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97.可愛い義娘のお願いだもの
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大叔父様は、大仰な挨拶は不要と豪快に笑った。手合わせに行こうと着替えたところで、お母様に見つかって叱られる。
「手合わせは逃げません、明日になさい」
今夜は、リリアナの入学決定のお祝いがある。私とオスカル様の婚約に関しては、すでに宮殿へ大叔父様が駆けつけて報告していた。でもリリアナは別よ。分かっていたことでも、重要な出来事だった。未来の女大公閣下の入学だもの。
大叔父様は大急ぎで、再び着替えに向かった。自室で人形を着替えさせるリリアナと、鉢合わせしなくて良かったわ。お母様がエルを預かってくれるので、リリアナのお部屋に向かった。
先に着替えた私がノックすると、興奮した様子のリリアナが扉を開く。出遅れた侍女が、後ろで苦笑いした。
「お義母様! あのね、同じ髪型にしたいの」
まだ髪を編んでいないマリアを持ち上げ、リリアナはそう笑った。すでに侍女達の手で可愛いワンピースドレスを着たリリアナは、髪を結っていない。少し考えて、三つ編みを作ってから丸めてリボンで留める形を提案した。
「どうかしら、可愛いと思うわ」
絹の銀糸を編んで、マリアを先に仕上げる。よく似た色のリボンを見せて尋ねれば、目を輝かせた。
「同じに出来るの?」
「ええ、頑張るわ。だからこの椅子に座ってちょうだい」
ちょこんと腰掛けたドレッサーの椅子で、マリアを抱くリリアナの銀髪を同じように編み上げた。中央の髪は丸めて、両側の三つ編みを巻きつけて留める。ピンで固定してからリボンを巻いて仕上げた。
「お義母様はお上手なんですね」
「本当です、お見事でした」
リリアナの褒め言葉に、侍女も追従する。少し気恥ずかしくなって種明かしをした。
「この髪型、私が学生時代に毎日編んでいたの。文字を書くときも邪魔にならないし、動いても解けにくいから便利よ」
「ご自分で?」
「ええ、侍女達に手伝ってもらったけど」
驚いた声を上げるリリアナは、何か言い掛けて口を閉じた。迷う仕草に、私は促す。隠さないで教えて欲しいのよ、可愛いリリアナ。
「毎日、じゃなくても……学院へ通うとき、編んで欲しいんです」
「もちろんよ。私でよければ毎日でも編みたい。可愛い義娘のお願いだもの」
目を潤ませるリリアナを抱き締めて、しばらく互いを抱き締めた。扉をノックする音で振り返ると、開いた扉に寄り掛かるオスカル様がいる。侍女達は気を利かせたのか、部屋にいなかった。
「美しい婚約者と愛らしい義娘をエスコートする栄誉をいただけませんか?」
姿勢を正してお伺いを立てるオスカル様が答えを待つ。私とリリアナは顔を見合わせ、くすっと笑った。
「お願いしますわ」
「私も」
オスカル様と腕を組み、リリアナは反対側で手を繋いだ。マリアをちゃんと抱いている。お母様や大叔父様が待つ食堂へ急いだ。
「遅れてしまいました」
「なぁに、主役は遅れてくるものさ」
大叔父様はからりと謝罪を笑い飛ばし、その夜はお祝いの宴となった。料理人が腕を奮った料理が並び、最後にケーキも登場する。まだ完成しない屋敷の現状の報告は、お母様にお任せした。リリアナの入学と私達の婚約のお祝いで、大公家の夜は賑やかに更けていった。
「手合わせは逃げません、明日になさい」
今夜は、リリアナの入学決定のお祝いがある。私とオスカル様の婚約に関しては、すでに宮殿へ大叔父様が駆けつけて報告していた。でもリリアナは別よ。分かっていたことでも、重要な出来事だった。未来の女大公閣下の入学だもの。
大叔父様は大急ぎで、再び着替えに向かった。自室で人形を着替えさせるリリアナと、鉢合わせしなくて良かったわ。お母様がエルを預かってくれるので、リリアナのお部屋に向かった。
先に着替えた私がノックすると、興奮した様子のリリアナが扉を開く。出遅れた侍女が、後ろで苦笑いした。
「お義母様! あのね、同じ髪型にしたいの」
まだ髪を編んでいないマリアを持ち上げ、リリアナはそう笑った。すでに侍女達の手で可愛いワンピースドレスを着たリリアナは、髪を結っていない。少し考えて、三つ編みを作ってから丸めてリボンで留める形を提案した。
「どうかしら、可愛いと思うわ」
絹の銀糸を編んで、マリアを先に仕上げる。よく似た色のリボンを見せて尋ねれば、目を輝かせた。
「同じに出来るの?」
「ええ、頑張るわ。だからこの椅子に座ってちょうだい」
ちょこんと腰掛けたドレッサーの椅子で、マリアを抱くリリアナの銀髪を同じように編み上げた。中央の髪は丸めて、両側の三つ編みを巻きつけて留める。ピンで固定してからリボンを巻いて仕上げた。
「お義母様はお上手なんですね」
「本当です、お見事でした」
リリアナの褒め言葉に、侍女も追従する。少し気恥ずかしくなって種明かしをした。
「この髪型、私が学生時代に毎日編んでいたの。文字を書くときも邪魔にならないし、動いても解けにくいから便利よ」
「ご自分で?」
「ええ、侍女達に手伝ってもらったけど」
驚いた声を上げるリリアナは、何か言い掛けて口を閉じた。迷う仕草に、私は促す。隠さないで教えて欲しいのよ、可愛いリリアナ。
「毎日、じゃなくても……学院へ通うとき、編んで欲しいんです」
「もちろんよ。私でよければ毎日でも編みたい。可愛い義娘のお願いだもの」
目を潤ませるリリアナを抱き締めて、しばらく互いを抱き締めた。扉をノックする音で振り返ると、開いた扉に寄り掛かるオスカル様がいる。侍女達は気を利かせたのか、部屋にいなかった。
「美しい婚約者と愛らしい義娘をエスコートする栄誉をいただけませんか?」
姿勢を正してお伺いを立てるオスカル様が答えを待つ。私とリリアナは顔を見合わせ、くすっと笑った。
「お願いしますわ」
「私も」
オスカル様と腕を組み、リリアナは反対側で手を繋いだ。マリアをちゃんと抱いている。お母様や大叔父様が待つ食堂へ急いだ。
「遅れてしまいました」
「なぁに、主役は遅れてくるものさ」
大叔父様はからりと謝罪を笑い飛ばし、その夜はお祝いの宴となった。料理人が腕を奮った料理が並び、最後にケーキも登場する。まだ完成しない屋敷の現状の報告は、お母様にお任せした。リリアナの入学と私達の婚約のお祝いで、大公家の夜は賑やかに更けていった。
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