある肌の貴婦人だった。濃紺のドレスが肌の白さを引き立て、品格の違いを感じる。他国の王女様だったお祖母様は、16歳の若さで嫁ぎ、次々と伯父様や伯母様を産んだ方だ。

「泣き止ますコツって、なんでしょう」

「私は5人も産んだけど、分からないわ。でもフェリシアは、あなたをあやすのが上手だったわよ」

 やはりお母様は泣き止ませるのが得意な様子。遺伝ではないのね、そういう技術って。話を聞く間に、私の支度が終わった。このあと、皇帝陛下であるお祖父様にお目通りして、爵位や領地を正式に伝えられる。晩餐までお付き合いすると聞いたので、正装のドレスに身を包んだ。

 手伝ってくれた侍女達は、すべて宮殿に勤める方達。連れてきた使用人は、城下町で待機となった。胸部を圧迫するコルセットはなし、エンパイアドレスを選んだのはお祖母様の指示だという。お陰で体が締め付けられず、とても楽だった。

「お祖母様、ありがとうございます」

 ドレスのお礼を口にすれば、ひ孫を抱いたお祖母様は頬を緩めた。

「他国ではどうか知らないけど、楽になさい。服装も生き方も、誰もあなたに強制できないわ」

 自由に生きていい。そう告げられたことが嬉しくて、はいと返事をした。ナサニエルは眠っていないようで、大きな目をぱっちりと見開いてお祖母様を見つめる。

「この瞳の色はバレンティナに似たのね。髪色は……ああ、アウグスト殿にそっくり」

 父も鮮やかな濁りのない金髪だ。お母様や私はお祖母様に似て、少し色が赤みかかっている。指摘されて、そうかと納得した。ずっと元夫ベルナルドの髪色だと思い込んでいたけど、お父様と同じだわ。

 お祖父様も金髪で、皇族の特徴の琥珀の瞳を持つ息子。すっと気が楽になった。そうよ、ベルナルドと私の子と考えるから、髪色が父親似であると思ったの。でも金髪はカルレオン皇族の証だから、私の子だわ。お祖父様やお父様と同じ色……。

「お祖父様も綺麗な金髪でしたわ」

「ふふっ、その調子よ。皇族であるこの子は、帝国の公爵家を担う大切な跡取りですものね」

 胸に閊えていた苦い痛みが薄れていく。お祖母様はこのために、私の部屋にいらしたのね。ご自身の娘であるお母様より優先して、孫の私に手を差し伸べた。

「頂いた愛を、すべてこの子に注いで大事に育てます」

 心からそう言い切って笑った。
しおりを挟む
感想 360

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

処理中です...